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原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文、レポート

 原因不明の小児の急性肝炎に関連した論文・レポートを掲載いたします。
診療の参考となる論文を今後紹介してまいります。

日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会

【2022年10月28日掲載】
著者名:Ying-Hu Chen, Jin-Gan Lou, Zi-Hao Yang, et al.
論文名:Diagnosis, treatment, and prevention of severe acute hepatitis of unknown etiology in children.
雑誌名:World J Pediatr 2022; 18: 538-544.
DOI:10.1007/s12519-022-00581-x.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35771382/
 
 小児重症急性肝炎のデータは、UK Health Security Agency(UKHSA)、European CDC、CDC、WHOのウエブサイト、およびPubMed/Medline、Cochrane Library、Embase、Web of Scienceのデータベースから入手した。
 2022年5月26日までに、33か国から650例が報告されている。主な内訳は、英国222例、米国216例、日本31例、スペイン29例、イタリア27例、ベルギー14例、オランダ14例、イスラエル12例である。その内、少なくとも38例(6%)が肝移植を受け、9例(1%)が死亡している。
 報告された症例の疫学的特徴は、基礎疾患のない1か月から16歳の小児(3~5歳が最多)、多くは白色人種で、疫学的リンクはない。その他、旅行、家族構成、両親の職業、食餌、水源、動物との接触、毒物、免疫抑制、COVID-19ワクチンとの関連はない。
臨床症状は、黄疸(71%)、嘔吐(63%)、白色便(50%)が多く、病初期に下痢(45%)、腹痛(42%)、悪心(31%)などの胃腸症状を呈し、発熱(31%)や呼吸器症状(19%)を伴うこともある。肝腫大はみられるが、脾腫大は稀である。
 病原体検索では、アデノウイルスが多くの例で陽性で、SARS-CoV-2や他のウイルスの検出は少数であった。UKHSAのレポートでは、131人中98例(75%)からアデノウイルスが検出され、35例中27例(77%)がアデノウイルス41Fであった。数例の肝臓組織で、免疫組織化学染色で類洞間隙にアデノウイルスが検出されているが、肝組織にアデノウイルス粒子は検出されていない。また、SARS-CoV-2の現在の感染あるいは感染の既往を10%に認め、19検体(11例)中9検体(8例)からアデノ随伴ウイルス2(AAV2)が検出されたとしている。
 結論としては、重大な肝逸脱酵素上昇を伴う小児重症急性肝炎であるが、その原因は依然不明である。

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