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小児の新型コロナウイルス感染症の診療に関連した論文
(2022年1月27日~2022年12月23日掲載分)

 小児の新型コロナウイルス感染症の診療に関連した論文を紹介いたします。ご参考にしてください。
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会

【2022年12月23日掲載】

「ユニバーサルマスクの解除により、ボストン大都市圏の学区では15週間で生徒とスタッフ1,000名あたり44.9件のCOVID-19症例が追加発生した」

 ユニバーサルマスクは、地域や学校でのSARS-CoV-2感染リスクを軽減する上で重要な対策の1つです。米国マサチューセッツ州ではCDCの最新ガイダンスに従い、2022年2月28日にユニバーサルマスクの方針が撤回されました。本研究ではCOVID-19発生率(人口1,000名あたり各週のCOVID-19症例数)に対するユニバーサルマスクの影響について調査されました。
 研究期間は2021年から2022年6月15日までの40週間で、ボストン大都市圏の72の学区に在籍する294,084名の生徒と46,530名のスタッフが対象となりました。差分の差分法を用いて、マスク着用義務を解除した学区と継続した学区におけるCOVID-19の発生率が比較されました。
 ユニバーサルマスクが撤回される前のCOVID-19発生率は、全学区内でほぼ同様の傾向でした。しかしユニバーサルマスクの撤回後、マスク着用義務を解除した学区では、継続した学区に比べ大幅に高いCOVID-19発生率が観察されました。ユニバーサルマスク撤回後の15週間で、生徒とスタッフ1,000名あたり44.9件(95%信頼区間、32.6〜57.1)の追加症例が発生したと推定され、これはこの間の全学区の事例の29.4%にあたる11,901件に相当しました(下表)。15週間のうち12週間で影響が顕著であり、各週の推定値は、第1週で生徒とスタッフ1,000名あたり1.4件(95%信頼区間、0.6~2.3)、第9週で9.7件(95%信頼区間、7.1~12.3)でした。また、その影響は生徒よりスタッフで顕著でした。学校におけるユニバーサルマスクの効果は、周辺の都市や町でCOVID-19の発生率が最も高い数週間に最大となることが観察されました。
 本研究の限界として、各学区のCOVID-19検査に関するデータがないこと、2022年1月に州の初等中等教育局はマスク未着用の濃厚接触者に対する検査を終了したことがあげられます。本研究はマスク自体の効果ではなく、ユニバーサルマスクの効果として解釈されるべきですが、ユニバーサルマスクの解除に伴う影響は非常に大きいことが示されました。

著者名:Cowger TL, Murray EJ, Clarke J, et al.
論文名:Lifting Universal Masking in Schools - Covid-19 Incidence among Students and Staff.N Engl J Med. 2022 Nov 9. Online ahead of print.
雑誌名:The NEW ENGLRAND JOURNAL of MEDICINE
DOI:10.1056/NEJMoa2211029.
URL:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2211029

「学校環境において、子どもがフェイスマスクを着用することによって手で顔を触る頻度は増えず、粘膜面(口、鼻、眼)を触る頻度を減らせている」

 学校でフェイスマスクを着用すると、SARS-CoV-2 の感染を減らすことができますが、手と顔の接触が増える可能性があり、自身の行為によって感染リスクが高まる可能性があります。この研究では、学校環境での子どもの手と顔の接触に対するフェイスマスクの着用の効果を評価しました。
 この研究は、トロントの2つの学校で夏休み期間中の2020年8月に行われた研究者主導ランダム化非盲検試験です。研究参加を表明した4歳から17歳によって模擬学校環境を作りました。年齢に応じて13の学年*に分け、連続した学年ごと(kindergarten、grades 1 and 2、grades 3 and 4、grades 5 and 6、grades 7 and 8、grades 9 and 10、grades 11 and 12)でフェイスマスク着用クラスと非着用クラスを形成し(各クラスの人数は8~15人)、2種類のクラスにおける授業中の顔の様々な部位を触る頻度を比較しました。フェイスマスク非着用クラスのうち、grade 4以下のクラスは常時、grade 5以上のクラスは、2m以上の間隔をあけられるときは、フェイスマスクを着用せず授業を受講しました。授業は2日間行い(8:35~15:00)、午前と午後の1時間ずつに評価を行いました。部屋中が把握できるようにビデオを設置し、生徒たちの行動を評価しました。合計174人を無作為に2つのクラス(フェイスマスク着用クラス87人、非着用クラス87人:うち3名脱落)に振り分けて評価が開始されました。
 1時間あたりの生徒1人が顔を触った回数の平均は、ファイスマスク着用クラス(88.2回)と非着用クラス(88.7回)で差はありませんでした(rate ratio [RR]:1.00、95% confidence interval [CI]:0.78-1.28)。一方、1時間あたりの生徒1人が粘膜面(口、鼻、眼)を触った回数の平均は、フェイスマスク着用クラス(4.2回)が非着用クラス(26.8回)よりも有意に少なくなりました(RR:0.12、95% CI:0.07~0.21)。1時間あたりの生徒1人が非粘膜面(眼鏡、フェイスマスク、フェイスマスクの着脱)を触った回数の平均は、フェイスマスク着用クラス(84.4回)が非着用クラス(58.1回)よりも有意に多くなりました(RR:1.40、95% CI:1.08~1.82)。
 フェイスマスクの着用により、顔を触る回数は増加しませんでした。一方で、粘膜面を触る頻度は減少していたことから、フェイスマスクを着用することで、生徒自身の行為によって感染リスクが増加する可能性は低いと考えられました。

著者名:Science M, Caldeira-Kulbakas M, Parekh RS, et al.
論文名:Effect of wearing a face mask on hand-to-face contact by children in a simulated school environment: The Back-to-School COVID-19 Simulation Randomized Clinical Trial
雑誌名:JAMA Pediatr Oct 24, 2022. DOI: 10.1001/jamapediatrics.2022.3833
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2797601

*参考資料:カナダ(トロント)における年齢と学年分け

Schooling Level Canadian Grade

Child’s age

Pre school
Junior Kindergarten
(Ontario only)
4 years old
  Kindergarten 5 years old
Elementary School Grade 1 6 years old
  Grade 2 7 years old
  Grade 3 8 years old
  Grade 4 9 years old
  Grade 5 10 years old
  Grade 6 11 years old
Junior High School Grade 7 12 years old
  Grade 8 13 years old
  Grade 9 14 years old
Senior High School Grade 10 15 years old
  Grade 11 16 years old
  Grade 12 17 years old
 

【2022年11月25日掲載】

「0~4歳児とその家族におけるSARS-CoV-2感染の臨床像とウイルス学的検査所見についての評価」

 0~4歳児のSARS-CoV-2感染の頻度、臨床像、ウイルス学的検査所見についての前方視的な解析データは限られています。そこで今回はその点を明らかにする目的で、筆者らは家族内感染例を前方視的に集め、臨床像やウイルス学的検査結果を年齢ごとに比較解析しました。
 2020年11月24日から2021年10月15日にかけて、少なくとも1名以上の4歳以下の小児がいる米国、メリーランド州の175家族、690名の参加者を対象に、8か月間の観察期間中、毎週、質問用紙に答えるとともに自ら鼻咽腔スワブを採取して、その検体を用いてリアルタイムRT-PCR法でSARS-CoV-2ゲノム検出、陽性の場合はシーケンス解析を経てvariantを決定しました。さらに、観察期間の開始後4か月、8か月後に血清も採取してSARS-CoV-2抗体価を測定しました。
 690名の参加者(355名の女性、335名の男性)の中で、256名(37.1%)が0~4歳、100名(14.5%)が5~17歳、334名(48.4%)が18~74歳という年齢区分でした。成人の91.6%が観察期間中に3回のワクチン接種を終えている点は注意が必要です。この中で54名(7.8%)が観察期間中にSARS-CoV-2に感染し、その内訳は22名(256名中の8.6%)が0~4歳、11名(100名中の11%)が5~17歳、21名(334名中の6.3%)が成人でした。この集団で、ワクチン接種が終了しているにもかかわらず、アルファ株に感染した人はいませんでしたが、6名のワクチン接種者がデルタ株に感染しました。1,000人週当たりの発生頻度は、0~4歳が2.25(95%CI、1.28~3.65)、5~17歳が3.48(95%CI、1.59~6.61)、成人が1.08(95%CI、0.52~1.98)でした。0~17歳の小児(11/30、36.7%)は成人(3/21、14.3%)に比べ有意に無症状の割合が高く、特に0~4歳児(7/19、36.8%)が最も無症状例が多く認められました(図)。観察期間中に検出されたウイルスゲノム量の最高値は有症状者と無症状者間で有意差はなく(median [IQR]、2.8 [1.5~3.3] log10 copies/mL vs 2.8 [1.8~4.4] log10 copies/mL)、年齢別でも有意差はありませんでした(median [IQR] for ages 0~4 years、2.7 [2.4~4.4] log10 copies/mL; ages 5~17 years: 2.4 [1.1~4.0] log10 copies/mL; ages 18~74 years: 2.9 [1.9~4.6] log10 copies/mL)。成人では症状の数とウイルスゲノム量間に有意な相関(R = 0.69;P <0.001)が見られましたが、小児ではそのような相関は見られませんでした (ages 0~4 years: R = 0.02、P =0.91; ages 5~17 years: R = 0.18; P =0.58)。さらに、variant間で比較するとデルタ株が(median [IQR]、4.4 [3.9~5.1] log10 copies/mL)他の株 (median [IQR]、1.9 [1.1~3.6] log10copies/mL; P =0.009)あるいはアルファ株(median [IQR]、2.6 [2.3~3.4] log10 copies/mL; P =0.006)より有意に高い値でした。
 アルファ株、デルタ株が流行していた時期の家族内感染を解析した今回の研究で、0~4歳児におけるSARS-CoV-2感染は一般的に無症状あるいは非常に軽症で、鼻腔スワブ中のウイルスゲノム量は小児の疾患重症度とは相関していませんでした。よって、少なくともこの時期は、症状だけから小児のSARS-CoV-2感染者を見つけ出すのは難しかったと考えられます。引き続き今後の新たな変異ウイルス流行時期での同様な前方視的コホート研究の結果が期待されます。

著者名:Karron RA, Hetrich MK, Na YB, et al.
論文名:Assessment of Clinical and Virological Characteristics of SARS-CoV-2 Infection Among Children Aged 0 to 4 Years and Their Household Members.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2022 Aug 1;5(8):e2227348.
DOI:10.1001/jamanetworkopen.2022.27348.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2795801

【2022年10月11日掲載】

「オミクロン変異株流行期に、5~11歳の小児に対するBNT162b2ワクチンの実際の有効性について検証した結果、ワクチン接種により、 SARS-CoV-2 感染とCOVID-19 による入院リスクは低下した」

 オミクロン変異株に5~11歳の小児の新型コロナワクチンの有効性に関する情報は少ないです。本研究は、オミクロン変異株が急速に拡大した2022年1月21日から2022年4月8日の期間、シンガポールで5~11歳小児のCOVID-19罹患状況と新型コロナワクチン(BNT162b2 Vaccine)接種状況のデータを解析したものです。ワクチン接種については、ワクチン未接種群、部分接種群(ワクチン初回接種後1日以上、2回目接種後6日まで)、完全接種群(2回目接種後7日以上)に分類しました。
 報告された全てのSARS-CoV-2感染症(PCR検査、迅速抗原検査、またはその両方で陽性)、PCR検査陽性のSARS-CoV-2感染症、COVID-19関連の入院について発生率で評価しました。ポアソン回帰分析を用いて、アウトカムの発生率比からワクチンの有効性を推定しています。

