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小児におけるインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行に備えて~医療機関の皆様へ~

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2022年11月2日
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会
日本小児科医会公衆衛生委員会
 

 2022/23シーズンは、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)が同時に流行し外来医療の逼迫が懸念されています1)。そのような事態を想定して、一部の医療機関に負担が集中しないよう、受け入れ態勢を広く構築することが重要で、各医療機関において小児発熱患者への対応をあらかじめ検討しておくことが大切です。

◯ ワクチン接種の推奨
 日本小児科学会、日本小児科医会は共に小児に対するインフルエンザワクチン接種および5~17歳のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨しています2)~5)
 インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは同時接種も含めた接種間隔の制約がなくなりました6)。なお、新型コロナワクチンの前後にインフルエンザ以外の予防接種を行う場合は、原則として新型コロナワクチン接種と13日以上の間隔を空けることになっています6)。接種にあたっての具体的な注意などについては厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_children.html)や日本小児科学会(http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=379)、日本小児科医会(https://www.jpa-web.org/blog/uncategorized/a299)のそれぞれのホームページなどを参考とし、ワクチン接種の計画を保護者とともに積極的に立てることが望まれます。

◯ かかりつけ医としての小児発熱患者の診療
 2022/23シーズンの発熱患者は、年齢やワクチン接種歴にかかわらず、インフルエンザとCOVID-19の鑑別が重要となります7)。また両者の同時感染も考えられます。かかりつけ医などは、地域の流行状況を踏まえて、PCRや抗原検査などの診断に必要な各種検査を適切に行い、両者を鑑別しながら診療する必要があります。
 検査適応や注意深い経過観察、入院適応を適切に判断できるように、基礎疾患の有無、患児の体質、既往歴、予防接種歴などの患者情報をあらかじめ把握しておくことが重要です。そのためには、これらの多くを既に把握しているかかりつけ医による診療が重要になります。
 医療機関では、発熱を主訴とした小児が直接発熱外来や救急外来を受診する前に、かかりつけ医に相談・受診できる体制の整備やかかりつけ医自身の事前の準備も必要です。

◯ インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬
 日本小児科学会は、幼児や基礎疾患があり、インフルエンザの重症化リスクが高い患者や呼吸器症状が強い患者には抗インフルエンザ薬の投与を推奨しています2)。発症後48時間以内の使用が原則ですが、重症化のリスクが高く症状が遷延する場合は発症後48時間以上経過していても投与を考慮してください。

◯ オンライン診療の適切な活用
 インフルエンザとCOVID-19が同時流行した際に、小児医療の逼迫を避けるために、重症化リスクの低い軽症者など、一定の条件を満たせば電話診療を含めたオンライン診療も考慮されます。ただし、急性疾患罹患時やオンライン診療後に症状の悪化が生じた際は速やかにかかりつけ医による対面診療を実施するなど8)、適切に対面とオンラインを組み合わせて診療を行ってください。

 

 2022/23シーズンに予想されるインフルエンザとCOVID-19の同時流行による混乱と一部の医療機関への負担集中、医療逼迫を回避するためにも、病院・診療所の区別なく、かかりつけ医として発熱患児への適切な対応が必要です。
 さらに両感染症の発生数と重症化を減らすために、インフルエンザワクチン・新型コロナワクチン接種もお勧めください。

文献

1) インフルエンザとの同時流行を想定した第8波対策の課題についての記述疫学的検討.第99回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード.2022年9月14日 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000990103.pdf

2) 2022/23 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 2022年9月19日 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20220926-1flu.pdf

3) 5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 2022年9月19日(改訂) http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=451

4) 子どもの新型コロナワクチン接種を奨める医療関係者の皆様へ 日本小児科医会2022年6月22日 https://www.jpa-web.org/blog/uncategorized/a287

5) 2022 年冬のインフルエンザ、新型コロナの同時流行へのワクチン対策 日本小児科医会2022年10月3日 https://www.jpa-web.org/blog/uncategorized/a299

6) 5~11歳の子どもへの接種(小児接種)についてのお知らせ. 厚生労働省ホームページ. 2022年9月29日閲覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_children.html

7) 一般社団法人日本感染症学会 提言 2022-2023年シーズンのインフルエンザ対策について(医療機関の方々へ). 日本感染症学会. 2022年7月26日 https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=47

8) 小児の外来診療におけるコロナウイルス感染症2019(COVID-19)診療指針 第2版. 小児COVID-19合同学会ワーキンググループ(日本小児科学会・ 日本小児感染症学会・日本外来小児科学会). 2021年9月29日  http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/COVID-19_sisin_2_20210929.pdf

 


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