学会について

日本におけるチャイルドシート普及についての要望書

平成22年1月22日

警察庁長官
安藤 隆春 殿

社団法人日本小児科学会
会長 横田 俊平
社団法人日本小児保健協会
会長 衞藤  隆
社団法人日本小児科医会
会長 保科  清

 日本小児科学会・日本小児保健協会・日本小児科医会(三者協)は、子ども達の健康ならびに安全で健やかに発育することを祈念し、様々な取り組みを行っています。子どもの健やかな発育は、保護者のみ社会にとりまして喜びであり、将来を委ねる希望であります。その意味で自動車に関わる安全において致死的な事態を回避する手立てとしてチャイルドシート使用は重要なものであります。三者協の委員会である「自動車乗車中の子どもの安全推進合同委員会」の検討をうけて以下のお願い致します
 平成12年に「6歳未満児にチャイルドシート使用」の法制化がなされ、この効果のために貴庁等の取り組みに敬意を払っているところであります。しかし、チャイルドシート使用率50%前後と、運転席の95%に比較して非常に悪い数値であります。そこで、次のような要望を致したいと思います。現場でもご苦労は拝察しておりますが、是非御一考の上法律の厳格な適用を切望致したいと思います。

日本におけるチャイルドシート普及についての要望ポイント

  1. 法制上全席でベルト着用を規定しているにも関わらず、チャイルドシート使用を6歳未満児のみに限定する誤解を招く法律の文面の改訂をお願いしたい。
  2. シートベルト並みの取締りの徹底をお願いしたい。
  3. 法律で使用が義務付けられているチャイルドシートを使用していない状態は、整備不良として摘発して頂きたい。
  4. 産婦人科、産院から退院の際にチャイルドシートを使用する指導・取り締まりをお願いしたい。
  5. 罰金制度の導入を検討いただきたい。
  6. 警察官の認識の徹底をお願いしたい。

1.背景

  1. 法制化前年1999年の着用率は15.1%、法制後使用率は上昇したものの8年経過した2009年度も54.8%と未だ半数前後である(図1)。この問題は貴庁交通局の資料1「チャイルドシートの使用状況について」でも指摘されている。
  2. 2003年度米国NCSAのリサーチノートで発表された2002年度の着用率はすでに乳児用99%、幼児用94%、学童用83%に到達している。
  3. 米国運輸省が行っているような着用推進・装着指導の公認のインストラクター教育プログラムがないため、指導システムおよび啓発活動が組織的、継続的に行われない。
  4. 米国などに比べ、産婦人科・小児科内にチャイルドシートに対する知識がある医師はじめ医療従事者が非常に少ないため、妊娠中からチャイルドシートの説明・指導がほとんど行われていない。

図1 6歳未満のチャイルドシート使用率の経年推移
(警察庁・日本自動車連盟(JAF))

2.使用効果

 「チャイルドシート不使用者の死亡重傷率は使用者の2.5倍であり、チャイルドシートの使用が交通事故の被害軽減に寄与していることが認められる。チャイルドシート使用者を適正・不適正使用別にみると、不適正使用者の死亡重傷率は適正使用者の4.1倍であり、チャイルドシートは適正に使用することにより、被害軽減に効果を発揮することを示している。」

3.取り締まり状況

 シートベルトやオートバイのヘルメットに比して、チャイルドシート使用の告知件数が非常に低い。当然同等に取り締まるべきと考える。貴庁交通局の資料2「平成21年上半期の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締状況について」をみても、行政処分の基礎点数告知件数のデータは、シートベルト装着義務が2,373,401件に対し、幼児補助装置使用義務(チャイルドシート)は72,950件と明らかに取締件数が少ないことからも今後の取締強化が重要と考えられる。

以上

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