 255,936人の5~11歳の小児が解析に含まれました。ワクチン未接種群では、報告された全てのSARS-CoV-2感染者、PCR陽性SARS-CoV-2感染者、COVID-19関連入院患者の粗発生率は、それぞれ100万人/日あたり3303.5、473.8、30.0でした。ワクチンの有効性は、部分接種群では、全てのSARS-CoV-2 感染者に対して13.6%(95% CI, 11.7~15.5)、PCR 陽性 SARS-CoV-2 感染者に対して24.3%(95% CI, 19.5~28.9)、COVID-19関連の入院患者では42.6%(95% CI, 24.5~28.9)でした。完全接種群では、それぞれ 36.8%(95% CI, 35.3~38.2)、65.3%(95%CI, 62.0~68.3)、82.7%(95% CI, 74.8~88.2)でした。
 本研究の限界として、基礎疾患の有無によるワクチンの有効性の評価はできていませんが、オミクロン変異株流行期においてBNT162b2のワクチン接種により、5~11歳の小児の SARS-CoV-2 感染とCOVID-19による入院リスクが低下したことが明らかになりました。

著者名:Sharon H.X. Tan, M.P.H., Alex R, et al.
論文名:Effectiveness of BNT162b2 Vaccine against Omicron in Children 5 to 11 Years of Age
雑誌名:N Engl J Med 2022; 387:525-532
DOI:10.1056/NEJMoa2203209
URL:https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2203209?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed


【2022年9月2日掲載】

「母体のワクチン接種により十分な経胎盤的な抗体移行があり、生後3か月までは全ての乳児において抗SARS-CoV-2抗体が検出された」
 早期乳児期のSARS-CoV-2感染は重症化するとされています。我々は乳児における母体由来の抗SARS-CoV-2抗体の持続性と出産前のワクチン接種時期について検討しました。
 出産前にファイザー社製mRNAワクチン接種を2回受けた母体から出生した乳児の出生時・生後3か月時の血清を用いて、SARS-CoV-2受容体結合ドメイン特異的IgGと中和抗体を測定しました。56組の母体と乳児のうち、15名(26.8%)がfirst trimester(妊娠1~12週)、16名(28.6%)がsecond trimester(妊娠13~27週)、25名(44.6%)がthird trimester(妊娠28~40週)にワクチン接種を受けました。
 
 出生時は、全ての児において抗SARS-CoV-2受容体結合ドメイン特異的IgGが陽性(中央値:4046 [IQR 2446~7896] AU/mL)となりましたが、third trimester(妊娠28~40週)のワクチン接種で最も高値(中央値:6763 [IQR 3857~12561] AU/mL)となりました。  
 生後3か月では、乳児における抗SARS-CoV-2受容体結合ドメイン特異的IgGは減弱(中央値:545 [IQR 344~810] AU/mL)しました(p<0.001)。また、抗SARS-CoV-2受容体結合ドメイン特異的IgGの半減期は母体で66日、乳児で30日でした。  
 出生時は、全ての児が母体のワクチン接種の時期に関わらず、中和抗体を検出できましたが、生後3か月では、third trimester(妊娠28~40週)でワクチン接種を受けた母体からの出生児の方が、second trimester(妊娠13~27週)での出生児よりも高い中和抗体価を維持していました。
 本研究の限界として、1)サンプル数が少ない、2)生後3か月以降のデータがない、3)ワクチン接種前の母体SARS-CoV-2感染を否定できない、4)3回接種後のデータがない、5)ファイザー社製mRNAワクチン以外のデータがないなどの課題がありました。

著者名:Rottenstreich A, Zarbiv G, Oiknine-Djian E, et al.
論文名:Kinetics of Maternally Derived Anti–Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) Antibodies in Infants in Relation to the Timing of Antenatal Vaccination
雑誌名:Clin Infect Dis Jun 19, 2022 DOI: 10.1093/cid/ciac480
URL:https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciac480/6611486?login=true

【2022年6月20日掲載】
「ファイザー社製のメッセンジャーRNAワクチンは、オミクロン株の感染に対して、5~11歳の入院リスクを約1/3に減少させる」
 国内では、5~11歳の小児に対するワクチンが2022年1月に承認され、その接種が進んでいます。注目すべきは、小児、成人において、現在(2022年5月現在)流行しているオミクロン株に対しては、その効果の減弱が報告され、成人では早期の追加接種が勧められています。
 この研究は、デルタ株、及びオミクロン株流行期の米国において、症例対照・テストネガティブデザインを用い、COVID-19入院例、および重症例(生命維持装置を装着、あるいは死亡)に対するワクチンの小児の有効性を評価したものです。研究期間は、2021年7月から2022年2月まで、米国23州の31病院において実施され、研究対象はCOVID-19患者に非COVID-19患者を対照としています。12~18歳の患者ではワクチン接種からの経過時間によって分け、更には、5~11歳および12~18歳の患者ではデルタ株(2021年7月~12月)およびオミクロン株(2021年12月~2022年2月)が流行した時期に分け、発症14日前までにファイザー社製mRNAワクチンの2回接種率を基に、ワクチンの効果を推定しました。
 その結果、COVID-19患者1,185名(ワクチン未接種1,043名(88%)、生命維持装置を装着291名(25%)、死亡14名(1%))、対照群1,627名が研究に登録されました。デルタ株流行期において、12~18 歳の小児の入院に対するワクチンの効果は、接種後 2~22 週で 93%、23~44 週で 92%と、高い効果を維持しました。一方で、オミクロン株流行期の 12~18 歳の小児(ワクチン接種から162日(中央値))では、COVID-19 による入院に40%、重症 COVID-19に79%、不顕性のCOVID-19に20%の有効性を示しました。一方で、オミクロン株流行期では、5~11歳の小児の入院に対するワクチン効果は68%でした(図参照)。
 以上より、ファイザー社製mRNAワクチンの2回接種により、12~18歳の小児ではオミクロン株による入院に対する予防効果はデルタ株のそれと比べ低かったですが、2つの変異ウイルスに対する重症化予防が確認できました。また、5~11歳の小児におけるオミクロン株関連の入院のリスクは約1/3に減少しました。
 この研究は、5~11歳の児のファイザー社製のワクチンの小児の入院予防効果を示す米国の最新のデータで、特にオミクロン株に対する入院予防効果を示したデータとして価値があると考えます。一方で、今回の研究では、患者群、対照群の約80%が基礎疾患をもつことは留意すべきことで、基礎疾患を持たない児における同様のデータも待たれます。今後、この年齢層の小児において、オミクロン株のワクチンの効果の持続、追加接種による効果の推移などの多くの課題があります。
 
著者名:Price AM, Olson SM, Newhams, MM et al.
論文名:BNT162b2 Protection against the Omicron Variant in Children and Adolescents
雑誌名:N Engl J Med March 30, 2022 DOI: 10.1056/NEJMoa2202826
URL: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2202826?query=featured_home
 

【2022年4月20日掲載】
(Mechanism)
1.機械学習を用い、SARS-CoV-2の自然感染で得られたポリクロ―ナル抗体の特徴を関連付けるために行われた研究です。抗体が誘導する貪食、細胞障害、補体の結合、中和は、この研究で用いたコホートの抗体のプロファイルを正確に予測しました。また、SARS-CoV-2特異的IgMが中和活性の最も重要な予測因子であることが分かりました。このモデルがワクチンや他の抗体療法によって、異なる抗ウイルス抗体作用に関連する液性免疫反応を理解する上で、理想的な手段であることを示しました。
著者名:Natarajan H, Xu S, Crowley AR, et al.
論文名:Antibody attributes that predict the neutralization and effector function of polyclonal responses to SARS-CoV-2.
雑誌名:BMC Immunol. 2022. DOI 10.1186/s12865-022-00480-w.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35172720/
 
2.BNT162b2接種歴のある12歳以上18歳未満の34人とCOVID-19罹患歴のある2~17歳の15人から得られた49血清検体について、オミクロン株に対する中和感受性を評価した成績です。マイクロ中和抗体(MN)陽性率は、BNT162b2既接種者で38.2%、COVID-19罹患者で26.7%でした。さらに、オミクロン株に対するMNの力価は祖先ウイルスおよびβ変異株に対する抗体価よりも実質的に低値であり、ワクチン接種後感染や再感染の可能性を示唆しています。
著者名:Chen LL, Chua GT, Lu L, et al.
論文名:Omicron variant susceptibility to neutralizing antibodies induced in children by natural SARS-CoV-2 infection or COVID-19 vaccine.
雑誌名:Emerg Microbes Infect. 2022. DOI: 10.1080/22221751.2022.2035195
URL:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/22221751.2022.2035195
 
3.小児のCOVID-19症例が増加していますが、無症候または軽症例の免疫記憶の成立や長期的な健康への影響については分かっていないことがまだたくさんあります。本研究は中国武漢小児病院を受診した0~14歳の小児のCOVID-19発症後6~8か月の臨床症状並びに血液検体を調査し、無症候または軽症例の免疫記憶の成立や長期的な健康への影響について調査しています。すべての年齢層の児で炎症所見は正常に戻っていました。0~4歳で肺病変を認めた児は抗原特異的IgG反応が低い傾向がありました。一方5~14歳で肺に画像所見の異常を認めた児は、所見は回復傾向にあり、抗原特異的IgG反応が他の年齢層より高い傾向にありました。このほか全年齢層でB細胞においてIgM抗体の産生、スパイクならびにヌクレオカプシドタンパク質に対するメモリーT細胞の産生、IFN反応が差異なく認められました。これらの結果は無症状または軽症のCOVID-19罹患小児において、肺病変を認めた場合6~8か月所見が継続すること、また6~8か月後には検出可能な中和抗体や細胞性免疫の成立を認めることを示唆しています。
著者名:Tian X, Bai Z, Cao Y, Liu H, et al.
論文名:Evaluation of Clinical and Immune Responses in Recovered Children with Mild COVID-19
雑誌名:Viruses 2022, https://doi.org/10.3390/v14010085
URL:https://www.mdpi.com/1999-4915/14/1/85
 
(Diagnosis)
1.唾液検体は、侵襲なく採取可能なことから成人ではSARS-CoV-2検出に広く活用されています。本論文は、小児を対象に食事が唾液検体中のSARS-CoV-2検出に与える影響について検討した米国からの報告です。健康な小児5人(5歳~9歳)の起床時、好きな食べ物を選んでもらい、それを食べた直後、20分後、60分後に唾液を採取し、各唾液に陽性コントロール、陰性コントロールを添加し、RT-PCR/MALDI-TOF法により検討を行いました。その結果、食直後は、食後20分、60分後と比較し、陽性コントロールが検出できない検体が多くありました。また、ホットドッグ摂食後の場合、食後20分、60分に検出できない検体がありました。唾液検体を検出に用いる場合には、食後20分以降の採取が適していると考えられました。また、特定の食品の検査結果に及ぼす影響については、検討課題と考えられました。小児の唾液検体は、今後、他のウイルス感染症診断にも応用が期待されます。
著者名:Hernandez MM, Riollano-Cruz M, Boyle MC, et al.
論文名:Food for thought: Eating before saliva collection and interference with SARS-CoV-2 detection.
雑誌名:J Med Virol. 2022 . DOI: 10.1002/jmv.27660.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.27660
 
2.COVID-19の保因者/患者を特定するための効果的な戦略として、スワブプールを用いたバブルベース検査の有用性を検証したイスラエルからの報告です。対象は保育施設や学校に在籍する小児、老人施設や病院の職員など、合計25,831人です。内訳は654人の保育士(47のバブル)、16,322人の児童生徒(812のバブル)、8,855人の老人施設職員(414のバブル)です。スワブ検体を合計1,273(20.3±7.7スワブ/プール)に分けてPCRを行いました。個別の検査と比較すると、すべてのプール(≤37スワブ/プール)で特異度は97.5%(下限96.6%)、感度は86.3%(下限78.2%)、25スワブ以下(/プール)で感度は94.6%(下限86.7%)、特異度は97.2%(下限96.2%)となりました。この方法では、感度を下げず、標準のPCRルーチン検査に影響を与えずに、大量の検体の処理、検査コストの削減、感度の維持が可能です。COVID-19の保因者/患者を特定するため、学校のクラス、旅客機、病院、軍隊、職場等で使用でき、将来のパンデミックに適応できる可能性があります。
著者名:Cohen Y, Bamberger N, Mor O, et al. 
論文名:Effective bubble-based testing for SARS-CoV-2 using swab-pooling.
雑誌名:Clin Microbiol Infect. 2022 Feb 16;S1198-743X(22)00090-8.
URL:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1198743X22000908?via%3Dihub
 
