各種活動

 

小児の新型コロナウイルス感染症の診療に関連した論文
(2021年2月4日~2021年11月11日掲載分)

 小児の新型コロナウイルス感染症の診療に関連した論文を紹介いたします。ご参考にしてください。
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
 
 
【2021年11日11日掲載】
(Mechanism)
1.本研究は小児が成人よりもSARS-CoV-2感染率・重症化率が低い原因について、SARS-CoV-2陰性の小児(n=18)、SARS-CoV-2陽性の小児(n=24)と成人(n=44)の3群に分け、上気道におけるsingle-cellトランスクリプトーム(全遺伝子転写物:全mRNA)解析を行いました。小児では上気道上皮細胞、マクロファージ、樹状細胞において、MDA5、RIG-Iなどのパターン認識受容体の基礎発現が成人よりも高い結果となりました。小児の気道免疫細胞は、ウイルスを感知するための準備が整っており、SARS-CoV-2感染に対する初期の自然免疫応答が成人よりも強いことが示唆されました。
著者名:Loske J, Röhmel J, Lukassen S, et al.
論文名:Pre-activated antiviral innate immunity in the upper airways controls early SARS-CoV-2 infection in children.
雑誌名:Nat Biotechnol.2021.DOI:10.1038/s41587-021-01037-9.
 
(Diagnosis)
1.フィラデルフィア小児病院の呼吸器クリニックを受診した29例(平均年齢13.1歳)が、SARS-CoV-2に感染後1.3~6.7か月間持続する呼吸器症状を呈していました。96.6%が持続的または労作時呼吸困難、51.7%が咳嗽、48.3%が運動不耐、13.8%が倦怠感を訴えました。スパイロメトリーとプレチスモグラフィーはほとんどの患者で正常でしたが、6分間歩行テストを行った9例中6例で有意な頻脈を認め運動不耐が明らかとなりました。
著者名:Leftin Dobkin SC, Collaco JM, McGrath-Morrow SA.
論文名:Protracted respiratory findings in children post-SARS-CoV-2 infection
雑誌名:Pediatr Pulmonol.2021.DOI:10.1002/ppul.25671. Online ahead of print
 
2.フランス領ギアナにおいて、COVID-19の検査対象となった3歳以上の患者1,028名から採取した検体を用いてReal-time PCR法を行い、唾液による検査の精度と受容性について検討した成績です。鼻咽頭ぬぐい液と比較し、感度は100%、陽性的中率および陰性的中率は90%を超えていました。自己採取が可能な唾液採取は鼻咽頭ぬぐい液採取よりも好まれました。熱帯環境にも関わらず、唾液を用いたRT-PCRの感度・特異度は鼻咽頭ぬぐい液と同等でした。
著者名:Nacher M, Mergeay-Fabre M, Blanchet D, et al.
論文名:Diagnostic accuracy and acceptability of molecular diagnosis of COVID-19 on saliva samples relative to nasopharyngeal swabs in tropical hospital and extra-hospital contexts: The COVISAL study
雑誌名:PLoS One.2021.DOI:10.1371/journal.pone.0257169. eCollection 2021.
 
3.2020年1-7月の米国184施設の小児COVID-19入院患者の後方視的調査です。検査を受けた11.2%が検査陽性で、2709名の症状のある患者が診断され、142名(5.2%)が入院しました。その内、55%(78/142)がPICUに入院しましたが、22名(15.5%)が重症と判断されました。この検討では、1名が死亡し、全体の致命率は、0.04%でした。この結果から、小児の入院率は低く、また致命率は低いことが分かりました。
著者名:Kim TY,Kim EC,Agudelo AZ,et al.
論文名:COVID-19 hospitalization rate in children across a private hospital network in the United States:COVID-19 hospitalization rate in children
雑誌名:Arch Pediatr.2021.DOI:10.1016/j.arcped.2021.07.004.
 
4.米国シカゴのCOVID-19感染率の高い地域において、2021年の1-3月、11の私立小中一貫校(K-8)で、咽頭スワブ検体を用い、PCR法で468名(学生346名、職員122名)のCOVID-19スクリーニング検査をした研究です。最初の1校では、17名(36%)が陽性、学校内での感染は示唆されませんでした。残りの10校では、5名が感染し、全体の感染率は、4.7%でした。全ての学校で、学生、職員、家庭内での感染は認められませんでした。この結果から、学校での無症候者の感染率は低く、学生、職員、家族内での更なる感染も見られなかったことから、学校での感染対策の効果が分かりました。
著者名:Edward PR, Reyna ME, Daly MK, et al.
論文名:Screening students and staff for asymptomatic coronavirus disease 2019 in Chicago schools.
雑誌名:J Pediatr.2021.DOI:https://doi.org/10.1016/j.jpeds.2021.08.017
 
5.家庭、学校、市中における症状、社会人口統計学的特徴のSARS-CoV-2陽性的中率を小学生の血清検査を用いて検討したスイスの研究です。その結果によると、小児では、症状に基づく過去のSARS-CoV-2感染の遡及的同定は不正確でした。SARS-CoV-2血清抗体陽性の予測は、SARS-CoV-2曝露の要因、特に家庭におけるSARS-CoV-2曝露の相関が高かったです。今回の解析では小児における信頼性の高い過去のSARS-CoV-2感染予測因子は少なく、小児におけるSARS-CoV-2感染の正確な遡及的同定のためには、血清学的検査が不可欠である可能性が高いと考えられました。
著者名:Blankenberger J,Haile SR, Puhan MA,et al.
論文名:Prediction of past SARS-CoV-2 infections:a prospective cohort study among Swiss schoolchildren.
雑誌名:Front Pediatr.2021.DOI:10.3389/fped.2021.710785.
 
6.スペインアラゴン地域における2020年5月から10月末までにPCR、迅速抗原検査、または血清IgG抗体陽性でCOVID-19と診断された小児症例(0〜14歳)の記述的なまとめです。5933人の小児がCOVID-19と診断され、49%が女性、平均年齢は7.5歳でした。最も多かった感染源は家庭で67.8%、50.3%が無症状でした。58%が発熱、47%が咳嗽を認め、入院を必要とした事例は0.5%、ICU入室は0.05%、死亡例は0.02%でした。今回の結果では、15歳未満のCOVID-19は他の軽度の呼吸器ウイルス感染と同様に軽症でした。
著者名:García-Vera C,Castejón-Ramírez S,Laín ME,et al.
論文名:COVID-19 in children:clinical and epidemiological spectrum in the community.
雑誌名:Eur J Pediatr.2021.DOI:10.1007/s00431-021-04235-4.
 
(Transmission)
1.COVID-19流行地域と非流行地域における学童のSARS-CoV-2抗体陽性率について検討したベルギーからの報告です。検討期間は2020年9月21日~10月6日の期間で、小学生(6~12歳)と中学生(12~15歳)に分けて調べられました。流行地域の小学生・中学生の抗体陽性率は、13.3%・15.4%に対して、非流行地域で抗体陽性率は0.0%・8.9%でした。抗体陽性者の中で、COVID-19重症患者はいませんでした。抗体陽性者のリスク因子について分析したところ、COVID-19確定例との接触、COVID-19患者と接触した成人との接触、1週間に1時間以上の課外活動があげられました。COVID-19流行地域においては、小学生も中学生も同程度感染していることが推測されました。
著者名:Boey L, Roelants M,Merckx J, et al.
論文名:Age-dependent seroprevalence of SARS-CoV-2 antibodies in school-aged children from areas with low and high community transmission.
雑誌名:Eur J Pediatr.2021.DOI:10.1007/s00431-021-04222-9
 
2.無症状の小児の感染伝播力を推測する目的で、有症状と無症状のSARS-CoV-2陽性小児のウイルス量を後方視的に比較した米国からの報告です。対象は、2020年4月~8月の期間に、米国の1小児医療機関を受診し、RT-PCR法でSARS-CoV-2が陽性であった18歳以下の小児728名です。このうち、何らかの症状を認めた518名と無症状であった210名について、年齢群ごとに診断時のウイルス量(Ct値)を比較検討しました。その結果、有症状者は無症状者に比べてウイルス排泄量が多く、また、5歳以下の小児が他の年齢層より多くウイルスを排泄していました。無症状の小児の潜在的な感染伝播力については、更なる検討が必要です。
著者名:Strutner J, Ramchandar N, Dubey S,et al.
論文名:Comparison of RT-PCR cycle threshold values from respiratory specimens in symptomatic and asymptomatic children with SARS-CoV-2 infection.
雑誌名:Clin Infect Dis.2021.DOI:10.1093/cid/ciab120.
 
3.SARS-CoV-2の急性期以降でのPCR陽性持続と他の呼吸器ウイルスの重感染、および感染伝播との関連について検討した、スペイン、バルセロナからの前方視的研究の報告です。対象は、2020年4月28日~6月3日に、家庭内で最初にRT-PCR法でSARS-CoV-2が陽性となった成人404名と、同居する708名の15歳未満小児例の、計404世帯・1112名です。急性期を過ぎた15日以降に、SARS-CoV-2 RT-PCRとAllplex®呼吸器パネル検査を行いました。SARS-CoV-2 RNAは、成人137名(33.9%)と小児84名(11.9%)で検出されました。ライノウイルス/エンテロウイルス(RV/EV)は成人の18名で検出され、そのうち15名(83.3%)はSARS-CoV-2 RNAも陽性でした。成人の上咽頭におけるSARS-CoV-2 RNAの平均検出期間は、52日(26〜83日)でした。 SARS-CoV-2の持続性は、RV/EVの重感染(aOR 9.31)および小児からのSARS-CoV-2の検出(aOR 2.08)と有意に関連していました。流行初期の成人COVID-19患者においては急性期以降も高頻度に鼻咽頭SARS-CoV-2 RNAを持続的に認めており、これはRV/EVの同時感染と関連し、家庭内感染の伝播を促進する可能性があります。
著者名:Brotons P,Jordan I,Bassat Q,et al.
論文名:The positive rhinovirus/enterovirus detection and SARS-CoV-2 persistence beyond the acute infection phase:an intra-household surveillance study.
雑誌名:Viruses.2021.DOI:10.3390/v13081598.
 
4.COVID-19の地域での蔓延における小児と青年の関与について後方視的に検討した日本からの報告です。2020年1月15日~10月31日に地方自治体から発表されたCOVID-19感染者の症例情報を使用し、20歳未満7,758例のデータと二次感染の特徴を分析しました。各年齢層の人口10万人あたりのCOVID-19感染者数は、0〜9歳で24.8例、10〜19歳で59.2例であり、全年齢層の79.6例よりも低かったです。感染源が明らかだったのは4,734例(61%)で、うち32%が家族由来でした。感染源が明らかでなかった3,024例のうち二次感染を起こしたのは297例(9.8%)で、乳幼児・小学生・中学生・高校生・専門学校生・大学生でそれぞれ8.3%・16%・34%・43%・31%・24%と、年齢層によって異なっていました。二次感染は家庭内で最も多く起こっていました。家庭外の環境におけるCOVID-19の小児および青年患者からの二次感染は限定的であり、学校閉鎖などの感染対策の有効性は慎重に評価する必要があります。
著者名:Imamura T,Saito M,Ko YK,et al.
論文名:Roles of children and adolescents in COVID-19 transmission in the community:a retrospective analysis of nationwide data in Japan.
雑誌名:Front Pediatr.2021.DOI:10.3389/fped.2021.705882.
 
5.SARS-CoV-2に感染したNICU職員から乳児へのウイルス曝露と感染リスクに関するサウジアラビアからの後方視的調査です。対象は、2020年5月から7月に、有症状でPCR陽性の職員と接触したNICU乳児31人(平均日齢21日、曝露回数1回22人、2回7人、3回2人)。曝露24時間後と72時間後にRT-PCR検査を受けました。感染確定(検査陽性)0例、感染疑い(検査陰性、経過中に呼吸状態等が悪化)9例、感染否定(検査陰性、状態悪化せず)22例でした。結果的に感染職員からNICUの乳児への感染は確認されませんでした。ウイルス伝播が起こらなかった理由としては、医療従事者によるPPEも含めた感染防止策の順守、またはSARS-CoV-2に対する乳児の感受性の低さが考えられます。
著者名:Lana A.Shaiba LA,Hadid A,Abdulghani SH,et al.
論文名:SARS-CoV-2 exposure from health care workers to infants:effects and outcomes.
雑誌名:Am J Perinatol.2021.DOI:10.1055/s-0041-1735215
 
(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.米国で2020年12月31日までにCOVID-19関連疾患で入院した21歳未満の1,526人の患者(MIS-Cと診断された684人含む)のデータに対して、データ駆動型クラスタリングを実行しました。その結果で区分されたクラスター1の498患者(92%がMIS-Cと診断)は、7.2±0.4歳の健康な小児(71%)で、主な病変は心血管系(77%)・粘膜皮膚系(82%)で、高い炎症性バイオマーカーとSARS-CoV-2 PCR陰性(60%)の特徴がありました。クラスター2の445患者(27%がMIS-Cと診断)は、7.4±2.1歳の主に基礎疾患を有する(79%)小児で、胸部X線写真の浸潤影(79%)がみられ、SARS-CoV-2 PCR陽性(90%)でした。クラスター3の583患者(19%がMIS-Cと診断)は、2.8±2.0歳の年少児で、SARS-CoV-2 PCR陽性(86%)で、炎症所見は目立ちませんでした。このデータ駆動型クラスタリングは、MIS-Cの診断を改善するのに役立つ可能性があります。
著者名:Geva A,Patel MM,Newhams MM,et al.
論文名:Data-driven clustering identifies features distinguishing multisystem inflammatory syndrome from acute COVID-19 in children and adolescents.
雑誌名:EClinicalMedicine.2021.DOI:10.1016/j.eclinm.2021.101112.
 
2.MIS-Cおよび川崎病において、末梢血白血球に対する免疫グロブリン静注(IVIG)の効果を検討した報告です。末梢血中の好中球は両疾患で強く活性化され、IL-1βの主要な産生源でした。IVIG療法後、活性化されたIL-1β陽性の好中球は減少しました。IVIGによりPI3-KおよびNADPHオキシダーゼを介した好中球細胞死が強力に誘導されましたが、カスパーゼの活性化とは無関係であることがin vitroの解析で判明しました。IL-1β陽性の好中球がIVIGの標的であり、MIS-Cおよび川崎病において炎症を改善させるためにIVIGを使用することを支持する結果でした。
著者名:Zhu YP,Shamie I,Casey Lee J,et al.
論文名:Immune response to intravenous immunoglobulin in patients with Kawasaki disease and MIS-C.
雑誌名:J Clin Invest.2021.DOI:10.1172/JCI147076.
 
3.21歳未満のMIS-Cによる死亡に関連する人口統計学的要因と臨床的要因を調べたCDCからの報告です。2020年2/19-2021年3/17に報告された2818例のMIS-Cについて検討されました。35人(1.2%)が死亡し、そのうちの42.9%が16-20歳、約80%は米国人口の1/3を占める少数の人種・民族の人で、69%が1つ以上の基礎疾患を有していました。これらの背景を持つ人とその療育者を守ることが、MIS-C関連の死を防ぐことにつながります。
著者名:Bowen A,Miller AD,Zambrano LD, et al.
論文名:Demographic and clinical factors associated with death among persons <21 years old with multisystem inflammatory syndrome in children-United States,February 2020-March 2021.
雑誌名:Open Forum Infect Dis.2021.DOI:10.1093/ofid/ofab388.
 
