以下の記事は平成16(2004)年当時のものです。2018年12月に「成育基本法」が成立致しました。
平成16(2004)年1月31日
日本小児科学会・日本小児保健協会・日本小児科医会
仮称小児保健法プロジェクトチーム
仮称小児保健法プロジェクトチーム委員
別所文雄・桃井真里子・安田正(日本小児科学会)
村上睦美・松平隆光・山口規容子(日本小児保健協会)
大林一彦・神川晃・古平金次郎・保科清(日本小児科医会)
審議経過
平成15年7月6日
平成15年9月21日
その後は,詳細な詰めを平成16年1月15日まで頻回にE-mailで行った.
(仮称)小児保健法のあるべき姿を,小児科連絡協議会の中にプロジェクトチームを作り,小児科医の立場から検討することとした.仮称小児保健法プロジェクトチームとして検討を重ね,以下のような内容をとりまとめた.
これは,より良き小児保健の推進のために,三団体が協力して(仮称)小児保健法制定への方向性を示すものである.
1.基本概念(基金の拠出法を含む)
◎新生児から思春期まで一貫して扱える,小児を中心とした保健,医療,福祉の法律とする.
1)既存の法律(母子保健法,児童福祉法,学校保健法など)の不備や不連続性を修正するものであり,あくまでも小児の立場に立脚した法律とする.
2)小児医療基盤の改善.
3)より良い成育環境が,結果として国の繁栄につながる.
2.小児の保健(乳幼児健診・予防の給付の具体化)(育児保険の導入)
◎保健は,疾病に罹患しないことだけでなく,精神的・身体的により健全な状態確保のための手段であるべき.
1)予防医学のための費用が,結果として医療費削減につながる
2)乳幼児健診・予防接種の保険化ないし全国均一化 → 勧奨以外の予防接種も対象とする.
3)少なくとも勧奨予防接種の就学前義務化.
4)小児が健全に育成されるための方策.
5)小児の心をも健全に育てることが,ひいては社会のためになる.
6)出産前小児保健指導(プレネイタルビジット)から周産期小児保健指導(ペリネイタルビジット)への拡充.
7)母子保健法,児童福祉法,学校保健法を小児の立場から一貫性を持たせる.
3.小児の福祉(保育,教育関係の充実)(小児科医,また小児関連職のかかわり)
◎社会的・身体的・精神的に恵まれない小児を救済することに加え,すべての小児により良い社会生活環境を提供するための施策であるべき.
1)母子手帳の拡大,ないし別の小児保健手帳交付(15歳までの記録可能に).
2)保育園・幼稚園の一元化と民営化は,経済効率からではなく小児の立場で検討する.
3)病児保育施設の拡充.在宅障害児介護の支援,障害者施設運営管理の充実.
4)児童虐待防止法,虐待児支援の強化,乳児院の充実.
5)家庭内保育している親への支援.
6)就業女性の育児に対する職場環境整備を図るとともに,男性の育児参加を阻む企業などに対する罰則規定,ないし推進企業への優遇税制.
7)児童福祉法,育児休業・介護休業法,少子化社会対策基本法,次世代育成支援対策推進法の関連性を強化充実.
8)新生児または周産期(NICU入所中)医療費の充実.
9)特殊教育,個別教育の充実(発達障害児,視覚・聴覚障害児などのために)
4.小児の医療(医療保険からの独立)→(老健法に対応したもの)
◎子どもたちが必要な医療を充分に,かつ安心して受けられるべき.
1)小児医療の独立性を確保する.
2)小児診療報酬点数設定の改善および15歳まで全額給付.
3)小児医療不採算の改善(小児科医確保・病院小児科の減少歯止めのために).
4)医療費助成制度の全国均一化(小児医療費全額給付が不可能ならば).
5)入院中の小児の権利条約を尊重する.
6)病院併設学校(短期・長期入院に合わせ)の充実および入院児保育の充実.
7)小児救急医療体制の充実(すべての小児科医が小児救急事業参加)
以上