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小児における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の現状と感染対策についての見解

2021年5月20日
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
 
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<小児のCOVID-19の現状>
  1. 新型コロナウイルス感染症の流行第4波(2021年3月以降)では、COVID-19新規患者数が増加していますが、小児患者の割合はわずかな増加に留まっています。
  2. 子どもが変異新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)(以下、変異ウイルス)に感染した場合も多くが無症状から軽症で経過しています。
  3. 小児COVID-19患者の大部分は成人患者からの感染であり、第4波に入ってからも変化していません。
<学校等における感染対策>
  1. 基本的な感染対策(3密回避、適切なマスク着用、手洗いなど)の徹底が重要です。
  2. 臨時休業は子どもの健やかな学びの保障や心身に影響をおよぼすため、地域一斉ではなく感染状況に応じた柔軟な対応が望まれます。

はじめに

 2020年の新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease:COVID-19)のパンデミックが続く中、2020年後半から海外各地で検出されるようになった変異ウイルスは日本国内でも検出されています。2021年4月現在、変異ウイルスの検出割合が増加し、患者数が急増しています。従来ウイルスは小児への感染が少なく、小児集団での小規模感染者集団(クラスター)の発生は極めて稀でしたが、成人の変異ウイルス感染者の増加に伴い、小児集団でのクラスター発生も散見されるようになってきました。そこで、日本小児科学会では、2021年4月現在のCOVID-19小児患者の発生および変異ウイルスの動向とともに、学校等における感染対策について見解をまとめました。

1.小児感染者の発生動向

 2021年3月上旬から、日本国内の新規感染者数が急激に増加し、それに伴って小児の感染者数も増加しています。しかし、その割合はわずかな増加に留まっています。
 厚生労働省ホームページに掲載されている年齢別感染者数(2021年5月5日時点)では、総感染者数602,190人のうち10歳未満は18,642人(3.1%)、10-19歳は42,333人(7.0%)と報告されています(図1)。年齢別人口分布で補正しても、小児感染者数は成人と比べ少ないことが分かっています。一方第4波を迎え、総感染者数の急増とともに全体に占める小児感染者数の割合はわずかに増加傾向にあり、今後の動向を注意深く見守っていく必要があります。死亡者数については全体で9,479人まで増加しましたが、第4波以降も10歳未満および10-19歳は0人です[1]
 
       図1 年齢階級別陽性者数
 
 日本小児科学会の「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)症例の臨床経過に関する検討」[2]によると、2021年5月11日時点で小児患者の先行感染者は、家族が77%、学校関係者が6%、幼稚園・保育所関係者が6%、家庭教師・塾関係者が1%と約80%が家庭内での感染です。さらに、家庭内感染のうち、両親や祖父母が先行感染者であった割合が約93%と、小児患者の大部分が成人からの感染であることが示されています。これらは第4波以降も変化ありません。小児の感染予防には成人が家庭内に持ち込まないことが重要です。
 文部科学省による児童生徒の感染経路の動向調査[3]においても、昨年6~12月と今年に入ってからの1~4月の月別のデータには大きな変動はなく、小中学校においては家庭内感染が多数を占めていることがわかります(図2)。
 
       図2 児童生徒の感染経路の動向調査

2.新型コロナウイルス(SARS-CoV-2):変異ウイルスについて

 2020年秋以降、世界的に複数の変異ウイルスが報告されています。感染・伝播のしやすさや、感染した場合の重症度、そして感染やワクチンにより獲得された免疫の効果に影響を与える可能性のある遺伝子変異を持つ変異ウイルスは、懸念される変異ウイルス(Variants of Concern; VOC)として注意が必要です[4]
 英国から急速に拡大したVOC-202012/01は、感染性に影響があるとされるN501Y変異を持ち、2次感染率の増加が示唆されています[5]。さらにN501Y変異に加えて抗原性に影響を与える可能性があるE484K変異を有する501Y.V2、501Y.V3も、南アフリカおよびブラジルから世界の国々に広がりつつあり、ワクチン有効性への影響につき検討が進められています。またインドからはL452R変異(一部はさらにE484Q変異)を有し、感染性の増強や免疫逃避が危惧されるB.1.617系統の変異ウイルスが、日本を含む世界各国に広がりつつあります。
 日本国内では2021年3月下旬からSARS-CoV-2感染者が再び増加し、第4波を迎えています。今回の特徴として変異ウイルスの割合が増加し、全47都道府県で確認されています。中でも英国型の変異ウイルス(VOC-202012/01)は感染者のほとんどを占めています[6]。大阪府での変異ウイルス感染者の割合は、2021年3月中旬の34%から2021年4月中旬は78%に増加しています。東京都での割合も2021年3月中旬の1%から2021年4月中旬は39%と大きく増加していますが、変異ウイルスの割合は地域差を認めています。
 変異ウイルスの感染力(他人へ感染させる力)は、子どもだけではなく全年齢において、従来ウイルスよりも増強していると報告されています[7]。国内でも子どもの変異ウイルス感染者の集団発生が報告されていますが、現時点で変異ウイルスが子どもに感染した場合も、従来ウイルスより重症化する可能性を示す証拠はなく、多くが無症状から軽症で経過しています。

