各種活動

 

原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文、レポート

 原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文・レポートを掲載いたします。
診療の参考となる論文を今後紹介してまいります。
 
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会

【2023年6月14日掲載】
著者名:Anna L. Peters, Seung Kim, Reena Mourya, et al.
論文名:Recent Increase in Incidence of Severe Acute Hepatitis of Unknown Etiology in Children Is Associated with Infection with Adenovirus and Other Nonhepatotropic Viruses
雑誌名:The Journal of Pediatrics. 2023 Mar 19
DOI:10.1016/j.jpeds.2023.113439
URL:https://doi.org/10.1016/j.jpeds.2023.113439

 肝炎ウイルス以外による小児重症急性肝炎の性質と重症度を評価した、アメリカのシンシナティ小児医療センターにおける単一後ろ向き研究の報告です。
対象は2018~2022年の各年10月~翌年5月に、≦16歳でALTまたはAST≧500IU/mLを満たし、A~C型肝炎や既存の肝障害をきたす疾患がない82人。2021年10月~2022年5月発症例と、過去の同時期発症例を比較した。
結果:2018~2021年の年平均患者数は16.3人だったが、2021~2022年は33人と2倍に増加した(p=0.0054)。重症急性肝炎の病因に関して、何らかのウイルスが同定された症例が2018~2021年では年平均3.7人だったが、2021~2022年では16人と増加した(p=0.018)。一方で、特発性肝炎や新たに肝疾患が診断された症例数は同程度であり、2021~2022年の小児重症急性肝炎症例数増加は、ウイルス陽性例が増加したことに関連している。
 ウイルス検出例では、HSV・CMV・EV・EBV・SARS-CoV-2だけでなく、非肝向性呼吸器ウイルス(RhinoV、InfluV、HPIVを含む)も検出された。アデノウイルスについて、単独検出は2021~2022年は5人で、それ以外は他のウイルスと同時に検出された。アデノウイルスの血液からの検出は2019~2020年2人、2021~2022年6人。このうち、呼吸器症状は5人で認めたが鼻咽頭のアデノウイルス陽性は1人のみ。胃腸炎症状は2人で認め便のアデノウイルス陽性は1人のみ。
 全82人の生存率は91.4%。31人(37.8%)は経過中INRが>2(肝不全症例)になったが、ほとんどが支持療法だけで回復し、肝移植は5人(6.2%)で、現時点では全員生存している。2021~2022年の方が2018~2021年よりもINR>2の症例の割合は高い傾向にあったが、生存率および移植症例の割合に統計学的有意差はなかった。
 ウイルス検出された35人の生存率は88.2%。16人(47%)は経過中INRが>2になったが、3人(8.8%)は肝移植を行い生存している。2021~2022年にアデノウイルス血症だった6人中2人は無治療、1人はステロイド投与、3人はシドホビルとステロイド投与、1人は肝移植が行われた。移植後、アデノウイルス感染は再発しなかった。肝移植を行ったアデノウイルス以外の2症例は、CMVとパレコウイルス感染後に急性肝不全となった生後2か月の乳児と、新生児期のCMV感染後に発症した慢性肝障害の生後6か月の乳児で、どちらも肝移植前に抗ウイルス薬の投与が行われた。これら3人は移植後1年以上経過しているが、全例生存し移植肝も機能できている。肝生検は、ウイルス検査で陽性と判断されたうちの10人(2018~2021年に2人、2021~2022年に8人)に行われた。いずれの生検組織においてもウイルス封入体の証拠はなかった。

ページの先頭へ戻る