2025年10月7日
2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針
―2025/26シーズンの流行期を迎えるにあたり―
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
全文PDF
2025/26シーズンの流行期を迎えるにあたり、治療指針を更新し、治療・予防指針といたしましたのでお知らせいたします。
治療・予防指針の主な改訂点は以下になります。
①一般診療における治療を更新しました。治療薬に関して、バロキサビル マルボキシルに関する知見と推奨について、追記し更新しています。
②インフルエンザワクチンに関して、今シーズンの選定株および流通状況を踏まえて記載を更新しました。
なお、手指衛生、咳エチケット、マスクの適時使用等の感染対策の徹底はインフルエンザの予防において重要で、引き続きその実施を推奨します。
1. 一般診療における治療
<現時点での外来治療における対応>
季節性インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬の有効性に関する知見は、有熱期間の短縮のほか、抗インフルエンザ薬の早期投与による重症化予防効果が示されている1-3。引き続き、以下の考え方を継続する。
治療対象について
- 幼児、基礎疾患がありインフルエンザの重症化リスクが高い患者、呼吸器症状が強い患者には投与が推奨される。
- 発症後48時間以内の使用が原則であるが、重症化のリスクが高く症状が遷延する場合は発症後48時間以上経過していても投与を考慮する。
- 基礎疾患を有さない患者であっても、症状出現から48時間以内にインフルエンザと診断された場合は各医師の判断で投与を考慮する。
- 一方で、多くは自然軽快する疾患でもあり、抗インフルエンザ薬の投与は必須ではない。
選択薬について
オセルタミビル(タミフル®)
ザナミビル(リレンザ®)
ラニナミビル(イナビル®)
ペラミビル(ラピアクタ®)
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)
表1.抗インフルエンザ薬を使用する場合の選択薬
| |
オセルタミビル * |
バロキサビル
マルボキシル
** |
ザナミビル
*** |
ラニナミビル
*** |
ペラミビル |
| 新生児・乳児(1歳未満) |
推奨 |
積極的には推奨しない(B型については本文参照) |
推奨しない(吸入困難) |
懸濁液は吸入可能、推奨については本文参照 |
左記4剤の使用が困難な時に考慮する |
| 幼児(1歳から5歳) |
多くの場合は吸入困難 |
|
小児(6歳から11歳)
|
A型には慎重に投与する。B型には使用することを提案する。 |
吸入可能な場合に限り推奨 |
| 小児・思春期小児(12歳以上)**** |
A・B型共に推奨
(本文参照) |
推奨 |
| 呼吸器症状が強い・呼吸器疾患のある場合 |
重症例についてはエビデンスが不足している |
要注意
(重症例についてはエビデンスが不足している) |
*)2017年3月24日に公知申請により承認されたオセルタミビルの投与は生後2週以降の新生児が対象である。体重2,500 g未満の児または生後2週未満の新生児は使用経験が得られていないため、投与する場合は、下痢や嘔吐の消化器症状やそのほかの副作用症状の発現に十分注意する4。原則、予防投与としてのオセルタミビルは推奨しない(海外でも予防投与については1歳未満で検討されていない)。ただし、必要と認めた場合に限り、インフォームドコンセントのもと予防投与(予防投与量:2 mg/kgを1日1回、10日間内服)を検討する4。
**)2025年9月に20 kg未満の小児に対する顆粒製剤の使用が承認された。
***)吸入薬(ザナミビルやラニナミビル)使用時はせき込みなどが想定される。吸入指導を行う際は適切な感染対策が必要である。ザナミビルについては4歳以下の幼児に対する使用経験はなく、安全性は確立していない。
ラニナミビル懸濁液「イナビル吸入懸濁用160mgセット」が2019年6月に承認され、使用可能である((注)ラニナミビル吸入粉末薬とは異なる製剤)。ラニナミビル懸濁液は、吸入粉末薬を吸入できない乳幼児に投与が可能というメリットはある。国内において4歳未満の小児1,104人を対象とした市販後調査の結果が報告され、特段の安全性の懸念を認めていない5。エアロゾルが発生するため、感染対策には注意する必要がある。