(Transmission)
1.胎盤組織はSARS-CoV-2に感染しますが、胎児への感染伝搬は低頻度です。経胎盤感染を阻害するメカニズムについて検討した論文です。妊娠第2あるいは第3三半期に症候性感染を起こした18歳以上の妊婦を対象として、血清および胎盤絨毛組織中のACE2発現量とADMA17活性を調べました。第3三半期感染群では、第2三半期感染群および非感染群と比較して、絨毛組織のACE2mRNA量は著明に上昇していましたが、ACE2蛋白量は有意に減少し、ADAM17活性の上昇が並行して認められました。また、第3三半期感染群では血清中の可溶性ACE2の有意な増加が認められました。妊婦でのSARS-CoV-2感染により、胎盤からACE2蛋白のsheddingが起こり、胎盤でのACE2蛋白量が減少することを示唆しています。
著者名:Taglauer ES, Wachman EM, Juttukonda L, et al.
論文名:Acute severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 infection in pregnancy is associated with placental angiotensin-converting enzyme 2 shedding.
雑誌名:Am J Pathol. 2022. DOI:10.1016/j.ajpath.2021.12.011.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35090860/
 
2.カタールにおいて、RT-PCR検査のCt値を用いて、SARS-CoV-2の初感染者、再感染者、ワクチン接種後のブレイクスルー感染者各群の排出ウイルス量を検討した研究です。ワクチン未接種の初感染者のCt値と比べて、BNT162b2ブレイクスルー感染では1.3(95%CI:0.9-1.8)、mRNA-1273ブレイクスルー感染では3.2(95%CI:1.9-4.5)、ワクチン未接種の再感染者では4.0(95%CI:3.5-4.5)サイクル、Ct値が高いという結果でした。Ct値はSARS-CoV-2感染性と逆相関すると考えられるため、ワクチン接種後のブレイクスルー感染者と再感染者は、ワクチン未接種の初感染者よりも感染性が低いと考えられました。
著者名:Abu-Raddad LJ, Chemaitelly H, Ayoub HH, et al.
論文名:Relative infectiousness of SARS-CoV-2 vaccine breakthrough infections, reinfections, and primary infections.
雑誌名:Nat Commun. 2022.DOI: 10.1038/s41467-022-28199-7.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35087035/
 
3.2歳以上の小児のマスク着用とCOVID-19による幼児の保育施設の閉鎖との関連を評価した論文です。米国50州の6,654の幼児保育施設の専門家に対し、電子媒体を用いて、2020年5月22日から6月8日の起点時と2021年5月26日から6月23日の追跡時の1年間にわたるサーベイ研究を行ったものです。起点時においては、幼児のマスク着用によりCOVID-19による保育施設閉鎖のリスクが13%低くなり、追跡時においては、1年間の継続したマスク着用により保育施設閉鎖のリスクが14%低くなりました。この結果は、地域においてCOVID-19が拡大した場合には、2歳以上の小児のマスク着用を推奨することを支持します。
著者名:Murray TS, Malik AA, Shafiq M, et al.
論文名:Association of child masking with COVID-19-related closures in US childcare programs.
雑誌名:AMA Netw Open. 2022
DOI:10.1001/jamanetworkopen.2021.41227.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35084484/
 
4.5~11歳の小児へのワクチン接種が進む米国において、エレメンタリースクールにおいて感染予防目的のマスク装着などの措置をどの時点で緩和するかは重要な問題です。この点を明らかにするために、米国の平均的なエレメンタリースクール(638人の生徒、60人の教員、6学年、1学年5クラス)を想定して、感染予防措置の追加あるいは緩和の影響を地区のCOVID-19患者発生率、SARS-CoV-2の異なる株による感染率の差、子どもたちのワクチン接種率の差を考慮に入れたうえで、エージェントベースモデルと呼ばれるシュミレーションモデルを使って解析しました。生徒のワクチン接種率が70%以下で、地域の患者発生が10万人当たり14人以下の状況でのみ、マスク着用のような感染予防介入は、感染予防策緩和後の患者発生を1か月あたり5人以下に保ったまま緩和することが可能です。また、学校での感染のリスクを1か月あたり50%未満に保つには、地域の症例発生率は1日あたり10万人あたり4人以下である必要があります。研究の結果、学校でのマスクなどの感染予防策とワクチン接種が学校での感染抑制に有益ではあるが、その効果は地域の患者発生率に左右されることがわかりました。
著者名:Giardina J, Bilinski A, Fitzpatrick MC, et al. 
論文名:Model-estimated association between simulated US elementary school-related SARS-CoV-2 transmission, mitigation interventions, and vaccine coverage across local incidence levels.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2022. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2021.47827.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35157056/
 
(Treatment)
1.青年期におけるCOVID-19治療のモノクローナル抗体療法とその使用優先順位に関して、アメリカ小児感染症学会から発表された最新のガイダンスです。12歳以上で、入院もしくは重篤な症状に進行する最高リスクのある症例(肥満、重度の免疫低下、呼吸補助具使用)における、軽度から中等症の治療には推奨されます。重度の基礎疾患があり、中等度リスクのある症例における、軽度から中等症の治療については、個別に評価するべきです。曝露後の予防としては、最高リスクの症例(前述)が高リスクの曝露を受け、まだCOVID-19と診断されていない場合に考慮します。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         
著者名:Wolf J, Abzug MJ, Anosike BI, et al.
論文名:Updated Guidance on Use and Prioritization of Monoclonal Antibody Therapy for Treatment of COVID-19 in Adolescents.
雑誌名:J Pediatric Infect Dis Soc. 2022. DOI: 10.1093/jpids/piab124. Epub ahead of print.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35107571/
 

(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.小児多系統炎症性症候群(MIS-C)をコロナウイルス感染症2019(COVID-19)、川崎病(KD)、および毒素性ショック症候群(TSS)と鑑別することは難しいことです。これらの臨床上の管理は異なるので、迅速かつ正確な診断が不可欠です。
4つの医療機関においてMIS-C、COVID-19、KD、およびTSSのために入院した21歳未満の患者から得られた情報を比較解析し、臨床診断を支援するスコアリングツールを開発しました。
MIS-C患者233人、COVID-19患者102人、KD患者101人、TSS患者76人の患者を対象としました。MIS-Cの患者は、他の疾患の患者と比較して、心機能の低下(38.6%)、心筋炎(34.3%)、心筋滲出(38.2%)、僧帽弁逆流(31.8%)、胸膜滲出(34.8%)を最も多く認めました。MIS-Cの患者はまたCOVID-19およびKDの患者と比較してCRPのピークレベルが高く、血小板およびリンパ球の最低値が低く、トロポニン、BNP、proBNPがCOVID-19より高値でした。これらの臨床情報を利用した診断スコアは、COVID-19、KD、およびTSSからMIS-Cを効果的に鑑別することができ、ROC曲線下面積(AUC)は.87から0.97の範囲でした。
COVID-19、KD、およびTSSと比較して、MIS-C患者は心臓合併症の頻度、炎症および心臓損傷マーカーの上昇の程度、血小板減少症およびリンパ球減少症の割合が有意に高く、診断スコアは、COVID-19、KD、およびTSSからMIS-Cを鑑別するための有用な手段でした。
著者名:Godfred-Cato S, Abrams JY, Balachandran N, et al.
論文名:Distinguishing multisystem inflammatory syndrome in children from COVID-19, kawasaki disease and toxic shock syndrome.
雑誌名:Pediatr Infect Dis J. 2022.DOI: 10.1097/INF.00000000000003449
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35093995/
 
(Vaccine)
1.米国CDC予防接種後有害事象報告システム(VAERS:Vaccine adverse events reporting system)を用いた、12~17歳の男性へのファイザー社製BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種後の心筋炎・心膜炎についての研究です。253人(1回目:129人、2回目:124人)の報告があり、86.9%が入院しました。2回目接種後100万接種あたりの発生率は、162.2(12~15歳)、93.0(16~17歳)でした。デルタ株流行下における心筋炎・心膜炎の入院とのリスク・ベネフィット解析では、COVID-19既往歴があり、併存症のない12~17歳の男性では、1回接種でもリスクが上回ることが推定されました。また、オミクロン株流行下では、COVID-19既往歴のない小児における1回目接種のベネフィットは推定されましたが、2回目接種による追加ベネフィットは明らかではありませんでした。今回の研究でワクチン接種による副反応(心筋炎・心筋症)よりも重症予防効果が上回ると著者は結論付けていました。
著者名:Krug A, Stevenson J, Høeg TB, et al.
論文名:BNT162b2 vaccine-associated myo/pericarditis in adolescents: a stratified risk-benefit analysis.
雑誌名:Eur J Clin Invest. 2022. DOI: 10.1111/eci.13759.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/eci.13759
 
2.イスラエルで行われたファイザー社製BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチンの妊婦への接種に関して新生児および乳児期における安全性の大規模人口ベースコホート研究です。2021年3月から9月の単体出生を対象とし、早産、低出生体重児(SGA)、先天性奇形、すべての原因による入院、および乳児死亡のリスク比(RR)について評価しました。コホートには24,288人の新生児(女児が49%、妊娠37週以上の出生が96%)が含まれ、そのうち16,697人が母体ワクチン接種を受けており、接種時期は第1、第2、第3トリメスター、それぞれ2,134人、9,364人、5,199人でした。妊娠中にワクチン接種を受けた女性から出生した新生児と、ワクチン接種を受けなかった女性から出生した新生児との間にこれらの評価項目に明らかな違いは見られず、今回のコホート研究では新生児への出生前ワクチン曝露の安全性が示されました。
著者名:Goldshtein I, Steinberg DM, Kuint J, et al.
論文名:Association of BNT162b2 COVID-19 vaccination during pregnancy with neonatal and early infant outcomes.
雑誌名:JAMA Pediatr. 2022.DOI:10.1001/jamapediatrics.2022.0001.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2788938
 
 
【2022年4月7日掲載】
(Mechanism)
1. COVID-19肺炎における、重症度および小児と成人の違いについて、臨床的、免疫的な違い解析したイランからの報告です。この前向き研究では、COVID-19肺炎患者40人(小児重症例11人、成人重症例12人、成人最重症例17人)と健康対象者34人(小児20人、成人14人)について、臨床上と末梢血の免疫細胞サブセットについて比較検討しました。成人患者、特に最重症患者は、検査結果と胸部CTの異常が有意に高かった。小児患者の免疫細胞サブセットに関するデータは、小児対照群と比較して、CD3+CD8+T細胞が有意に高く、CD4+/CD8+比が有意に低かった。成人患者は成人対照群と比較してCD14+単球が有意に低かった。成人患者で入院時に最重症と判断された症例ではその他の患者と比較して、総リンパ球、CD3+Tリンパ球、CD3+CD8+T細胞(p= 0.001)が有意に低く、CD3+CD4+T細胞とCD4+/CD8+比が有意に高かった。死亡例は、生存例と比較し、CD3+Tリンパ球が有意に低かった。小児は成人と比較し、軽症が多いのは炎症細胞の反応が軽度であることが関与していることが考えられました。
著者名:Eshkiki ZS, Shahriari A, Seyedtabib M, et al.
論文名:Innate and adaptive immunity imbalance with severe COVID-19 pneumonia in children and adults.
雑誌名:Front Pediatr. 2021. DOI: 10.3389/fped.2021.736013.
 
