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(登録:2008.1.31)
 

日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解(3)
 

平成20年1月27日
社団法人日本小児科学会


 日本小児科学会はインフルエンザにおけるタミフルの使用に関して平成17年11月30日および平成18年3月25日に予防接種・感染対策委員会にて討議した結果の見解を表明している。
 その後厚生労働科学研究によって「インフルエンザに伴なう随伴症状の発現状況に関する調査研究班(主任研究者・横田俊平教授)」が構成されたことにより、さらなる見解についてはそれらの研究成果を見守っていたところであるが、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 安全対策調査会(いわゆルタミフル調査会)が平成19年12月25日に開催され開催され、横田班を受けたかたちの廣田班による分析を含め、基礎、臨床ワーキンググループ(WG)におけるそれまでの調査成績などが報告された
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html)ので、ここにその概要を紹介し、日本小児科学会としての見解を述べる。

 調査会は、検討結果基礎WG及び臨床WGから非臨床試験(動物実験等)、臨床試験、疫学調査等の結果について報告を受け、現時点において、直ちにタミフルの服用と異常な行動及び突然死との因果関係を示唆するような結果は得られていないが、特に、疫学調査及び臨床試験については、十分かつ慎重な検討や分析を進め、可及的速やかに臨床WG及び当調査会に報告することが適当である、としている。
 非臨床試験では、バインディング・アッセイの結果、臨床用量投与時に推定されるタミフルの未変化体及び活性代謝物の脳中濃度では多くの中枢性の受容体やイオンチャネル系への作用を持たないとされたこと等、臨床試験では、睡眠検査室試験の中間解析によるとタミフルについて睡眠異常を起こさないこと、心電図検査において著明な変化が認められないことなどが確認されたこと等が報告された。また疫学調査では、インフルエンザの経過中、重症異常行動がみられた割合は、タミフル服用群で60%と若干高いものの、非服用群での発生は38%にみられており(2%は不明)、いずれも10歳前後の男児に多かったと報告された。

 調査会は、引き続き基礎WG及び臨床WGにおいて、現在実施中又は解析中の非臨床試験、臨床試験及び疫学調査等の結果を含めた更なる調査検討を進め、できるだけ早期に最終的な結論の取りまとめを行うこととする、とし、これまでにタミフルについて現在講じられている以下の措置(注)は、現在も妥当であり、引き続き医療関係者、患者・家族等に対し注意喚起を図ることが適当である、としている。

(注)平成19年3月20日の緊急安全性情報(厚生労働省):10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。
 また、小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、(1)異常行動の発現のおそれがあること、(2)自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと。
 なお、インフルエンザ脳症等によっても、同様の症状が現れるとの報告があるので、上記と同様の説明を行うこと。

 日本小児科学会は、事実関係はまだ明確になってはいないものの慎重を期して一時的に使用を控えるとの厚生労働省の判断を受け入れ、「現在流行中のインフルエンザの10歳代患者に対するタミフルの使用は、ハイリスク群などへの治療を除き原則として当面差し控える。」としたい。
 また、調査会および異常行動の情報収集に関する研関する研究班(主任研究者・岡部信彦)の調査では、抗インフルエンザ薬を使用していないインフルエンザ患者にも異常行動がみられることが改めて確認されており、インフルエンザ罹患時には回復まで十分経過観察する必要性を以下のように注意喚起するものである。

*インフルエンザにともなって異常行動がでることについてはこれまでも指摘されており、今回の研究班成績(岡部班)でもそれが改めて示されており、タミフル使用制限によって異常行動がまったくなくなるとは考えられない。したがってタミフルなどの服用の有無にかかわらず、特に小児や未成年の(ことに10歳を中心とした前後5歳くらいの男児)インフルエンザについては、症状が出てから2日間程度は、言動、行動等に注意し、その経過をよく見るよう保護者に説明すべきである。

 インフルエンザとタミフル及びリレンザ等の使用、そして異常行動との因果関係については、さらなる科学的な調査研究の継続が必要であり、日本小児科学会は引き続き本事例の科学的な解明に積極的に協力する方針であり、会員ならびに関係機関のご協力をお願いする次第である。

追記:厚生労働科学研究「インフルエンザ様疾患罹患時の異常行動の情報収集に関する研関する研究班(主任研究者・岡部信彦)では、重症異常行動については全医師に、軽症異常行動についてはインフルエンザ定点の医師に、情報を提供してもらいことを呼びかけている(情報提供先:国立感染症研究所感症情報センター http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/search.html)ので、学会員は是非ご協力頂きたい。

以上

参考(2007.03.27登録に追加):

  • 日本小児科学会HP
    学会からの提言主張(登録:05.11.30, 登録:07.03.27)日本小児科学会におけるタミフルに係わる事項についての見解
  • 第39回日本小児感染症学会学術集会抄録 P.112-114 演題 B-7~B.12
  • 厚生労働省ホームページ 医薬品等安全対策部会安全対策調査会 平成19年12月25日開催 資料等
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-7.html
  • 同上 検討結果について
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1225-8.html
    横田俊平他、インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第1報 薬剤使用および臨床症状発現の臨床的検討 日児誌 111(12): 1545-1558, 2007
    藤田利治他、インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究 第2報 薬剤使用と臨床症状発現との関連に付いての統計解析 日児誌111(12): 1559-1567, 2007

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