****)抗インフルエンザ薬投与の有無に関わらず、就学期以降の小児・未成年者には、異常行動などについて注意を行った上で投与を考慮し、少なくとも発熱から2日間、保護者等は異常行動に伴って生じる転落等の重大事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うことが必要である。2018年日本医療研究開発機構(AMED)研究班の検討によりインフルエンザ罹患後の異常行動がオセルタミビル使用者に限った現象ではないと判断し、全ての抗インフルエンザ薬の添付文書について重要な基本的注意として「抗インフルエンザウイルス薬の服薬の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。」と追記している。
<入院治療における対応>
原則として全例、抗インフルエンザ薬による治療を推奨する。経口投与が可能であれば幼児はオセルタミビルの投与が推奨されるが、経口投与が困難な場合はペラミビル点滴静注が考慮される。呼吸器の基礎疾患や肺炎のない年長児においては、確実に吸入投与が可能な場合に限りザナミビルやラニナミビルが選択される。集中治療管理が必要となるような重症例および肺炎例に対して使用経験の最も高い薬剤はオセルタミビルになるが、経口投与が困難な場合はペラミビルの静注投与が推奨される。バロキサビル マルボキシル、ザナミビル、ラニナミビルの重症例に対する効果に関するエビデンスは成人を対象とした検討に限られている。
新生児・乳児
オセルタミビル(タミフル®)生後2週以降の新生児と乳児の適応あり
ペラミビル(ラピアクタ®)生後1か月以降の乳児の適応あり
重症例および肺炎合併例
オセルタミビル(タミフル®)
ペラミビル(ラピアクタ®)
それ以外の入院患者に対しては
オセルタミビル(タミフル®)
ザナミビル(リレンザ®)
ラニナミビル(イナビル®)
ペラミビル(ラピアクタ®)
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)
<バロキサビル マルボキシルについて>
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)は、インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害する。ウイルスのmRNA合成を阻害し、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する新しい作用機序の抗インフルエンザ薬として2018年2月から製造販売承認を受けている6。
有効性に関する情報
バロキサビル マルボキシル(以下バロキサビル)の抗ウイルス作用や臨床的効果については、インフルエンザに罹患した12歳以上の健常な小児および成人を対象としたランダム化比較試験が2018年に報告され、バロキサビルはプラセボと比べて有熱期間の短縮が確認されている6。以降、12歳未満の小児に関する治験や臨床研究の結果が報告され、国内外で概ねノイラミニダーゼ阻害薬と同程度以上の効果や安全性が示されている7-12。
小児および成人を対象とした26の試験(11,897例)を検討としたシステマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスによると、インフルエンザ罹病期間についてはザナミビル投与群が最も短かったものの、バロキサビルはインフルエンザ関連合併症(肺炎、気管支炎、中耳炎、その他)の発生率および有害事象(嘔気、嘔吐)の発生率が最も低かったことが示されている13。更に小児の健康保険組合のデータベースを用いた検討では、バロキサビル投与群はオセルタミビルやザナミビル投与群より入院の頻度が低いことが確認されている14,15。また、B型インフルエンザウイルスに対するバロキサビルの効果については、ノイラミニダーゼ阻害薬に比べて、有熱期間が比較的短いとの報告も複数存在する8,16,17。更に、予防投与は小児を含む家族内感染を減らす効果も示されている18。上記のデータは、バロキサビルについてはノイラミニダーゼ阻害薬と同等以上の臨床的有用性を示唆するものであり、費用対効果に優れている可能性が米国、オランダ、中国など複数の国の分析からは報告されている19-21。また、家庭内伝播に関する検討では、バロキサビル投与群はオセルタミビル投与群に比べて2次伝播発生率が41.8%低く、12歳未満児が発端者であった場合も45.8%低いことが確認された。その後の検討でも同様の結果が確認されている22,23。
低感受性変異ウイルスについて