2.SARS-CoV-2感染が小児で一般的に軽症または無症状である理由を解明するために、COVID-19流行中に、軽症または無症状であった小児(3~11歳)91人と成人154人の抗体応答と細胞性免疫応答について比較検討した英国からの報告です。スパイク蛋白に対する抗体応答は小児で高く、季節性βコロナウイルスのS2ドメインの交差免疫反応により抗体応答が増強されていました。変異ウイルス株に対する中和活性は、小児と成人で同等でしたが、スパイク蛋白に対する特異的T細胞応答は、小児の方が2倍以上高く、抗体陰性の小児でも認められました。小児では感染から6か月後でも抗体および細胞性免疫応答は保持されていましたが、成人では相対的な衰退が起きていました。小児では、SARS-CoV-2スパイク蛋白に対する特異的な免疫応答が交差反応によって誘導され、持続することがわかりました。これらの知見は、小児に対するワクチン接種方法に関して、有用な情報を提供すると考えられます。
著者名:Dowell AC, Butler MS, Jinks E, et al.
論文名:Children develop robust and sustained cross-reactive spike-specific immune responses to SARS-CoV-2 infection.
雑誌名:Nat Immunol. 2022. DOI: 10.1038/s41590-021-01089-8.
 
3. 年齢でCOVID-19の重症度が異なる機序に関する総説です。多くの仮説がありますが、自然免疫、獲得免疫、異種免疫の差に加え、血管内皮機能と血液凝固機能の差が、最も可能性の高い機序と考えられます。小児はSARS-CoV-2に対する自然免疫反応、特に鼻粘膜における反応が早く強いので、迅速にウイルスを制御します。一方、成人では、過剰で調節の効かない、効果の乏しい自然免疫反応により、制御不能な炎症性サイトカイン産生と組織傷害を引き起こす可能性があります。小児では、他のウイルスの先行曝露や定期予防接種がSARS-CoV-2に対する防御的な交差反応性の抗体やT細胞と関連している可能性があります。一方、年齢による差の説明として公表されてきた他の機序、たとえば普通感冒のコロナウイルスに対する既存免疫、侵入受容体であるACE2やTMPRSS2の分布と発現の違い、曝露ウイルス量の違いなどを支持する根拠はあまりありません。
著者名:Zimmermann P and Curtis N
論文名:Why does the severity of COVID-19 differ with age?: Understanding the mechanisms underlying the age gradient in outcome following SARS-CoV-2 infection.
雑誌名:Pediatr Infect Dis J. 2022. DOI: 10.1097/INF.0000000000003413.
 
4.SARS-CoV-2感染後の小児患者の液性および細胞性免疫を評価した香港からの報告です。2020年12月1日から2021年3月31日までの期間にSARS-CoV-2感染が確認された小児31人(32%が無症状、68%が軽症)と未感染者20人のSARS-CoV-2特異的RBD IgG値、CD4+およびCD8+ T細胞応答を測定しました。回復期患者のRBD IgG値の半減期は121.6日、推定持続期間は7.9か月でした。12歳以下の患者は12歳以上患者と比較して高いRBD IgG値を示しました。 SARS-CoV-2のS、N、Mタンパク質に対するCD4+T細胞とCD8+T細胞応答は、診断後の日数に関わらず存在していました。CD4+ T細胞応答はRBD IgG値の高さと相関しており、若年者におけるT細胞依存性の液性免疫の重要性が示唆されました。今回の知見は、低年齢児を対象としたCOVID-19ワクチンの開発にも重要な示唆を与えるものと考えられます。
著者名:Tsang HY, Chua GT, KKY, et al.
論文名:Assessment of SARS-CoV-2 immunity in convalescent children and adolescents.
雑誌名:Front Immunol.2021. DOI: 10.3389/fimmu.2021.797919.
 
5.SARS-CoV-2感染に対する小児と成人の局所反応、全身反応を比較した英国からの報告です。小児19人および成人18人(無症状から重症まで)と健常対照者(41人)を対象に、鼻腔、気管、気管支および血液のサンプルを用いてシングルセルのマルチオミックスプロファイリングを行いました。健康な小児の気道では、元々インターフェロン活性化状態にある細胞がSARS-CoV-2感染後さらに活性化されており、小児においてウイルスの複製と疾患の進行が抑制される機序のひとつと推測されました。感染後の全身反応は、小児ではナイーブリンパ球の増加とナチュラルキラー細胞の枯渇が特徴的なのに対し、成人では細胞傷害性T細胞とインターフェロン刺激サブセットが有意に増加していました。鼻腔と血液のデータより、気道における強いインターフェロン反応と、全身性のインターフェロン刺激集団の誘導が示され、後者は小児患者において大幅に低下していることがわかりました。小児患者が軽症であることを説明するいくつかのメカニズムが示されました。
著者名:Yoshida M, Worlock KB, Huang N, et al.
論文名:Local and systemic responses to SARS-CoV-2 infection in children and adults.
雑誌名:Nature. 2022. DOI: 10.1038/s41586-021-04345-x.
 
(Diagnosis)
1.小児の実臨床における迅速診断検査の精度に関するメタ解析です。2020年1月から2021年5月までのMEDLINEやCochrane Databaseなど10のサイトをシステマティックレビューし、RT-PCR法を参照標準として用いた研究を抜粋し、計6,355人の小児を対象とした17研究を解析しました。全体の感度と特異度は、それぞれ64.2%(95%CI 57.4-70.5)と99.1%(同98.2-99.5)でした。症状を有する小児では、感度71.8%(63.6-78.8)、特異度98.7%(96.6-99.5)でした。無症状の小児では、感度56.2%(47.6-64.4)、特異度98.6%(97.3-99.3)でした。
著者名:Fujita-Rohwerder N, Beckmann L, Zens Y, et al.
論文名:Diagnostic accuracy of rapid point-of-care tests for diagnosis of current SARS-CoV-2 infections in children: a systematic review and meta-analysis.
雑誌名:BMJ Evid Based Med. 2022. DOI: 10.1136/bmjebm-2021-111828.
 
(Transmission)
1.COVID-19の無症候感染に関する家族内クラスター、成人、小児、医療従事者のグループに焦点を当てたコホート研究の系統的レビューとメタ分析です。家族内クラスター、成人、小児、医療従事者の間の無症候性感染率は、それぞれ15.72%、29.48%、24.09%、0%、全体で24.51%(95%信頼区間14.38~36.02)でした。集団内でのCOVID-19の拡散を最小限に抑えるために、無症候性症例のスクリーニングと濃厚接触者の胸部CTに続いて、核酸検査が陰性の場合でも疫学調査、早期の隔離、社会的距離、隔離期間の延長(最低14〜28日)等の厳密な実施が不可欠であることがわかりました。小児(特に学齢期)には、注意深い監視と感染対策(社会的距離、手指衛生、マスク着用など)の遵守が必要です。
著者名:Ravindra K, Malik VS, Padhi BK, et al.
論文名:Asymptomatic infection and transmission of COVID-19 among clusters: systematic review and meta-analysis.
雑誌名:Public Health. 2021. DOI: 10.1016/j.puhe.2021.12.003.
 
2.家庭および学校における0〜19歳の小児によるSARS-CoV-2の感染伝播について解析された研究のメタ分析です。4529の抄録から37件の研究が対象となりました。小児の相対的な伝播性は成人より低く、小児からの二次感染率は家庭内では7.6%、学校では0.7%でした。小児から小児、小児から成人への二次感染率に差は認められませんでした。いくつかの学校でクラスターが発生しましたが、学校での二次感染率は著しく低値であり、今回のパンデミックでは家庭内感染が重要であることが示唆されました。
著者名:Viner R, Waddington C, Mytton O, et al.
論文名:Transmission of SARS-CoV-2 by children and young people in households and schools: A meta-analysis of population-based and contact-tracing studies.
雑誌名:J Infect. 2021. DOI: 10.1016/j.jinf.2021.12.026.
 
(Treatment)
1.2020年3月から2020年12月の間、米国の48の小児病院のICUまたはSDU (step-down unit)に入院した18歳未満のCOVID-19患者(MIS-C患者を除く)に対する治療選択をまとめた論文です。ICU/SDUに入院した424人の小児のうち、235人(55%)がCOVID-19に対する治療を受けました。COVID-19に対する治療を受けた小児は、治療を受けなかった子供よりも年齢が高く(13.3 [5.6-16.2] vs 9.8 [0.65-15.9]歳)、基礎疾患を有することが多く(188 [80%] vs 104 [55%];difference=25%[95% CI:16-34])、肥満していることが多く(68 [33.8%] vs 20 [15.7%]; difference=18.1% [95%CI: 9.0-27.2])、多くの呼吸補助を受け(206 [88%] vs 71 [38%];difference=50%[95%CI:34-56])、高い死亡率を認めました(8 [3.4%] vs 0)。COVID-19に対する治療を受けた235人の小児のうち、172人(73%)にステロイドの全身投与がなされていました。最も一般的に投与された抗ウイルス剤はレムデシビルであり(235人中150人 [61.3%])、28人は単独、122人は他の治療との併用で使用され、治療期間の中央値は5日間でした。研究期間中にレムデシビルの使用は増加しました(3月/4月の14%から11月/12月の57%)が、ヒドロキシクロロキンは、3月/4月には27人に使用された後、5月以降は使用されませんでした。141人(60%)は2種類以上の治療を受けており、最も汎用されたのは、レムデシビルとステロイド全身投与(26.8%)、次いで全身ステロイド単独(23.0%)、レムデシビル単独(11.9%)などでした。重症小児COVID-19患者に対する治療に関するデータはなかったにも関わらず、集中治療を要する小児の55%がCOVID-19に対する治療を受けていました。
筆者名: Schuster JE, Halasa NB, Nakamura M, et al.
論文名:A description of COVID-19-directed therapy in children admitted to US intensive care units 2020.
雑誌名:J Pediatric Infect Dis Soc. 2022. DOI: 10.1093/jpids/piab123.
 
(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.アメリカの12〜18歳の小児を対象とした多施設テストネガティブ症例対照研究です。ファイザー 社製mRNAワクチン2回接種28日以降におけるMIS-C予防効果について検討しました。調査期間はデルタ株流行期で、MIS-C群102例、コントロール群 181例でした。ワクチンのMIS-C予防効果は91%で、生命維持に関する治療を受けたMIS-C 38例は全てワクチン未接種でした。
著者名mbrano LD, Newhams MM, Olson SM, et al.
論文名:Effectiveness of BNT162b2 (Pfizer-BioNTech) mRNA vaccination against multisystem inflammatory syndrome in children among persons aged 12–18 years — United States, July–December 2021.
雑誌名:MMWR. 2022. DOI:10.15585/mmwr.mm7102e1.
 
2.米国CDCは6つの小児病院と共同で、2021年7~8月(デルタ株中心)に入院時SARS-CoV-2検査陽性であった18歳未満の915人について調査しました(5病院では入院時に全例検査実施)。COVID-19関連入院は713人で、0歳が24.7%、1〜4歳が17.1%、38.1%が12~17歳でした。MIS-Cは25人(2.7%)でした。5〜11歳児の33.6%、12〜17歳児の61.4%が肥満でした。他のウイルスの重複感染を認めた15.8%のうち66.4%はRSウイルスでした。54.0%に酸素投与、29.5%がICU入室、14.5%に侵襲的人工呼吸、1.1%にECMO、1.5%が死亡しました。基礎疾患のない児(18.5%)と比較して、基礎疾患を有する児(34.7%)が有意に多く(p <0.001)、肥満児(41.1%)は、肥満のない児(23.9%)よりICU入室が多かったです(p <0.001)。ウイルス重複感染のある児はない児より酸素投与を多く必要としました(p <0.001)。調査当時、米国では12〜17歳の29%がワクチン接種を完了していましが、この調査でワクチン接種を完了していたのはわずか0.4%でした。
著者名:Wanga V, Gerdes ME, Shi DS, et al.
論文名:Characteristics and clinical outcomes of children and adolescents aged <18 Years Hospitalized with COVID-19 — six hospitals, United States, July–August 2021.
雑誌名:MMWR. 2021. DOI: 10.15585/mmwr.mm705152a3.
 
