ガイドライン・提言

 

(登録:2007.09.21)
 

産科医療補償制度に関する意見書
 

平成19年8月3日

財団法人日本医療機能評価機構
理事長 坪井 栄孝 殿

産科医療補償制度運営組織準備委員会
委員長 近藤 純五郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄

 現在、貴委員会・機構に於いて、精力的に検討がなされている「産科医療補償制度」につきましては、各種報道や日本医療機能評価機構のホームページから伺ってきました。これは、脳性麻痺で種々のハンディーを背負われている子ども達や家族の経済的救済になるだけでなく、無用な訴訟を減らす効果も期待出来、社会的に大変有意義な事業になることと期待しております。
 一方、想定されている補償対象から早産・低出生体重児を除外するという点に関しましては、日本小児科学会といたしまして、次の理由により、周産期医療および新生児医療への影響を無視しがたいとの観点から、深い憂慮の念を表明せざるをえません。

一.どの程度の早産・低出生体重児をもって補償の対象外とするのかという線引きに合理的説明を与える、あるいは納得を得ることは困難です。
一.早産・低出生体重児の分娩等、ハイリスク妊産婦・新生児を主として取り扱っている全国の周産期医療施設の産科医師や小児科(新生児科)医師にとっては、むしろ訴訟の増加の恐れが高まります。
一.脳性麻痺児の平等な患者救済に繋がらないのみならず、不平等を助長することになります。

 無過失であって周産期に起因する脳性麻痺は、早産・低出生体重児と正期産児でほぼ同数程度発生しており、等しく無過失補償の対象とするべきです。無過失による低出生体重児や早産児の脳性麻痺を補償対象に加えたとしても補償対象は倍増する程度です。日本小児科学会としては、一定の出生体重や在胎期間を満たさない場合を一律に補償対象から除外するのではなく、むしろ脳性麻痺の重症度によって補償対象を制限すること等の方が、社会的にみても公平な救済となり、患者・家族の理解も得やすく、無用な周産期医療訴訟を抑制する効果も期待出来ると考えております。
 ハイリスク妊娠・分娩の医療に日夜献身的に働いてきた医療関係者の努力を裏切ることのないよう、十分のご配慮をいただきたく、よろしくご検討の程をお願い申し上げます。

 

 

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