治療中にインフルエンザウイルスのポリメラーゼのPAサブユニットにおけるI38X変異を有する低感受性変異ウイルスが出現することは繰り返し確認されている7,24-26。変異ウイルスは主としてA(H3N2)、A(H1N1)で検出され、一貫してB型インフルエンザウイルスの変異ウイルスは極めてまれとなっている。2016/17シーズンに行われた治験における検討では治療後3~9日に9.7%の患者検体で変異ウイルスが検出され、85.3%はウイルス量の一過性の増加が認められ、症状の増悪も10%前後に認められている26。変異ウイルスが出現する割合は年齢との関連が認められ、6歳未満では52.2%、6~11歳で18.9%、12歳以上の思春期小児と成人では10.3%、65歳未満の成人で7.1%、65歳以上の成人では14.6%と報告されている27-29。治療開始後ウイルスRNA量は速やかに低下するが、変異ウイルスが出現した場合は5日時点でも認められる30。また治療歴のない小児患者からの検出が報告され22、変異ウイルスの家族内伝播例も国内より報告されている31。2022/23シーズンには国内で未治療の患者群からPAサブユニットの異なる変異(E199G)により、バロキサビルに対する感受性が低下した株の検出が報告され、地域内での伝播を示唆する報告もある32。
2019/20シーズンにインフルエンザに罹患した15歳未満の患者における検討で、バロキサビル投与を行った20例中の5例から変異ウイルスが検出された。有熱期間は変異ウイルス検出の有無で有意差はなかったものの(変異なし23.0hr vs 変異あり32.5hr)、ウイルス排泄の遷延や症状スコア改善までの時間は長い傾向にあった(変異なし29.5hr vs 変異あり75.0hr, p=0.106)33。その後、我が国で2020/21年シーズン以降の6~11歳の小児患者195例を対象とした国内多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照試験が実施された。結果、バロキサビル群の罹病期間の中央値は44.8hr、オセルタミビル群は72.2hrで、PA/I38X変異ウイルス検出患者でも罹病期間の延長は認められなかった34。さらに、PA変異検出例の有熱期間、罹病期間の延長が認められないとする追加報告もなされている35。変異ウイルスが臨床症状や全体の疫学に与える影響については引き続き注視が必要である。
WHOは世界からの情報を収集し、インフルエンザ薬に対する感受性を経時的に調査している。バロキサビルに対する感受性の低下に関連するアミノ酸置換を有するインフルエンザウイルスの検出頻度は0.5%程度と低いものの、バロキサビルの使用が最も多かった日本においては、2018/19シーズンにおけるPAI38X変異株の割合が4.5%(41/919)と相対的に高いと報告された36。その後も日本においては、2022–2023年に3.3%(16/488)の割合で耐性変異が検出され、そのうち11株がA(H3N2)ウイルスでPA-I38T/M変異を有していたと報告されている37。
しかしながら、国内の抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスの詳細情報から、国内から報告されているA(H3N2)ウイルスの変異の多くは、ウイルス薬投与下の患者から検出されたものであり、耐性変異を有するウイルスが広く伝播しているとはとらえるべきではない38。
また、家庭内伝播予防を検証した、国際共同治験では発症48時間以内のインフルエンザ陽性患者(5〜64歳)に対するバロキサビル単回投与で、変異ウイルスは7.2%で出現したものの、伝播例はないことが確認されている23。
ノイラミニダーゼ阻害薬との併用効果について
ノイラミニダーゼ阻害薬とバロキサビルの併用効果については、2019/20シーズンに25カ国の124施設で12歳以上のインフルエンザ入院患者を対象としたランダム化比較試験が行われ、両剤併用群における臨床症状回復までの時間が97.5時間(95%信頼区間:75.9~117.2)であったのに対し、ノイラミニダーゼ阻害薬のみを用いた対照群では100.2時間(95%信頼区間:75.9~144.4)であり、有意差を認めなかったとされている39。
総合的判断
上記のように、バロキサビルの使用経験と有効性は集積され、小児を含めて他の薬剤に対する優位性を示唆するデータが蓄積されつつある。特にB型インフルエンザについてはオセルタミビルと比べ有熱期間が短いことが複数の報告で確認されている。一方、治験の段階から、治療中に低感受性変異ウイルスが出現することは明らかとなっており、特に若年の小児ではその傾向は顕著であった。また、2018/19シーズンにおいては使用頻度の多い国内を中心に変異ウイルスの出現も報告されていたため、当委員会では更なるデータの蓄積と検証まで、バロキサビルの積極的推奨を控えてきた。その後、世界的にインフルエンザの流行を認める中でバロキサビルが使用されてきたが、サーベイランスでは変異ウイルスの明らかな増加を認めず、濃厚接触が想定される家庭内でも2次伝播のリスクは高くはないと考えられた。また、B型インフルエンザウイルスについては変異ウイルスの出現は稀である。