3.イタリアでの18歳未満の小児を対象とした多施設後ろ向きコホート研究です。SARS-CoV-2感染後4〜6週間以内の消化管疾患症状の有無について検討しました。685人が登録され、そのうち628人が急性COVID-19で、残り57人がMIS-Cでした。消化器症状があったのは、257人(37.5%)で、消化器症状があると2.6倍入院しやすく、3.9倍PICUに収容されました。重症の消化器疾患(急性腹症、虫垂炎、腸重積症、膵炎、腹水、および外科的診察を必要とするびまん性腺腸炎)は65人(9.5%)で、そのうち27人(41.5%)は手術を要しました。また、重症の消化器疾患は、MIS-Cの方が6.3倍多く、下痢を伴うと、腹水とびまん性腺腸炎が約3倍多かったです。
著者名:Lo Vecchio A, Garazzino S, Smarrazzo A, et al.
論文名:Factors associated with severe gastrointestinal diagnoses in children with SARS-CoV-2 infection or multisystem inflammatory syndrome.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2021. DOI:10.1001/jamanetworkopen.2021.39974.
 
(Vaccine)
1.母乳中のSARS-CoV-2特異的IgA抗体について、ワクチン接種群(28名448検体)と自然感染群(18名82検体)とを比較した成績です。特異的IgA抗体をワクチン接種後および感染後70日間測定し、抗体量はワクチン接種群と自然感染群で同等でした。自然感染群での抗体価の変動はワクチン接種群よりも大きく、また、ワクチン接種前に抗体陽性であった2名は接種後に両群より高い抗体価を示しました。
著者名:Juncker HG, Mulleners SJ, van Gills MJ, et al.
論文名:Comparison of SARS-CoV-2-specific antibodies in human milk after mRNA-based COVID-19 vaccination and infection.
雑誌名:Vaccines (Basel).2021.DOI: 10.3390/vaccines9121475.
 
2.リウマチ疾患を持つ子どもに対する新型コロナワクチンの安全性を見たトルコでの横断研究です。246名の小児が不活化ワクチン(CoronaVac)かファイザー社製mRNAワクチンを接種し、一般的な有害事象以外に3名(1名健康な子どもを含む)に入院を要する重症な有害事象(血圧の変動など)が見られました。27名の患者(12.1%)に接種1か月以内に基礎疾患の悪化が見られ、特にmRNAワクチン接種者に頻度が高かったです。リウマチ疾患を持つ子どもへの新型コロナワクチンは、受け入れることが出来る安全性があることを示しました。
著者名:Haslak F, Gunalp A, Cebi NM, et al.
論文名:Early experience of COVID-19 vaccine-related adverse events among adolescents and young adults with rheumatic diseases: A single-center study
雑誌名: Int J Rheum Dis. 2022. DOI: 10.1111/1756-185X.14279.
 
3.社会的背景を考慮したファイザー社製mRNAワクチンの副反応について検討された香港からの報告です。副反応の年齢による比較を行うためにワクチン接種後の副反応を自己申告制で行う前向きのアンケート調査を、香港でファイザー社製mRNAワクチンを接種した1,516人を対象に実施しています。参加者はワクチン接種回数に関係なく、接種後2週間の期間に認めた症状の情報を、参加者の基本的な情報(年齢、性別など)、基礎疾患の有無、服薬の状況などとともに収集しています。
モデルを使って評価した結果では、18~59歳の成人と比較して60歳以上の高齢者は副反応のリスクが低く、12~17歳は適度に高いリスクがありました。今回の結果は、自分の子どもに予防接種をするか判断しなくてはいけない両親にとって有益な情報になると思われました。
著者名:Wa Chan EW, Yin Leung MT, Wun Lau KW, et al.
論文名:Comparing self-reported reactogenicity between adolescents and sdults following the use of BNT162b2(Pfizer-BioNTech) messsenger RNA Covid-19 vaccine: a prospective cohort study.
雑誌名: Int J Infect Dis. 2022. DOI : 10.1016/j.ijid.2021.12.354.
 
4.COVID-19のパンデミックが小児・青年の予防接種および小児科健診に与えた影響を調査した米国の成績です。健診受診率と予防接種率は2018~2019年に比べて低下し、2020年4月では最も低くなりました。パンデミック初期に低下率が最も大きかったのは青年期で、最も小さかったのは0~2歳でした。2020年6月~9月にリバウンドが見られ、10月以降はパンデミック前のレベルに落ち着きました。しかし、2021年初頭に0~2歳と4~6歳でベースラインを下回りました。
著者名:Kujawski SA, Yao L, Wang HE, et al.
論文名:Impact of the COVID-19 pandemic on pediatric and adolescent vaccinations and well child visits in the United States: a database analysis.
雑誌名:Vaccine.2022.  DOI: 10.1016/j.vaccine.2021.12.064.
 
【2022年2月17日 掲載】
(Mechanism)
1.小児と成人のCOVID-19患者における細胞性および液性免疫応答の相違を評価して重症化との関連を考察した論文です。小児24名、重症成人33名、軽症成人34名を対象として血漿および末梢血単核球を採取して解析を行いました。小児ではウイルス構成蛋白に対する特異的抗体およびT細胞反応が成人より強く認められました。小児では成人よりN、M蛋白に対するCD8陽性/TNF陽性T細胞反応は強く、S蛋白に対する抗体応答は弱いことが判りました。ウイルスmRNA量は小児の方が多く検出されました。これらのデータは、SARS-CoV-2に感染した小児の感染伝播と症状発現の程度の強さが、成人とは異なるウイルスに対する免疫応答に起因することを支持するものです。
著者名:Fazolo T, Lima K, Fontoura JC, et al.
論文名:Pediatric COVID-19 patients in South Brazil show abundant viral mRNA and strong specific anti-viral responses
雑誌名:Nat Commun. 2021. DOI: 10.1038/s41467-021-27120-y.
 
2.COVID-19の重症度に関与するインターフェロン(IFN)応答についての小児を含む84名の患者の前向き観察研究です。軽度の疾患の患者よりも中等度/重度の患者は、各種のサイトカイン値が高く、SOCS1(サイトカインシグナル伝達抑制因子1をコードする遺伝子)発現が高く、逆にCIITA(クラスⅡ、主要組織適合遺伝子複合体、トランスアクチベーターをコードする遺伝子)発現が低い結果でした。これは重症患者のサイトカイン上昇は、IFN応答と相関していることを示しています。
著者名:Girona-Alarcon M, Argüello G, Esteve-Sole A, et al.
論文名:Low levels of CIITA and high levels of SOCS1 predict COVID-19 disease severity in children and adults.
雑誌名:iScience. 2021. DOI: 10.1016/j.isci.2021.103595.
 
3.小児患者におけるアレルギー性疾患とCOVID-19重症度との関係を調査することを目的とした研究です。無症候性/軽度の44名と中等度/重度/重症の31名の小児COVID-19のうち、アレルギー性鼻炎は19例(25.3%)、喘息は10例(13%)と診断されました。エアロアレルゲン感受性は26例(34.7%)で検出されました。アレルギー性鼻炎の15例(78.9%)とエアロアレルゲン感受性の21例(80.8%)は無症候性/軽度で、総IgEレベルは無症候性/軽度のCOVID-19患者で有意に高値でした。喘息患者と非喘息患者で重症度に差はありませんでした。小児のエアロアレルゲン感作およびアレルギー性鼻炎は、COVID-19の軽症化と関連している可能性があります。
著者名:Vezir E, Hizal M, Cura Yayla B, et al.
論文名:Does aeroallergen sensitivity and allergic rhinitis in children cause milder COVID-19 infection?
雑誌名:Allergy Asthma Proc. 2021.DOI: 10.2500/aap.2021.42.210087.
 
4.小児の喘息とSARS-CoV-2ワクチン接種について英国からの報告です。対象:スコットランドの5-17歳全員。期間:2020/3/1-2021/7/27。結果:8.4%に喘息あり、うち6.8%にSARS-CoV-2 PCR陽性の既往あり、うち1.5%が入院しました。喘息のない群ではPCR陽性の既往があるのは5.8%で、入院したのは0.9%でした。喘息あり群の方が入院率は高かったです。また、最近の入院歴や2年以内に2クール以上のステロイド治療がある学齢小児は、入院リスクが著しく高く、ワクチン接種が優先される集団と考えられました。
著者名:Shi T, Pan J, Katikireddi SV, et al.
論文名:Risk of COVID-19 hospital admission among children aged 5-17 years with asthma in Scotland: a national incident cohort study.
雑誌名:Lancet Respir Med. 2021.DOI: 10.1016/S2213-2600(21)00491-4.
 
(Diagnosis)
1.イスラエルにおける小児を対象とした全国的な血清学的研究の結果です。2020年1月から2021年3月までの0〜15歳のワクチンを接種していない2765名におけるSARS-CoV-2 IgG抗体の血清有病率を評価しました。血清陽性率は平均5.6%で、PCRに基づくCOVID-19の発生率より1.8~5.5倍高値でした。小児のSARS-CoV-2感染は考えられていたよりも蔓延していることが判明し、曝露を正確に推定するための血清有病率研究の重要性が強調されます。
著者名:Indenbaum V, Lustig Y, Mendelson E, et al.
論文名:Under-diagnosis of SARS-CoV-2 infections among children aged 0-15 years, a nationwide seroprevalence study, Israel, January 2020 to March 2021.
雑誌名:Euro Surveill. 2021.DOI: 10.2807/1560-7917.ES.2021.26.48.2101040.
 
2.SARS-CoV-2のウイルス量を年齢別で比較したアルゼンチンからの報告です。ウイルス量はRT-PCRのサイクル閾値(Ct値)で評価しました。0-100歳を10歳ごとに分けて比較すると、0-9歳が他の年齢層よりCt値が高い(ウイルス量少ない)と分かりました。この0-9歳をさらに0-6か月・7-12か月・1-4歳・5-9歳に分け比較すると、0-6か月は他の年齢層よりもCt値が低い(ウイルス量多い)ことがわかりました。これまで小児はウイルス量が少ないとされていましたが、細かく年齢を区切ると0-6か月だけは成人よりウイルス量が多かったです。一方で、0-6か月の症候性感染の割合は、他の年齢層と比べて同等もしくは低く、ウイルス量と重症度との間に直接的な相関関係は存在しませんでした。
著者名:Ochoa V, Erra Díaz F, Ramirez E, et al.
論文名:Infants younger than 6 months old infected by SARS-CoV-2 show the highest respiratory viral loads.
雑誌名:J Infect Dis. 2021.DOI: 10.1093/infdis/jiab577.
 
3.小児のlong COVIDに関する英国からの報告です。対象:α株流行中の英国でSARS-CoV-2のPCRを施行した2-16歳。方法:PCR陽性の患者群と陰性のコントロール群を無作為に抽出し、検査から1か月間症状に関するアンケート調査を行いました。回収率35%。結果:急性期に有症状であった、患者群の6.7%とコントロール群の4.2%は、1か月後にも症状が残存していました(P=0.24)。残存している症状は、神経学的トラブル・メンタルヘルス・感覚的トラブルに分けられ、メンタルヘルスは急性期に症状のあった患者群で多く報告されました。子供のlong COVIDとしてのメンタルヘルスを支援するために、適切な医療資源を優先しなければなりません。
著者名:Zavala M, Ireland G, Amin-Chowdhury Z, et al.
論文名:Acute and persistent symptoms in children with PCR-confirmed SARS-CoV-2 infection compared to test-negative children in England: active, prospective, national surveillance.
雑誌名:Clin Infect Dis. 2021.DOI: 10.1093/cid/ciab991.
 
