【回答】 ワクチン接種を推奨します。子どもへの新型コロナワクチンに関する有効性と安全性に関する情報が蓄積され、メリット(発症予防や重症化予防など)がデメリット(副反応など)を更に大きく上回ると判断したため、今回の改訂で「意義がある」という表現から、「推奨する」に変更しました。
【新型コロナワクチンを接種するメリット】
①小児患者数の急増に伴い、以前は少数であった重症例と死亡例が増加しています。具体的には、オミクロン株流行以降は小児に特有の疾患であるクループ症候群、熱性けいれんが増加し、脳症、心筋炎などの重症例も報告されています。子どもにおけるオミクロン株を含めた重症予防効果が、40〜80%程度認められることが確認されました。
②自分自身が免疫を持つことが周囲の人を守ることにつながり、大勢の人がワクチンを受けることにより、流行を抑えることが出来ます。
【新型コロナワクチンを接種するデメリット】
国内では、まだ小児への接種は始まったばかりのため、十分なデータがありませんが、成人への接種について、国内で検討された結果をご紹介します。
①国内の12〜17歳における副反応の発生率は、若年成人と同等であり、5〜11歳における副反応はより軽い傾向が確認されています。
②心筋炎・心膜炎の発生報告が稀にあるため注意は必要ですが、発症のリスク因子(10〜20歳代の男性)、接種後の症状、発症時期などが明確となり、厚生労働省からの情報提供も充実しています。
※接種当日は無理をせず、激しい運動は避けましょう。接種後数日以内に胸の痛み、息切れ(呼吸困難)、動悸、むくみなど心筋炎・心膜炎を疑う症状を認めた場合は、すぐに医療機関を受診し、新型コロナワクチンを受けたことを伝えて下さい。
※詳細は5~17歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(2022年8月10日)の[2. ワクチンに関する知見]に記載してあります。ご参照ください。
参考資料
〇日本集中治療医学会小児集中治療委員会:新型コロナウイルス関連小児重症・中等症例発生状況速報
〇日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会:5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方
〇厚生労働省:新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎について
【回答】 子どもに対する新型コロナワクチンの推奨の度合いは国によって異なっていますが、どの国も希望する子どもに対する新型コロナワクチンの接種機会をなくしているわけではありません。厚生労働省は、重症化リスクの高い基礎疾患を有する子どもにワクチン接種を勧めていました。日本小児科学会は、小児患者数の増加に伴い重症例と死亡例が増加していること等から、2022年8月に、重症化リスクの高い基礎疾患のある子どもだけでなく、5~17歳の健康な子どもへの新型コロナワクチン接種についても「意義がある」から、「推奨します」に変更しました。
【回答】 2022年2月21日から8月7日までに子どもワクチン(5~11歳用)は1回目、2回目それぞれ約150万回、約137万回接種され、予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告は72例(0.0047%)、43例(0.0031%)と報告頻度は極めて少数となっています。同期間に死亡とされた事例が1件(100万回接種あたり0.4件)ありますが、ワクチン接種との因果関係は明らかではありません。また、同期間にワクチン接種後のブライトン分類レべル1~3に該当すると評価された心筋炎、心膜炎が1例ずつ報告されています。
2022年9月2日時点で報告された、国内の子どもを対象とした新型コロナワクチン接種後の全身反応、局所反応を取りまとめた調査報告によると、5~11歳に1回目、2回目の新型コロナmRNAワクチン(ファイザー社製)を接種した場合の接種後8日以内に発現した全身症状、局所反応の出現率は、発熱(37.5℃以上)12.2%、14.2%、疼痛75.6%、70.8%、腫脹20.3%、12.4%となっており、副反応の頻度は米国における治験(第2/3相)結果(図*)や添付文書(製薬会社が作成した薬の説明書)と同程度と考えます。さらに米国の報告では、2022年5月から7月にかけて657,302回の3回目追加接種が実施され、3回目の追加接種に関しても2回目接種と同様の安全性が確認されたとされています。
*海外と国内において、使用されるmRNAワクチン(ファイザー社製)の接種量・接種方法は同様です。
【回答】 米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)は、新型コロナワクチン接種後に0.82/10万人の割合で心筋炎/心膜炎が報告され、29歳以下の心筋炎/心膜炎患者は877人であったとしています(2021年10月6日時点)。それによると829人(94.5%)が入院を要しましたが、多くの場合回復し、789人(95.2%)が既に退院し、死亡例はありませんでした。 日本では、ワクチン接種後に心筋炎を発症した11歳児例が1件ありますが、回復が確認されています(審議会(令和4年8月5日開催)報告時点)。
新型コロナワクチン接種後に発症した心筋炎も、そのほかの原因で発症した心筋炎と同様に、入院による安静と心電図・心エコー・血液検査などによる注意深い観察が必要です。一般的に入院期間は1〜2週間程度で症状が快方に向かうまでとされています。治療は、①原因がわかればそれに対する治療、②血圧をコントロールするなど、循環を安定させる治療、③炎症をおさえて、心臓の筋肉の機能が低下するのを防ぐ治療などを行います。
