Injury Alert(傷害速報)

 

Injury Alert(傷害速報)

傷害の種類
原因対象物
臨床診断名
検索TOPへ戻る

No.053 ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害

事例 年齢:12歳 5か月 性別:女 体重:36kg 身長:149cm
傷害の種類 意識障害
原因対象物 ヘリウムガス入りスプレー缶(市販の変声用のパーティーグッズ:ヘリウム80%,酸素 20% の混合ガス)
臨床診断名 脳空気塞栓症の疑い
直接医療費
発生状況 発生場所 テレビ局のスタジオ内
周囲の人・状況 番組の共演者と合わせて5 人で横に整列していた。正面にテーブルがあり、ヘリウムガス入りのスプレー缶(容量は5,000cc、一回用)が5 つ置かれていた。向かいに司会進行のアナウンサー、その周りにはテレビ局関係者、その他共演者が21 人いた。1 本のみガスが充填されたものであり、残りの4 本は事前にガスを抜き切った、いわゆる空のスプレー缶となっていた。5 人で同時にガスを吸い、一人の声が変わるという、いわゆるロシアンルーレットのようなゲームをやっていた。患児のグループは、一番初めにゲームを行ったが、誰がヘリウムを吸ったのか分からず、最後にやり直しとなった。それまで待っている間は元気だった。
発生年月日・時刻 2015 年1 月28 日  午後6 時頃
発生時の詳しい
様子と経緯
やり直しのゲームのとき、事故が発生した。本人はテーブルに置かれたヘリウムガス入りスプレー缶を右手に持ち、左手で鼻をつまみ、司会者の合図で口にくわえて吸引した。4秒ほどして缶を口から離した直後から右手を震わせ始め、約5 秒後に後方へ卒倒した。受け身は取れずに後頭部を強打し、全身性強直性間代性けいれんを起こした。速やかに救急要請された。
治療経過と予後 救急隊の覚知は18 時8 分、現場到着は18 時16 分、当院到着は18 時42 分であった。救急隊が接触した時は軽度の意識障害(日本昏睡尺度Japan Coma Scale(JCS)で20)と低酸素血症(SpO2:89%)を認め、酸素投与を受けながら搬送された。 患児に基礎疾患はなく、家族歴にも特に問題はない。 当院搬送時には四肢の硬直が強く、ジアゼパムの投与を受け頓挫した。頭部CT 写真には異常所見を認めなかったが、胸部CT 写真で広範囲の皮下・縦隔気腫と気胸を認めた。意識障害(E1V2M4/JCS200)が遷延するためICU に入室した。入院翌日も意識障害は続き、左半身に優位のけいれんを認めた。頭部MRI 写真と髄液検査では問題となる所見はなく、発作時脳波で右後頭部に棘徐波を認めた。てんかん性疾患を考えミダゾラム、フェニトイン、レべチラセタムを開始した。入院2 日目には脳波異常は改善した。以後病的反射は消失し、意識状態の改善が徐々にみられた。 入院6 日目に再度けいれんし、頭部MRI 写真を再検したところ、皮質・皮質下優位に多発性の拡散低下があり、頭部CT 写真でも同部位の低吸収域が認められた。入院後は、脳炎・脳症、代謝性疾患、てんかん性疾患、内分泌疾患、感染症などの検索を行ったが有意な所見はなく、臨床経過から空気塞栓症の可能性があると判断し、転院した。高圧酸素療法を施行し、左半身の麻痺の改善傾向、自然開眼するなどの臨床所見の改善を認めたため、ヘリウムガス吸引をきっかけとした脳空気塞栓症として、他院で治療的診断された。 2015 年2 月5 日現在、追加の高圧酸素療法を行っているが、高次脳機能障害を残す可能性があると判断されており、早期のリハビリ介入が検討されている。
Full Text No.053 ヘリウムガス入りスプレー缶の吸引による意識障害
類似報告 No.53 類似事例

Acrobat Reader ダウンロード PDFをご覧になる際は、Adobe® Reader™をご利用ください。

ページの先頭へ戻る