(Vaccine)
1.生物学的製剤による治療を受けている炎症性腸疾患(IBD)患者がSARS-CoV-2に感染した後、またはワクチン接種後にどのような抗体応答が見られるかを調べた研究です。436人のIBD患者が登録されました(平均年齢17歳、範囲2〜26歳、男性58%)。そのうち44人(10%)が自然感染したと思われ、スパイク蛋白受容体結合ドメイン(S-RBD)IgG抗体陽性でした。PCRでSARS-CoV-2感染が証明された非IBD成人外来患者および小児入院患者と比較するとS-RBD IgG抗体値も中和抗体価もIBDコホートで有意に低く、感染後6ヶ月でほとんどの患者は中和活性が認められませんでした。次に、ワクチン接種(n =33)をしたIBD患者では自然感染と比較して15倍高いS-RBD抗体価を有し、野生型および変異型のSARS-CoV-2に対して中和抗体ができました。生物学的製剤による治療を受けているIBD患者がSARS-CoV-2に感染した場合の抗体応答は弱く、また持続期間も短いのですが、ワクチン接種への反応は良好であり感染防御が期待できると考えられます。
筆者名:Dailey J,Kozhaya L,Dogan M,et al.
論文名:Antibody responses to SARS-CoV-2 after infection or vaccination in children and young adults with inflammatory bowel disease.
雑誌名:Inflamm Bowel Dis.2021.DOI:10.3390/jcm10102152
 
2.ペンシルベニア州西部で小児のCOVID-19およびインフルエンザワクチン接種に対する親の意向について調べました。過去に子どもにインフルエンザワクチンを接種させた親は、COVID-19ワクチンを子どもに接種させる意向がより強く認められました。公衆衛生キャンペーンにおいてCOVID-19ワクチンについて親の理解を深めることが、成人でのワクチン忌避の改善につながります。インフルエンザワクチンとCOVID-19ワクチンについて統合的に情報を提供することが、小児へのCOVID-19ワクチン接種を改善するために実行可能なステップの一つかもしれません。
筆者名: Hill AV,Geffel KM,Lavage DR,et al.
論文名:Parent-reported intention to vaccinate children against COVID-19: influences of COVID-19 and seasonal influenza vaccination.
雑誌名:Clin Pediatr.2021.DOI:10.1177/00099228211046499
 
3.2021年2-3月にイスラエルの単一の三次医療センターで行われた、BNT162b2 mRNAワクチン接種後に出産した女性におけるSARS-CoV-2抗体の母体-新生児経胎盤移行を評価した前向きコホート研究です。調査対象には妊娠中にワクチンを接種(33.5±3.2週)した64名と、妊娠中にCOVID-19に罹患(27.2±11週)した11名が含まれました。すべての母体血血清サンプルと臍帯血血清サンプルの98.3%がSARS CoV-2 IgG陽性であり、濃度の中央値はそれぞれ26.1(IQR 22.0;39.7)と20.2(IQR 12.7;29.0)でした。ワクチン接種妊婦の母乳からも全例SARS-CoV-2 IgGが検出されました。COVID-19罹患後回復妊婦とワクチン接種妊婦を比較すると、ワクチン接種妊婦の母体血清および臍帯血で有意に高いSARS-CoV-2 IgGレベルを認めました(p <0.0001)。SARS-CoV-2 IgGは、妊娠中にBNT162b2 mRNAワクチンを接種した女性から新生児へ胎盤を経由して効率的に移行し、母体血清と臍帯血抗体濃度の間に正の相関がありました。ワクチンはCOVID-19に対する母体防御に加えて、新生児に対する液性免疫も提供する可能性があります。ただし、どのタイミングで接種すると新生児への受動免疫が最も効果的であるのかは、まだわかっていません。
筆者名:Nir O,Schwartz A,Toussia-Cohen S,et al.
論文名:Maternal-neonatal transfer of SARS CoV-2 IgG antibodies among parturient women treated with BNT162b2 mRNA vaccine during pregnancy.
雑誌名:Am J Obstet Gynecol MFM.2021.DOI:10.1016/j.ajogmf.2021.100492
 
【2021年10月11日 掲載】
(Mechanism)
1.小児ではCOVID-19が軽症であることが、他のヒトコロナウイルスの感染機会が多いことと関連があるかどうかに関して、特異抗体の交差反応性の観点から検討した英国の報告です。COVID-19感染症成人患者の回復期血清とCOVID-19流行前の小児と成人の保存血清を用いて、SARS-CoV-2特異抗体(S1、S1-RBD、NP)と4種類のヒトコロナウイルス(HKU-1、OC43、NL63、229E)の特異抗体を測定しました。その結果、流行前の小児は成人に比べ、SARS-CoV-2に対して交差反応性を有する抗体を有する者が多く、抗ヒトコロナウイルスHKU-1、OC43特異抗体価との相関も認められました。また、COVID-19患者の回復期血清中には、抗ヒトコロナウイルスHKU1、OC43抗体の明らかな増加が認められました。ヒトコロナウイルスにより交差反応性免疫記憶が促進されることは、SARS-COV-2および将来の新型コロナウイルスに対する効果的な予防戦略になる可能性が示唆されました。
著者名:Sharwani K,Sharma,R Krishnan M,et al.
論文名:Detection of serum cross-reactive antibodies and memory response to SARS-CoV-2 in pre-pandemic and post-COVID-19 convalescent samples.
雑誌名:J Infect Dis. 2021.DOI:10.1093/infdis/jiab333.
URL:https://doi.org/10.1093/infdis/jiab333

(Transmission)
1.学校でのクラスター拡大を防ぐための効果的な介入方法を数学的モデルにより検討した報告です。症状のある学生が検査で陽性になった後に行う介入は、多くの学校で標準的に行われていますが、感染を防止する効果はほとんど認められませんでした。クラスターサイズを大幅に減らすことができる唯一の方法は、クラス全体を頻回にスクリーニング検査することでした。
著者名:Tupper P,Colijn C.
論文名:COVID-19 in schools: Mitigating classroom clusters in the context of variable transmission.
雑誌名:PLoS Comput Biol. 2021.DOI:10.1371/journal.pcbi.1009120.
URL:https://journals.plos.org/ploscompbiol/article?id=10.1371/journal.pcbi.1009120

2.妊娠中にSARS-CoV-2に感染した母親から出生した乳児の受動および能動免疫を解析した前向き研究です。母親145人のうち無症候性が86人、軽度〜中等度が78人、重症が8人でした。出産の2か月以上前に母親が感染した場合、SARS-CoV-2 IgGは児に効率的に経胎盤移行されていました。母体由来の受動免疫は生後6か月まで持続する可能性が示されました。新生児2人が生後2週でSARS-CoV-2 IgMおよびIgGの高値を示し、新生児は周産期に感染した際に強力な抗体反応を開始できることが判明しました。
著者名:Song D,Prahl M,Gaw SL, et al.
論文名:Passive and active immunity in infants born to mothers with SARS-CoV-2 infection during pregnancy: prospective cohort study.
雑誌名:BMJ Open. 2021.DOI:10.1136/bmjopen-2021-053036.
URL:https://bmjopen.bmj.com/content/11/7/e053036.long

3.SARS-CoV-2に関する母親から児への抗体移行と中和抗体についてのインドにおける前向き研究です。COVID-19の診断から出産までの期間が概ね7日以下である57名のSARS-CoV-2 RNA陽性妊婦(症候性10名含む)から出生したSARS-CoV-2 RNA陽性児の割合は、3.6%でした。その臍帯血におけるSARS-CoV-2 IgG抗体陽性は21.6%でした。一方、39名のSARS-CoV-2-RNA陰性の母親は妊娠中の感染を反映してか、臍帯血におけるSARS-CoV-2 IgG抗体陽性は51%でした。IgG抗体陽性検体の75%に中和抗体を有し、その力価は出産直前よりも妊娠中に感染した母親からの臍帯血で有意に高値でした。
著者名:Malshe N, Patnaik SK, Lalwani S,et al.
論文名:Perinatal transmission of SARS-CoV-2 and transfer of maternal IgG/neutralizing anti-SARS-CoV-2 antibodies from mothers with asymptomatic infection during pregnancy.
雑誌名:Infection.2021.DOI:10.1007/s15010-021-01650-5.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s15010-021-01650-5

4.米国疾病管理予防センターによる2020年1月から4月の間に16州から収集された202名(年齢は1歳未満から95歳)のCOVID-19症例調査の解析報告です。82名(41%)の症例が、COVID-19症例患者との接触がありました。最も一般的に報告された曝露場所は家庭でした(54%)。次に報告された曝露場所は医療施設でした(24%)。COVID-19患者と接触のない人は、医療職がより多く、旅行や集団集会への参加と公共交通機関の使用がより多く報告されました。家庭内では、18歳未満の発端者9名の接触者のうち、11/16(69%)の親、6/13(46%)の兄弟、2/5(40%)の他の世帯の接触者が後に症状を示しました。60名の成人発端者の接触者のうち、12/44(27%)の子供(2〜49歳)、12/45(27%)の配偶者/パートナー、7/16(44%)の親、11/42(26%)他の家庭の接触者が、症候化しました。これらの調査結果は、感染を制御するためのガイダンスを提供し、市中感染を特定する検査の価値を強調します。
著者名:Burke RM, Calderwood L, Killerby ME, et al.
論文名:Patterns of virus exposure and presumed household transmission among persons with coronavirus disease, United States, January-April 2020.
雑誌名:Emerg Infect Dis. 2021.DOI:10.3201/eid2709.204577.
URL:https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/27/9/20-4577_article

5.COVID-19流行中に、重症化リスクの高い集団に対する保護プログラムの有用性と、感染関連因子に対する重症者との関係性を調べたスコットランドからの報告です。重症化リスクの高い集団を保護することは有効でしたが、家族内の他の成人や病院内での感染伝播を制御できないことで効果が低下していました。固形臓器移植患者が最もリスクが高かったですが、免疫低下状態であり本人たちへのワクチンは効果が十分でありませんでした。院内感染の制御と、重症化リスクの高い人と同居する家族へのワクチン接種が重要です。
著者名:McKeigue PM, McAllister DA, Caldwell D,et al.
論文名:Relation of severe COVID-19 in Scotland to transmission-related factors and risk conditions eligible for shielding support:REACT-SCOT case-control study.
雑誌名:BMC Med. 2021.DOI:10.1186/s12916-021-02021-5.
URL:https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-021-02021-5

6.少人数の集まりがCOVID-19の感染を増加させるかを知るため、誕生日後の感染率の変化を調べたアメリカからの報告です。世帯内の誕生日の存在は、誕生日後2週間以内のCOVID-19陽性率に関連していることがわかりました。大人よりも子供の誕生日のほうが増加率は高かったです。一方で、50歳などのマイルストーン誕生日や天候(イベントが室内か野外で行われるかに関わる)などとは関連がありませんでした。
著者名:Whaley CM, Cantor J, Pera M, et al.
論文名:Assessing the association between social gatherings and COVID-19 risk using birthdays.
雑誌名:JAMA Intern Med. 2021.DOI:10.1001/jamainternmed.2021.2915.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2781306

(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.2020年にNewYork-Presbyterianに入院した21歳未満のMIS-C症例45人について退院後1~4 週、1~4か月、4~9か月にフォローアップを行いました。フォローアップ期間の中央値は5.8か月でした。76%が集中治療を必要とし、64%が昇圧剤あるいは循環作動薬を必要としました。入院時には非特異的な炎症反応、リンパ球減少、および血小板減少症を認め、IL-2R、6、10、17、18、CXCモチーフケモカインリガンド9の上昇を認めました。全体の80%に軽度以上の心エコー異常を認め、44%に冠動脈異常を含む中等度から重度の心エコー異常を認めました。炎症所見は1〜4週間でほぼ正常化しましたが、32%は持続性のリンパ球増加症を認め、評価された96%でダブルネガティブT細胞の増加が認められました。1〜4週間では18%が軽度の心エコー異常を示しましたが、冠動脈は全例正常でした。1〜4か月では、ダブルネガティブT細胞の割合は92%の症例で上昇したままでしたが、4〜9か月の時点では1人のみ軽度僧帽弁/三尖弁逆流を認めましたが、ほとんどの症例で炎症所見、心臓の症状は消失しました。
著者名:Farooqi KM, Chan A,Weller RJ,et al.
論文名:Longitudinal outcomes for multisystem inflammatory syndrome in children.
雑誌名:Pediatrics.2021.DOI:10.1542/peds.2021-051155.
URL:https://pediatrics.aappublications.org/content/early/2021/07/14/peds.2021-051155.long

2.MIS-Cの遺伝的感受性についての研究です。MIS-C患者18人の全エクソーム解析を行い、X連鎖アポトーシス阻害をコードするXIAP、チトクロームb-245をコードするCYBBのヘミ接合、欠損を認めました。以前に報告されたSOCS1のハプロ不全も加えて、3人(17%)に同定されました。今回の結果は、MIS-C患者への次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析の有用性を示唆していると考えられました。
著者名:Chou J,Platt CD,Habiballah S,et al.
論文名:Mechanisms underlying genetic susceptibility to multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C).
雑誌名:J Allergy Clin Immunol.2021.DOI:10.1016/j.jaci.2021.06.024.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091674921010526?via%3Dihub

(Vaccine)
1.モデリングを用いて、COVID-19の流行による小児定期接種への影響を3回目のDTP(DTP3)と初回麻疹含有ワクチン(MCV1)を例に推計した研究です。推計されたDTP3及びMCV1の接種率はそれぞれ76.7%(95%CI 74.3–78.6)、78.9% (95%CI 74.8–81.9)となり、例年よりそれぞれ7.7% (6.0–10.1)、7.9% (5.2–11.7)の接種率減少となりました。これはCOVID-19の流行により、850万人がDTP3を、890万人がMCV1を接種できなかったことを意味します。キャッチアップキャンペーンの遅延、COVID-19の蔓延、パンデミック以前から存在したワクチン接種率の地域格差などにより、2021年以降も多くの小児がワクチン未接種の状況に置かれることが予想されます。ワクチンで予防可能な疾患から小児を守るには、接種状況を把握できるシステムを強化し、適切な支援の実施が不可欠です。
著者名: Causey K,Fullman N,Sorensen RJD,et al.
論文名:Estimating global and regional disruptions to routine childhood vaccine coverage during the COVID-19 pandemic in 2020:a modelling study.
雑誌名:Lancet 2021.DOI:10.1016/S0140-6736(21)01337-4
URL:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01337-4

2.中国製の不活化ワクチン(CoronaVac)の3~17歳の小児に対する安全性、認容性、免疫原性を調べたPhase 1/2の2重ランダム化比較対象試験研究です。COVID-19に未感染児を対象に、投与量を2群(1.5/3.0μg)、接種群とプラシーボ群に分け、28日間の間隔で2回筋肉内接種し、安全性と2回目接種28日後の抗体価を比較しました。2020年10月から12月にかけて、Phase 1に72名、Phase 2に480名が参加、副反応は、ほとんどが接種部位の痛みで、軽度か中等度で、投与量で差はありませんでした。中和抗体価は、接種群で100%に認められ、抗体価は、3.0μg群の方が1.5μg群より高値でした。以上より、このワクチンは、3~17 歳の小児に安全に接種でき、抗原量としては、3.0μgでより高い抗体価が誘導できることが分かりました。
著者名:Han B,Song Y,Li C,et al.
論文名: Safety, tolerability,and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine (CoronaVac) in healthy children and adolescents: a double-blind,randomised, controlled, phase 1/2 clinical trial.
雑誌名:Lancet Infect Dis. 2021.DOI:10.1016/S1473-3099(21)00319-4
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8238449/

3.1~18歳の子を持つ親427名に対する調査の結果、全般的なワクチン忌避(VH)はわずか21.93%でした。半数(49.45%)は子へのCOVID-19ワクチン接種を希望しており、44.17%はワクチン接種可能となったら接種する予定です。ワクチンの副反応(61.5%)と安全性(48.9%)に対する懸念はVHを増加させる要因でした。さらに、子へのインフルエンザワクチン接種を予定した親とCOVID-19ワクチンに関するVHが少ない親との間には相関関係がありました。
著者名:Ruggiero KM,Wong J,Sweeney CF, et al.
論文名:Parents'intentions to vaccinate their children against COVID-19.
雑誌名:J Pediatr Health Care.2021.DOI:10.1016/j.pedhc.21.04.005
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8245313/



