ガイドライン・提言

 

(登録:2001.07.30)

 

(社)日本小児科学会は、(社)日本小児保健協会、(社)日本小児科医会と三者で下記要望書を関係機関へ提出しましたのでお知らせします.

 


 

平成13年7月17日

厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 殿
厚生労働省医政局長 殿


 
社団法人日本小児科学会会長    柳澤正義
社団法人日本小児保健協会会長  前川喜平 
  社団法人日本小児科医会会長   天野 曄 
 

小児救急医療体制整備に関する要望

 

 われわれは、わが国の小児救急医療の現状とその改善策について検討を重ねてきましたが、少子化が進む中で小児救急医療事業が重要な育児支援策であることを強く認識するとともに、早急にその基盤整備に取り組まなければならないという危機感を強く持たざるをえなくなりました.
 このため、本事業を遂行するにあたり基本的柱となる事項を要望致します.

1)小児初期救急医療体制の整備
 核家族化の中で育児に悩む親が増えるとともに、小児救急外来患者が増えている.さらに子どもの病気は急性疾患が多く、病状が急激に変化するため、何時でも何処でも小児科専門医による医療が求められている.このため地域特性を考えて、人口30万人から100万人に1カ所の小児初期救急を円滑に行える医療センターを設置する.
 小児初期救急医療センターは、地域の小児科開業医が参画することでその主なマンパワーを確保し、すべての休日、夜間外来診療に従事し、必要なら何時でも患者を搬送できる 2 次小児救急医療施設と連携可能な機能を持つことが必要である.
 センターの設置場所は新たに設けるも良し、既存の後方支援病院の中に設けるのも連携やマンパワー、医療設備の相互利用の点を考えるとより具体性があるともいえる.

2)小児救急医療に対する社会保険診療報酬上の改善
 小児科が経済的に構造不況に陥っているといわれて久しい.主な原因は、小児科医の医療技術を正当に評価していないわが国の現在の診療報酬制度にあるといっても過言ではない.
 このため、小児の時間外診療に対する加算を大幅に増やすことと、小児救急医療を真面目に実施している医療機関を特別認定し、その経営を安定化するための国の特別援助または措置が求められる.

3)小児2次・3次救急医療体制の整備
 小児救急医療は専門性が求められるとともに、初期医療から高度医療までを1カ所で行える完結医療への要求が高い.このため、各医療機関の連携をより密にするとともに、マンパワーや空床確保等への国の財政的措置が必要である.

4)小児科勤務医の増員・確保と労働内容の改善
 現在わが国では、小児時間外患者が特定の病院に集中する傾向がある.このため小児科勤務医の労働条件は過酷になり、小児科を希望する医師が明るい未来を持てない現状がある.これを放置すると、小児科医のマンパワーは不足し小児救急医療にもさらに大きな影響を与えることになる.これを改善するためには、小児科勤務医の増員・確保を十分した上で、過度な時間外労働を規制することも必要である.さらに、地域医療活動をより円滑にするために、公務員法で規制されている国立または自治体病院小児科医の活動制限を、小児救急を含む母子保健事業等に限って撤廃されることを強く要望する.

5)女性小児科医師が働きやすい環境整備
 小児科医における女性の比率は近年ますます上昇している.このため女性医師の力が十分発揮できる環境を整備しなければ小児救急も含めた小児医療は成り立たない.このためには子育て支援(産前産後の休業や育児休業の確保、保育施設の確保・充実、0歳児保育、延長保育・夜間保育・病後児保育)が必要である.さらに、育児休業を終えたあと再就職を希望する場合にはその機会を与え、職場復帰が支障なくできる環境整備が必須である.

 

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