事例 | 年齢:2歳 6か月 性別:男児 体重:15.8 kg 身長:95cm | |
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傷害の種類 | 交通外傷,頸髄損傷 | |
原因対象物 | 幼児用チャイルドシート | |
臨床診断名 | 頸髄損傷(C2,3 レベル),頸胸椎骨折(C7/Th1 椎間関節亜脱臼,Th1 椎体骨折,Th1 右 横突起骨折),下顎骨折 | |
直接医療費 | 18,862,810 円 | |
発生状況 | 発生場所 | 片道一車線の自動車道 |
周囲の人・状況 | 母の運転する軽自動車の右後部座席に設置されたチャイルドシートのハーネスベルトを装着して乗車していたところ,同車が単独事故として道路右側の電柱へ正面衝突した. | |
発生年月日・時刻 | 2017年10月X日(火) 午後2時30分頃 | |
発生時の詳しい 様子と経緯 |
母が運転する軽自動車に乗車していたところ,同車が単独事故として電柱へ正面衝突した(図1,2).児は,後部座席に設置されたチャイルドシートにハーネスベルトを装着して前向きに座っていたが,救急隊接触時にCPAと認知され,BLSの実施により5分程度で自己心拍再開した.本児の他にもう一人11か月の乳児が助手席側の後部座席に横向きに固定されたチャイルドシートに寝ていたが,特記すべき外傷はなかった.前医到着時は神経原性ショックの状態で,自発呼吸はなく,持続勃起を伴っていた.CTから第7頸椎脱臼骨折,第1胸椎椎体骨折,下顎骨骨折と診断された. | |
治療経過と予後 | 受傷から2日目に手術を含めた継続加療目的に人工呼吸器管理下で高次医療機関へ転院となった.来院時自発呼吸はなく,四肢は完全麻痺の状態で肛門は弛緩していた.MRIを含む諸検査より頸髄損傷(C2,3 レベル,Frankel 分類A),頸胸椎骨折(C7/Th1 椎間関節亜脱臼,Th1 椎体骨折,Th1 右横突起骨折),下顎骨骨折,右腸骨骨折と診断した(図3, 図4).同日に頸胸椎後方固定術,受傷から3日目にハローベストを装着してリハビリを開始,受傷から7日目に気管切開を行った.受傷から22日目には経口摂取を開始し,受傷から114日目にスクリューを抜釘した.受傷から188日目にリハビリを目的とした転院となった.退院時人工呼吸器離脱は困難であったが,経口摂取は可能で,右上肢にわずかに自動運動が出現するようになりFrankel 分類Cと判断した.チャイルドシートは体幹の支持には優れるが頭部の支持ができない.前方への加速度運動が加わった際に,小児は椎間関節が扁平で靭帯の支持性が弱い,頭部が大きく頸部にかかる屈曲伸展の際のトルク(物体を回転させる力)が大きいなどの解剖学的特徴があり,上位頸椎頸髄の損傷が起こる可能性がある.チャイルドシートによる頸椎頸髄損傷予防に,シートの向きや構造について検討する必要があると考えられた. | |
Full Text | No.105 チャイルドシート使用中の交通外傷による頸髄損傷 | |
類似報告 | No.105 類似事例1 |
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