ガイドライン・提言

 

2021年 12 月 27 日

解熱鎮痛剤アセトアミノフェン静注液の過量投与に関する注意喚起

日本小児科学会薬事委員会
 
 アセトアミノフェン静注液は、小児でも、解熱鎮痛を目的として使用される薬剤です。この薬剤で過量投与が報告されていますので、使用にあたっての注意喚起をいたします。
 アセトアミノフェン静注液(商品名「アセリオ静注液1000 mgバッグ」)は、小児でも適応を有する薬剤です。プラスチックバッグにアセトアミノフェン1000 mgが静注用溶液100 mLに入っている製剤(10 mg/mLの濃度)です。
 小児での用量は、
●2歳以上の幼児および小児:体重1 kgあたり10~15 mgを15分かけて静脈内投与
●乳児および2歳未満の幼児:体重1 kgあたり7.5 mgを15分かけて静脈内投与
と添付文書に記されています。また、
●低出生体重児、新生児および3か月未満の乳児に対する使用経験が少なく、安全性が確立していない
という記載も添付文書にあります。
 この薬剤の過量投与が複数報告されております。
 日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業第55回報告書(1)では、小児に対する薬剤に関連した事例について検討を行い、投与量間違いで報告された薬剤として24事例を報告しています。その中にアセトアミノフェン静注液4例が含まれ、うち1例では「指示の誤認:mgmLの見間違い」として、アセトアミノフェン静注液の指示量60 mgを間違えた薬剤量60 mL(600 mg)と10倍量が投与された事例が示されています。
 また、単一施設からの報告(2)として、病院内のインシデント報告例の分析から10症例のアセトアミノフェン静注液の過量投与が示されています。このうち、3症例は10倍もしくは10倍近くの過量投与となっています。発生状況の分析として、すでに報告のあるmgとmLという単位の誤認に加え、指示量以上の用量を輸液ポンプに設定し結果的に指示量以上が投与されてしまった事例、さらには、2歳未満の幼児に対して2歳以上の幼児の用量が投与された例が示されています。成人患者では全量の1000 mgが投与されたとしても、10倍の過量にはなったりしませんが、体格の小さい小児患者では容易に10倍量を含む過量投与につながりうることが示されています。この報告では、重篤な副作用の発生は報告されていませんが、アセトアミノフェン中毒による重篤な肝不全の発症は広く知られるところ(3)であり、投与においては慎重な対応が求められます。
 アセトアミノフェン静注液の投与にあたっては、上記のような過量投与が報告されている状況を鑑み、本学会として会員皆様に注意喚起を行う次第です。
 
文献
1.日本医療機能評価機構医療事故防止部.医療事故情報収集等事業第55回報告書(2018年7月~9月)https://www.med-safe.jp/pdf/report_55.pdf
2.土金真人、壷井伯彦、西村奈穂、他.小児周産期専門施設における静注アセトアミノフェン過量投与10例の検討.日集中医誌2021;28:547-8.
3.Chayanupatkul M, Schiano TD. Acute liver failure secondary to drug-induced liver injury. Clin Liver Dis 2020;24:75-87.

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