ガイドライン・提言

 

(登録:2004.08.20)

日本小児科学会栄養委員会「朝食は毎日食べよう」

平成15年度栄養委員会
日本小児科学会栄養委員会
委員長   玉井 浩
副委員長  武田英二
専門医員 朝山光太郎
小池通夫
児玉浩子
清水俊明
戸谷誠之
南里清一郎

 我が国の子どもを取り巻く「食」の環境は高度成長時代を経て大きく変化している。食事の問題も単に高エネルギー・高脂肪食という肥満に関連する栄養の問題に留まらず、朝食欠食、夜食、孤食あるいはゲーム・インターネット、夜更かし、睡眠不足など現代社会の生活習慣に子どもたちが巻き込まれた結果というべき複雑なからみ合いの中に置かれた様相として大きくクローズアップされてきた。とくに「子どもの朝食欠食」の問題は1日の始まりとして学校教育現場でも重要な課題として取り上げられるに至った。そこで、当委員会では近年の、日本31件、諸外国421件の朝食に関連する研究論文のすべてについて調査を行い、次のような問題点を明らかにした。

 諸外国の報告からその内容を吟味し解析に耐える対象として60件が残された。その対象はほとんどが低所得者層あるいはその結果として栄養、発育に大きな問題をかかえた者で通学さえ困難な例を多く含むものであった。その欠食率は高く、30%の例もみられた。いわゆるSBP (school breakfast program) という貧困小児に対し学校で朝食給食を行う事業によってその改善をはかることができたという主旨の報告が多かった。日本からの報告の解析対象は英文で日本の事情を述べたものも含めわずか13件にすぎなかった。しかも朝食欠食率は極めて低く、また朝食も与えられないような貧困例ではない。これらは諸外国のそれとはまったく逆で、朝食欠食の原因は夜型生活、夜食など生活習慣の乱れに起因するという報告であった。このように今回の調査は諸外国の報告データ結論だけを現代の日本の状況に当てはめることの危険性を浮きぼりにした結果となった。日本の朝食欠食の現状として、肥満児は非肥満児に比し高率という報告があった。しかし生活習慣上多くの問題点をかかえる日本の現状を考慮すると、肥満解消の目的には朝食を食べるべきだというふうな短絡した指導では、朝食欠食を改めさせることはできないであろう。複雑にからみ合った多くの社会生活・生活習慣の悪癖を改めること、朝食欠食をその一つとして捉えることが重要という結果であった。すなわち、朝食欠食を含めた食習慣と同時に、その原因となる遅い就寝時刻、長いテレビ/ゲーム視聴時間、睡眠不足、運動不足などの生活習慣の改善が朝食欠食ひいては肥満解消のためには必須であることを示している。
 日本の朝食欠食には経済的原因は関係ない。しかし外国と違う日本独自の小児の朝食欠食の原因を探り、また今後の動向を注意深く監視する必要がある。朝食欠食が、小児の学習面、行動面に悪い影響を与えることは確かに考えられるため、注意をする必要がある。

 

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