3.学校等における感染対策

 2021年4月23日に発出された3回目の緊急事態宣言に伴い、文部科学省は「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を変更し[8]、「学校等におけるCOVID-19への対応に関する留意事項」を公表しました[9]
 日本小児科学会はこれらの基本方針を支持し、特に以下の点が重要と考えます。
1)感染対策の徹底
・各学校等において感染対策についての点検を行い、基本的な感染対策(3密回避、適切なマスク着用、手洗いなど)を徹底すること。
・緊急事態宣言の対象区域に属する地域においては、感染状況に応じて、学校教育活動や部活動において行われる活動のうち「感染対策を講じてもなお感染リスクが高い活動」(註)を一時的に制限するなど、感染対策を強化すること。
(註)感染対策を講じてもなお感染リスクが高い活動:児童生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワーク等及び至近距離で一斉に大きな声で話す活動など。[9]別紙1
・教職員は多数の児童生徒等に接する業務であることから、教職員が発熱等の風邪症状がある時には休みを取り、積極的に受診しやすい環境を整えること。
2)変異ウイルスの拡大への対応
・現時点では、変異ウイルスに感染した児童生徒が重症化しやすい知見はなく、死亡例も報告されていないが、変異ウイルスは従来ウイルスと比べ感染しやすい可能性があるため、強い危機意識をもって対応していくこと。
・変異ウイルスへの対策にも重要なことは基本的な感染対策を徹底していくこと。
3)学校教育活動の継続
・新型コロナウイルス感染症の流行がおよぼす子どもたちの心身への影響に配慮し、きめ細やかに対応すること。
・最新の文部科学省「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~」[3]を参考にして、地域一斉の臨時休業を行うのではなく、地域の感染状況に応じて学びの継続に積極的に取り組むこと。
・院内学級等の特別支援においても、適切な対策のもと教育の機会を確保すること[10]

参考文献

  1. 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について.2021年5月11日現在URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
  2. 公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY:「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の 臨床経過に関する検討」に基づく早期公開情報について|2021年5月11日現在URL:http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=350
  3. 文部科学省:学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(2021.4.28 Ver.6).2021年5月11日現在URL:https://www.mext.go.jp/content/20210428-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf
  4. World Health Organization: COVID-19 Weekly Epidemiological Update. 25 February 2021. 2021年5月11日現在URL: https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-weekly-epidemiological-update
  5. 国立感染症研究所: 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について(第8報). 2021年4月7日. 2021年5月11日現在URL: https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10280-covid19-41.html
  6. 国立感染症研究所: 新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応. 第32回厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料. 2021年4月27日. 2021年5月11日現在URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00256.html
  7. Public Health England: Investigation of novel SARS-CoV-2 variant: Variant of Concern. 2021年5月11日現在URL:https://www.gov.uk/government/publications/investigation-of-novel-sars-cov-2-variant-variant-of-concern-20201201
  8. 文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課:新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針:令和2年3月28日(令和3年5月7日変更)(別紙3).2021年5月11日現在URL:https://www.mext.go.jp/content/20210517-mxt_kouhou01-000004520_2.pdf
  9. 文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課事務連絡:新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を踏まえた小学校、中学校及び高等学校等における新型コロナウイルス感染症への対応に関する留意事項について(通知)令和3年4月23日.2021年5月11日現在URL:https://www.mext.go.jp/content/20210423-mxt_kouhou02-000004520_1.pdf
  10. 文部科学省初等中等教育局通知:特別支援学校等における新型コロナウイルス感染症対策に関する考え方と取組について:令和2年6月19日.2021年5月11日現在URL:https://www.mext.go.jp/content/20200619-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf
 

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