上記の事を踏まえて、
- 12歳以上の小児のインフルエンザに対して抗インフルエンザを投与する場合は、バロキサビルを他剤と同様に推奨する。B型インフルエンザに対しては他剤より優位である。
- 6歳から11歳の小児については、B型インフルエンザに対しての使用を提案する。A型インフルエンザに対する使用は慎重に判断する。
- 5歳以下の小児では耐性変異を有するウイルスの排泄が遷延する可能性があるため、バロキサビルの積極的な使用を推奨しない。B型インフルエンザウイルス感染例については考慮される。
- なお、顆粒製剤の承認にあたり、添付文書上下記が追記された。「抗ウイルス薬の投与がA型又はB型インフルエンザウイルス感染症の全ての患者に対しては必須ではないことに加え、低年齢になるほど低感受性株の出現頻度が高くなる傾向が示されており、本剤の投与が拡大した場合に、低感受性株が地域社会に伝播拡大する可能性が否定できないことを踏まえ、体重20kg未満の小児に対しては、他の抗インフルエンザウイルス薬の使用を考慮した上で、本剤の投与の必要性を特に慎重に検討すること」と記されている。
ただし、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性株が疑われる状況では、使用が考慮される。 2023/24シーズンはオセルタミビルへの感受性が低下したI223V+S247Nの二重変異ウイルスの多国間での発生が報告されている40。しかし、その発生は稀であり、現時点でこれまでの治療方針を変更する必要はないと考える。なお、オセルタミビル以外のノイラミニダーゼ阻害薬やバロキサビルに対する感受性は維持されている。
重症例・肺炎例については単剤治療の有効性に関するデータの蓄積が少ない。他剤との併用療法も考慮されるが、一部の報告ではノイラミニダーゼ阻害薬との併用効果はなかったとの報告がなされている39。以上より、バロキサビルと他の抗インフルエンザ薬の併用効果に関しては更なるエビデンスの蓄積が必要である。
前述の通り,国内における使用頻度増加に伴う薬剤耐性ウイルス出現頻度の変化にも十分注意する必要がある。
2.抗インフルエンザ薬による予防投与に関する考え方
インフルエンザの予防については、あくまでもワクチン接種やマスク着用・手洗いなどの対策が基本である。抗インフルエンザ薬による予防投与については、病院内における集団発生やインフルエンザ重症化リスクのある基礎疾患のある患者が曝露を受けた状況においてのみ考慮される。やむを得ず使用する場合は、原則としてノイラミニダーゼ阻害薬を使用する。バロキサビルの使用はノイラミニダーゼ阻害薬耐性株が疑われる状況に限定される。
3.ノイラミニダーゼ阻害薬に耐性を示すインフルエンザウイルスによる重症例への対応
現時点においてはノイラミニダーゼ阻害薬耐性株によるインフルエンザ重症例は問題になっていないが、今後発生した場合に備えて記載する。
(1)H275Y*変異を有するA(H1N1)pdm09感染による重症例への対応
近年、わが国においては、H275Y変異を有する株(以下H275Y変異株)が、A(H1N1)pdm09分離株の1~4%を占める38。このH275Y変異では、吸入薬であるザナミビルとラニナミビルへの感受性は保たれているが、オセルタミビルとペラミビルへの感受性が低下している41。乳幼児の重症例や人工呼吸管理下の患者においてはザナミビルとラニナミビルの吸入が困難であるので、静注製剤であるペラミビルが選択されるが、H275Y変異株に対しては、通常の投与方法では効果が期待できない。「小児にペラミビル 10 mg/kgを 1 回投与した場合の血液中および気道中ペラミビル濃度の推移」を基にしたシミュレーションの結果から、「10 mg/kg、1日1回、連日5日間投与」により、H275Y変異株に対する有効気道中濃度が概ね維持されると推定されている(<ペラミビル投与設計と血中濃度の検討について>を参照)。
バロキサビルは細胞培養あるいは動物モデルにおいてH275Y変異株ウイルスの増殖を抑制する事が確認されており、代替薬として検討される(医薬品インタビューフォームより)。また、オセルタミビル耐性インフルエンザウイルスによるアウトブレイク事例で成人患者に対してバロキサビルを投与し、オセルタミビル投与群に比べて早期に解熱が得られたとの報告がある42。
*H274Yの表記もみられるが、これは、A(H3N2)亜型ウイルスのNA蛋白質のアミノ酸番号をもとにした表記法(N2表記法)であり、A(H1N1)亜型ウイルスのNA蛋白質の場合は、耐性マーカーのアミノ酸番号はメチオニンから数えて275番目となる。よって、本文では耐性マーカーのアミノ酸番号をH275Yで統一する。
