ガイドライン・提言

 

2020年10月27日

母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の現状と日本小児科学会の基本姿勢

 日本小児科学会は母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)について、2019年3月に基本姿勢を公表いたしました。NIPTを希望する妊婦とご家族の意思、判断は尊重されるものですが、NIPTの適切ではない普及が、染⾊体の病気の⼦どもたちの存在を否定しかねない深刻な事態を招いていることについてNIPTを実施する医療従事者が認識し、検査前に質が担保された遺伝カウンセリング等を通じ、妊婦とそのご家族に対して染⾊体の病気の⼦どもとそのご家族の実情を知っていただき考える機会を持っていただく必要があるという姿勢に現在も変更はありません。

 しかし、正式に認定されていない施設において、妊婦とそのご家族に対して適切な情報提供が行われずに実施されるNIPTの件数が日々増加している現状があります。NIPTが対象としている染色体の病気を持つお子さんとそのご家族にも寄り添う立場にある私たち小児科医はこの状態を看過することはできないと考えています。

 2020年3月に日本産科婦人科学会より「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」指針改訂が提案されました。先に日本小児科学会が「小児科医の関与が不十分な体制」として懸念を表明していた点について修正が行われ、この改訂案を慎重に検討した結果、受け入れ可能と判断いたしました。

 今後、厚生労働省が中心となって、わが国のNIPTの適切な提供体制についてさらに協議が行われますが、日本小児科学会も、厚生労働省、患者家族会、当事者を含む一般の方々、関連学術団体などの参画による多職種、多領域での幅広い議論をもとに、よりよい体制を整える役割を果たすとともに、生まれてくる子どもと関わる方々の不安や悩みについて共に考え、その方々の意思決定が尊重されるよう、小児科専門医による支援相談ができる体制づくりや、支援内容について検討してまいります。

 


 基本姿勢に関する一切の問い合わせは、情報管理の観点から、FAXのみに限らせていただきますことをご理解いただけますようお願い申し上げます(問い合わせへの対応は、日数を要することを予めご了承ください)。

<お問合せ先>
公益社団法人日本小児科学会事務局
〒112-0004 
東京都文京区後楽1-1-5水道橋外堀通ビル4階
FAX:03-3816-6036

ページの先頭へ戻る