参考資料
〇Meeting of the Advisory Committee On Immunization Practices (ACIP) (令和3年10月21-22日開催)
〇第82回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第8回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)資料1-6-3(令和4年8月5日開催)
「きめ細やかな対応」とは接種を実施する医療者側が留意すべきことを指します。ワクチン接種には一定の副反応が伴いますが、医療者側の事前の準備によって接種を受ける本人や養育者の不安を解消し、副反応に適切に対処することができます。具体的なことは以下の通りです。
①予防接種前:接種を受ける本人と養育者に対して、ワクチンを受けるメリットとデメリットを共有します。特に、接種翌日には、大人に接種した場合と比較すると頻度は少ないものの、発熱や倦怠感、接種局所の疼痛が出ることがあること、登校や課外活動に影響が出る可能性があること、をあらかじめ伝えることが重要です。更に接種不適当者注1)や接種要注意者注2)についてあらかじめ説明します。稀ではありますが、接種後数日以内に起こることがある心筋炎の症状についても説明が必要です1)急性の重い病気にかかっている人、37.5℃以上の発熱がある人、ワクチンに含有される成分でアナフィラキシーを起こした人など【回答】 ワクチン接種後、心筋炎や心膜炎がごく稀に報告されています。接種後数日以内に胸痛、息切れ、動悸、むくみなどを認めた場合は、速やかに医療機関を受診してください。新型コロナワクチンを受けた日には激しい運動等は控えるなど、接種後の注意点を子どもたちがよく理解できる様にしてください。
参考資料
〇厚生労働省新型コロナワクチンQ&A「非常にまれに起こる、副反応が疑われている疾患があります」
〇第71回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第20回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)資料(令和3年10月22日開催)
【回答】
ワクチン接種後の発熱は、ほとんどが接種当日から翌日にかけてみられ、1日程度で解熱する場合が多いとされています。程度が軽い場合は、冷却などで様子をみていただくことでかまいません。発熱の程度に応じて解熱薬を使用することもできます。こどもで安全に使用できる解熱薬として、アセトアミノフェンがあげられます。サリチル酸系、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸などの解熱薬は、インフルエンザや水痘などのウイルス感染時に使用した場合の急性脳症発症や重症化との関連の可能性があるため、使用を控えてください。
熱性けいれんを起こしたことがある場合、何らかの病気で治療を受けている場合、薬などでアレルギー症状を起こしたことがある場合などは、発熱時の対応について事前にかかりつけの先生にご相談下さい。
発熱が長く続く場合、発熱以外の症状もある場合などもかかりつけの先生にご相談下さい。
【回答】 5歳以上11歳以下の場合、使用できるワクチンがファイザー社製(コミナティ筋注5~11歳用)のみであるため異なる種類のワクチンを接種することはできません。12歳以上でも、原則として同一のワクチンを接種する必要がありますが、以下のような場合に限り、1回目と異なるワクチンを2回目に接種すること(交互接種)は可能です。
・1回目のワクチン接種後に重篤な副反応が生じたこと等により、医師が医学的見地から、2回目に同一のワクチンを接種することが困難であると判断した場合
・国内のワクチン流通の減少や接種を受ける方の転居等により、1回目と2回目で同一のワクチンを接種することが困難な場合
なお、1回目と2回目の接種の間隔は、諸外国の対応状況等を踏まえ、27日以上の間隔をおくこととされています。
また、2021年10月22日に開催された厚生労働省の部会・調査会において、「10代および20代の男性に接種するにあたっては、ファイザー社ワクチンに比べて、モデルナ社ワクチン接種後の心筋炎関連事象が疑われる報告頻度が明らかに高いことから、十分な情報提供の上、ファイザー社ワクチンの接種も選択できることとする。なお、本人がモデルナ社ワクチンの接種を希望する場合は、COVID-19感染症に合併する心筋炎関連事象の発生頻度よりは低いことから、接種可能のままとする」と報告されており、このことを踏まえ10代及び20代の男性で、1回目にモデルナ社のワクチンを接種したものの、2回目の接種でファイザー社のワクチンへの変更を希望する場合は変更が可能です。
質問とは異なりますが、3回目の接種(追加接種)においては、適応のある年齢であれば、異なるワクチンの接種(交互接種)が可能です。
参考資料
〇厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A「1回目と2回目で異なる新型コロナワクチンを接種しても問題ないでしょうか。」
〇厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A「追加(3回目)接種では、どのワクチンが使用されますか。初回(1回目・2回目)接種とは異なるワクチンを使用(交互接種)しても大丈夫でしょうか。」
〇第71回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和3年度第20回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)資料(令和3年10月22日開催)