病原微生物検出情報(IASR). 2008/09インフルエンザシーズンにおけるインフルエンザ(A/H1N1)オセルタミビル耐性株(H275Y*)の国内発生状況(第1報). IASR. 2009; 30: 49-53.(
https://idsc.niid.go.jp/iasr/30/348/pr3483.html)
(2)R292K変異を有するA(H7N9)亜型ウイルス感染による重症例への対応
2013年以降、中国を中心にヒトへの感染が確認されているA(H7N9)亜型ウイルスのなかには、ノイラミニダーゼ(NA)にR292K変異を有するもの(以下R292K変異株)があり、NA阻害薬への感受性が低下していると報告されている43,44。このR292K変異株は、全てのNA阻害薬への感受性が低下するが、特にオセルタミビルへの感受性は高度に低下している44。各NA阻害薬のR292K変異株に対するIC50から考察すると、吸入薬であるザナミビルが有効である可能性はあるが、人工呼吸管理下にある重症肺炎例では吸入は困難である。静注製剤であるペラミビルが期待されるが、R292K変異株に対するペラミビルのIC50値は100 ~250 nM前後と高く44,45、ウイルスの増殖を抑制するためには、高濃度のペラミビルを要することが示唆されている45。前述のシミュレーションから、通常量(10 mg/kg)を1日2回、連日投与してもIC50を維持するレベルであり、ウイルス増殖を十分に抑制する気道中濃度は維持されず、抗ウイルス効果を期待できない可能性がある。そのため、NA阻害薬とは作用機序が異なる抗インフルエンザ薬の使用を考慮する必要がある。
現在、RNAポリメラーゼ阻害薬に分類されるファビピラビルは、「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」を効能又は効果として承認されている。したがって、A(H7N9)亜型のR292K変異株が流行した際には、国による使用についての迅速な判断がなされることを期待する。ただし、ファビピラビルは動物実験で催奇形性が認められたため、妊婦には使用出来ない。また、小児等に対する投与経験はない。キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬のバロキサビルは細胞培養感染モデルにおいてA(H7N9)亜型のR292K変異株ウイルスの増殖を抑制する事が確認されており、A(H7N9)亜型 のR292K変異株に対する選択薬の1つになると思われる(医薬品インタビューフォームより)。
4.インフルエンザワクチンの推奨
インフルエンザワクチンは、インフルエンザの発症を予防する効果があり、学校での欠席日数を減らす効果も報告されている46。また、ワクチン接種により、インフルエンザによる入院を減らした報告もある47。
2019/20シーズン以降は、2020/21、2021/22シーズンにおいて国内では大規模な流行がなかったが、2023/24シーズンからはインフルエンザ患者が増えており、日本小児科学会はインフルエンザワクチンの接種を推奨する。
今冬のインフルエンザワクチン
(1)国内の不活化インフルエンザHAワクチン製剤について
2018年度から株選定プロセスに見直しがあり、国立感染症研究所インフルエンザワクチン株選定のための検討会議で検討された結果が厚生労働省に報告され、その結果をもとに、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会の下に設置された「季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」で議論の結果、下記の3株に決定された。B型山形系統株は2020年以降自然界から検出が認められず、今シーズンから推奨株から除外されている。
2025/26 シーズンのワクチン株
A/Victoria(ビクトリア) /4897/2022(IVR-238)(H1N1)pdm09
A/Perth(パース)/722/2024(IVR-262)(H3N2)
B/Austria(オーストリア) /1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)
2025/26シーズンのインフルエンザワクチンの供給量に関しては、約5,293万回分(供給量はインフルエンザHAワクチン0.5 mL/回換算、経鼻弱毒性インフルエンザワクチン0.2 mL/回換算の合算)となり、近年の使用量を超える供給量となる見込みである。また、9月5週時点で、2025/26シーズン(令和7年度)の供給量の6割を超える見通しである(第38回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会資料)。過去2シーズンは年内から流行が起こったこと、新型コロナウイルス感染症との同時流行も懸念されることから、速やかな接種が求められる。なお、昨年同様に13歳以上は原則1回接種となる。
