各種活動

 

2023年12月11日
2024年3月24日改訂
2025年12月15日改訂
 

乾燥弱毒生麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種率の現状と課題について

全文PDF
会員、医療関係者 各位
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
 
 
 世界的に麻疹が流行しており、日本でも感染の拡大に注意が必要です。
 乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)接種率が低下しています。
 昨年度、MRワクチンの供給が一時滞り、接種できなかった時期があったことから、
 MRワクチンの定期接種の機会を逃した子どもに対し、2025年4月よりMRワクチンの定期接種期間が2年間延長されています1)ので、早めに接種しましょう。

【麻疹、風疹について】

 麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスにより引き起こされる、感染力の非常に強い(空気感染する)急性の全身感染症です。肺炎を合併したり、脳炎を発症して後遺症が残ったり、死亡することがあります。日本は2015年3月にWHOによって麻疹が国内から排除されたと認定されました。排除認定後は、海外からの輸入例と、輸入例からの感染事例が散発的に認められています。予防接種未完了の小児だけでなく、予防接種歴のある若年者にも感染が拡がることが問題となっています(図3、4参照、後述)。
ただし、予防接種歴が確認されている人は、症状が軽い修飾麻疹のことが多く、周りへの感染力が弱いことが報告されています2)。1歳以上で2回の予防接種の記録を確認しておくことが大切です 。
 風疹は、風疹ウイルスにより引き起こされる急性の発疹性感染症です。風疹も局地的流行や小流行が散発的に認められています。一般に症状は軽症ですが、稀に脳炎や血小板減少性紫斑病を発症します。また、風疹に対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、難聴や白内障、心臓の病気になる先天性風疹症候群の子どもが生まれてくる可能性が高くなります。日本は 2025 年 9 月に WHO によって風疹が国内から排除されたと認定されました3)が、引き続き定期接種による予防が必要です。

【MRワクチン接種率の現状と課題】

 MRワクチンは、第1期として生後12〜24か月未満の者に、第2期として5歳以上7歳未満で小学校就学前1年間の者に、それぞれ1回ずつ定期接種として接種されます。
 第1期の接種率は、2021 年度には93.5%に低下、2022 年度に95.4%と上昇しましたが95%に達しない地域が数多く認められ、2023年度本学会より接種率向上につき提言をおこないました4)
 その後、2023年度は94.9%と横ばいでしたが、2024年度は92.7%と著明に低下し、  1県を除く全国で95%未満となり、90%を切る地域も複数認めています(図1)。麻疹に対する集団免疫を維持し、日本の麻疹排除状態を維持するためには、少なくとも第1期の接種率を全国的に95%以上に保つ必要があります。
 第2期の接種率は、第1期に比べ低い状況が続いており、2024 年度以降にはすべての地域で95%未満となり、90%を切る地域が増加しています(図2)。第2期の接種は、長期間有効な免疫を確実につけるために必要であり、第1期と同様に95%以上の接種率を目指す必要があります。
 麻疹や風疹が、輸入感染症として国内に持ち込まれるリスクは常に存在しています。このままでは、麻疹や風疹に対する免疫を持たない人が増え、麻疹や風疹が国内で流行してしまうことが危惧されます。MRワクチンの定期予防接種未完了の小児に気づいた場合は、かかりつけ医に相談し、早めに接種を受けるように保護者に説明することが大切です。

【2025年以降の麻疹の発生状況】(図3,図4)

 世界的に麻疹が流行しており、日本でも2025年は第39週までに229例が報告されています。これは過去8年間で2番目に多い報告数です。引き続き、今後の感染拡大に注意が必要です。普段の診療のなかでもワクチン接種歴を確認し、必要な場合は接種を検討してください。また、麻疹が疑われる際には、公共交通機関の利用を控え、事前に医療機関に連絡した上で受診することなど普段から情報提供しておくことが重要です。
2024 年度のMRワクチン接種率の低下の一因は、MRワクチンの出荷量調整(限定出荷)にあります。2025(令和7)年3月、 2024(令和6)年度の麻疹および風疹の第1期・第2期・第5期の定期接種の対象者について、 MRワクチンの偏在等が生じたことを理由にワクチンの接種ができなかったと市町村長が認める者は、2年間〔2027(令和9)年3月31日まで〕、接種対象期間を越えた場合であっても定期接種として実施できる事務連絡が発出されています。対象者への接種勧奨をお願いします。
 
MRワクチン接種対象者
〇 1歳児(第1期定期接種対象)、2024年度に接種の機会を逃した児
〇 5歳以上7歳未満で小学校入学前1年間の幼児(第2期定期接種対象:当該年度の3月31日まで)、2024年度に接種の機会を逃した児
〇 2歳以上で未接種未罹患の小児(第2期定期接種対象、それ以外の人は任意接種)
〇 麻疹患者と空間を共有したり、同じ保育所・幼稚園・学校・塾・職場等で麻疹患者の発生があった未接種未罹患・1回接種・接種歴罹患歴不明の人
〇 海外渡航前で未接種未罹患・1回接種・接種歴罹患歴不明の人(渡航1か月前までに抗体検査、陰性の場合は接種後の渡航検討)
 
 なお、第 5 期風疹定期接種対象の男性(2025(令和7)年度に 46〜63 歳になる男性)については、2025年3月31日までに抗体検査を受検し陰性であり、ワクチンの偏在等に起因して接種対象期間内に定期の予防接種を受けられなかった方は、特例措置の対象となります。
 
※図は全文PDFからご確認ください。

参考文献

1)厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課. 麻しん及び風しんの定期の予防接種に係る対応について. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001440529.pdf (参照2025-11-11)

2)Komabayashi K, Seto J, Tanaka S, et al. The Largest Measles Outbreak, Including 38 Modified Measles and 22 Typical Measles Cases in Its Elimination Era in Yamagata, Japan, 2017. Jpn J Infect Dis. 2018; 71:413-8.

3)厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課. 世界保健機関西太平洋地域事務局により日本の風しんの排除が認定されました. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001569982.pdf(参照2025-11-11)

4)日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会. 乾燥弱毒生麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種率の現状と課題について(2023年12月11日、2024年3月24日改訂). 日本小児科学会.https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240401_MR_wakuchin.pdf(参照2025-11-11)

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