【2021年8月11日 掲載】
(Mechanism&Vaccine)
1.28名の新生児(17名の正期産と11名の早産)と10名の成人におけるACE2、膜貫通セリンプロテアーゼ2、ニューロピリン1、ニューロピリン2、インスリン様成長因子1受容体について、定量的RT-PCRを使用して鼻上皮におけるmRNA発現を測定しました。成人と比較してACE2、膜貫通セリンプロテアーゼ2、ニューロピリン1、ニューロピリン2の発現レベルは、正期産および早産の新生児で有意に低く、インスリン様成長因子1受容体は正期産の新生児で有意に低値でした。新生児におけるSARS-CoV-2侵入受容体の鼻上皮での低い発現は、新生児の低い感染率と重症化の阻止に寄与している可能性があります。
著者名:Heinonen S,Helve O, Andersson S,et al.
論文名:Nasal expression of SARS-CoV-2 entry receptors in newborns.
雑誌名:Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed.2021.DOI:10.1136/archdischild-2020-321334.
URL:https://fn.bmj.com/content/early/2021/05/13/archdischild-2020-321334.long

2.mRNA-1273またはBNT162b2のいずれかのCOVID-19ワクチンを受けた103人の女性(妊娠中30人、授乳中16人)における安全性と免疫原性に関する米国からの報告です。2回目のワクチン投与後、4人の妊婦(14%)、7人の授乳中の女性(44%)、および27人の非妊娠女性(52%)で発熱が報告されました。ワクチン接種後の妊娠中、授乳中、非妊娠女性に、SARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン結合抗体、中和抗体、機能的非中和抗体応答、ならびにCD4とCD8T細胞応答が見られました。臍帯血と母乳においても結合および中和抗体が検出されました。懸念されるB.1.1.7とB.1.351バリアントに対する結合および中和抗体価は減少しましたが、T細胞応答は維持されました。
著者名:Collier AY,McMahan K,Yu J,et al.
論文名:Immunogenicity of COVID-19 mRNA Vaccines in Pregnant and Lactating Women.
雑誌名:JAMA.2021.doi:10.1001/jama.2021.7563
URL:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2780202

3.ペプチド-HLA四量体を使用したSARS-CoV-2特異的CD8+T細胞のex vivo分析です。準優性エピトープ(B7/N257、A2/S269、A24/S1,208)特異的CD8+T細胞とは異なり、免疫優性エピトープB7/N105特異的CD8+T細胞は、パンデミック前の検体およびCOVID-19感染の急性期と回復期にも高頻度で検出されました。小児、成人、高齢者からのパンデミック前の検体中のSARS-CoV-2特異的CD8+T細胞は、主にナイーブな表現型で、以前の交差反応性曝露がなかったことを示しています。T細胞受容体(TCR)分析により、B7/N105+CD8+T細胞内の多様なTCRαβレパトアと無差別なTCRαβペアリングが明らかになりました。免疫優性エピトープ特異的T細胞とその起源を理解することで、長期にわたるCD8+T細胞免疫を最適化する次世代ワクチン戦略が見通されます。
著者名:Nguyen THO, Rowntree LC, Petersen J, et al.
論文名:CD8+ T cells specific for an immunodominant SARS-CoV-2 nucleocapsid epitope display high naive precursor frequency and TCR promiscuity.
雑誌名:Immunity.2021.DOI:10.1016/j.immuni.2021.04.009.Epub 2021 Apr 15.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1074761321001710?via%3Dihub

4.SARS-CoV-2ゲノムの突然変異が臨床症状と関連しているのかを調べたエジプトからの報告です。E3909Gnsp7の変異は小児で多く見られ、症状持続時間の短さに関連しています。L3606fs-nsp6およびV6fs-spike糖たんぱく質におけるフレームシフトの欠失は息切れのリスク増加と関連しています。最も多いD614-SおよびP4715L/RdRpの突然変異は症状変化に関連していません。S5398Lnsp13ヘリカーゼ変異体は発熱の増悪や長期化のリスク増加に関連していました。
著者名:Zekri AN, Mohanad M, Hafez MM, et al.
論文名:Genome sequencing of SARS-CoV-2 in a cohort of Egyptian patients revealed mutation hotspots that are related to clinical outcomes.
雑誌名:Biochim Biophys Acta Mol Basis Dis. 2021.DOI:10.1016/j.bbadis.2021.166154
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925443921000879?via%3Dihub

5.予防接種の代わりとして小児の無症候性感染を同定することの利点を推定したアメリカからの論文です。罹患率を5%未満に抑えるためには、小児の無症候性感染を感染後2日以内に11%・3日以内に14%特定できれば、成人の40%がワクチン接種すればよいと試算されました。子どもの無症候性感染を同定せずに同等の罹患率に抑えるためには、成人のワクチン接種率が81%以上必要であり現実的でありません。小児用のワクチンがない状態では、小児の無症候性感染の迅速な同定は重要です。
著者名:Moghadas SM, Fitzpatrick MC, Shoukat A, et al.
論文名:Simulated Identification of Silent COVID-19 Infections Among Children and Estimated Future Infection Rates With Vaccination.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2021.DOI:10.1001/jamanetworkopen.2021.7097.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2779052

6.妊娠女性におけるCOVID-19 mRNAワクチンの安全性を検討したアメリカからの報告です。妊娠女性は非妊娠女性より接種部の疼痛が多く、頭痛・筋肉痛・悪寒・発熱の報告は少なかったです。期間中に登録妊婦の20.9%が妊娠を完了し、そのうち13.9%は妊娠損失、86.1%は生児出産でした。新生児は、早産9.4%とSGA3.2%を含み、新生児死亡はありませんでした。ワクチン接種後に妊娠を終えた人の有害転帰の割合は、パンデミック以前に妊娠を終えた人と同程度でした。ワクチン有害事象報告システムに最も多く報告されたのは自然流産でした。
著者名:Shimabukuro TT, Kim SY, Myers TR, et al.
論文名:Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons.
雑誌名:N Engl J Med. 2021.DOI:10.1056/NEJMoa2104983.
URL:https://www.nejm.org/DOI:/10.1056/NEJMoa2104983?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

7.COVID-19急性期から回復した後も長期間持続する症状が、Gタンパク質共役受容体を標的とする自己抗体に関連するか検討した論文です。神経および心血管系の症状を示す31人の患者が解析され、全例から受容体アゴニストとして機能する2から7つの異なる自己抗体が検出されました。これらの抗体は新生児ラットの心筋細胞に正あるいは負の変時作用を引き起しました。COVID-19急性期後の健康障害にこれらの自己抗体が関与していることが示唆されました。
著者名:Wallukat G, Hohberger B,Wenzel K, et al.
論文名:Functional autoantibodies against G-protein coupled receptors in patients with persistent Long-COVID-19 symptoms.
雑誌名:J Transl Autoimmun.2021.DOI:10.1016/j.jtauto.2021.100100.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589909021000204?via%3Dihub

8.GISAIDデータベースに提出された408,493個のSARS-CoV-2ゲノムのメタデータを、遺伝系統、地理的・年齢・性別の分布に関して分析した論文です。現在、GR系統が世界で最も優勢で、GV、GH系統と続きました。D614G変異を有する系統が拡大し、過去3か月間では最新のGV系統が優勢となっていました。GHおよびGR系統は重症または死亡例から、GおよびGV系統は無症候性または軽症例からより多く検出されました。女性よりも男性の方が重症/死亡例の割合が高く、女性ではGR系統が優勢でした。さらに重度/死亡例は、成人や子どもよりも高齢者に多くみられました。他の年齢層と比較して、子どもではGV系統の有病率が高いことが明らかになりました。
著者名:Hamed SM, Elkhatib WF, Khairalla AS, et al.
論文名:Global dynamics of SARS-CoV-2 clades and their relation to COVID-19 epidemiology.
雑誌名:Sci Rep. 2021.DOI:10.1038/s41598-021-87713-x.
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-021-87713-x

(Diagnosis)
1.COVID-19の小児における肺病変の予測における検査所見の役割を評価することを目的とした研究です。胸部CT所見が正常な群と異常な群における、入院時の好中球数、リンパ球数、好中球数/リンパ球数比、血小板、Dダイマー、フィブリノーゲン、フェリチン、プロカルシトニン、CRP、LDHを比較しました。6~18歳の患者101人のうち、CTで肺病変がみられた33人(32.7%)では、CTに異常がなかった68人(67.3%)と比べ、CRP、フェリチン、フィブリノーゲンが有意に高値でした。咳、息切れ、フィブリノーゲン、フェリチン、CRPの項目でロジスティック回帰分析を行ったところ、CTでの異常所見が出現する可能性は、フィブリノーゲンが1unit上昇するごとにオッズ比1.021(95%信頼区間:1.007-1.036)で上昇することが示されました。フィブリノーゲンは、小児におけるCOVID-19の肺病変を予測するのに役立つ可能性があります。顕著な臨床症状とフィブリノーゲン高値の患者に限定してのCT検査は有用かもしれません。
著者名: Böncüoğlu E, Coşkun M, Kıymet E, et al.
論文名:Can laboratory findings predict pulmonary involvement in children with COVID-19 infection?
雑誌名:Pediatr Pulmonol.2021.DOI:10.1002/ppul.25452.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/DOI:/10.1002/ppul.25452

2.乳児のCOVID-19患者の胸部CT所見についての系統的レビューです。PubMedとEmbaseで、COVID-19の流行発生から2020年10月20日まで検索しました。70人のCOVID-19確定乳児(58.5%は男児)についての35件の研究が解析されました。平均月齢は4.1か月(1日~12か月)でした。胸部CTでは34人が両側性、25人が片側性の肺病変を呈しました。すりガラス陰影(GGO:71.43%)が最も多い所見で、続いて気管支周囲肥厚像(60%)、線状もしくは帯状陰影(32.8%)、浸潤影(28.57%)、結節(18.57%)、胸水(7.14%)、局所的透明像(7.14%)でした。GGOと気管支周囲肥厚像が乳児COVID-19の一般的な所見でしたが、線状もしくは帯状陰影、浸潤影、結節は成人よりも多く見られました。これらの知見より、この年齢層では非定型肺炎像をとる可能性が高いことが示唆されます。
著者名: Ghodsi A, Bijari M, Alamdaran SA, et al.
論文名:Chest computed tomography findings of COVID-19 in children younger than 1 year: a systematic review.
雑誌名:World J Pediatr.2021.DOI:10.1007/s12519-021-00424-1.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8104919/pdf/12519_2021_Article_424.pdf

3.新型コロナウイルス肺炎の患児のCD4+/CD8+比と重症度との関連について調べた研究です。テヘラン医科学大学と提携している小児医療センターに2020年3月7日から6月10日までに入院したリアルタイムRT-PCR確定例55人のうち、軽症/中等症患者は34人(62%)、重症患者が21人(38%)でした。重症患者ではリンパ球数が少なく(重症群の平均±SD 1.6±0.9x10/L対軽症/中等症群は2.3±2.2)、CD8+T細胞の数が増加し、CD4+T細胞の割合は低下していました。重症群は軽症/中等症群に比べてCD4+/CD8+ T細胞比が低値で、<2、<1.5、<1となった割合はそれぞれ48(87%)、40(73%)、19(3​​5%)でした。CD4+/CD8+ T細胞比は、死亡した7人(13%)のうち7人(100%)で2未満、6人(86%)で<1.5、2例(29%)で<1でした。CD4+/CD8+比の低下は重症のCOVID-19患者の免疫応答の乱れを分析する上で有用な尺度となるかも知れませんが、さらに対象患者を増やした研究が必要です。
著者名: Mahmoudi S, Yaghmaei B, Ekbatani MZ,et al.
論文名: Effects of Coronavirus Disease 2019(COVID-19) on Peripheral Blood Lymphocytes and Their Subsets in Children:Imbalanced CD4+/CD8+ T Cell Ratio and Disease Severity.
雑誌名:Front Pediatr.Vol 9,14 April,2021.DOI:10.3389/fped.2021.643299.
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fped.2021.643299/full

4.SARS-CoV-2感染者の鼻咽頭スワブ中のウイルスRNA量(VL)は感染性ウイルスの存在と感染力に関連しており、106コピー/mL以上であれば感染性ウイルスが排出されていると考えられています。小児(279人)、青年(639人)、成人(7109人)の発病後1週間のVLの動態を調べたところ、どの年齢層でも発症日のVLから次第に上昇し、発症後3日以内にピークを迎え、発症後1週間まで次第に減少します。ピークの高さは成人と比べて子どもではやや低く、また感染性がある106コピー/mLを超える期間も成人より子どもではやや短くなっていました。
著者名:Bellon M, Baggio S, Bausch FJ, et al.
論文名:SARS-CoV-2 viral load kinetics in symptomatic children,adolescents and adults.
雑誌名:Clin Infect Dis.2021.DOI:10.1093/cid/ciab396.
URL:https://academic.oup.com/cid/advance-article/DOI:/10.1093/cid/ciab396/6265276

5.トルコにおいて2020年4月1日から7月31日の間にCOVID-19を疑って入院となった89例の小児(0~18歳)におけるRT-PCR検査結果と小児放射線科医によって読影された胸部CT所見を比較した後方視的検討です。PCRの結果は陰性33例、陽性56例でした。CTにおける肺病変(pulmonary lesion)、浸潤影(consolidation)の存在は、PCR陽性群よりもPCR陰性群で有意に高率に認めました(それぞれp=0.037と0.001)。肺葉病変(lobe involvement)が0%~25%を占めるのはPCR陽性グループでより高く(p=0.001)、肺葉病変(lobe involvement)が25%~50%および50%~75%を占めるのは、PCR陰性グループで有意に高率に認めました(それぞれp=0.001および0.005)。小児のCOVID-19は成人よりも軽度または無症状であり、PCR陽性患者をCT所見で予想することは成人と比べて困難です。
著者名:Bağcı Z, Keçeli AM.
論文名:Comparison of computed tomography (CT) findings with RT-PCR in the diagnosis of COVID-19 in children.
雑誌名:Pediatr Pulmonol. 2021.DOI:10.1002/ppul.25426.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/DOI:/10.1002/ppul.25426

6.中国において、年齢を一致させた小児A型インフルエンザとCOVID-19の患者それぞれ71人において、入院時の臨床データを比較しました。発熱、咳嗽、鼻閉、悪心/嘔吐は、両感染症において入院時の最も一般的な症状でしたが、COVID-19患者における出現頻度はA型インフルエンザよりも有意に低率でした。A型インフルエンザ患者は、リンパ球数および割合が通常よりも低く、APTT、PT、CRP、PCTが通常よりも高い可能性が示唆されました。一方で、COVID-19患者は好中球数および割合が通常よりも低率でした。小児において、A型インフルエンザはCOVID-19よりも症状が強く、全体的に入院の時点で重症である可能性があることを示唆しています。ただし、COVID-19患者のうち26人は濃厚接触があったために検査され、陽性だったので入院になったことも影響しているかも知れません。
著者名:Liang F, Wang X, Shao J, et al.
論文名:Comparison of clinical features on admission between coronavirus disease 2019 and influenza A among children:a retrospective study in China.
雑誌名:BMC Infect Dis.2021.DOI:10.1186/s12879-021-06037-3.
URL:https://bmcinfectdis.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12879-021-06037-3