6か月以上の小児が新型コロナワクチンと不活化インフルエンザHAワクチンを接種する場合、同時接種を含めて、接種間隔の制限はない。成人患者を対象とした検討で、単独で接種した場合と比較して、有効性及び安全性が劣らないとの報告があること等を踏まえ、厚生労働省の2022年7月22日開催の審議会において議論された結果、実施が可能となった。また、その他のワクチンとの接種間隔2週間の制限も撤廃された。
(2)経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(live attenuated influenza vaccine: LAIV)について
2003年に初めて米国で承認され、2023年4月時点で36の国と地域で承認されている。小児にとって、ワクチンに伴う痛みは重大な懸念事項であり、経鼻接種による痛みの軽減には重要な意義がある。国内においては長年に渡り未承認のままであったが、2023年3月27日に LAIV (商品名:フルミスト®︎点鼻液) の製造販売承認がなされ、実際の接種が2024/25シーズンから開始された。B山形系統を含まない3価ワクチンである。使用方針については、日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会.経鼻弱毒性インフルエンザワクチンの使用に関する考え方~医療関係者の皆様へ~
https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=607 を参照のこと。
接種対象者は、2歳~19歳未満で、0.2 mLを1回(左右の鼻腔内に各0.1 mLを1噴霧ずつ、合計2噴霧)投与する。注射は厳禁である。
以下に日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会のLAIVの使用方針を示す。
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会の推奨
不活化インフルエンザHAワクチン (inactivated influenza vaccine; IIV) とLAIVの間にインフルエンザ罹患予防効果に対する明確な優位性は確認されていない。
① 2歳〜19歳未満に対して、不活化インフルエンザHAワクチンまたは経鼻弱毒生インフルエンザワクチンのいずれかのワクチンを用いたインフルエンザ予防を同等に推奨すが、特に喘息患者には不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する。LAIVは飛沫又は接触によりワクチンウイルスの水平伝播の可能性があるため、授乳婦、周囲に免疫不全患者がいる場合は不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨する。
② 生後6か月〜2歳未満、19歳以上、免疫不全患者、無脾症患者、妊婦、ゼラチンアレルギーを有する者に対しては不活化インフルエンザHAワクチンのみを推奨する。
参考
<インフルエンザA型・B型に適応のある薬剤の一般的な用量・用法>
作用機序:ノイラミニダーゼ阻害薬
① オセルタミビル 『タミフル®』
剤型:ドライシロップ(3%)、カプセル製剤(75 mg)
用量・用法:
幼小児の場合:1回量として2 mg/kg(最大量75 mg/回)1日2回 計5日間
新生児、乳児の場合:1回量として3 mg/kg 1日2回 計5日間
投与対象:体重2,500 g未満の児または生後2週未満の新生児に対する安全性は確立していない。
副作用・注意点:消化器症状(嘔気、嘔吐)、異常行動
2020/21シーズンからオセルタミビルに特化した10代の副作用の記載は削除されている。
2019/20シーズンから添付文書に以下が追記された:出血が現れることがあるので、患者及びその家族に対して、血便、吐血、不正子宮出血等の出血症状が現れた場合には医師に連絡するよう説明する(相互作用)。併用注意:ワルファリン[併用後にプロトロンビン時間が延長した報告があるので、併用する場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意する(機序不明)]。
② ザナミビル 『リレンザ®』
剤型:吸入粉末剤
用量・用法:投与量: 10 mgを1日2回吸入、計5日間(成人と同量)
投与対象:吸入可能な患者。ただし、低出生体重児、新生児、乳児又は4歳以下の幼児に対する使用経験はなく、安全性は確立していない。
