各種活動

 

(登録:2009.4.6)


乳幼児向け7価肺炎球菌ワクチン早期審査の要望

 

平成21年2月15日

厚生労働省医薬食品局審査管理課 中垣俊郎課長殿
厚生労働省健康局結核感染症課 梅田珠美課長殿
独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査第二部 鹿野真弓部長殿

日本小児科学会会長 横田俊平
日本小児保健協会会長 衛藤 隆
日本小児科医会会長 保科 清

 

 肺炎球菌(Streptcoccus pnemoniae)による感染症は、世界的に乳幼児および小児における重症疾患として知られており、菌血症性肺炎、菌血症、髄膜炎は、侵襲性肺炎球菌性疾患の中で普遍的かつ重症な病態疾患であり死亡の主要原因ともなる。WHOも、肺炎球菌感染症を予防対策の必要性で重要な疾患として位置づけており、SAGE Meeting (Strategy Advisory Group of Expert for Immunization)でも常に重要課題としてあげられている。

 本邦においても、肺炎球菌は、小児における肺炎、敗血症、細菌性髄膜炎、中耳炎、副鼻腔炎などの主要起炎菌である。中でも細菌性髄膜炎の起炎菌としては、b型インフルエンザ菌(Hib)に次いで報告例が多い。肺炎球菌性髄膜炎の発症頻度の正確な数字はわが国の発生動向調査にないが、インフルエンザ菌性髄膜炎の約1/4~1/3と推察できるところから5歳未満人口10万人あたり2~3前後、年間200人前後と推定される。また肺炎球菌は病原性が強く、全身感染症の場合には症状の進行が早く、適切な治療を行ってもその予後は不良であり、死亡例、後遺症残存例は少なくなく、小児科医にとっては警戒すべき感染症の代表的なものである。
 肺炎球菌感染症には抗生剤が適応になることはいうまでもないが、世界的に肺炎球菌のペニシリン低感受性株・耐性株は増加傾向にあり、近年では耐性株と低感受性株の割合はほぼ同じであり、双方あわせて臨床分離株の約65%を占めている。生方らによる耐性遺伝子の有無による肺炎球菌の割合に関する近年の報告では、ペニシリン感受性肺炎球菌は15.5%であるのに対し、ペニシリン低感受性肺炎球菌およびペニシリン耐性肺炎球菌の割合は、それぞれ36.2%および48.3%であるとしている。また今日、肺炎球菌臨床分離株は、ペニシリン以外のβラクタム系、マクロライド系、セフェム系抗菌薬などが用いられているが、これらの抗菌薬に非感受性を示す割合は、それぞれ約65%、80%、50~60%であると報告されている。

 重症疾患であり、かつ適切な治療薬剤の選択が困難となりつつある肺炎球菌に対しては予防が重要であるが、従来の23価ワクチンは乳幼児に対して免疫原性を有せず効果は低い。一方現在開発されたジフテリア毒素関連交差反応物質と結合させたポリサッカライド7価ワクチンは23価型と異なり乳幼児に対して免疫原性が高い。米国において2000年に本ワクチンが承認されて以降1年間に、米国における侵襲性肺炎球菌性疾患は、人口10万あたり24.3例から17.3例に減少したと報告されている。2001年には、2歳以下における7価ワクチン関連肺炎球菌感染症は78~50%低下し、2003年5歳未満の小児の同じく関連血清型侵襲性肺炎球菌性疾患は94%低下したと報告されている。また、多くの小児に対し免疫を賦与することによってherd immunityが高まり、高齢者における罹患数も減少したとの報告もある

 わが国においても7価型肺炎球菌ワクチン(商品名:プレベナー)は、ワイス株式会社により2007年9月26日に承認申請が出され、2008年1月9日には優先審査品目となっているが、その後の進捗がみられていないことが、日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会がワイス社に対して行ったヒヤリングで判明した。

 肺炎球菌感染症はわが国においても小児ことに乳幼児に対して重要な疾患であり、なおかつ治療に難渋し、適切な抗菌薬の選択が困難である。7価型肺炎球菌ワクチンによる予防は、接種を受けた小児本人の件項を守るだけではなく、高齢者の感染症予防にもつながり、また保護者等への負担の軽減や医療経済性の観点からも重要である。日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児科医会は、7価肺炎球菌ワクチンを小児にとって重要なワクチンであると位置づけ、本ワクチンの審査を厳正にかつ停滞することなく進めて頂くよう要望する。

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