(Transmission)
1.ブラジル北東部のFortaleza市における学童のCOVID-19追跡プログラムのデータベースを活用した後方視的検討です。小児と思春期(854人)、および成人(282人)についてのIgG、IgMおよびRT-PCRを検査しCOVID-19の有病率を特定しました。すべての年齢グループの有病率は、血清抗体価陽性で26.7%、RT-PCRで4.04%であり、各年齢群で同程度でした。青年および成人と比較して、子どもはIgM陽性率が低く、症状も少なかったです。これらのデータは、すべての年齢層での同程度の伝染性の可能性を示唆していました。
著者名:Cavalcante PVJ, Moura LFWG, Cavalcante RC, et al.
論文名:Prevalence of COVID-19 in children, adolescents, and adults in remote education situation in the city of Fortaleza-Brazil.
雑誌名:Int J Infect Dis. 2021.DOI:10.1016/j.ijid.2021.04.086.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1201971221003982?via%3Dihub

2.香港の新型コロナ流行第1〜3波(2020年1月23日〜12月2日)における、18歳未満の小児の臨床症状と感染源に関する報告です。397名が感染し、55.4%が男児、99.2%が軽症以下で、無症候性は38.8%でした。無症候性者は、第1波(7.1%)よりも第2、第3波(50.0%、35.5%)で多く、国内感染(51.4%)のうち、90%は家族からの感染でした。これらのデータは、小児は軽症で経過し、主な感染経路は家族からである事を示唆していました。
著者名:Chua GT, Wong JSH, Lam I, et al.
論文名:Clinical characteristics and transmission of COVID-19 in children and youths during 3 waves of outbreaks in Hong Kong.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2021.DOI:10.1001/jamanetworkopen.2021.8824.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2779416

3.軽症の新型コロナ患者が運転する車内の空気中からのSARS-CoV-2採取に関する報告です。発熱・咳のない軽症の新型コロナ患者が、マスク未装着の状態で、エアコンを付けながら窓をしめた状態で15分間の車の運転をした2時間後の空気サンプルを回収しました。SARS-CoV-2はPCRで検出され、ウイルス分離も可能であり、大きさは0.25〜0.50μmでした。今回の研究結果は軽症の新型コロナ患者からも車内での感染伝播の危険性が示唆されました。
著者名:Lednicky JA, Lauzardo M, Alam MdM, et al.
論文名:Isolation of SARS-CoV-2 from the air in a car driven by a COVID patient with mild illness.
雑誌名:Int J Infect Dis. 2021.DOI:10.1016/j.ijid.2021.04.063.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1201971221003751?via%3Dihub

4.2020年3~7月に米国マサチューセッツ州にある11病院において、出産前14日から出産後72時間までにSARS-CoV-2に感染した母親250人から生まれた新生児255人を30日間観察したコホート研究です。255人中225人の新生児でPCR検査が実施され5人(2.2%)は退院までに陽性になりました。新生児の検査陽性は、母親の社会的脆弱性が高いことと関連していました(調整オッズ比、4.95;95%CI,1.53-16.01;P =.008)。SARS-CoV-2に曝露した新生児は、直接的および間接的な健康への悪影響のリスクがあり、母親のCOVID-19悪化による早産は、新生児の罹患率と関連していました。退院後フォローした151人の新生児のうち28人は定期健診以外で外来を受診しており、SARS-CoV-2の検査を受けた7人中1人が陽性でした。
著者名:Angelidou A, Sullivan K, Melvin PR, et al.
論文名:Association of maternal perinatal SARS-CoV-2 infection with neonatal outcomes during the COVID-19 pandemic in Massachusetts.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2021.DOI:10.1001/jamanetworkopen.20217523.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2779051

(Treatment)
1.SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1/S2切断部位付近に、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)セグメントに類似したスーパー抗原様のモチーフが発見されました。本研究では、抗SEBモノクローナル抗体(mAb);6D3がこのモチーフと多塩基切断部位で結合して感染を阻害できることを示しています。スパイクのスーパー抗原部位とそのタンパク質分解性切断部位のオーバーラップは、mAbが細胞プロテアーゼ(フリンおよびTMPRSS2)のタンパク質分解活性を妨害することによってウイルスの侵入を防ぐことを示唆しており、6D3の治療薬としての潜在的な有用性を指摘しています。
著者名:Cheng MH, Porritt RA, Rivas MN, et al.
論文名:A monoclonal antibody against staphylococcal enterotoxin B superantigen inhibits SARS-CoV-2 entry in vitro.
雑誌名:Structure. 2021.DOI:10.1016/j.str.2021.04.005.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7709177/

2.米国の33医療機関においてCOVID-19と診断された小児患者の後方視的横断研究の結果です。研究対象医療機関でCOVID-19と検査診断された12,306人の子どものうち、16.5%が呼吸器症状(咳、呼吸困難)、13.9%が胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛)、8.1%が皮膚症状(発疹)、4.8%が神経学的(頭痛)を認め、18.8%が他の非特異的症状(発熱、倦怠感、筋肉痛、関節痛、および臭いや味の乱れ)を認めました。5.3%の患者が入院しており、17.6%が救命救急を必要とし、4.1%が人工呼吸器を必要としていました。傾向スコアマッチングを用いた解析では感染のリスクに性差はありませんでしたが、入院のリスクは非ヒスパニック系白人と比較して、非ヒスパニック系黒人(RR 1.97[95%CI 1.49–2.61])およびヒスパニック系小児(RR 1.31 [95%CI 1.03–1.78])で大きくなっていました。また入院した大部分の患児がCOVID-19に罹患後症状が悪化した人となっていました。
著者名:Parcha V, Booker KS, Kalra R et al.
論文名:A retrospective cohort study of 12,306 pediatric COVID-19 patients in the United States.
雑誌名:Sci Rep.2021;11:10231.2021.DOI:10.1038/s41598-021-89553-1
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8119690/

3.インドにおいて行われたMIS-Cに対するメチルプレドニゾロンパルス療法と免疫グロブリン静注療法(IVIG)により治療した32人についての観察研究の報告です。治療効果の判断項目は、治療開始後36時間以降の持続的発熱の有無、ICU滞在期間、致命率、再治療の有無、CRP値正常化までの期間、および発症2週間後の冠動脈異常の有無となっています。初期療法としてパルス療法を26人、IVIGを6人に実施しています。パルス療法のうち2名、IVIG療法のうち2名が治療に反応しませんでした。CRPが3日目までに60mg/L以下となった人がパルス療法群で17人(74%)、IVIG群で2人(25%)と有意に差を認めました。両群とも死亡者はいませんでしたが2週間後の冠動脈異常をパルス療法群に4名、IVIG群に1名認めました。現時点では、SARS-CoV-2関連MIS-Cの患者では、メチルプレドニゾロンパルス療法は短期的な結果では有用と考えられます。
著者名:Sugunan S, Bindusha S, Geetha S, et al.
論文名:Clinical Profile and Short-Term Outcome of Children with SARS-CoV-2 Related Multisystem Inflammatory Syndrome(MIS-C) Treated with Pulse Methylprednisolone
雑誌名:Indian Pediatr.2021.Apr 20;S097475591600319.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33876782/

4.この研究は、77名の重症小児入院患者にレムデシビルをコンパッショネート・ユース(人道的使用)プログラムで使用し、その効果と安全性を確認しました。治療は10日間、28日間の経過を観察しました。患者の年齢の中央値は14歳(範囲:2か月未満~17歳)、79%は基礎疾患があり、90%が酸素投与、51%が侵襲的呼吸を必要としました。治療後28日までに88%の患者が酸素のサポートの必要性がなくなり、83%が回復、73%が退院しました。4名が死亡、その内3名は、COVID-19関連での死亡でした。レムデシビルは問題なく投与でき、重篤な有害事象の頻度は低く(16%)、ほとんどは、COVID-19か基礎疾患によるものでした。検査では、肝逸脱酵素の上昇(61%がGrade1か2)がよく見られました。重症の小児COVID-19患者において、レムデシビル投与により患者のほとんどが回復し、有害事象の頻度は低かったです。
著者名:Goldman DL, Aldrich ML, Hagmann SHF, et al.
論文名:Compassionate Use of Remdesivir in Children With Severe COVID-19
雑誌名:Pediatrics.2021.DOI:10.1542/peds.2020-047803.
URL: https://pediatrics.aappublications.org/content/147/5/e2020047803.long

5.台湾におけるBCGとCOVID-19重症度との関係を見た研究です。データが登録されている1985年以降に生まれた人を対象にして、さらに、4~24歳(誕生年1996~2016年)と25~33歳(出生年1986~1995年)に分けました。前者では、138名のBCG接種者で、80.4%が無症状か軽症で、17.4%が中等症、1.5%が重症、0.7%がARDSを起こし、死亡例は0でした。一方で、6名のBCG未接種者は全てが軽症でした。後者では、78名のBCG接種者で19.2%が中等症で、106名のBCG未接種者では、中等症が14.2%、重症が0.9%でした。この結果から、BCG接種は、若年者では、COVID-19の重症度との関連は見られませんでした。
著者名:Su WJ, Chang CH, Wang JL, et al.
論文名:COVID-19 Severity and Neonatal BCG Vaccination among Young Population in Taiwan.
雑誌名:Int J Environ Res Public Health.2021.DOI:10.3390/ijerph18084303.
URL:https://www.mdpi.com/1660-4601/18/8/4303

6.小児のCOVID-19の臨床ガイドラインを評価した研究です。20のガイドラインが選ばれ、方法の質では、1つ(5%)が中等度、残り(95%)は低いと判断され、また、報告の質では、1つ(5%)が高く、12(60%)が中等度、7(35%)が低いと判断されました。ガイドラインでは、レムデシベル(推奨:25%,非推奨:45%,報告なし:30%)、インターフェロン(推奨:15%,非推奨:50%,報告なし:35%)、ステロイド(推奨:50%,非推奨:20%,報告なし:30%)、免疫グロブリン静注(推奨:35%,非推奨:30%,報告なし:35%)の使用について、推奨度に幅があることが分かりました。これまでの小児のCOVID-19のガイドラインにおいて、方法と報告の質は高くなく、また、薬剤の推奨は一定ではなく、そのエビデンスには限界があります。
著者名:Li Q, Zhou Q, Xun Y, et al.
論文名:Quality and consistency of clinical practice guidelines for treating children with COVID-19.
雑誌名:Ann Transl Med.2021.DOI:10.21037/atm-20-7000.
URL:https://atm.amegroups.com/article/view/66348/html

7.COVID-19またはMIS-Cで入院した小児814名853例のうち20名に血栓症(TE)が認められ、その発症率はMIS-C 6.5%、COVID-19 2.1%、無症候性SARS-CoV-2感染0.7%の順でした。89%が12歳以上であり、12歳以上のMIS-CにおけるTE発症率は19%でした。71%は血栓予防にも関わらず発症し、多変量解析では12歳以上、がん、CVカテーテル留置、MIS-Cが有意な関連因子でした。COVID-19またはMIS-Cの病院死亡率は2.3%でしたが、TEを発症した例では28%と高率でした。本成績は小児のTE予防戦略に有用な知見と思われます。
著者名:Whitworth HB, Sartain SE, Kumar R, et al.
論文名:Rate of thrombosis in children and adolescents hospitalized with COVID-19 or MIS-C.
雑誌名:Blood.2021.DOI:10.1182/blood.2020010218
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8079262/

8.小児や若者にCOVID-19ワクチンが接種可能となった際の保護者のワクチン忌避が与える影響をイタリアボローニャに住む18歳未満の保護者を対象にオンラインで調査した結果です。5,054人から回答が得られ、60.4%の保護者がわが子へのワクチン接種を行うと回答している一方で、29.6%が迷っている、9.9%が躊躇していると回答しています。最もワクチン忌避が多かった保護者のグループは6~10歳の子どもを持つ29歳未満の女性で教育レベルが低くウェブやソーシャルメディアに掲載されている情報を頼りにし、強制的な予防接種政策を嫌う人たちでした。高い接種率を達成し、集団免疫効果を得るためには、今後特にウェブに掲載される情報を中心にワクチン接種を遵守されるための対象ごとの戦略が必要です。
著者名:Montalti M, Rallo F, Guaraldi F, et al.
論文名:Would Parents Get Their Children Vaccinated Against SARS-CoV-2? Rate and Predictors of Vaccine Hesitancy According to a Survey over 5000 Families from Bologna,Italy.
雑誌名:Vaccines.2021.DOI:10.3390/vaccines9040366.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8069076/

(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.国内初のMIS-Cに関する症例報告です。症例は生来健康な16歳男性で、発熱と全身倦怠感、全身性の発疹、両側の眼球結膜充血、水様性下痢により前医に入院し、その後ショックとなり入院6日目に転院しICUに入室となりました。患者は前医入院23日前に、PCR検査陽性COVID-19の診断を受けていますが、その時点では無症状でした。COVID-19感染症の既往と、臨床症状と経過からMIS-Cと診断し、γ-グロブリン製剤投与(2g/kg)を行いました。その後、症状は改善し、患者さんは後遺症なく、回復しました。ICU入室初日に実施した右心室心筋生検において、線維化を伴う活動性の心筋炎の所見が認められました。
著者名:Uchida M, Kashima Y, Mochizuki K, et al.
論文名:Multisystem Inflammatory Syndrome in Children- A New Syndrome Complicated With Acute Heart Failure Following Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2)Infection.
雑誌名:Circ J. 2021 May 25;85(6):948-952.DOI:10.1253/circj.CJ-21-0243.
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/85/6/85_CJ-21-0243/_article

2.本論文は、MIS-C小児患者に対する急性期の心エコーによる心機能評価が、臨床経過や心臓後遺症の予測に役立つかどうかを後方視的に検討した報告です。本研究は、米国ミシガン小児病院に入院した54名のMIS-C小児患者(平均年齢6.8歳)を対象に行われました。検討した結果、患者群の初診時、左心室心尖部4腔peak longitudinal strain(LVA4LS)と左心室global longitudinal strain(LVGLS)の中央値は、正常コントロール群と比較して 有意に低下していました。左心室機能低下が強い患者は、CRP値と高感度トロポニン値が有意に高く、集中治療と生命維持装置の必要性が高く、入院期間も長くなっていました。多変量解析では、LVA4LSのみが集中治療の必要性と入院期間の両者に関連していました。平均10週間の追跡調査で、患者36人中7人(19%)および患者25人中6人(24%)で、それぞれLVA4LSおよびLVGLSの異常が認められました。MIS-C小児に対する初診時の心エコーでの評価は、その後の臨床経過や心臓後遺症の予測に有用であると考えられました。
著者名:Sanil Y, Misra A, Safa R, et al.
論文名:Echocardiographic Indicators Associated with Adverse Clinical Course and Cardiac Sequelae in Multisystem Inflammatory Syndrome in Children with COVID-19.
雑誌名:J Am Soc Echocardiogr. 2021.DOI:10.1016/j.echo.2021.04.018.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0894731721004685?via%3Dihub

3.MIS-Cを発症した乳児の臨床症状、検査所見、転帰等に関してまとめられた米国CDCからの報告です。対象は2020年5月から2021年1月の間にMIS-C全国サーベイランスシステムに報告された12か月未満の85名で、このうち83名(97.6%)でSARS-CoV-2感染が確認されました。年齢中央値は7.7か月でした。主な症状は、発疹(62.4%)、下痢(55.3%)、嘔吐(55.3%)で、ほかの所見としては、低血圧(21.2%)、肺炎(21.2%)、冠動脈病変(13.9%)などがありました。検査異常としては、CRP、フェリチン、D-dimer、フィブリノーゲンの上昇などがみられました。心臓超音波検査を受けた14人のうち3人で入院中または入院後に心臓の異常がみられました。9人は退院後98日まで炎症性マーカーの上昇がみられました。死亡は1名(1.2%)で、MIS-Cによる二次的な多臓器不全が原因でした。同期間に報告された小児MIS-Cのうち乳児は4%を占め、年長児に比べて軽症な経過を示しました。小児の各年齢層におけるMIS-Cの臨床像の解明にはまだ検討が必要です。
著者名:Godfred-Cato S, Tsang CA, Giovanni J, et al.
論文名:Multisystem Inflammatory Syndrome in Infants<12 months of Age,United States,May 2020-January 2021.
雑誌名:Pediatr Infect Dis J. 2021.DOI:10.1097/INF.0000000000003149.
URL:https://journals.lww.com/pidj/Fulltext/2021/07000/Multisystem_Inflammatory_Syndrome_in_Infants__12.1.aspx

