小児科学会からのお知らせ

インターネットなどにより売買される母乳に関する注意喚起

2015年7月26日

公益社団法人日本小児科学会

一般社団法人周産期・新生児医学会

一般社団法人新生児成育医学会

日本母乳哺育学会一般社団法人

 

 最近になって、インターネットで売買されていた母乳と称した商品に、希釈された人工乳が混入され、その上に細菌汚染が認められたという報道がありました1)。これを受けて厚生労働省2)や消費者庁3)からこの件に関する注意喚起が通達されております。諸外国でもこの報道に先んじて、①牛乳成分の混入、②細菌汚染などの問題点が指摘されております4),5)

 母乳を提供された方の医学的背景や搾乳方法、保管方法などの衛生管理状況が不明な第三者からの母乳については、感染症のリスク(様々な病原微生物註)の混入や増殖)や、衛生面のリスク(医薬品やその他の化学物質の混入)があります。欧米で確立されている「母乳バンク」のように厳格に管理された母乳を除き、インターネットで購入したなどの第三者からの母乳を乳幼児に与えることを推奨することはできません。

 乳児にとって母乳は最も適した栄養ではありますが、十分な支援によっても母親の母乳が得られない場合には、医療者の指導の下に人工乳を適切に利用することが勧められます。また、わが国において、医学的あるいは社会的に母乳が必要な子どもには厳格に管理された安全な母乳を提供できるシステムの確立と普及が望まれます。

 日本小児科学会会員におかれましては、厚生労働省2や消費者庁3からの通達にもある通り、そのリスクをきちんと妊産婦や乳幼児の養育者に対して注意喚起するようお願いします。


* 2015年8月5日に連名団体を追記いたしました。

 

1)毎日新聞 2015年7月3日

2)厚生労働省掲載ページ(インターネット等で販売される母乳に関する注意)

3)消費者庁掲載ページ(インターネット等で販売される母乳に関する注意)

4)Keim S. Cow’s Milk Contamination of Human Milk Purchased via the Internet.Pediatrics. doi: 10.1542/peds.2014-3554

5)Steele S. Risks of the unregulated market in human breast milk.BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h1485 (Published 24 March 2015)

註)母乳を介して感染する主な病原微生物に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)がある。

 

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