副作用・注意点:気管支の攣縮の報告があり、喘息など呼吸器系の基礎疾患がある児には推奨されない。また、本剤は、夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しており、乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者に投与した際にアナフィラキシーがあらわれたとの報告があり、投与に際しては十分に注意する(添付文書より)。
③ ラニナミビル 『イナビル®』
剤型:吸入粉末剤
用法・用量:
10 歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20 mg を単回吸入投与する。
10 歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40 mg を単回吸入投与する。
投与対象:吸入可能な患者。ただし、低出生体重児、新生児、乳児に対する使用経験はなく、安全性は確立していない。
副作用・注意点:同効の吸入薬のザナミビルにおいて、気管支喘息患者に使用した際に気管支
攣縮の報告がみられているため気管支喘息の患者に対してこれらの吸入薬を使用するときは留意すること。また、本剤は、夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しており、乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者に投与した際にアナフィラキシーがあらわれたとの報告があり、投与に際しては十分に注意する(添付文書より)。
吸入薬としての注意:単回吸入にて治療が終了するため、確実な吸入が求められる。
特に小児については、医療従事者や保護者が吸入を確認するなど、服薬指導が必要である。
剤型:吸入懸濁用160㎎セット
用法・用量:成人及び小児には、ラニナミビルオクタン酸エステルとして160㎎を日本薬局方生理食塩液2 mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入投与する。
副作用:慢性呼吸器疾患(喘息等)においてインフルエンザウイルス感染症により気道過敏性が亢進することがあり、気管支攣縮や呼吸機能低下が現れるおそれがある(添付文書より)。なお、本剤は乳糖水和物を使用しておらず、乳製品に過敏症の既往のある患者でも使用可能である。
④ ペラミビル 『ラピアクタ®』
剤型:静脈内投与製剤(点滴静注で用いる)
用法・用量:小児;通常、ペラミビルとして1 日1 回10 mg/kg を15 分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。一般的な成人量は1回300 mg。投与量の上限は、1 回量として600 mg までとする。重症例に対しては連日投与が可能。
投与対象:年齢制限は特にないが、低出生体重児、新生児の安全性は確立していない。
作用機序:キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤
⑤バロキサビル マルボキシル 『ゾフルーザ®』
剤型・規格:
錠剤:10 mg錠:素錠、20 mg錠:フィルムコーティング錠
顆粒:2%分包 (1包500 mg中に10 mg含有)
用法・用量:(添付文書より)
1. 通常、成人及び12歳以上の小児には、20 mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40 mg)を単回経口投与する。ただし、体重80 kg以上の患者には20 mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80 mg)を単回経口投与する。
2. 通常、12歳未満の小児には、以下の用量を単回経口投与する。
| 体重 |
用量 |
| 40 kg以上 |
20 mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40 mg) |
|
20 kg以上
40 kg未満
|
20 mg錠1錠又は顆粒2包(バロキサビル マルボキシルとして20 mg) |
|
10 kg以上
20 kg未満
|
10 mg錠1錠又は顆粒1包(バロキサビル マルボキシルとして10 mg) |
| 10kg未満 |
顆粒50mg/kg(バロキサビル マルボキシルとして1mg/kg)
|
使用上の注意事項
本剤は低出生体重児、新生児に対する安全性は確立しておらず、適切に経口投与できると判断された場合にのみ投与することと添付文書に記載されている。また、他の抗インフルエンザ薬と同様に、添付文書上の使用注意事項として、抗ウイルス薬の投与が全てのインフルエンザ患者に対しては必須ではないことを踏まえ、本剤の投与の必要性を慎重に検討すること、本剤の予防投与における有効性及び安全性は確立していないこと、細菌感染症に無効であること、投与の有無にかかわらず異常行動に注意を要することが記載されている。禁忌事項として、本剤に対して過敏症の既往のある者が挙げられ、慎重投与を要する対象として重度の肝障害のある者が挙げられている。