4.小児のMIS-Cの血栓傾向について検討した米国からの報告です。対象は2020年4月17日から7月9日までにMIS-Cと診断された21歳以下の患者(n=40)と対照者(n=26)で、凝固プロファイル,ROTEM(rotational thromboelastometry)パラメータおよび臨床経過を用いて、後方視的に血栓傾向を解析しました。MIS-C患者は対照群と比較して、D-dimerを含む炎症性マーカーのレベルが高く(p < 0.0001)、フィブリノーゲン活性の上昇を伴うROTEM(FIBTEM)や血栓硬度の最大値(MCF)で凝固亢進を示しました(p < 0.05)。Dダイマー>1000ng/mlのMIS-C患者では、FIBTEMのMCFに有意な相関が認められました(p<0.0001)。Dダイマー>2144ng/mlはICU入室の予測因子でした(感度:82%、特異度:75%)。MIS-C患者は血栓傾向を示しましたが、アスピリン単独またはエノキサパリンとの併用により、血栓症を発症した者はいませんでした。ROTEMは重症のMIS-C患者の抗血栓療法を調節するのに役立つと思われます。
著者名:Al-Ghafry M,Vagrecha A,Malik M, et al.
論文名:Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C) and the Prothrombotic State:Coagulation Profiles and Rotational Thromboelastometry in a MIS-C Cohort.
雑誌名:J Thromb Haemost. 2021.DOI:10.1111/jth.15340.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/DOI:/10.1111/jth.15340

5.MIS-Cにおける典型的な画像所見に関するスペインからの報告です。37名の小児(男児21名、年齢中央値8.0歳)が対象です。臨床症状は、発熱(100%)、腹痛(68%)、発疹(54%)、結膜炎(38%)、咳(32%)でした。33人(89%)が循環器病変の所見を呈し、30人(81%)がICU管理を必要としました(全例回復)。胸部X線写真では心肥大(54%)肺高血圧/鬱血(73%)、胸部CTでは間質すりガラス状陰影(83%)、透過性低下(58%)、胸水(58%)、気管支壁肥厚(42%)、心エコーでは心機能低下(51%)、冠動脈異常(14%)、心臓MRIでは心筋浮腫(58%)、心嚢液貯留(42%)、左心室機能低下(25%)を認めました。20名に腹部症状があり、腹腔内貯留液(71%)、回腸末端部腸管壁肥厚(57%)を認めました。MIS-Cにおける画像診断は早期診断、早期治療のために重要と考えられます。
著者名:Caro-Domínguez P, Navallas M, Riaza-Martin L, et al.
論文名:Imaging findings of multisystem inflammatory syndrome in children associated with COVID-19.
雑誌名:Pediatr Radiol 2021.DOI:10.1007/s00247-021-05065-0.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00247-021-05065-0

6.COVID-19流行前と流行中の川崎病(KD)症例数と罹患率を比較し、KDの疫学とSARS-CoV-2や他の感染症との関連を調査した日本からの報告です。2016年から2020年の兵庫県神戸市のKD児の後ろ向きコホート研究の情報と、COVID-19、感染症サーベイランス小児科定点報告を基にしています。期間中のKD症例は1,027例で、2020年4月のCOVID-19流行開始に一致して減少しました。2020年4月~12月のKD症例数は66例で、2016~2019年の同月の平均(165/年)の40%でした。KD罹患率は2016~2019年と比較して2020年の第4四半期に-15.8%と有意に減少しました。感染症サーベイランス小児科定点からの報告数は、COVID-19流行開始後、突発性発疹を除くすべての感染症で著しい減少を示しました。KDの減少とCOVID-19以外のさまざまな感染症の減少との関連は、KDの感染症病因論仮説を支持するものと考えられます。
著者名:Iio K, Matsubara K, Miyakoshi C, et al.
論文名:Incidence of Kawasaki disease before and during the COVID-19 pandemic: a retrospective cohort study in Japan.
雑誌名:BMJ Paediatrics Open, 02 Apr 2021.DOI:10.1136/bmjpo-2021-001034
URL:https://bmjpaedsopen.bmj.com/content/bmjpo/5/1/e001034.full.pdf

(School closure)
1.ロックダウン期間中における精神科的な小児および思春期患者の救急外来受診状況を調査した報告です。イタリアで2020年2月24日から開始されたロックダウンの前7週間と後8週間における、2つの大学病院の18歳以下小児の救急外来受診状況を2019年の同時期のデータと比較しました。救急患者数全体では72.0%の減少を認めましたが、精神科救急受診者数は46.2%の減少に留まりました。精神科救急受診者の平均年齢は2020年の方が高い傾向にありました(15.7 vs 14.1歳)。入院率や受診理由には有意な変化を認めませんでした。
著者名:Davico C, Marcotulli D, Lux C, et al.
論文名:Impact of the COVID-19 Pandemic on Child and Adolescent Psychiatric Emergencies
雑誌名:J Clin Psychiatry.2021.DOI:10.4088/JCP.20m13467.
URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33989466/

2.新型コロナウイルス感染症への対策として行われた学校閉鎖によるe-learningの増加や外遊びの減少が近視に与える影響を調査した中国からの報告です。中国における新型コロナウイルス感染症の第一波の際に、3,405人の学童~生徒のデータを収集し、単変量および多変量ロジスティック回帰解析を行っています。その結果、e-learningのために画面を見る1日当たりの時間の増加は、近視の進行を有意に増やしました。また、外遊びの回数について、4~6回/週あるいは1~3回/週の場合、0回/週に対し、近視の進行が減少していました。加えて、室内の照明が暗すぎるあるいは明るすぎる場合は、近視の増加と有意な関連がありました。この研究結果は、これまで観察されていない新型コロナウイルス感染症のオンライン授業を介する若年者の視機能への影響を明らかにし、デジタル画像使用時間の制限、外遊び回数の増加、室内の適切な照明などの方策を検討することの重要性を強調しています。
著者名:Liu J, Li B, Chen Q, Dang J.
論文名:Student Health Implications of School Closures during the COVID-19 Pandemic: New Evidence on the Association of e-Learning,Outdoor Exercise,and Myopia
雑誌名:Healthcare(Basel).2021.DOI:10.3390/healthcare9050500.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33922486/

3.ロックダウンに伴う学校閉鎖が、小児にどのような精神的影響を及ぼしたか明らかにするためのZoomを使った面談によるアンケート調査の結果です。インタビューは、ロックダウンの規制が緩和された2020年5月18日から6月7日に実施され、82名のミラノ市近隣に在住している小学生(45名)、中学生(37名)とその両親が対象です。約30%の小児が自宅でのオンライン授業に困難さを感じ、36名が食事摂取量減少やジャンクフードを好むなど食生活の変化があったと答えています。また28%が睡眠障害を訴えていました。さらに、78%で不安に伴う症状(Trauma symptom checklist for childrenを用いてスコア化)が、43.9%に気分障害(Short Mood and feeling questionnaireを用いて測定)の症状がみられました。
著者名:Segre G, Campi R, Scarpellini F, et al.
論文名:Interviewing children:the impact of the COVID-19 quarantine on children's perceived psychological distress and changes in routine.
雑誌名:BMC Pediatr.2021.DOI:10.1186/s12887-021-02704-1.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33985448/

4.2020年春のロックダウンにおける、チェコ思春期層3,440名(54%が女性、平均年齢13.5歳)の経験、健康行動、認識の変化に関する自記式の調査研究です。回答者の19%および32%が、それぞれ家族生活への経済的および心理社会的混乱を報告し、79%が家族との交流や新しいことを積極的に学ぶ機会を持っていると回答しました。女性と年長者の、社会的および精神的な健康状態は最悪で、健康行動に関する認識の変化は、報告された行動の頻度と性別によって異なっていました。
著者名:Ng K, Cosma A, Svacina K, et al.
論文名:Czech adolescents'remote school and health experiences during the spring 2020 COVID-19 lockdown.
雑誌名:Prev Med Rep.2021.DOI:10.1016/j.pmedr.2021.101386.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34012765/



【2021年6月22日 掲載】
(Mechanism & Vaccine)
1.反ワクチン感情が強い地域における麻疹のアウトブレイクを管理するにあたって直面する重要な課題について、オーストラリアの公衆衛生専門家の考えを求めた研究です。推奨される予防接種スケジュールに従わない親と養育者に関連する主要な懸念事項を特定するために、政策立案者、感染症専門家、予防接種プログラムのスタッフなどを対象に、麻疹の発生に関する架空の、しかし事実に基づいたシナリオをもとに3ラウンドの修正デルファイ法にて調査を実施し、予防接種率の低い地域での発生に対応するための重要な優先事項を検討しました。最大の懸念事項は「麻疹のアウトブレイクの可能性」で、予防接種未接種者への優先事項は「感染児の隔離」、「ワクチンや隔離の重要性についての教育」など予防接種を反対する集団に対する実際の問題は「不信感」、「ワクチンや病気に対する誤った情報との闘い」です。アウトブレイクの最中に反ワクチン派の人達の考えを変えようと試みることやその人達の子どもへワクチンを接種することは、優先事項とはなりません。専門家がこの集団から必要としていること「連絡先と連絡手段の明確化」、「情報に耳を傾ける意欲」などが挙げられました。この研究の結果は、COVID-19ワクチンの普及に伴い、SARS-CoV-2の集団感染に対する公衆衛生管理を行っていく上で適応できるものです。
筆者名: Robinson P, Wiley K, Degeling C.
論文名:Public health practitioner perspectives on dealing with measles outbreaks if high anti-vaccination sentiment is present
雑誌名:BMC Public Health. 2021.DOI:10.1186/s12889-021-10604-3.
URL: https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s12889-021-10604-3.pdf

2.ドイツにおいて、SARS-CoV-2アウトブレイクを鎮静化するためのパンデミック対策の結果、2020年4月から6月までに成人及び子どもの両方で定期予防接種の予約がキャンセルされました。親の方からキャンセルする心理的背景を検討したところ、ワクチンに対する信頼性、制約、自己満足、計算、集団的責任の要素の中で、信頼性に関連性があることがわかりました。パンデミック対策の緩和後に、キャンセルされた予防接種のキャッチアップがなされていますが、40%はまだ再スケジュールされておらず、その多くは本人・親によってキャンセルされています。したがって、医師は定期的に本人に予防接種を推奨し、この状態を改善させる必要があります。
筆者名: Schmid-Küpke NK, Matysiak-Klose D, Siedler A, et al.
論文名:Cancelled routine vaccination appointments due to COVID-19 pandemic in Germany
雑誌名:Vaccine X. 202.DOI:10.1016/j.jvacx.2021.100094.
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2590136221000115?via%3Dihub

3.このレビューでは、COVID-19パンデミック中の小児ワクチン接種行動に対する障壁について分析しました。ワクチン接種の向上はCOVID-19のパンデミックやその他の障壁、つまり、親のワクチンへの躊躇、健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health:SDoH)の不平等などによって妨げられており、ワクチン接種の格差がさらに悪化しています。医療提供者は、ワクチン接種率を高め、親のワクチン忌避に対処するため有効な推奨を提供できる独自の立場にあります。医療提供者の指導、予防接種リマインダーリコールシステム、標準化された安全プロトコル(物理的距離、手指衛生慣行など)の順守を組み込んだベストプラクティス、および遠隔医療と屋外/ドライブスルー/カーブサイド(出前)での予防接種サービスを提供することなどが求められます。さらに、公衆衛生監視システムを利用してデータを収集・分析・解釈し、それによって、ワクチンの配布などの効果的な健康政策の意思決定のためのタイムリーで正確な健康情報の普及を確保するために、一丸となって努力すべきです。
筆者名:Olusanya OA, Bednarczyk RA, Davis RL, et al
論文名:Addressing Parental Vaccine Hesitancy and Other Barriers to Childhood/Adolescent Vaccination Uptake During the Coronavirus (COVID-19) Pandemic.
雑誌名:Front Immunol. 2021 Mar 18.DOI:10.3389/fimmu.2021.663074
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2021.663074/full

4.Pfizer-BioNTech covid-19ワクチンは、第III相試験の予備結果で、12~15歳のSARS-CoV-2に対して100%の有効性を示しました。この第III相試験には、米国の2,260人の小児が含まれていました。プラセボ群(n=1,129)では合計18例のcovid-19が観察されましたが、ワクチン接種群(n=1,131)では報告されませんでした。ワクチンはまた、強力な抗体反応を誘発し、忍容性が高く、副作用は16〜25歳の参加者で観察されたものと一致していました。ファイザーは、ピアレビューと公開のためにデータを提出し、試験参加者は、長期的な保護と安全性を判断するために2年間監視されます。6ヶ月から11歳の小児を対象としたワクチン試験も開始され、健康な小児に先週最初のワクチンが接種されました。この研究では、5~11歳、2~5歳、および6か月〜2歳の3つの年齢グループで、ワクチンの安全性、忍容性および免疫原性(2回投与、21日間隔)を評価します。
筆者名:Mahase E.
論文名:Covid-19: Pfizer reports 100% vaccine efficacy in children aged 12 to 15.
雑誌名:BMJ.2021.DOI:https://doi.org/10.1136/bmj.n88
URL:https://doi.org/10.1136/bmj.n881

5.イタリアがロックダウン中であった2020年4月28日~6月8日にイタリア小児科学会によってデジタルプラットフォームを用いて、0~11歳の子どもを持つ家族を対象として行われた子どもの予防接種状況に関する調査です。1,474人から回答が得られ、3分の1以上(34%)が実際に予防接種の予約をキャンセルしていました。その理由は、SARS-CoV-2に対する恐れ(44%)、ワクチン提供側による予約の延期(42%)または中止(13%)でした。更に調査対象の46%が国および地方からの感染予防に関する情報不足を指摘しました。ワクチン忌避を回避し、COVID-19パンデミック期間中に適切な予防接種率を維持するためには、国および地方からの感染予防に関する情報を家族に周知する必要があります。
筆者名: Russo R, Bozzola E, Palma P, et al.
論文名:Pediatric routine vaccinations in the COVID 19 lockdown period: the survey of the Italian Pediatric Society.
雑誌名:Ital J Pediatr.2021.DOI:10.1186/s13052-021-01023-6
URL: https://ijponline.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13052-021-01023-6

6.ニューヨークの単施設において2020年4月9日~8月31日の間に1~102歳の合計31,426例を対象としてSARS-CoV-2抗体の半定量結果と年齢の関連を調査しました。小児 (1-18歳) 1,194例の197例 [16.5%; 95%CI, 14.4%-18.7%],成人30,232例 (19歳以上) の5,630例 [18.6%; 95%CI, 18.2%-19.1%]が抗体陽性であり、両者の陽性率に差はありませんでした。IgGレベルは、小児年齢においては負の相関を示し(r = -0.45、P <.001)、逆に成人年齢においては中程度ですが正の相関を示しました(r = 0.24、P <.001)。この研究の結果は, SARS-CoV-2特異抗体応答が各年齢層で異なることを示唆しています。疾患のスクリーニングと管理およびワクチン開発のためには、年齢を考慮した戦略が必要かも知れません。
筆者名: Yang HS, Costa V, Racine-Brzostek SE, et al.
論文名:Association of Age With SARS-CoV-2 Antibody Response.
雑誌名:JAMA Netw Open. 2021. DOI:10.1001/jamanetworkopen.2021.4302.
URL: https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2777743

