【2023年4月5日掲載】
著者名:Jagadisan B, Verma A, Deheragoda M, et al
論文名:Outbreak of indeterminate acute liver failure in children with adenoviraemia - Not a new disease.
雑誌名:J Hepatol. 2023 Feb 21:S0168-8278(23)00101-0.
DOI:10.1016/j.jhep.2023.02.013
2022年にUKから報告されたアデノウイルス血症を伴った原因不明の小児の急性肝炎、急性肝不全(ID-PALF)について、果たして新規の疾患か否か明らかにすることを目的として行った研究である。2022年にロンドンのKing’s College Hospitalで診療を受けた肝炎症例の中から、ID-PALF症例を抽出し、これら症例が急性肝炎例に占める割合、移植率、アデノウイルス血症の有無などについて調査した。さらに、2017年から2021年の間に経験したアデノウイルス血症を伴ったID-PALFとの間で、臨床像、病理所見、予後について比較解析した。
2022年1月から6月間に65例の急性肝炎例があり、17例のPALFのうち10例(58.8%)がID-PALFに該当し、全例アデノウイルス血症陽性だった。一方、2017年から2021年の間では80例のPALFのうち21例(26.3%)がID-PALFに該当し、2017年から2019年では13例のID-PALF中6例(46%)がアデノウイルス血症を伴っていた。しかし、2020年から2021年の8例のID-PALF症例は全例アデノウイルス陰性だった。2022年のアデノウイルス陽性ID-PALF症例(10例)と2017年から2019年にかけての同様の症例(6例)を比較すると、2022年流行時の症例のほうがよりアンモニア値が高値で肝性脳症の頻度が高く、血圧低下の割合が高かった。
よって、ID-PALF症例の中には一定の割合でアデノウイルス感染に伴う症例があり、2022年に報告された原因不明小児急性肝炎、肝不全も、一部にはアデノウイルス感染の関与が明らかであるが、これは新規疾患というわけではなく以前から背景の小児アデノウイルス感染症の流行状況に応じて発生していたと考えられる。