4.サマースクールに参加した小児の唾液中のSARS-CoV-2抗体価を解析したスペインからの報告です。5週間以上の2回の訪問間での陽転化率は3.22%(49人/1548人)でした。これは毎週の唾液RT-PCRスクリーニングの累積感染率0.53%の6倍でした。陽転化した人のほとんどがIgG、IgA抗体ともに増加していました。主な標的抗原はヌクレオカプシドでした。抗スパイク抗体は、症状のない小児で有意に高く、COVID-19に対して防御的に働いていることが示唆されました。唾液の抗体プロファイリングは、小児における少量ウイルス暴露を検出するスクリーニングとして有用と考えられました。
著者名:Dobaño C, Alonso S, Fernández de Sevilla M, et al.
論文名:Antibody conversion rates to SARS-CoV-2 in saliva from children attending summer schools in Barcelona, Spain.
雑誌名:BMC Med. 2021.DOI: 10.1186/s12916-021-02184-1.
 
5.小児のSARS-CoV-2抗体の血清有病率を解析したカナダからの報告です。2020年10月〜2021年3月の期間に2〜17歳の小児1632人を対象にしています。平均の血清有病率は5.8%でしたが、2020年10〜11月の3.2%から2021年3〜4月には8.4%に増加していました。SARS-CoV-2抗体陽性の小児95人のうち、78人(82%)がRT-PCRを受けていないか、もしくは陰性の結果でした。また全員が軽症(52%)か無症状(48%)でした。これらの結果はRT-PCRで解析された場合に比べて、小児でより伝播が起こっていることを示唆しています。小児の抗体価をモニターし続けることが重要と考えられました。
著者名:Zinszer K, McKinnon B, Bourque N, et al.
論文名:Seroprevalence of SARS-CoV-2 Antibodies Among Children in School and Day Care in Montreal, Canada.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2021.DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2021.35975.
 
(Transmission)
1. 2021年8月下旬から9月にかけて学校が再開された英国における、その後11月
までの学齢期小児のCOVID-19の発生率についての報告です。2021年7月中旬以降
のCOVID-19の発生率の低下に続いて、2021年8月の初めから5~15歳の発生率が
急激に増加し、12~15歳が最も顕著でした。予防接種は、18歳以上は6月、16〜1
7歳は8月に開始されており、10月7日までに16〜17歳の接種率は1回目と2回目でそ
れぞれ55.4%と15.6%、12〜15歳はそれぞれ9.0%と0.2%に達しました。発端者とし
て5〜15歳が特定された家庭でのクラスターの割合は8月末から急激に増加し、12
〜15歳、5~11歳が発端者となったのはすべての家庭でのクラスターのそれぞれ
34.3%、24.3%を占めました。一方、16~18歳が発端者となった家庭でのクラスター
は徐々に減少しました。5~15歳が発端者である家庭でのクラスターの二次症例は
5~15歳(特に男児)と30〜59歳に多く、特に30〜49歳の女性が顕著でした。その
後開始された12~15歳への予防接種は子ども達と彼らの教育の機会を守る影響が期
待されます。
筆者名:Chudasama D, Tessier E, Flannagan J, et al.
論文名:Surge in SARS-CoV-2 transmission in school-aged children and household contacts, England, August to October 2021
雑誌名:Euro Surveill 2021 Dec;26(48):2101019.
 
2. カリフォルニア湾岸地域の学齢期の小児の社会的接触(人との交流)に関するデータをもとに、地域住民と12歳以上の生徒と教職員の予防接種率から、学校でのSARS-CoV-2デルタ株の感染モデルを作成しシミュレーションしました。地域住民の予防接種率が70%の場合、ユニバーサルマスキングにより、生徒の感染が57%以上減少し、生徒/教師1,000人あたりの超過感染者数を50人未満にすることができましたが、生徒/教師1,000人あたりの超過感染者数を25人未満にするためには小中学校でのコホートアプローチ(他のクラスの人との接触を75%以上減らす)が必要でした。非薬理学的予防介入(マスク着用、コホート、毎週の生徒と教職員の検査)がない場合も、地域住民の予防接種率を50%から70%に、または小学校の教師の予防接種率を70%から95%に増やすと、小学生が学校で感染する確率をそれぞれ24%と37%減少させました。デルタ変異株の流行下でも、住民の高い予防接種率とマスク着用が予防接種を受けていない小児を守ることが示唆されました。
筆者名:Head JR, Andrejko KL, and Remais JV.
論文名:Model-based assessment of SARS-CoV-2 delta variant transmission dynamics within partially vaccinated K-12 school population
雑誌名:Lancet Reg Health Am. 2021 Nov 25:100133.
 
3. Korea Disease Control and Prevention Agencyの全国疫学データを用いて、2020年2月〜12月の、韓国の全ての学校におけるCOVID-19の発生率を後方視的に調査しました。就学年齢(7〜18歳)の小児における発生率(10万人あたり63.2〜79.8人)は19歳以上の成人(10万人あたり130.4人)と比較して低率でした。中学校の52%、小学校の39%、幼稚園の3%でCOVID-19患者が発生していました。生徒の主な感染経路は、家庭内62.3%、コミュニティ21.3%であり学校クラスターは7.9%でした。教職員ではコミュニティ62.9%が最も多く、学校は8.1%でした。学校や7-18歳の就学年齢小児はCOVID-19感染拡大の主要な要因ではありませんでした。
筆者名:Choe YJ, Park YJ, Kim EY.
論文名:SARS-CoV-2 transmission in schools in Korea: nationwide cohort study.
雑誌名:Arch Dis Child. 2021.DOI: 10.1136/archdischild-2021-322355. Epub ahead of print.
 
4. COVID-19のパンデミック中に学校に通うリスクを評価した日本からの論文です。この研究では、全国でワクチン接種が開始される前の2020年7月から2021年4月の間に実施された18歳以下の無症状の接触者に対するRT-PCRスクリーニング試験の結果を用いて、学校とそれ以外の場所での二次感染率を比較しました。学校または幼稚園において感染者との接触があった1,924人のうち20 人(1.0%)がRT-PCR陽性であったのに対し、学校以外の環境下で接触があった1,379人のうち95人(6.9%)がRT-PCR陽性でした。感染の発端症例が無症候性で、学校での感染がベルヌーイの定理に従ったと仮定すると、学校での各接触後の感染確率は、日本の学校での現在の感染防止対策(すなわち、手指衛生、フィジカル・ディスタンシング、マスクの着用、効果的な換気)の下で約0.005(1接触あたり0.5%)と推定されました。すべての小児が感染を広げることができると仮定すると、学校で発端症例が10日間の感染期間に1日あたり20〜30人の生徒と接触し続けるとすると、二次症例の期待値は≧1になります。結論として、現在の日本の学校での感染予防策では、学校での述べ200回の接触で1人の2次感染が起こります。この感染率を考えると、学校における現在の感染予防対策の遵守や、発端者の早期発見と隔離が、学校でのCOVID-19の感染を防ぐ上で有効と考えられます。
筆者名:AkaishiT, Kushimoto S, Katori Y, et al.
論文名:COVID-19 Transmission at Schools in Japan
雑誌名:Tohoku J. Exp. Med., 2021. DOI:10.1620/tjem.255.239
 
5. COVID-19パンデミック中は、生徒、教師、その他の教育従事者の間で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染が拡がる可能性があるため、従来通りの対面授業を設定することに制限が加えられています。コンピューターによる流体力学シミュレーションを用いて、温度を制御された大学の教室で、顔面被覆、各種換気法、空気清浄機/洗浄器、デスクシールドを用いた感染拡大軽減戦略を体系的に評価しました。顔面被覆と感染源コントロールが最も効果的で、それに次いで効果的だったのは適切に設計された換気システムでした。デスクシールドの使用も検討されましたが、効果はなさそうでした。最善の感染拡大軽減策は、顔面被覆と換気システムに空気清浄機を組み合わせる複合的対策であることが示されました。研究はさらに小学校において、またデルタ変異株を考慮して行われました。小さな子どもでは肺からの呼気量もウイルスの排出量も少ないことが伝播率の減少につながることが観察され、成人の教室で複数の感染拡大軽減策を取った上で観察された伝播率よりもさらに低い値でした。デルタ変異株は、成人において、ウイルス排出量の増加を考慮して評価すると、伝播率がより高くなることが示されましたが、感染拡大軽減策をさらに強化することによって制御できるレベルでした。以上の結果は、年齢や変異株を考慮した上で、いくつかの感染拡大軽減策を取ることで対面での学校生活に戻すことが可能だということを示しています。
筆者名:Foster A, Kinzela M.
論文名:SARS-CoV-2 transmission in classroom settings: Effects of mitigation, age, and Delta variant.
雑誌名:Physics of Fluids 33, 113310 (2021);
 
(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1. IVIGは、MIS-Cの初期治療に用いられますが、水分量の負荷が多く、心機能を悪化させる可能性があります。このイタリアでの研究では、MIS-Cの初期治療にIVIGを含まないプロトコールで、その効果を後方視的に解析しました。計31名の患者がこのプロトコールで治療され、その内、25名は高容量のメチルプレドニゾロン(MP)(10 mg/kg)でした。全体の67.7%が初期治療に反応しましたが、反応しない場合、アナキンラ(25.8%)、MPの増量(6.5%)、IVIG投与(12.9%)なども行われました。適切なタイミングでのMP使用と注意深い体液管理は、MIS-C患者の予後を改善する可能性があります。
論文名:MIS-C Treatment: Is IVIG Always Necessary?
著者名:Licciardi F, Baldini L, Dellepiane M et al.
雑誌名:Front Pediatr.2021.DOI:10.3389/fped.2021.753123.
 
2. 小児MIS-C患者の2週後と8週後の予後に関するスウェーデンの前向き調査成績です。2020年12月~2021年5月にWHOの診断基準を満たした152例のうち133例が研究に参加しました。2週後には43%(n=119)で血球数、血小板数、アルブミン値、心電図、心エコーに異常所見がありました。8週後には36%(n=89)が何らかの症状を訴えましたが、臨床所見に異常を認めたのはわずかでした。最も多かった訴えは倦怠感(14%)でした。心エコーの異常所見を5%(n=67)に認めました。年長児と集中治療を要した児は症状や心エコーの異常所見を呈しやすく、フォローアップが重要です。
著者名:Kahn R, Berg S, Berntson L, et al.
論文名:Population-based study of multisystem inflammatory syndrome associated with COVID-19 found that 36% of children had persistent symptoms
雑誌名:Acta Paediatr. 2021.DOI:10.1111/apa.16191. Online ahead of print.
 
3. 小児MIS-C患者における便サンプル陽性率を評価し、MIS-CとCOVID-19に入院した小児の陽性率を比較することを目的とした研究です。イタリアのある小児病院に入院した63人の小児患者(MIS-C 31人、コロナ患者32人)から便検体を収集したところ、16(25%)の便検体からSARS-CoV-2のmRNAが検出されました。このうち12検体はコロナ患者のもので(陽性率39%)でMIS-C患者の便検体の陽性率は12.5%でした(4/32)。ただし、コロナ患者の便検体は中央値が感染後5日目であったのに対し、MIS-C患者は27.5日後でした。SARS-CoV-2のmRNAを便意認めたMIS-C患者とそうでなかった患者の胃腸炎症状の頻度に差はありませんでした。MIS-C患者の1割は長期間便からウイルスがSARS-CoV-2のmRNAが認められることから体内のウイルスの循環のメカニズムや環境中への拡散について今後調査すべきであると結論付けています。
著者名:Parodi E, Carpino A, et al.
論文名:Detection of faecal SARS-CoV-2 RNA in a prospective cohort of children with multisystem inflammatory syndrome (MIS-C)
雑誌名:Epidemiol Prev 2021.DOI: 10.19191/EP21.6.120
 
4. MIS-Cと川崎病(KD)を鑑別するためのスコア(KMDscore)を新たに作成し評価した論文です。MIS-C 72例とKD 147例について後方視的に検討しました。CRP>11mg/dl(18点)、D-dimer>607ng/ml(27点)、年齢>5歳(30点)、血小板減少(<150×103/μL)(25点)、消化器症状あり(28点)の5項目の有無により、スコアが55点より高い場合には87.5%の感度と89.1%の特異度でMIS-Cと診断することができました。
著者名:Kostik MM, Bregel LV, Avrusin IS, et al.
論文名:Distinguishing Between Multisystem Inflammatory Syndrome, Associated With COVID-19 in Children and the Kawasaki Disease: Development of Preliminary Criteria Based on the Data of the Retrospective Multicenter Cohort Study
雑誌名:Front Pediatr. 2021 Nov10;9:787353. DOI:10.3389/fped.2021.787353. eCollection 2021.
 