(Diagnosis)
1.新型コロナウイルス迅速抗原検査に関する報告です。唾液検体によるPCR法(Curative Labs)と鼻腔検体による抗原迅速検査(BinaxNOW:アボット)を行い、陽性一致率は56.2% (127/226, 95%CI 49.5-62.8%)、無症候性の小児より症候性の小児の方が高く(64.4% vs 51.1%)、Ct値と逆相関しました。迅速抗原検査は感染力のある小児に対して有用であり、感度の限られた感染早期の反復使用に有用であると結論されていました。
著者名:Sood N, Shetgiri R, Rodriguez A, et al.
論文名:Evaluation of the Abbott BinaxNOW rapid antigen test for SARS-CoV-2 infection in children: implications for screening in in school setting.
雑誌名:PLoS One.2021. DOI:10.1371/journal.pone.0249710.
URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0249710

2.成人及び小児において、RT-PCRによるSARS-CoV-2検出における唾液検体の有効性に関する研究です。唾液の採取は非侵襲的で、集団検査や家庭での検査に適しているため、鼻咽頭スワブ(NPS)の代替として役立つ可能性があります。成人1,100人と小児170人を対象に、唾液とNPSにおけるRT-PCRによるSARS-CoV-2検出の大規模な比較試験が実施されました。273人がNPSまたは唾液のいずれかで検査陽性でした。2つの検体の一致率は97.8%と高く、唾液での検出はNPSと比較して良好でした。小児では、NPSよりも唾液で検出されることが多く(陽性予測値= 84.8%)、小児ではNPSサンプリングが困難な場合があることが強調されました。唾液はSARS-CoV-2検出に信頼できる検体であり、小児の検査に利点があり、反復検査および大量検査の増加と促進に適用できると報告されました。
著者名:Huber M, Schreiber PW, Scheier T, et al.
論文名:High efficacy of saliva in detecting SARS-CoV-2 by RT-PCR in adults and children.
雑誌名:Microorganisms.2021.DOI:10.3390/microorganisms9030642.
URL:https://www.mdpi.com/2076-2607/9/3/642

(Transmission)
1.2020年6月に学校が部分再開された英国の小学校における、SARS-CoV-2感染に関する前方視的なアクティブサーベイランスの成績です。鼻腔ぬぐい液を用いたRT-qPCRの結果、6月~7月中旬における週毎の感染率は生徒、職員それぞれ10万人あたり4.1、12.5でした。調査開始時の抗体陽性率は生徒11.2%、職員15.1%であり、地域の抗体陽性率と同等でした。9月に学校が完全再開された後、12月までに抗体陽転したのは生徒19名(5.6%)、職員36名(4.8%)であり、小学校での感染率の低いことが示されました。
著者名:Ladhani SN, Baawuah F, Beckmann J, et al
論文名:SARS-CoV-2 infection and transmission in primary schools in England in June-December, 2020 (sKIDs): an active, prospective surveillance study
雑誌名:Lancet Child Adolesc Health. 2021.DOI:10.1016/S2352-4642(21)00061-4.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352464221000614?via%3Dihub

2.チューリッヒ(スイス)のCOVID-19第2波期間中に小・中学校において無症候病原体保有者や症状の乏しいCOVID-19陽性者を探知し、学校内の感染拡大の状況を把握できるサーベイランスの構築を試みた研究です。2020年12月1日から11日の間にランダムに選択された14校からさらにランダムに選ばれたクラスにおいて1週間間隔で2回の口腔スワブによるPCRと迅速診断検査を用いたSARS-CoV-2の陽性率を調査し、質問票により検査前5日間の症状について情報収集が行われました。6~16歳までの641人と66人の先生が最低1回の検査を受け、検査前5日間の間に35%の生徒と8%の先生が軽度症状を有していました。PCR1回目は1名の生徒が陽性で有病率が0.2% (95% CI 0.0–1.1%)、2回目は全員陰性となりました。迅速診断検査では1回目陽性の生徒の結果が陰性、その他偽陽性例が9例となりました(検体を追加採取してPCRで確認しています)。以上より、地域でSARS-CoV-2感染が流行していても学校における感染拡大のリスクは低く、学校においては有症状者は自宅で待機し、陽性者が発生した場合は濃厚接触者をしっかりと追跡し隔離するとともに可能な限りの感染予防策の実施で対応することで十分であると結論付けています。また迅速診断検査の学校における導入も感度などさらに詳しく調査をする必要があると述べています。
著者名:Kriemler S, Ulyte A, Ammann P, et al.
論文名:Surveillance of acute SARS-CoV-2 infections in school children and point-prevalence during a time of high community transmission in Switzerland
雑誌名:Frontiers in Pediatrics.2021.DOI:10.3389/fped.2021.645577
URL: https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fped.2021.645577/full

3.COVID-19パンデミック時の妊婦と児のアウトカムをシステマティックレビューとメタ解析で調べた研究です。2020年1月から2021年1月までの論文を調べ、40の論文を検討しました。その結果、COVID-19の影響によって、死産、母親の死亡率、外科的に治療された子宮外妊娠、母親のうつの罹患が高まったことが分かりました。一方で、早産率は全体では変化はありませんでしたが、先進国では減少していました。これらの結果から、COVID-19の妊婦と児に対する影響は大きく、早急の対応が必要であると結論づけています。
著者名:Chmielewska B, Barratt I, Townsend R, et al.
論文名:Effects of the COVID-19 pandemic on maternal and perinatal outcomes: a systematic review and meta-analysis
雑誌名:Lancet Glob Health. 2021.DOI:10.1016/S2214-109X(21)00079-6
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8012052/

4.家庭内二次感染率について調査したオランダの成績です。実験室診断されたSARS-CoV-2陽性患者に対して、4~6週間に少なくとも3回の家庭訪問が行われ、家族からの検体採取と症状について調査しました。55家族187名のうち、17家族は家庭内感染を認めず、11家族は全員が感染しました。家庭内の推定二次感染率は35~51%と高率でしたが、小児は青年および成人よりも低い(0.67;95%CI:0.40-1.1)ことが示されました。
著者名:Reukers DFM, Boven M, Meijer A, et al.
論文名;High infection secondary attack rates of SARS-CoV-2 in Dutch households revealed by dense sampling
雑誌名:Clin Infect Dis.2021.DOI:10.1093/cid/ciab237.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8083540/pdf/ciab237.pdf

5.2020年3月から12月にカナダマニトバ州において発生した成人と小児のCOVID-19陽性者の鼻咽頭検体を用いて細胞培養におけるウイルス増殖能、SARS-CoV-2のE遺伝子領域のRT-PCRから得られたCt値、TCID50/mLを測定し両者の結果を比較した研究です。研究対象は10歳未満(小児層)が97例、11~17歳(青年層)が78例、130例が18歳以上の成人(成人層)でした。ウイルス分離は小児層では18例(19%)、青年層では18例(23%)で認めたのに対し、成人層では57(44%)に認められました。Ct値は成人層の検体が小児、青年層と比較し有意に低く、TCID50/mLは青年層が成人層と比較し有意に低いという結果になりました。以上より小児、青年層はSARS-CoV-2ウイルス感染伝播の中心的な役割を果たしているとは言えないと結論付けています。
著者名: Bullard J, Funk D, Dust K, et al.
論文名: Infectivity of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 in children compared with adults
雑誌名: CMAJ.2021.DOI:10.1503/cmaj.210263
URL: https://www.cmaj.ca/content/193/17/E601.long

6.2021年12月1日から1月22日まで、米国ジョージア州の公立学校でCOVID-19の集団感染の報告です。86名の最初の感染者と1,119名の接触者が見つかり、接触者の63%が検査を受けました。その内、59 名(8.7%) が陽性で、15名 (17.4%)の最初の感染者が2名以上に感染を広げていました。症状の分かった55名の内、 31名 (56.4%) は症状がありませんでした。感染のリスクは、室内での接触の多いスポーツ、職員の会合・ランチ、教室内などがあげられました。学校の職員、有症状者が感染させるリスクが高かったです。これらのリスクを避けることが学校での感染を防ぐ上で重要です。
著者名: Gettings JR, Gold JAW, Kimball A, et al.
論文名: SARS-CoV-2 transmission in a Georgia school district — United States, December 2020–January 2021
雑誌名:Clin Infect Dis. 2021.DOI:10.1093/cid/ciab332.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33864375/

(Treatment)
1.小児のCOVID-19患者の重症度と血液中のVitamin Dの値を比較したトルコの1医療機関からの報告です。103人のSARS-CoV-2 PCR陽性の小児(1~17歳 平均12.2歳)を対象に、25 OH Vitamin Dを測定しました。Vitamin D欠乏と診断された小児は、無症状者、軽症者、中等症~重症者の小児の中で、それぞれ、17.2%、35.4%、70.6%を占めており、中等症~重症者で多く認められました。Vitamin Dの値は、リンパ球数と正の相関を認め、年齢、CRP値、fibrinogenの値と負の相関を認めました。この結果から、思春期の年齢層に対して、Vitamin Dの予防投与は、COVID-19感染症の重症化予防に勧められるのではないかと考えられました。
著者名:Bayramoğlu E, Akkoç G, Ağbaş A, et al.
論文名:The association between vitamin D levels and the clinical severity and inflammation markers in pediatric COVID-19 patients: single-center experience from a pandemic hospital.
雑誌名:Eur J Pediatr. 2021.DOI:10.1007/s00431-021-04030-1.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00431-021-04030-1

(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.MIS-CとCOVID-19における炎症マーカーについてのシステマティックレビューとメタ解析の結果です。21研究の1,735人(787人MIS-C)を対象としました。MIS-Cは非重症COVID-19と比較して、リンパ球絶対数が低く、好中球絶対数(ANC)、CRP、Dダイマーが高値でした。重症COVID-19との比較では、LDHと血小板数が低値、ESRが高値でした。重症と非重症MIS-Cの比較では、前者がWBC、ANC、CRP、Dダイマー、フェリチンが高値を示しました。MIS-C患者においては、0~5歳群が他の年齢群よりCRPおよびフェリチンが低値でした。これらの炎症マーカーの測定はMIS-Cの診断の助けとなるかもしれません。
著者名:Zhao Y, Yin L, Patel J, et al.
論文名:The inflammatory markers of multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) and adolescents associated with COVID-19: A meta-analysis
雑誌名:J Med Virol.2021.DOI:10.1002/jmv.26951.
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jmv.26951

2.米国におけるMIS-CとCOVID-19に関する横断的研究です。2020年3月から2021年1までに発症したMIS-Cの定義に合致する症例の臨床及び検査所見と、MIS-CとCOVID-19との地理的・時間的関連を検討しています。1,733例がMIS-Cと診断され、1,117例(71.3%)がヒスパニックかヒスパニック以外の黒人でした。年齢の中間値(四分位)は9(5-13)歳でした。994例(57.6%)が男性ですが、男女比は0-4歳では概ね1:1で、年齢とともに増加し、18~20歳では2:1でした。937例(54%)に低血圧あるいはショックがあり、1,009例(58.2%)がICUに入室しています。心機能障害が484例(31.0%)、心嚢液貯留が365例(23.4%)、心筋炎が300例(17.3%)、冠動脈拡張あるいは動脈瘤が258例(16.5%)に認められました。最初の2回のMIS-Cのピークは、COVID-19のピークの2~5週後に認められました。MIS-Cの累積発生率は、21歳未満人口10万対2.1でしたが、州により0.2~6.3と変動がみられました。24例(1.4%)が死亡しています。MIS-CとCOVID-19の地理的・時間的関連から、MIS-CはSARS-CoV-2感染症に対する遅延型免疫反応の結果と考えられます。
著者名:Belay ED, Abrams J, Oster ME, et al.
論文名:Trends in geographic and temporal distribution of US Children with multisystem inflammatory syndrome during the COVID-19 pandemic
雑誌名:JAMA Pediatr.2021.DOI:10.1001/jamapediatrics.2021.0630.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33821923/

3.MIS-Cの臨床病態についての報告です。10例のCOVID-19症例と9例のMIS-C症例について、リンパ球と樹状細胞サブセット、ケモカイン/サイトカインプロファイル、好中球活性化因子、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、反応性酸素種について検討しています。MIS-CはCOVID-19に比較して、血漿のCRP、MPO、IL-6、ケモカイン(CXCL8、CCL2)が高値でした。加えて、主にIFNγにより誘導されるCXCL9やCXCL10などのケモカインも高値でした。一方、血漿IFN-αはCOVID-19では検出されましたが、MIS-Cでは検出されませんでした。また、ISG15及びIFIT1mRNAはCOVID-19患者由来細胞では増加していましたが、MIS-C患者では健康小児と同等でした。IFN-αの主な供給元である形質細胞様樹状細胞の数は、MIS-Cでは高度に減少していました。以上、COVID-19では最近のウイルス感染の関与が疑われる1型IFNの活性化を示唆する免疫反応が、MIS-Cでは炎症性サイトカインの上昇やTh1活性化を示す免疫反応が特徴的でした。
著者名:Caldarale F, Giacomelli M, Garrafa E, et al.
論文名:Plasmacytoid dendritic cells depletion and elevation of IFN-γ dependent chemokines CXCL9 and CXCL10 in children with multisystem inflammatory syndrome
雑誌名:Front Immunol.2021.DOI:10.3389/fimmu.2021.654587.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33841438/

4.ロンドンの小児病院で2020年3月から6月の間に診療を受けた、18歳未満の小児多系統炎症性症候群(PIMS-TS)症例75例のうち、神経学的合併症を伴った9例(12%)とそれ以外の66例を後方視的に比較解析した報告です。9例中1例は広範囲に及ぶ脳梗塞に伴い死亡し、1例は片麻痺、3例は性格変化の後遺症を残しましたが、4例は後遺症なく改善しました。2群間の患者背景には有意な差はありませんでしたが、神経学的後遺症を伴った症例も伴わなかった症例同様、黒人、アジア人とマイノリティ、肥満がリスク因子でした。注目すべき点は、神経学的合併症を伴った症例は伴わなかった症例に比べCRP、プロカルシトニン、D-ダイマー値が高値で、さらに神経学的後遺症を残した症例は後遺症のなかった症例に比し、フェリチン、D-ダイマー値が高値でした。
著者名:Sa M, Mirza L, Carter M, et al.
論文名:Systemic inflammation is associated with neurologic involvement in pediatric inflammatory multisystem syndrome associated with SARS-CoV-2
雑誌名:Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm.2021. DOI:10.1212/NXI.0000000000000999.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33850037/

5.MIS-Cに関するレビュー論文です。小児では通常軽症な急性COVID-19感染と対照的に、MIS-C患者の68%は集中治療が必要です。心筋炎と冠動脈拡張/瘤が、MIS-Cの主な心血管合併症です。心エコー検査は心機能と冠動脈の評価、心臓MRI検査は心臓の浮腫/線維化など心筋炎の所見、心筋血流、回復期の冠動脈所見を評価できます。MIS-Cでの脳合併症は心臓と比較して頻度は低いですが、しばしば認めます。脳MRI検査で、T2強調画像による高信号病変(拡散強調画像では抑制効果)、両側視床病変などが認められます。
著者名:Mavrogeni SI, Kolovou G, Tsirimpis V, et al.
論文名:The importance of heart and brain imaging in children and adolescents with multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C).
雑誌名:Rheumatol Int.2021.DOI:10.1007/s00296-021-04845-z.
URLhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8052538/pdf/296_2021_Article_4845.pdf

