学会について

会長挨拶

2017年 年頭所感

 新年あけましておめでとうございます。

 本年も引き続き取り組んでいくべき多くの重要課題の中で、小児科医育成のための制度改革と国際舞台でのプレゼンス向上が、ともに「好機到来」という観点から節目を迎えていると感じております。また、これら2つの課題、すなわち卒後教育と国際貢献は、密接に関連し合っていると思います。

 医師の育成・生涯教育が、すべての学会にとって、その将来を左右する最重要課題であることは言うまでもありません。年齢、経験を問わず、すべての医師は、良い環境・良い指導者による優れた教育を受ける権利を有しています。一方、すべての医師は、教えることを通じて医学・医療の進歩に貢献する義務も有しています。このような権利と義務のバランスを最適化しつつ、小児科医の職場環境・就労条件を改善し、結果として小児医療提供体制の整備を進めることが、学会の大きなミッションと考えます。

 社会に求められ、信頼される小児科医を育てるには、単に達成目標(カリキュラム)を提示するに留まらず、どこで、だれと、どのような経験を積むかの道筋(プログラム)を示し、目標に向かって若手とベテランが共に研鑽を積むことが重要です。そのような観点から、日本小児科学会が他の学会に先駆け、平成29年度からプログラム制による専門医制度(暫定制度)をスタートさせたことは大きな舵取りとなったと考えております。研修環境、就労環境の改善、小児医療提供体制の整備を推進するための好機到来と思います。

 高度、安全な医療をすべての子どもたちに提供することは、発展途上国においても重要課題ですが、先進国以上にその実現は困難であります。発展途上国における医学教育・医師育成制度の充実は、小児医療先進国である我が国にとって、実現可能性の高い国際貢献のひとつです。例えば、小児科専門医育成カリキュラムの英語化・普及などはすぐにでも取り組める事業だと思います。本学会は、Global Pediatric Education Consortium(GPEC)など医学教育に関わる国際活動を人的、経済的に支援することにより、この分野で少なからず実績を上げてまいりました。

 国際小児科学会会長にBhutta先生が選任され、今後、活動の方向転換、さらなる活性化が起こると予想します。そのような折、廣瀬伸一理事(国際渉外委員会担当)が国際小児科学会執行役員に選任され、その運営において重責を担われることになりました。本学会が国際舞台でのプレゼンスをさらに高め、相応の国際貢献をしていくための好機到来と思います。

 好機を逃さず、本年も会員の皆様と共に邁進して参りたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

日本小児科学会会長就任のご挨拶

慶應義塾大学医学部小児科学教室 高橋 孝雄

 平成28 年5 月14 日をもって、日本小児科学会会長を拝命いたしました。この機会に、小児科学の使命、学会の使命について所感を述べ、就任のご挨拶とさせて頂きます。

 自然科学としての小児科学の本質は、からだが形作られる過程(成長)とそこに機能が宿る過程(発達)を科学することだと思います。発生学、遺伝学、分子生物学など基礎医学の長足の進歩が小児科学の自然科学としての魅力を大きく後押ししています。近年では、成長・発達の過程で生じる異常の原因を突き止め、新規治療法を開発、実際に臨床応用することも可能になって参りました。個体発生の時間軸に沿って、胎児期に始まり、新生児・乳児期から思春期、さらには若い成人世代の医学・医療に関わる、極めてユニークで魅力的な学問に進化を遂げました。基礎研究の成果を臨床現場に橋渡しすることを通じて、小児科学が医学全般の進歩、発展に果たす役割は極めて大きいものです。

 子どもを育むあらゆる環境の整備、すなわち家庭環境、教育環境、社会環境などをより良い方向へと導くことも小児科学の使命です。現代社会において、社会全体を見渡す広い視野を得たことにより、小児科学に与えられた新たな役割です。社会的に弱い立場にある子どもたちやその家族のために、小児科学はその人文社会科学としての力を発揮することが期待されています。近年、小児科学会が発信してきた提言のほとんどが、子どもを取り巻く環境の改善・整備を目指したものであったことは当然のことです。

 自然科学の一分野としても、人文社会科学の一分野としても、小児科学の使命とは、すべての子どもたちが、たとえそれが生まれつきのものであったとしても、あるいは環境要因によるものであったとしても、成長と発達の過程で直面する種々の困難を克服し、人として幸せな人生を手に入れることを手助けすることだと考えます。この困難な到達目標の達成に向けて、学会が引き続き発展し、着実に実績を上げていくよう、微力を尽くしたいと思います。

 小児科学会が、自然科学の担い手として発展を続け、人文社会科学の観点からその使命を全うする上で、非常に重要な変動が生じております。

 まずは、人口動態の変動です。ご存知の通り、我が国の少子化は先進国中でも顕著であり、高齢化とあいまって、医療政策、医療経済に大きな影響を及ぼしております。その中で、当学会のリーダーシップが期待される場面も変化していくと思います。公共事業や国費負担による具体的な育児支援策が比較的短期間での成果を期待されているのに対し、ご両親を支えることで子どもの幸せを担保すること、家庭をそっと寄り添うように見守っていくこと、すなわちソフトで継続的な子育て支援は我々小児科医の使命であると考えます。

 次に、疾病構造の変動です。ワクチン、抗菌薬の進歩・普及により感染症を中心とした急性疾患・重症疾患が減少する一方、先天性遺伝性希少疾患の重要性が増しております。小児科学の医療への応用範囲がさらに広がったと考えられます。AMED による未診断希少疾患の診断体制の整備事業など、医療政策にもそのような変化が反映されています。また、治療から予防へ、小児科医がリーダーシップを発揮すべき領域も広がって来ました。子どもの予防医療は、例えば乳幼児健診のように、年齢的な守備範囲は比較的狭いものの、年齢に応じたスクリーニング方法、介入方法の多彩さなど、成人における予防医療とは全く異なるものです。

 最後に、医師を取り巻く職場環境、教育環境が大きく変動しようとしています。初期臨床研修の必修化に続き、今、専門医制度が改革されようとしております。分野別・地域別医師偏在の解消、教育・研修環境の最適化、これらをどのように両立させていくか、待ったなしの重要課題です。医療提供体制と医師育成体制をともに充実させるために、国としての、医学会全体としての議論と並行して、小児科学・小児医療のエキスパート集団として集中的に考える良い機会を得たと思っております。

 医師には、自らが学んだこと、経験したことを誰かに伝える、すなわち他者を教育する義務があります。一方、すべての医師は、良い環境で優れた指導者から教育を受ける権利も有しているのです。このような義務と権利の最適バランスを探ることが、医師の職場環境を整備する上で必須です。教え、教えられることが学問の基本動作であるなら、教育・研修環境を整えることが学会の基本方針であるべきです。高度、安全な医療をすべての子どもたちに提供することが小児科医の使命であるなら、豊かな研修環境・職場環境をすべての小児科医に提供することが学会の使命であるべきです。

 学会を支える機能単位は委員会活動です。小児科学の発展、小児医療の進歩のために学会が具体的にできることは、小児科医一人ひとりの経験、アイデアを、委員会活動を通じて生かすことです。理事の使命が委員長と共に担当委員会の運営を行うことであるなら、会長の使命は委員会運営の統括と言えます。そこで、個々の問題や具体的な施策については担当委員会の今後の活動に委ねることとして、ここではあえて総論的な立場から見解を述べさせて頂きました。これから始まる2 年間、今まで以上に委員会機能が活性化するよう、工夫を凝らし、努力して参りたいと存じます。会員の皆様一人ひとりのお力に期待しております。

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