5. MIS-C患者の発症と入院の必要性について、基礎疾患との関与を基礎疾患の2つのスコア(Charlson (CCI) 、Pediatric comorbidity index (PCI))との関係を見たトルコの1施設からの研究です。研究に参加した1340名のCOVID-19症例の内、213 (15.9%)に1つ以上の基礎疾患があり、6名(0.4%)がMIS-Cを発症しました。MIS-Cの発症とスコアには関係はありませんでしたが、患者のCCIスコアが2以上、PCIスコアが4より高いことが入院の必要性と関与していました。CCIとPCIスコアは、COVID-19患者の入院の必要性と予後の予測に使うことができます。
著者名:Ergenc Z, Kepenekli E, Çetin E, et.al.
論文名:Incidence of MIS-C and the Comorbidity Scores in Pediatric COVID-19 Cases
雑誌名:Pediatr Int. 2021.DOI: 10.1111/ped.15084.
 
6. 米国のサーベイランスに報告されたMIS-C患者の基準を満たした4470例のまとめ報告です。調査期間中最も直近の流行期においては年齢中央値9歳、男性優位となり、全観察期間を通じて血液学的結果と重度胃腸炎症状を認める一方、心血管合併症、人工呼吸器やECMOの使用、死亡率は減少傾向にありました。今後これらのデータがデルタ株以降のSARS-CoV-2の出現やワクチン接種の増加によってどのように変化していくのか注視が必要です。
著者名:Miller A, Zambrano L, Yousaf A, et.al.
論文名:Multisystem Inflammatory Syndrome in Children-United States, February 2020-July 2021
雑誌名:Clin Infect Dis. 2021.DOI: 10.1093/cid/ciab1007.
 
7. MIS-Cの頻度の高い画像所見を評価した研究です。2020年8月から2021年3月までの間にMIS-Cと診断された47名(男性26名、女性21名)のMIS-C患者の画像所見をまとめました。最も頻度の高い所見は、胸部X線で肺門部から傍気管支の肥厚(46%)でした。腹部超音波などの画像所見では、腸管膜の炎症 、肝脾腫、門脈周囲の浮腫、浮腫、腹水、腸管壁の肥厚などが頻度の高い所見でした。
著者名:Ucan B, Sahap SK, Cinar HG, et al.
論文名:Multisystem inflammatory syndrome in children associated with SARS-CoV-2: extracardiac radiological findings
雑誌名:Br J Radiol.2022. DOI: 10.1259/bjr.20210570.
 
8. SARS-CoV-2感染症の小児において、1400を超える蛋白質の血漿プロテオーム解析を行った成績です。MIS-Cと、炎症症候群であるマクロファージ活性化症候群(MAS)および血栓性微小血管症(TMA)との間に共通する蛋白質の特徴を認めました。また、PLA2G2AがTMAと関連したMIS-Cの重要なマーカーであることを示しました。MIS-C患者において、IFN-γの反応は調整されておらず、その値は臨床的な不均一性を表していることを見出しました。
著者名:Diorio C, Shraim R, Vella LA, et al.
論文名:Proteomic profiling of MIS-C patients indicates heterogeneity relating to interferon gamma dysregulation and vascular endothelial dysfunction
雑誌名:Nat Commun. 2021.DOI:10.1038/s41467-021-27544-6.
 
(Vaccine)
1. COVID-19が小児の必須クチン供給へ与えている影響とその対策に関する論説です。COVID-19流行前でも年間2000万人の乳児がワクチンを十分に受けられる状況ではありませんでした。COVID-19流行により、COVID-19ワクチンの生産が優先されることにより、他のワクチン供給に負の影響が出ています。ワクチン生産に必要なシリンジやバイアルを含む資材の不足、製造に必要な施設、経験豊富な人材も含む製造能力の制限は、実際に肺炎球菌結合型ワクチン、麻疹含有ワクチン、DPTワクチン、不活化ポリオワクチンの一時的な供給不足を招きました。また、ワクチン製造後の審査の遅れやHIVワクチンや結核ワクチンなど新規ワクチンの開発の遅れも懸念されます。
このような状況を改善するためには、COVID-19ワクチンで実現したように、様々な関連機関間の規制を緩和し効率的な審査を行うこと、貿易の障壁を減らしワクチン製造に必要な資材をより入手しやすい状況を作ること、ワクチンの需要を世界的な規模で予測するための質の高いデータを各国が提供することが望まれます。
また、長期的な視点に立つと、COVID-19ワクチンの需要が落ち着いた段階で、その規模を縮小する際に、他のワクチン供給や開発に活用することを考えていくべきでしょう。将来の緊急対応が必要な際に地球規模で対応できるシステムを作ること、COVID-19ワクチンで開発された核酸やベクターワクチンの技術を他のワクチン開発に応用することも望まれます。上記の戦略は、より効率的で回復力のあるワクチン製造エコシステムを生み出し、将来のパンデミックワクチンへの迅速で公平な供給が可能になり、他の必須ワクチンの供給も保証されます。
著者名:Cernuschi T, Malvolti S, Downham M, et al.
論文名:COVID-19 impact on infant and adolescent vaccine supplies.
雑誌名:Science. 2021.DOI: 10.1126/science.abl7019.
 
2. SARS-CoV-2感染後やワクチン接種後のSARS-CoV-2に対する防御抗体レベルの上昇には、個人差があります。しかしながら、変異株に対する交差免疫反応も含め、どのような臨床的背景が抗体上昇に関与しているのか十分に明らかになっていません。この研究は、米国St. Jude小児病院の399人のスタッフを対象とした前向き観察コホート研究です。SARS-CoV-2感染後、mRNAワクチン接種後、ワクチン接種後に感染した者について、5種類のウイルス株のスパイク受容体結合ドメインのIgG抗体をELISA法で測定し、比較検討しました。全てのウイルス株に対する交差反応性抗体上昇は、ワクチン接種後、特に接種後に感染した者が高く、また、感染により重症化した者、脂肪組織機能不全がある者、白色あるいは黒色人種で高い傾向が認められました。本研究結果は、ワクチンの追加接種をどの集団に行うかという点に関して、有益な情報を提供すると考えられました。
著者名:Tang L, Cherry S, Tuomanen EI, et al.
論文名:Host predictors of broadly cross-reactive antibodies against SARS-CoV-2 variants of concern differ between infection and vaccination
雑誌名:Clin Infect Dis. 2021.DOI: 10.1093/cid/ciab996.
 
3. 成人へのSARS-CoV-2ワクチン接種率が、12歳未満の小児へのワクチン接種に対する保護者の意欲に影響するかどうかを、カナダ、イスラエル、米国で調査した報告です。対象は救急外来を受診した12歳未満の小児の保護者720例(カナダ441、イスラエル167、米国112)。Ourworldindata.orgから入手した2020年12月~2021年3月の国別接種率と、小児用ワクチン承認時に保護者が小児にワクチンを接種させようという意欲との相関が調べられました。強力にワクチン接種プログラムが遂行されたイスラエルと比較的強力に遂行された米国では、12歳未満の小児へのCOVID-19ワクチン接種に対する保護者の意欲は高い傾向があり、成人へのワクチン接種が遅れていたカナダでは、小児へのワクチン接種の意欲は低い傾向がありました。12歳未満の小児へのワクチンを接種させようという保護者の意欲は、その国の成人におけるワクチン接種率と相関することが示唆されました。
著者名:Ran D. Goldmana RD, Bone JN, Gelernter R, et al.
論文名:National COVID-19 vaccine program progress and parents’ willingness to vaccinate their children.
雑誌名:Hum Vaccin Immunother. 2021.DOI:10.1080/21645515.2021
 
4. COVID-19 m-RNAワクチンによって誘導される母乳中の免疫について検討された報告です。対象の授乳婦は、2020年12月~2021年2月に優先接種された医療従事者の14人と、2021年6月~9月に接種された一般住民の9人の計23人で、接種前後に血液と母乳のペア検体が採取されました。21人(訳者注:本文には20人とあるが表では21人)にファイザー社製BTN162b2を、2人にモデルナ社製 mRNA-1273が接種されました。COVID-19 m-RNAワクチン接種後、母乳中の抗スパイクIgA抗体上昇とスパイク反応性T細胞の増加を認めました。授乳婦に対するCOVID-19 m-RNAワクチンは、乳児に即時的な免疫防御(抗スパイクIgA抗体)と長期的な免疫防御(スパイク反応性T細胞)の両方を提供する可能性が示唆されました。今後、より多くの症例数を用いた縦断的研究による解明が必要と考えられました。
著者名:Gonçalves J, Juliano AM, Charepe N, et al.
論文名:Secretory IgA and T cells targeting SARS-CoV-2 spike protein are transferred to the breastmilk upon mRNA vaccination.
雑誌名:Cell Rep Med. 2021.DOI: 10.1016/j.xcrm.2021.100468
 
【2022年1月27日 掲載】
(Mechanism)
1.110人の小児COVID-19症例(年齢中央値:10歳、範囲:生後2週-21歳)の気道スワブ検体を用いて、RT-PCRによるウイルス定量、ウイルス培養による細胞変性効果と半定量的ウイルス力価を評価しました。年齢はSARS-CoV-2のウイルス量に影響を与えませんでした。小児は最初の5日以内に最も高い感染性を示しました。一方で重症度はウイルス量の増加とは相関しませんでした。以上より、症状の有無に関わらず、小児は大量の増殖能のあるSARS-CoV-2を保持しうるため、ウイルスが次々と遺伝的変異する場所となり得ます。小児におけるSARS-CoV-2感染動態を明確に理解することは、COVID-19の影響を軽減するための公衆衛生政策と予防接種戦略を合理的に開発するために重要です。
筆者名:Yonker LM, Boucau J,Regan J, et al.
論文名:Virologic features of SARS-CoV-2 infection in children.
雑誌名:J Infect Dis.2021.DOI:10.1093/infdis/jiab509. Epub ahead of print.
 
(Diagnosis)
1.小児のCOVID-19の特徴を明らかにするために、スペインで実施された324人の小児(年齢中央値4.5歳[IQR、0.6–11.6])を対象にした多施設共同コホート研究です。SARS-CoV-2感染後RT-PCR法で陰性になるまでの期間および期間延長要因、抗体陽転割合と抗体陽転が起こらない要因に関して検討されました。フォローアップ期間の中央値は20日[IQR13~32、範囲0~120]で、RT-PCR法で陰性になるまでの時間の中央値は17日[四分位範囲8–29]、35%は4週間以上陽性でした。Ct値は時間とともに増加しました。性別、疾患の重症度、免疫抑制薬の使用、臨床症状による違いはみられませんでした。136人の小児でペア血清による抗体測定が実施され、24%の小児は感染後の抗体陽転がなく、特に、入院しなかった症例、RT-PCR法でSARS-CoV-2クリアランスの早かった症例と関連していました。
著者名:Tagarro A,Sanz-Santaeufemia FJ, Grasa C, et al.
論文名:Dynamics of RT-PCR and serologic test results in children with SARS-CoV-2 infection.
雑誌名:J Pediatr.2021.DOI:10.1016/j.jpeds.2021.09.029.
 