6.川崎病ショック症候群(Kawasaki disease shock syndrome, KDSS)とMIS-Cについて、患者背景、臨床症状、治療、および冠動脈病変を含む予後に関するデータを後方視的に解析した論文です。国内の単一施設において2015年から2020年の間に治療を受けた川崎病552人のうち、KDSSは6人(1.1%)でした(うち2020年の発症は1人)。国内外の患者をレビューした結果、KDSSはMIS-C と比較してKDの診断基準を満たす頻度が高く(70対6.3%)、冠動脈病変の発生率が高い(65対11%)という結果で、循環ショックのために血管作動アゴニストがより高頻度に使用されました。KDSSとMIS-Cの予後は、ともに比較的良好(致命率6.7対1.7%)でした。KDSSとMIS-Cに類似する点はありますが、異なる疾患と考えられます。
著者名:Suzuki J, Abe K, Matsui T, et al.
論文名:Kawasaki disease shock syndrome in Japan and comparison with multisystem inflammatory syndrome in children in European countries.
雑誌名:Front Pediatr.2021.DOI:10.3389/fped.2021.625456.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33816399/

(School closure)
1.COVID-19アウトブレイクによる学校閉鎖期間中において青年期の若者に生じた学習上の問題やうつ症状を解析した中国からの論文です。2020年4月から5月にかけてオンラインを用いて中学生と高校生の6,435人を調査しています。うつ症状は17.7%に認められ、より強いうつ症状と学習上の問題が関連していました。両親との良好な関係はそれらの関連を改善させる効果を有していました。生徒の学習習慣を整え、親子関係を改善させることでうつ病発症を予防できることが示唆されました。
筆者名:Wang J, Wang H, Lin H, et al.
論文名:Study problems and depressive symptoms in adolescents during the COVID-19 outbreak: poor parent-child relationship as a vulnerability.
雑誌名:Global Health.2021.DOI:10.1186/s12992-021-00693-5.
URL:https://globalizationandhealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12992-021-00693-5

2.ロックダウンと学校再開が小児のSARS-CoV-2感染や他の呼吸器感染に与える影響を解析したフィンランドからの報告です。ロックダウンによりSARS-CoV-2以外の呼吸器病原体の頻度は2週間後より低下し、SARS-CoV-2は8週間後より低下しました。その効果は晩夏まで続きました。学校やデイケアの再開がなされる前の8月より、ライノウイルスとSARS-CoV-2の増加が認められました。学校再開により病原体の頻度はすぐには影響を受けないようでした。ソーシャルディスタンスをとることが感染を予防することに極めて重要であることが示唆されました。
筆者名:Haapanen M, Renko M, Artama M, et al.
論文名:The impact of the lockdown and the re-opening of schools and day cares on the epidemiology of SARS-CoV-2 and other respiratory infections in children - A nationwide register study in Finland.
雑誌名:EClinicalMedicine.2021.DOI:10.1016/j.eclinm.2021.100807.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589537021000870?via%3Dihub

3. ギリシャにおける397人の小児/青年とその親を対象とした2020年4~5月に実施されたオンライン調査の報告です。ロックダウン中に、小児/青年の睡眠時間と視聴時間が増加し、身体活動が減少したことが示されました。果物やフレッシュフルーツジュース、野菜、乳製品、パスタ、お菓子、総スナック、朝食の消費量は増加しましたが、ファーストフードの消費量は減少しました。小児/青年の35%で体重が増加しました。重回帰分析により、体重の増加は朝食、塩味のスナック、および総スナックの消費の増加と身体活動の減少に関連していることが示されました。
筆者名:Androutsos O, Perperidi M, Georgiou C, et al.
論文名:Lifestyle changes and determinants of children's and adolescents' body weight increase during the first COVID-19 lockdown in Greece: The COV-EAT study.
雑誌名:Nutrients. 2021.DOI:10.3390/nu13030930.
URL:https://www.mdpi.com/2072-6643/13/3/930/htm

4.全国的な学校閉鎖(2020年3月から5月)とソーシャルディスタンスが、日本の主要な小児感染症の入院患者数に及ぼした影響を評価するために、2018年7月から2020年6月までのDPCデータを使用して、15歳以下の上気道感染症、下気道感染症、インフルエンザ、胃腸感染症、虫垂炎、尿路感染症、皮膚軟部組織感染症ために入院した患者が解析されました。210病院の合計75,053人の患者が含まれました。2020年3月、4月、5月の最終週の入院患者数は、前年比でそれぞれ52.5%、77.4%、83.4%減少しました。上気道感染症、下気道感染症、胃腸感染症の入院患者数の著しい減少が観察されましたが、他の疾患グループでは比較的軽度の変化に留まりました。
筆者名:Kishimoto K, Bun S, Shin JH, et al.
論文名:Early impact of school closure and social distancing for COVID-19 on the number of inpatients with childhood non-COVID-19 acute infections in Japan.
雑誌名:Eur J Pediatr.2021. DOI:10.1007/s00431-021-04043-w.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00431-021-04043-w

5.COVID-19蔓延防止目的で行われた学校閉鎖が、子供たちの精神的健康に与えた影響を調べた日本の栃木県からの報告です。予約外来を受診した9歳以上の小中学生で、学校閉鎖中の群(78人)と学校再開後の群(113人)各々に、WHO Five Well-being Indexの設問に回答してもらい結果を比較しました。合計点では2群間に有意差ありませんでしたが、閉鎖群では睡眠や家族と過ごす時間は増加しましたが、睡眠リズム・食習慣・身体活動が乱れていました。全体として精神的健康に問題のある子供の数に変化ありませんでした。
筆者名:Saito M, Kikuchi Y, Kawarai A, et al.
論文名:Mental health in Japanese children during school closures due to the COVID-19.
雑誌名:Pediatr Int.2021. DOI:10.1111/ped.14718.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ped.14718


 

【2021年6月4日 掲載】
(Mechanism & Vaccine)
1.抗SARS-CoV-2自然感染抗体、ワクチン誘導抗体からのエスケープ変異株の報告です。SARS-CoV-2スパイク蛋白の変異株は、英国B.1.1.7、南アフリカB.1.351、ブラジルP.1があります。自然感染後の回復期とワクチン後の血清を用いて、南アフリカB.1.351(K417N、E484R、N501Y)の構造機能解析を行い、E484K変異による中和活性の減弱を認めました。
著者名:Zhou D, Dejnirattisai W, Supasa P, et al.
論文名:Evidence of escape of SARS-CoV-2 variant B.1.351 from natural and vaccine-induced sera.
雑誌名:Cell. 2021.DOI:10.1016/j.cell.2021.02.037.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421002269?via%3Dihub

2.ドイツのテュービンゲン大学病院Clinical Collaboration Unit Translational Immunologyで実施された51人のSARS-CoV-2感染後の回復期成人についての研究です。この研究では、感染後6か月までのSARS-CoV-2抗体とT細胞応答が調査されました。スパイクに対する特異的IgG抗体とIgA抗体は回復期に減衰しましたが、ヌクレオカプシドに対する特異的抗体反応は変化しませんでした。対照的に、機能的T細胞応答は安定で増強していました。抗ヌクレオカプシド抗体価は、感染後の症状の高い有病率と関連していましたが、T細胞応答については、感染後の症状とは関連していませんでした。SARS-CoV-2に対する長期のT細胞応答に関与するT細胞エピトープ、特に回復期の個人で持続的なT細胞応答を媒介する7つの優勢なHLA-DR制限ペプチドが同定されました。これはCOVID-19ワクチンの設計の基本となる可能性があります。
著者名:Bilich T, Nelde A, Heitmann JS, et al.
論文名:T cell and antibody kinetics delineate SARS-CoV-2 peptides mediating long-term immune responses in COVID-19 convalescent individuals.
雑誌名:Sci Transl Med.2021.DOI:10.1126/scitranslmed.abf7517.
URL:https://stm.sciencemag.org/content/early/2021/03/12/scitranslmed.abf7517

3.新型コロナワクチン(ファイザー社)を2回接種した人の血清を用いて、英国型(B.1.1.7)変異を人工的に導入したウイルスに対する中和活性を測定した報告です。変異により中和活性が1/1.9に低下しました。更にE484K変異を導入すると中和活性は1/6.7に低下しました。E484K変異は南アフリカ型、ブラジル型の変異ウイルスにみられるため注意が必要です。
著者名:Collier DA, De Marco A, Ferreira IATM, et al.
論文名:Sensitivity of SARS-CoV-2 B.1.1.7 to mRNA vaccine-elicited antibodies.
雑誌名:Nature.2021. DOI:10.1038/s41586-021-03412-7.
URL:https://www.nature.com/articles/s41586-021-03412-7

4.SARS-CoV-2感染後6か月の100人のドナーでSARS-CoV-2特異的T細胞応答を分析した報告です。 T細胞応答は、すべてのドナーで強力なIL-2サイトカイン発現を伴う優勢なCD4 + T細胞応答が特徴的でした。 T細胞応答の中央値は、症候性感染を経験したドナーで50%高く、一次感染の重症度は細胞性免疫と相関していました。スパイクおよび核タンパク質/膜タンパク質に対するT細胞の応答は、ピーク抗体レベルと相関していました。機能的SARS-CoV-2特異的T細胞応答は感染後6か月間保持されることが判明しました。
著者名:Zuo J, Dowell AC, Pearce H, et al.
論文名:Robust SARS-CoV-2-specific T cell immunity is maintained at 6 months following primary infection.
雑誌名:Nat Immunol. 2021. DOI:10.1038/s41590-021-00902-8.
URL:https://www.nature.com/articles/s41590-021-00902-8

5.COVID-19の治療抗体や回復期の患者血清を用いて、南アフリカ変異型(B.1.351)を人工的に導入したウイルスと非変異株に対する中和活性を比較した論文です。3種類の治療抗体は非変異株を中和しましたが、南アフリカ変異型(B.1.351)ウイルスを中和しませんでした。更に、44名の回復期の患者血清では南アフリカ変異型(B.1.351)ウイルスの中和活性が大幅に低下し、ほぼ半数の検体で全く認められませんでした。また、中和活性が見られなかった抗体も変異株のスパイクに結合するので、中和と異なった機序で防御作用に関与している可能性がありました。
著者名:Wibmer CK, Ayres F, Hermanus T, et al.
論文名:SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma.
雑誌名:Nat Med.2021. DOI:10.1038/s41591-021-01285-x.
URL:https://www.nature.com/articles/s41591-021-01285-x

6.無症候性(85名)と症候性(75名)のCOVID-19患者の血液を用いた、構造蛋白質(M、NP、スパイク)に対するSARS-CoV-2特異的T細胞反応とサイトカインを検討した報告です。両群でSARS-CoV-2特異的T細胞反応は同等でしたが、無症候性群においてIFN-γとIL-2が増加していました。この様に無症候性感染では、IL-10と炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α、IL-1β)の均整のとれた分泌と関連していました。無症候性SARS-CoV-2感染者は弱い抗ウイルス反応ではなく、逆に、非常に機能的にウイルス特異的な細胞性免疫応答をおこしていることが示唆されました。
著者名:Le Bert N, Clapham HE, Tan AT, et al.
論文名:Highly functional virus-specific cellular immune response in asymptomatic SARS-CoV-2 infection.
雑誌名:J Exp Med. 2021.DOI:10.1084/jem.20202617.
URL:https://rupress.org/jem/article/218/5/e20202617/211835/Highly-functional-virus-specific-cellular-immune

7.SARS-CoV-2の変異は免疫を回避することができ、ワクチンや抗体療法の有効性に影響を及ぼす可能性があります。今回、SARS-CoV-2スパイク(S)受容体結合モチーフ(RBM)はSの非常に可変的な領域であり、一般的なセンチネルRBM変異、N439Kの疫学的、臨床的、および分子的特性を検討しました。 N439KはS蛋白質のACE2受容体への結合親和性が増強されており、N439Kウイルスは野生型と同様の複製適合性を持ち、感染を引き起こします。 N439K変異は、緊急使用が許可されているものを含む中和モノクローナル抗体に対し耐性傾向にあり、感染から回復した人のポリクローナル血清の効果を低下させます。 N439Kなどの病原性と適応性を維持する免疫回避変異がSARS-CoV-2のS内に出現する可能性があり、ワクチンと治療薬の開発のために継続的な分子監視の必要性が浮き彫りになりました。
著者名:Thomson EC, Rosen LE, Shepherd JG, et al.
論文名:Circulating SARS-CoV-2 spike N439K variants maintain fitness while evading antibody-mediated immunity.
雑誌名:Cell. 2021.DOI:10.1016/j.cell.2021.01.037.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867421000805?via%3Dihub

8.COVID-19に対する集団予防接種を進めているイスラエルのデータを使用してファイザー社製BNT162b2mRNAワクチンの有効性を評価しました。2020年12月20日から2021年2月1日までに予防接種を受けた人と1:1の比率で予防接種を受けていない人を対照とし、各グループは596,618人でした。SARS-CoV-2感染、症候性、入院、重症および死亡について、初回接種後14日から20日および2回目接種後7日以上での推定ワクチン有効性を評価しました。接種群と非接種群において、SARS-CoV-2感染(46% vs 92%)、症候性(57% vs 94%)、入院(74% vs 87%)、重症(62% vs 92%)。ワクチン群の初回接種後14日から20日の死亡予防効果は72%でした。全国的な集団ワクチン接種の効果は、開発時のランダム化試験の結果と一致していました。
著者名:Dagan N, Barda N, Kepten E, et al.
論文名:BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting.
雑誌名:N Engl J Med. 2021. DOI:10.1056/NEJMoa2101765.
URL:https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2101765?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

9.アナフィラキシーの既往歴がある英国の国民保健サービス(NHS)の従業員2人が、新型コロナワクチン(ファイザー社製BNT162b2)接種後に重度のアレルギー反応を発症しました。2人とも迅速かつ完全に回復しました。BNT162b2は、脂質ナノ粒子に包含され、他の物質とブレンドされて細胞への輸送を可能にするmRNAに基づくワクチンですが、予防措置として医薬品医療製品規制庁(MHRA)は、「重度のアレルギーを持つ患者」に原則として予防接種を行わないように暫定ガイダンスを出しました。接種前に注意深いアレルギー歴の聴取が必要で、接種前に診断を明確にしてリスク-ベネフィット評価が必要です。ワクチンに対する重度のアレルギー反応はまれですが、生命を脅かす可能性があります。
著者名:Klimek L, Novak N, Hamelmann E, et al.
論文名:Severe allergic reactions after COVID-19 vaccination with the Pfizer/BioNTech vaccine in Great Britain and USA: Position statement of the German Allergy Societies: Medical Association of German Allergologists (AeDA), German Society for Allergology and Clinical Immunology (DGAKI) and Society for Pediatric Allergology and Environmental Medicine (GPA).
雑誌名:Allergo J Int.2021.DOI:10.1007/s40629-020-00160-4.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7903024/

10.妊娠中の女性と18歳未満の子どもがいる母親における新型コロナワクチン接種の受け入れについて、2020年10月28日~11月18日に匿名のオンライン横断調査が実施され、16か国から合計17,871件の調査回答が入手されました。妊婦の52.0%(n = 2,747/5,282)と非妊婦の73.4%(n = 9,214 / 12,562)は、ワクチンを接種する意向を示しました。妊婦/非妊婦に関わらず女性の69.2%(n = 11,800 / 17,054)は、子どもに予防接種を受けさせる意向を示しました。ワクチンの受け入れはインド、フィリピン、ラテンアメリカのすべての国で高く、ロシア、米国、オーストラリアで低い結果でした。ワクチン受容の最も強力な予測因子は、ワクチンの安全性または有効性への信頼、COVID-19への懸念、自国に対するワクチンの重要性への信念、マスクガイドラインの準拠、公衆衛生機関/健康科学への信頼、およびにルーチンのワクチンに対する態度が含まれていました。
著者名:Skjefte M, Ngirbabul M, Akeju O, et al.
論文名:COVID-19 vaccine acceptance among pregnant women and mothers of young children: results of a survey in 16 countries.
雑誌名:Eur J Epidemiol.2021. DOI:10.1007/s10654-021-00728-6.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s10654-021-00728-6

