各種活動

 

原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文、レポート

 原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文・レポートを掲載いたします。
診療の参考となる論文を今後紹介してまいります。
 
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
 
【2022年11月25日掲載】
著者名:Fabiola Di Dato, Angelo Di Giorgio, Claudia Mandato, et al
論文名:Italian children seem to be spared from the mysterious severe acute
hepatitis outbreak: A report by SIGENP Acute Hepatitis Group
雑誌名:Journal of Hepatology 2022 vol. 77 1211–1213:
DOI:10.1016/j.jhep.2022.06.026
 
 小児の原因不明の重症急性肝炎に関してイタリアからの報告です。調査研究は、イタリア小児消化器病学、肝臓学、栄養学学会(SIGENP)の肝臓グループによって2022年1月から5月まで行われた。イタリア全国に分布する主要な小児肝臓ユニットを全て含むメーリングリストを用いて、原因不明の肝炎の定義を満たす症例に関し、オンラインで実施された。調査目的は、症例の人口統計学的および臨床的特徴・特定された病因・診断のために行った検査と結果・患者さんの転帰を知ることと、過去3年間に定義を満たしていた症例と比較することを目的とした。
 結果:イタリアの44の小児センター(27の小児肝移植センターを含む)から44人の患者が報告され、うち6人は定義満たさず除外、4人は後に病因が判明し(自己免疫性肝炎2人 セリアック病1人 マイコプラズマ感染症に合併した筋炎)除外した。残りの34人の年齢中央値は51.5か月(1~171か月)で、5歳未満が18人(52.9%)を占めていた。主な臨床症状は、発熱(52.9%)、嘔吐(47.1%)、腹痛(38.2%)、下痢(26.5%)、黄疸(20.6%)であった。
新型コロナワクチンの接種をしていたのは、31人中4人(12.9%)のみで、急性肝炎の原因がワクチンではないことを支持している。COVID-19罹患歴があるのは38.2%で、そのうちの53.8%は発症前3か月以内の感染であった。
病原体は34人中21人(61.8%)で検出され、そのうち12人(57.1%)は複数に感染していた。21人中9人で、CMV、EBV、リーシュマニア、大腸菌、HHV-6,HHV-7、ノロウイルス、ロタウイルスの1つ以上が検出された。SARS-CoV-2は、4人(11.8%)で陽性で、アデノウイルスは26人で検査され6人(23.1%)が陽性であった。SARS-CoV-2とアデノウイルスの重感染はいなかった。
追跡調査ができたのは26人で、うち20人(76.9%)は、合併症はなく回復、5人(19.2%)は、後遺症(再生不良性貧血1人、骨髄形成不全1人、トランスアミナーゼの持続もしくは再発性の上昇2名)を残した。肝移植を受けたのは1人(4%)のみであった。
 全ての小児センターで、過去3年と比較して重症肝炎の症例数は増加していなかった。

ページの先頭へ戻る