(Transmission)
1.新潟県内で2020年11月-12月に発生した小学校でのCOVID-19クラスターの報告で、26名(教師13名、児童9名、その家族4名)に感染が広がりました。それぞれの感染率は39%(13/33)、4%(9/211)、6%(4/65)と教師の感染率が高かったことが分かりました。3名の教師がこのクラスターの発端でしたが、その内の2名は、症状がありながらも仕事をしていました。また、職員室の環境と感染対策が不十分だったことも感染が広がった要因として考えられました。学校活動を安全に継続するためには、子どもだけでなく、教師とその環境の適切な感染対策が重要であると結論付けています。
著者名:Aizawa Y, Shobukawa Y, Tomiyama N, et al.
論文名:Coronavirus disease 2019 cluster originating in a primary school teachers’room in Japan
雑誌名:Pediatr Infect Dis J.2021 Nov;40(11):e418–e423.
 
2.ブラジルにおけるCOVID-19と診断されたエッセンシャルワーカーの5-19歳の家族267人を対象としたSARS-CoV-2の2次感染の調査を目的とした横断研究の結果です。陽性者でCOVID-19に関連のある症状(嗅覚、味覚障害とインフルエンザ様症状)を有した者は25.1%(95%信頼区間20.3-30.6%)でした。陽性者の半数以上が症状を認め、鼻づまり、頭痛、咳、筋肉痛、鼻汁、嗅覚障害の順で発生割合が高くなっていましたが、ポアソン回帰分析ではSARS-CoV-2感染と症状に有意な関連がある症状は発熱、鼻づまり、食欲不振、吐き気、味覚、嗅覚障害との結果になりました。また、家族内に2人以上COVID-19の成人患者がいた方が5-19歳への感染伝播が起こりやすいという結果になりました。今回の調査結果では、感受性のある小児や青少年は家族内感染の重要な因子にはならないという結果になりました。
著者名:Afonso TE,Marques SM, Costa LD, et al.
論文名:Secondary household transmission of SARS-CoV-2 among children and adolescents:Clinical and epidemiological aspects
雑誌名:Pediatric Pulmonology,2021.DOI:10.1002/ppul.25711
 
3.発症から7日未満の小児COVID-19患者から鼻咽頭ぬぐい液と咽頭ぬぐい液を採取してRT-PCR法を行い、ORF1ab、NおよびS遺伝子を標的としたCt値を成人患者と比較した成績です。対象の内訳は2か月から2歳未満の乳児21名、2歳以上12歳未満の小児40名、12歳以上18歳未満の青年22名、成人293名。18歳未満の全て、および各年齢群のCt値は、各遺伝子標的別および3つを併せた平均値のいずれについても成人のCt値と有意差を認めませんでした。地域社会における感染拡大に小児も関与する可能性があります。
著者名:Polese-Bonatto M, Sartor ITS, Varele FH, et al.
論文名:Children have similar reverse transcription polymerase chain reaction cycle threshold for severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 in comparison with adults
雑誌名:Pediatr Infect Dis J.2021.DOI:10.1097/INF.0000000000003300
 
4.オマーンでは、20-30名程度の多くの家族、親戚が1家族で生活しており、その多くは小児です。そのオマーンで2020年2-5月に行われた18歳未満の小児1026名のSARS-CoV-2伝播の後方視的研究です。小児感染者の28.5%が無症状で、50名の小児が最初に感染したと同定され、計107名(成人86名、小児21名)に感染を伝播しました。伝播の危険因子の解析では、有意なものはなく、年齢、性別、PCRのCt値などは、関与していませんでした。オマーンにおいて、小児は、SARS-CoV-2の伝播に大きな役割は果たしていないと結論付けています。
著者名:Alqayoudhi A, Manji AA, Al khalili S, et al.
論文名:The role of children and adolescents in the transmission of SARS-CoV-2 virus within family clusters: A large population study from Oman
雑誌名:J Infect Public Health.2021 Nov; 14(11):1590–1594.
 
5.イタリアの2医療機関においてSARS-CoV-2陽性の母親から生まれた新生児の出産直後並びに生後1か月における鼻咽頭ぬぐい液によるPCR検査を実施し、垂直感染と新生児期のSARS-CoV-2感染について検討した研究です。2020年4月から12月の間にこの2つの医療機関で出産した2,782人のうち、179人が出産時にSARS-CoV-2陽性でした。この母親たちから181人の赤ちゃんが生まれ、5人が出生時SARS-CoV-2陽性、1か月後の検査では156人中151人が陽性でした。出産時、月齢1か月時に陽性だった新生児は全員無症状でした。正しい感染対策を実施したうえでの母子同室、母乳育児が勧められ、それらによる感染のリスクは上がりません(RRはそれぞれ0.464[95% CI:0.12-1.79]およびRR=1.43 [95% CI:0.16-33.45])でした。今回の結果は他の周産期における調査と類似した結果であり、母親の症状が軽い、あるいは無い場合、感染対策を十分に行ったうえであれば母子同室や母乳育児が安全に実施できることが示されました。
著者名:Capozza M, Salvatore S, Baldassarre ME, et al.
論文名:Perinatal transmission and outcome of neonates born to SARS-CoV-2-positive mothers: the experience of 2 highly endemic Italian regions
雑誌名:Neonatology, Neonatology2021.DOI:10.1159/000518060
 
6.SARS-CoV-2の伝播における小児の役割についてベルギーの小学校で調査した成績です。小児63名、成人(保護者、学校職員)118名から採取した咽頭洗浄液の定量的RT-PCR検査を毎週1回、計15週間行いました。陽性を示したのは小児13名(20.6%)、成人32名(27.1%)でした(p=0.34)。小児は成人よりも無症候性が多く(46.2%対12.9%)、症状の持続中央値も短期間(0.0日対15.0日)でした。ほとんどの伝播は教師間、児童間で発生し、家庭への伝播は学校で感染した児童、教師に由来しているようでした。検査の強化を含め、学校内の感染を減らす追加措置を検討する必要があります。
著者名:Meuris C, Kremer C, Geerinck A,et al.
論文名:Transmission of SARS-CoV-2 after COVID-19 screening and mitigation measures for primary school children attending school in Liège, Belgium
雑誌名:JAMA Netw Open.2021.DOI:10.1001/jamanetworkopen.2021.28757.
 
(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.末梢血中の幼弱顆粒球の比率であるdelta neutrophil index(DNI)が、MIS-Cの診断および重症度の指標として有用であるか否かを評価するため、トルコで行われた後方視的観察研究です。83名のMIS-C、113名のCOVID-19、102名の健常者のCRP、好中球絶対数、リンパ球絶対数、DNI、および血小板数を調べた。DNIは、MIS-Cで4.60±5.70%、COVID-19で0.30±0.99%、コントロール群で0.20±0.56%であり、MIS-Cを予測するカットオフ値は0.45%でした。DNIの感度、特異度、陽性予測率、陰性予測率はそれぞれ79.5%、97.1%、95.7%、85.3%であり、CRPの次に良好でした。また、MIS-C群の中では、軽症では1.22%、中等症では4.3%、重症では5.7%であり、DNIはMIS-Cの重症度と強い相関がありました。DNIはCRP、好中球絶対数、リンパ球絶対数、血小板数と同様にMIS-Cの診断と重症度の指標として有効でしょう。
著者名:Karagol C, Tehci AK, Gungor A,et al.
論文名:Delta neutrophil index and C-reactive protein: a potential diagnostic marker of multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) with COVID-19
雑誌名:Eur J Pediatr.2021.DOI:10.1007/s00431-021-04281-y.
 
2.MIS-C患者の詳細な免疫プロファイリングにより、急性期は好中球、単球、CD8陽性メモリーT細胞の高度な活性化とB細胞形質芽球、二重陰性B細胞の増多が認められました。治療後の回復期には単球のCD163発現増加、未成熟好中球の出現、一部の患者では血漿アルギナーゼの一過性増加など、症状改善に関連する免疫学的所見を特定しました。MIS-C、川崎病、およびCOVID-19には共通する複数の特徴があり、血漿サイトカインプロファイルは、IL-1やTNF-αではなくIL-6を阻害することによる改善効果を示唆しています。これら結果から、MIS-C治療の標準薬剤であるIVIGの作用機序が推定されました。また、血漿C5b-9の高値より全身性の補体活性化がMIS-Cでは起こっており、補体阻害薬も治療の選択肢と考えられました。
著者名:Syrimi E, Fennell E, Richter A, et al.
論文名:The immune landscape of SARS-CoV-2-associated multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) from acute disease to recovery
雑誌名:iScience. 2021.DOI:10.1016/j.isci.2021.103215.
 
3.アトランタの小児病院に入院した74例(MIS-C:25例、COVID-19:35例、コントロール:14例)を対象として、免疫学的解析を実施しました。抗体プロファイリングにより、SARS-CoV-2のNSP2とprefusion spike proteinに対する高い抗体親和性が、臨床的重症度を下げることに関連していることが判りました。血清サイトカインプロファイリングにより、IL-2,6,10,13,17が重症COVID-19およびMIS-C例で高値を示し、TNFαはCOVID-19例と比較するとMIS-C軽症例でも上昇していることが明らかになりました。まだよく理解されていない小児症例の病態を免疫学的な側面から質・量的に解析することで、より有効な血清診断、治療、次世代のワクチン開発につながることが期待されます。
著者名:Ravichandran S, Tang J, Grubbs G, et al.
論文名:SARS-CoV-2 immune repertoire in MIS-C and pediatric COVID-19
雑誌名:Nat Immunol.2021.DOI: 10.1038/s41590-021-01051-8.
 
4.LA小児病院の川崎病データベースを用いて、post-pandemic(2020年3月1日から8月31日)の川崎病(MIS-C症例を含む)群と、pre-pandemic(2016年から2019年の3月1日から8月31日)の川崎病群で臨床症状、患者背景等を比較解析しています。Post群は57名の患児が登録されており、そのうち28例がCDCのMIS-Cガイドラインを満たしていました。Preに比しpostでは心合併症を伴った症例が3から4倍登録されており、2つの観察期間で心合併症を認めた患児だけについて比較すると、post群が有意に年長、体重が重く、特にpost群をMIS—Cに限定すると年齢、身長にも有意差が認められ、MIS-Cが年長児に発症していたことが示されました。さらに、冠動脈瘤の発生率には有意差はありませんでしたが、左心機能の低下を認めた症例はpost群で有意に多かったです。
著者名:Pick J, Rao MY, Dern K, et al.
論文名:Coronary artery changes in patients with multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) : Los Angeles experience
雑誌名:J Pediatr.2021.DOI:10.1016/j.jpeds.2021.09.026.
 
5.トルコからのMIS-Cに中枢神経合併症を併発した3歳男児例の症例報告です。発熱、消化器症状、発疹を認めCOVID-19患者との接触歴はありませんでしたが、ショック症状、意識レベルの低下を認め、PICUにて挿管人工呼吸管理となりました。SARS-CoV-2のPCRは陰性でしたが、抗体陽性であったためMIS-Cと診断されました。髄液には異常を認めませんでしたが、MRIで小脳に異常信号を認めました。低血圧を認めたため、アドレナリン、ノルアドレナリン投与、さらにグロブリン大量療法、ステロイド投与(corticosteroids を30mg/kgで5日間)が施行されました。意識レベルは改善し、失調性歩行などの小脳症状を認めましたが、16病日には神経症状が改善し退院しました。本症例は中枢神経合併症を併発したMIS-Cの初報告です。
著者名:Akçay N, Oğur M, Emin Menentoğlu M, et al.
論文名:Acute cerebellitis in MIS-C: a case report.
雑誌名:Pediatr Infect Dis J.2021.DOI: 10.1097/INF.0000000000003358.

 

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