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原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文、レポート

 原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文・レポートを掲載いたします。
診療の参考となる論文を今後紹介してまいります。
 
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
【2023年4月28日掲載】
著者名:Sofia Morfopoulou, Sarah Buddle, Oscar Enrique Torres Montaguth, et al.
論文名:Genomic investigations of unexplained acute hepatitis in children
雑誌名:Nature. 2023 Mar 30.
DOI:10.1038/s41586-023-06003-w.Online ahead of print.
 
 原因不明の小児肝炎38例、年齢をマッチさせた免疫不全のない対照66例、および免疫不全症の21例について、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、および免疫組織化学解析を合わせて調査した、英国からの報告である。
 リアルタイムPCR法にて、検査した原因不明の小児肝炎28例中27例(96.4%)の肝臓、血液、血漿、または便から、高レベル(低CT値)のアデノ随伴ウイルス2(AAV2)DNAが検出された。また、31例中23例(74.2%)から低レベル(高CT値)のヒトアデノウイルス(HAdV)が、23例中16例(70.0%)から低レベルのヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)が検出された。これに対し、対照のHAdV陽性の小児では、重度の免疫抑制状態にある場合でも、低レベルのAAV2が血液または肝臓からまれに検出されるに過ぎなかった。AAV2、HAdV、およびHHV-6の遺伝子系統解析からは、原因不明の小児肝炎において、新たに出現した変異株の関与はないと考えられた。
 移植のために摘出された肝臓の組織学的解析では、ウイルス封入体は検出されず、ウイルスの直接浸潤による細胞障害を示唆する所見はなかった。一方で、T細胞およびB系統細胞の浸潤を認めた。原因不明肝炎症例と健常対照者の肝臓組織のプロテオームの比較では、HLAクラス2、免疫グロブリン可変領域、および補体蛋白の発現増強が確認された。 HAdVおよびAAV2蛋白は肝臓内に検出されなかったが、HAdVとHHV-6Bの両者を介した複製を反映するAAV2DNA複合体を同定した。
 筆者らは、遺伝的および免疫学的に素因のある小児において、HAdVによって高レベルの異常なAAV2複製が促進され、重症例ではHHV-6Bも関わって、免疫介在性肝疾患が引き起こされたのではないかとしている。

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