新型コロナウイルス感染症の流行第6波は感染性がより高いオミクロン株が主流となっており、子どもの新型コロナウイルス検査(以下、検査)陽性者と濃厚接触者も急増しています。子どもたちの学校生活の確保は極めて重要ですが、感染拡大地域では、社会活動の制限と同様、学校活動にも安全や感染対策の観点から、学級閉鎖等の活動制限が求められている状況です。
1.学校等の対応について
①学校内外での効果的な感染対策について
学校活動を維持することは、子どもの健全な発育のために最も優先されるべき事項と考えます。
学校の現場においては、引き続き効果的な感染対策(不織布マスクの着用、手指衛生、教室の十分な換気)を徹底する必要があると考えます。また、地域の発生状況を把握するために日本学校保健会が運営する「学校等欠席者・感染症情報システム」を利活用する必要があると考えます。
学習塾・スポーツクラブ(経済産業省)や学童保育(厚生労働省)等校外でも、文部科学省が所管する学校での対応に準拠した感染対策を徹底することが極めて重要です。
学校や学習塾、学童保育の教職員等は、子どもの健全な発育のためにも、積極的なワクチン接種をご検討ください。
②学校の休業と教育の機会の確保について
教職員もしくは子どもに検査陽性者が出た場合、学校は、文部科学省の指針1)に従って、濃厚接触者等を把握し、示された基準2)に沿って学級閉鎖などを実施する必要があります。ただし、小学校高学年以降であればリモート教育を積極的に活用すべきと考えます。
基礎疾患のある感染重症化リスクの高い小児等が、主治医の判断を得て自主的に学校を休む場合にも、リモート教育等による教育の機会を確保する必要があると考えます。
また、検査陽性者およびその家族・関係者等が誹謗中傷やいじめなどを受けることがないような配慮が必要です。
2.養育者への対応について
もし休校などの措置がなされたとしても、子どもの行き場所や養育者を確保できるように、十分な配慮と準備が必要です。例えば、休校などにより子どもの養育のために仕事を休まざるを得ない保護者もいますので、職場等においてそうした方への理解と支援が必要となります。休校は子どもの生活を大きく変え、心身にさまざまな影響を与えるおそれのある措置です。きめ細やかな対応をしてこの状況を乗り越える必要があります。
3.行政の対応について
①感染症対策物資の確保について
不織布マスクは感染予防に重要な役割を果たします。使用量が多いことから家庭の経済的負担軽減のため子ども用マスクの無償提供を考慮すべきと考えます。また、重症化の徴候がある患者や基礎疾患を有する患者が外来等で使用する新型コロナウイルス抗原迅速検査キット及びPCR等で用いる検査試薬が不足しないよう、十分量を確保すべきと考えます。
②子どもにかかわる教職員のワクチン接種について
教育の機会の確保のためにも、積極的な追加接種の対象(優先接種対象者)である学校の教職員3)に加え、学習塾や学童保育の職員等もワクチン接種の優先対象者とすることを検討すべきと考えます。
4.医療機関の対応について
オミクロン株による子どもの検査陽性者の急増に伴い、重症化する患者の増加への対策が極めて重要です。その対策として地域での子どもの外来診療、入院医療調整に必要な連携、電話やオンライン診療などの自宅療養している小児患者を支援する体制を強化するなど、子どもたちの生命を守るために必要な体制の構築が必要と考えます。
感染力が強いオミクロン株に変わり、医療機関でも完全には感染拡大を防止することは難しい状況です。医療機関を受診した子どもたちに対して、新型コロナウイス感染症に対する学校での感染対策を守っても罹患したことは仕方がないことで、子ども達には責任がないこと、そして自責の念にとらわれる必要がないことを説明してください。
文献
1)新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処⽅針(新型コロナウイルス感染症対策本部 令和3年 11 ⽉ 19 ⽇(令和4年2⽉ 18 ⽇変更)
2)学校で児童生徒等や教職員の新型コロナウイルスの感染が確認された場合の対応ガイドライン(第1版)(文部科学省 令和3年8月 27 日付事務連絡