ガイドライン・提言

 

子どもへの性虐待に関する提言

2023年11月19日承認
2024年 1月25日掲載

 日本において、子どもへの性虐待は、社会的に軽んじられ、目を背けられてきました。日本での性虐待は統計上全虐待の1%です1)。この数字は諸外国に比べ著しく低く、日本には認知されていない子どもの性虐待は数多く存在し、そして、認知されないままおとなになった子どもたちも少なくないと考えられます。性虐待を受けた子どもの長年にわたる心の傷は、非常に深刻です。私達おとなは、性虐待の問題が身近に存在することを認識し、しっかりと目を向け、向き合っていくことが必要です。
 現在日本には子どもへの性虐待に「気づき」、「対応し」、「ケアする」3段階の仕組みが十分ではありません。一部で制度の見直しや創設等が検討され始めていますが、この3つの段階をバラバラではなく、一体として捉え、子どもを一人の権利の主体として、子どもを中心とした仕組みを作っていく必要があります。
 小児科医は、つねに子どもの味方として寄り添い、支え、子どもの声を代弁し、子どもの権利を守る子どもの総合医です。よって小児科医は虐待を始めとする様々な権利侵害を受けている子どもたちにとって、身近な相談相手となり、適切な対応を行い、ケアにつなげる役割を担います。
 日本小児科学会は以上のような背景から、今後も積極的に「子どもの味方」として、子どもの性虐待を含む子どもに関わる全ての権利侵害について発信すると同時に、全ての小児科医がこの問題に関して適切に対応できるよう、学会としても力を入れていきます。

※用語に関して
 現在、子どもへの不適切な性的接触は、性加害、性被害、性的いたずら、わいせつ行為、痴漢、子どもへの性搾取など様々な言葉で表現されています。法律上では、児童虐待の防止等に関する法律第2条において「性的虐待」という言葉で保護者の行う行為として定義されています。わたしたち小児科医は、年長者や立場が強い人たちから子どもが受ける性被害全体を、子どもの受ける行為として定義し“性虐待”と総称します。性虐待には、性行為、不適切な性的刺激、不適切な言動、性的な場面への巻き込みなども含まれます。そして、性虐待は、加害者の意図・被害者の認識の有無に関わらず成立します。
※提言に付随するキャッチコピーに関して
 今回の提言は小児科医及び一般向けですが、子ども達にも理解しやすいキャッチコピー
「大切にしている? 大切にされている? 私たちの“こころ”と“からだ”」を作成しました。また、キャッチコピーを基に、子ども達、かつての子ども達への性虐待問題に対する行動変容を目的としたポスターを作成予定です。

参考文献
1) 児童虐待防止対策.“令和4年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数”.こども家庭庁.https://www.cfa.go.jp/policies/jidougyakutai/,(参照2023-10-10)

子どもへの性虐待に関する提言(PDF)

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