ガイドライン・提言

 

小児の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制に関する見解 〜入院や付き添いの考え方も含めて〜

2020年4月23日
2022年1月28日改訂

日本小児科学会会員・小児医療関係者 各位

公益社団法人日本小児科学会
新型コロナウイルス感染症対策ワーキンググループ

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 成人患者における新型コロナウイルス感染症の疾病負荷は甚大であり、新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制は成人患者を中心に編成されている。そのため小児患者に対する体制整備は遅れており、小児患者が発生した場合には、病床管理に苦慮することが危惧されている。また、小児患者は多くの場合に全面的な介助が必要であり、行動の抑制が困難であることから、小児医療の現場では、医療従事者への感染伝播や院内感染のリスクが高い状況が発生すると考えられている。
 一方で、これまでの知見により、小児患者は比較的軽症であることや、感染伝播についても、学校・幼稚園・保育所でのクラスター発生報告が散見され、小児の感染者も増加しているが、依然として保護者や同居家族からの感染である場合が多い。従って、小児の新型コロナウイルス感染症に対する医療提供体制の整備には成人と異なる考え方が必要であり、これらのことをふまえて、日本小児科学会としての見解を示す。
 なお、医療提供体制は各地域によって異なることから、新型コロナウイルス感染症の流行状況や地域の諸事情を勘案し、地域の実情に合わせた柔軟な対応が望ましい。

1.小児の軽症患者は原則として自宅療養を考慮する。

 感染拡大防止を目的として入院した患者についても、速やかに自宅療養への移行が妥当と考える。自宅療養の実施には、毎日電話再診などによる状態の確認を前提とする。自宅に高齢者あるいはハイリスク者が同居しており、確実に距離を保って過ごすことができない場合では、担当医と保護者でよく相談する必要がある。同居家族が新型コロナウイルス感染症に罹患し、小児にも感染が疑われる症状が出た場合は、以下が考慮される。

1) 症状が軽症で、その後、通常の自宅療養期間に相当する間(およそ症状出現後10日間)、同居家族以外の人との接触が避けられる場合は、検査診断は必ずしも必要としないこと。
2) 発熱の持続、呼吸器症状の悪化等がみられた場合は、速やかにかかりつけ医に電話で相談すること。
3)生後3か月未満の乳児が発熱した場合は他の重症感染症の可能性もあり、速やかな受診が必要である。

2.小児が入院した場合には、保護者の同室付き添いも考慮される。

 子どもが病気のときには安心できる環境を整えた上で、適切な治療を行わなければならない。保護者によるケアは小児の精神的な安定につながり、医療従事者の負担も大きく軽減される。さらに小児に基礎疾患がある場合や乳幼児においては、病態を最も理解し急変の徴候を早期に気付くことができるのも保護者である。保護者が小児の介護を可能な状態であると判断できた場合には、入院する小児の介護者として同室してもらうことには大きな意味がある。
 また小児が発症した時点で、保護者は感染しているか、濃厚接触者であり同室での健康観察が必要である。なお保護者も病室から出られないため、検査結果にかかわらず食事を提供する等の柔軟な対応をとる必要がある。

3.小児の医療体制については、小児特有の課題もあり、行政機関のみでの調整は困難である。小児診療を行う医療機関が主体となり、保健所管轄を越え広域に連携し役割分担を決め、行政(都道府県庁の医療政策部門や地域の保健所など)と協調して対応していく必要がある。

 一次診療においては、院内感染を防止するために、地域の医師会や小児科医会が中心となり、検体採取作業の集約化も検討する。二次・三次医療圏においては、入院病床の調査を行い、特定の医療機関の負担が過大にならないように調整する。地域によっては、災害時小児周産期リエゾンが中心となり、小児病床確保対応などを行っており、活用する。具体的には、最重症の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関を決め、酸素投与が必要な中等症の入院症例を分散して診療するための複数の医療機関を確保する。一方で、新型コロナウイルス感染症以外の重篤な基礎疾患のある患者を集約して診療する医療機関や医療的ケア児を受け入れることが可能な医療機関などの確保も重要であり、役割分担を明確にする。

以上をもとに、小児と保護者の感染状況別にその対応についての考え方を表にまとめた。ただし、地域の感染状況や施設の人員確保、家族の状況ごとに、柔軟に対応していただきたい。

保護者
PCRまたは
抗原検査陰性
PCRまたは
抗原検査陽性
無症状~軽症
PCRまたは
抗原検査陽性
中等症以上
小児

PCRまたは
抗原検査陽性

無症状~軽症

保護者は感染防御策をとり、児も保護者も自宅療養 児も保護者も自宅あるいは健康陽性者管理施設等での管理 感染した保護者は入院。児については療育者の状況により、入院か自宅療養を判断

PCRまたは
抗原検査陽性 

中等症以上
(単独での入院が困難な場合)

保護者が感染防御策をとり、付き添いの上で児が入院することを考慮する 保護者が付き添いの上で児が入院することを考慮する 感染した保護者と児の療育者の状況により、保護者と同室か別室か判断し入院

※保護者が小児を介護できないほど重症で、代替えとなる養育者が不在の場合には、小児がどのような状態であっても危険な状況に陥らないように、関係者で検討する必要がある。

※保護者がPCRまたは抗原検査陰性の場合の付き添いについては、保護者が感染する可能性を踏まえた対応を充分に行い、感染するリスクがあることの同意を得ることが望ましい。

本学会が公開している下記の資料も併せて参照されたい。
新型コロナウイルス感染症に関するQ&A

在宅療養児介護者のCOVID-19感染判明時の支援について

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