また、顆粒製剤の適応拡大に伴い添付文書に出血に関するリスクについて、下記が追記された。
「新生児や乳児ではビタミンK欠乏をきたすおそれがあり、本剤投与により出血傾向が発現するおそれがあるため、本剤投与前に国内ガイドラインに基づきビタミンK製剤が投与されていることを確認すること。ビタミンKの不足が予想される場合はビタミンK製剤をあらかじめ投与すること。また、患者の家族に対して、患者の状態を慎重に確認し、出血や意識障害等が認められた場合には医師に連絡するよう指導すること。」
なお、以前から出血については、注意事項として以下の記載がある。
出血が現れることがあるので、患者及びその家族に次を説明する:
1)血便、鼻出血、血尿等が現れた場合には医師に連絡する。
2)投与数日後にも現れることがある(相互作用)。
併用注意:ワルファリン[併用後にプロトロンビン時間が延長した報告があるので、併用する場合には、患者の状態を十分に観察するなど注意する(機序不明)]。
<ペラミビル投与設計と血中濃度の検討について>
①ペラミビル通常量(10 mg/kg)を単回投与、②ペラミビル2倍量(20 mg/kg)を単回投与、③ペラミビル通常量(10 mg/kg)を1日1回、連日 5 日間投与、④ペラミビル通常量(10 mg/kg)を1日2回(1日量として20 mg/kg)、連日 5 日間投与、⑤ペラミビル半量(5 mg/kg)を1日2回(1日量として10 mg/kg)、連日5日間投与、⑥ペラミビル 2 倍量(20 mg/kg) 1日1回、連日 5 日間投与した場合の投与後5日間の血液中および気道中濃度のシミュレーションを行い、H275Y変異株に対して効果が期待されるペラミビルの投与方法を検討した48。静注用抗ウイルス薬のPK/PDは% time above ICで表されるとの数理モデルがあることから、各投与シミュレーションにおける% time above ICを算出した。基準とする IC は、ペラミビルのH275Y変異株に対するIC50(28±7nM)49より、Mean+3SD の 50 nM、さらに、IC50を大きく上回る濃度である100 nM、200 nM、300 nM に設定した(表3)。
その結果、以下のことが明らかになった。
①通常量(10 mg/kg)を単回投与した場合、投与後速やかに血中および気道中の濃度が低下するため、有効な気道中濃度を維持できない。
②2倍量(20 mg/kg)を単回投与した場合、投与後速やかに血中および気道中の濃度が低下するため、有効な気道中濃度を維持できない。
③通常量(10 mg/kg)を1日1回、連日投与した場合、100 nM 以上の気道中濃度を維持するのは 80.5 時間(67.1 %)、300 nM 以上を維持するのは 58.7 時間(48.9 %)である。
④通常量(10 mg/kg)を 1日2回(1日量として20 mg/kg)、連日投与した場合、100 nM 以上の気道中濃度を維持するのは120時間(100 %)、300 nM 以上を維持するのは 117.4 時間(97.8 %)である。
⑤半量(5 mg/kg)を 1日2回(1日量として10 mg/kg)、連日投与した場合、100 nM以上の気道中濃度を維持するのは120時間(100 %)、300 nM 以上を維持するのは92.2時間(76.8 %)である。
⑥2 倍量(20 mg/kg)を 1日1回(1日量として20 mg/kg)、連日投与した場合、100 nM以上の気道中濃度を維持するのは91.5時間(76.3 %)、300 nM 以上を維持するのは70.4時間(58.7 %)である。
これらのシミュレーションの結果から、③の「10 mg/kg、1日1回、連日5日間投与」により、H275Y変異株に対する有効気道中濃度が概ね維持されると考えられる。より確実な効果を得るには、⑤の「5 mg/kg、1日2回、連日5日間投与」、さらには④の「10 mg/kg、1日2回、連日5日間投与」が良いと考えられるが、添付文書*には記載のない投与方法であるので、所属施設の倫理委員会等の承認と家族の同意が必要である。
*<小児>通常、ペラミビルとして1日1回10 mg/kgを15分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。投与量の上限は、1回量として600 mg までとする。
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