(Diagnosis)
1.この研究では、新しい高感度のchemiluminescence enzyme immunoassay (HISCL) を用い、60名のSARS-CoV-2感染者と500名のSARS-CoV-2陰性の血清を用い、SARS-CoV-2 spikeとnucleocapsid蛋白に対するIgGとIgMを定量しました。その結果、高い正確性と再現性を示し、類似のコロナウイルスへの交叉反応は認めませんでした。検出の正確性は、Spike蛋白のIgGで98.3%、IgMで93.3%、NucleocapsidのIgGで 100%、IgMで71.7% でした。患者の平均抗体価は、陰性者に比べ、入院時で>10倍、回復期は>100倍の上昇がありました。この優れた検査は、患者の診断とワクチンの効果の判定に使える可能性があります。
著者名:Noda K, Matsuda K, Yagishita S, et al.
論文名:A novel highly quantitative and reproducible assay for the detection of anti‑SARS‑CoV‑2 IgG and IgM antibodies
雑誌名:Sci Rep.2021;11:5198
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-021-84387-3

2.SARS-CoV-2陽性患者10例(4例は無症状)におけるウイルス排出を呼吸器検体と便検体で比較した成績です。それぞれ最長45日、40日まで陽性を認めました。呼吸器検体の陽性率は24.8%と低く、病初期~中期の方が中期~後期よりも高い陽性率でした。呼吸器検体に比べて便検体はウイルス量が多く、陽性率も62.2%と高いうえ、病期や症状の違いには関わりませんでした。ウイルス検出には便検体の方が優っており、特に無症候性感染者の診断に有用である可能性が示されました。
著者名:Chen Y, Wang H, Li Kefeng, et al.
論文名:SARS-CoV-2 viral shedding characteristics and potential evidence for the priority for faecal specimen testing in diagnosis
雑誌名:Plos One.2021.DOI:10.1371/journal.pone.0247367. eCollection 2021
URL:https://doi.org/10.1371/journal.pone.0247367

3.この論文は患者の症状や検査値をもとに、小児COVID-19肺炎とMIS-Cを区別することを目的とした研究です。2020年4月1日から9月1日までアラバマ小児病院バーミンガムにて診断、入院した小児COVID-19肺炎患者とMIS-C患者を対象として後ろ向きに患者のカルテを調査しています。111人が定義を満たし、うち74人が軽傷、8人が中等症、8人が重症COVID-19、また10人が軽傷、11人が重症MIS-Cに分類されました。すべての分類で黒人、ヒスパニックの男児が多くなっていました。MIS-Cの患者は罹患前の基礎疾患を有していませんでしたが、COVID-19は少なくとも1つの基礎疾患を有している人がほとんどでした。症状については、COVID-19は主に呼吸器症状を呈していましたが、MIS-Cは発熱、発疹、結膜炎、胃腸炎症状など多岐にわたる傾向にありました。両群間に有症状の期間やウイルスへの曝露機会における差はありませんでしたが、MIS-Cの方がウイルスへの曝露から症状発症までの期間が長く、心エコー検査で冠状動脈の変化がより頻繁に認められました。また、COVID-19患者の方がSARS-CoV-2PCR陽性であることが多く、入院時の乳酸脱水素酵素値が高い傾向にありました。一方MIS-C患者は低Na血清値、並びに高いCRP、赤血球沈降速度、d-ダイマー、プロカルシトニンを認めました。これらの差はCOVID-19とMIS-Cを鑑別する上で有用と考えられます。
著者名:Reiff DD, Mannion ML, Samuy N, et al.
論文名:Distinguishing active pediatric COVID-19 pneumonia from MIS-C
雑誌名:Pediatr Rheumatol Online J (2021) 19:21
URL:https://doi.org/10.1186/s12969-021-00508-2

(Transmission)
1.医療従事者のSARS-CoV-2感染リスクについて評価するため、フランス、パリの大学病院で行われたケースコントロールスタディです。臨床症状を認め SARS-CoV-2 PCR検査が陽性であった336名と、PCR検査陰性であった228名について、症状と病院内外での行動について調査し、比較を行いました。PCR陽性者は陰性者に比べ、味覚・嗅覚障害を伴う例が多く認められました。また、病院内におけるCOVID-19患者(疑いを含む)との適切なPPEを使用しない接触、マスクを着用しない同僚との接触、病院外でのマスク非着用も陽性者に多く認められました。一方、COVID-19患者専用病棟での勤務や、同居する小児の保育園通園との関連は認められませんでした。医療従事者の感染予防策として、病院内外での適切なPPE着用が重要であり、COVID-19患者病棟勤務や小児を保育園に預けることは感染リスクをあげることにはならないと考えられました。
著者名:Contejean A, Leporrier J, Canouï E , et al.
論文名:Transmission routes of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 among healthcare workers of a French university hospital in Paris, France.
雑誌名:Open Forum Infect Dis.2021.DOI:10.1093/ofid/ofab054
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7928692/

2.SARS-CoV-2の性行為による感染と母子感染のリスクの評価を行うため、COVID-19急性期患者の子宮頸部剥離細胞と膣分泌液からのSARS-CoV-2の検出を試みたインドからの報告です。顕性あるいは不顕性感染が、気道検体のSARS-CoV-2 RT-PCR陽性により確認された15人の女性(27歳~70歳)を対象に検討を行いました。全ての子宮頸部ぬぐいスワブと膣ぬぐいスワブのSARS-CoV-2 RT-PCRは陰性でした。しかし、TMA Panther Systemによる検査で、膣ぬぐいスワブ3検体(20%)が陽性となりました。この結果から、今後、複数の検査法を用いた、より大規模な研究が必要と考えられました。
著者名:Khoiwal K, Kalita D, Shankar R, et al.
論文名:Identification of SARS-CoV-2 in the vaginal fluid and cervical exfoliated cells of women with active COVID-19 infection: A pilot study.
雑誌名:Int J Gynaecol Obstet.2021.DOI:10.1002/ijgo.13671.
URL:https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijgo.13671

3.SARS-CoV-2の家庭内感染に関してスペインで行われた前向き多施設共同研究です。2020年7月1日~10月31日の期間中に診断された、16歳未満のCOVID-19患者1,040例の疫学的および臨床的特徴と二次感染率 (SAR)を分析しました。ほぼ半数(47.2%)が無症状であり、10.8%は基礎疾患があり、2.6%は入院を必要とし、死亡例はありませんでした。家庭内感染は62.3%で認めました。小児症例の72.7%(756/1,040)は成人からの二次感染であり、発端者であったのは7.7%(80/1,040)でした。発端者が小児の場合のSARは成人の場合より有意に低く、夏休み後でさらに低下していました。SARに関連する個人または環境のリスク要因は特定されませんでした。学校が開校していてもなお、小児が家庭内COVID-19クラスターを引き起こしたりパンデミックの主な原因になったりする可能性は低く、小児への介入がSARS-CoV-2感染の減少に与える影響は少ないと予想されます。
著者名:Soriano-Arandes A, Gatell A, Serrano P, et al.
論文名:Household SARS-CoV-2 transmission and children: a network prospective study
雑誌名:Clin Infect Dis. 2021.DOI:10.1093/cid/ciab228. Online ahead of print.
URL:https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciab228/6168547

4.小児の集団におけるSARS-CoV-2感染伝播に関してバルセロナのサマースクールで行われた前向き研究です。研究期間は2020年6月29日~7月31日で、3~15歳の小児と職員(合計1,905人、22校)を対象としました。SARS-CoV-2感染例は、毎週のスクリーニング唾液RT-PCR の陽性例と、カタルーニャ健康監視システムを通じて鼻咽頭RT-PCRが行われた陽性例とし、発端者からの二次発病率と実効再生産数(R *)を計算しました。 発端者と特定されたのは小児30例と成人9例で、濃厚接触者253例のうち12例(4.7%)がSARS-CoV-2陽性でした。 R *は0.3で、同地域の一般人口のR *1.9より低い結果でした。厳格な予防措置の下では、学校でのSARS-CoV-2感染伝播は多くなく、開校に関する現在の推奨事項を支持していることを示唆しています。
著者名:Jordan I, de Sevilla MF, Fumado V, et al.
論文名:Transmission of SARS-CoV-2 infection among children in summer schools applying stringent control measures in Barcelona, Spain
雑誌名:Clin Infect Dis. 2021.DOI:10.1093/cid/ciab228. Online ahead of print.
URL:https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciab227/6168543

5.対面授業の安全性を検討するために、小学校でのCOVID-19発生状況を検討した米国ジョージア州からの報告です。2020年12月から2021年1月までに、単一学区の公立小学校8校で調査されました。8小学校のうち6小学校で、3症例以上の9クラスターが確認され、教師13人と児童32人が感染しました。2クラスターでは,教師から教師への感染が先行し、次いで教師から児童への感染が起こり,結果的に接触者31人中15人が感染し、その教師・児童の家族69人中18人(26%)が感染しました。すべてのクラスターにおいて、フィジカル・ディスタンシングが不適切でした。5クラスターでは児童のマスク使用が不十分でした。学校での感染の主体は教師であり、学校内感染を防ぐためには,学校外での予防策の推進,教師同士の接触を最小限とする、教師と児童が対面する場面での適切なマスク使用とフィジカル・ディスタンシングの徹底が重要です。
著者名:Gold JAW, Gettings JR, Kimball A, et al.
論文名:Clusters of SARS-CoV-2 Infection Among Elementary School Educators and Students in One School District - Georgia, December 2020-January 2021.
雑誌名:MMWR, 2021 / 70(8);289–292
URL:https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7008e4.htm

(Treatment)
1.回復期血漿による治療の有用性を検討したRCTのシステマティックレビューです。4つのピアレビューRCTの1,060名、およびその他の6つのRCT10,722名を対象としました。回復期血漿治療を受けた患者では、プラセボあるいは標準的治療を受けた患者と比較して、すべての原因による死亡に対するリスク比は1.02(95%CI,0.92-1.12)でした。入院期間のハザード比は1.17(95%CI,0.07-20.34)、人工呼吸管理となるリスク比は0.76(95%CI,0.20-2.87)でした。今回の検討では回復期血漿治療の臨床的有用性は有意なものであるとは言えない結果でした。
著者名:Janiaud P, Axfors C, Schmitt AM, et al.
論文名:Association of convalescent plasma treatment with clinical outcomes in patients with COVID-19: a systematic review and meta-analysis.
雑誌名:JAMA. 2021.DOI:10.1001/jama.2021.2747.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33635310/

2.2020年の2月から5月にかけて中国で実施された、遺伝子改変を加えたsuper-compound interferon(rSIFN-co)と既存のIFN-αの有効性を比較した、ランダム化単一盲検臨床試験の結果です。本薬剤は、既存薬に比べ20倍の抗ウイルス効果と副作用の軽減効果があることが既に示されています。46名のrSIFN-co群と48例の既存IFN-α群、いずれも振り分け後ただちに吸入投与されています。解析の結果、臨床的軽快までの日数(11.5日vs14日)、治療開始28日目での軽快率(93.5%vs77.1%)、CT画像の改善までの日数(8日vs10日)、ウイルス核酸検査の陰性化(7日vs10日)の点で、いずれもrSIFN-co群が統計学的に有意に優れていました。ただし、エントリー時点での患者の状態、入院治療期間中の治療法等に2群間でばらつきがみられ、さらにこれら患者背景に関しては統計学的解析がなされていないため、対象患者数が少ないことも含め本研究の大きなlimitationと考えられます。
著者名:Li C, Luo F, Liu C, et al.
論文名:Effect of a genetically engineered interferon-alpha versus traditional interferon-alpha in the treatment of moderate-to-severe COVID-19: a randomised clinical trial.
雑誌名:Ann Med. 2021.DOI:10.1080/07853890.2021.1890329.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33620016/

3.小児リウマチ専門医を対象とした、健常あるいは自己免疫/炎症性疾患を有する小児COVID-19患者への治療アプローチに関する国際的オンライン調査です。93名の回答者のうち90.3%が適応外治療を検討していました。酸素投与が必要な安定した病状ではレムデシビル(48.3%)、アジスロマイシン(26.6%)、経口コルチコステロイド(25.4%)、ヒドロキシクロロキン(21.9%)の使用が推奨されました。サイトカインストーム初期徴候や重篤な病状に対してはアナキンラ、トシリズマブ、コルチコステロイド、IVIG、レムデシビルが考慮されました。基礎疾患の治療については、COVID-19の重症度にもよりますが、シクロホスファミドと抗CD20抗体の投与を控える意見が多かった(75%)一方、その他の治療は継続する者が多いという結果でした。
著者名:Janda A,Schuetz C,Canna S, et al.
論文名:Therapeutic approaches to pediatric COVID-19: an online survey of pediatric rheumatologists.
雑誌名:Rheumatol Int.2021. DOI:10.1007/s00296-021-04824-4.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00296-021-04824-4

(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1.川崎病(KD)96名とKD様症状を示すPIMS 53名の臨床像を比較したイタリアからの報告です。PIMSは年長児に多く、消化器および呼吸器症状をより多く伴っていました。心筋炎などの心病変はPIMSで、冠動脈病変はKDでより多く認められました。PIMSの方がICU入室のリスクが高く、PIMSではリンパ球減少、CRP・フェリチン・トロポニンTの高値が特徴的でした。KDでは免疫グロブリンとアスピリンが、PIMSではステロイドがより多く投与されていました。SARS-CoV-2の陽性率はKD 20%、PIMS 75.5%でした。SARS-CoV-2感染の有無でKDとPIMSという2つの異なる炎症性疾患は区別でき、PIMSはより年長で心筋炎などで特徴付けられることが示唆されました。
著者名:Cattalini M, Della Paolera S, Zunica F, et al.
論文名:Defining Kawasaki disease and pediatric inflammatory multisystem syndrome-temporally associated to SARS-CoV-2 infection during SARS-CoV-2 epidemic in Italy: results from a national, multicenter survey.
雑誌名:Pediatr Rheumatol Online J.2021.DOI:10.1186/s12969-021-00511-7.
URL:https://ped-rheum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12969-021-00511-7

2.MIS-C患者8名の血清抗体価を解析した報告です。ELISA法にてSタンパク質とNタンパク質に対するIgG、IgA、IgMを測定しています。MIS-C患者全例でPCR検査は陰性でしたが、Sタンパク質に対するIgGとIgA抗体、Nタンパク質に対するIgG抗体が強く検出されました。IgM抗体はどちらのタンパク質に対しても検出されませんでした。以上より、血清学的検査はMIS-Cの診断において重要であることが示されました。
著者名:Perez-Toledo M, Faustini SE, Jossi SE, et al.
論文名:SARS-CoV-2-specific IgG1/IgG3 but not IgM in children with pediatric inflammatory multi-system syndrome.
雑誌名:Pediatr Allergy Immunol. 2021.DOI:10.1111/pai.13504. Epub ahead of print.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pai.13504

3.1,080例のMIS-Cにおいて重篤な転機と関連する因子を解析した米国からの報告です。ICU入室は、0-5歳に比べ6-12歳、13-20歳に多く、非ヒスパニック系の黒人に多く認められました。息切れ、腹痛を認める患者や、CRP・トロポニン・フェリチン・Dダイマー・BNP・NT-proBNP・IL-6の上昇もしくは血小板・リンパ球の減少を認める患者もICUへ入室する可能性が高いことが判明しました。心機能低下、ショック、心筋炎の場合も同様でした。冠動脈病変は、女児や粘膜皮膚症状もしくは結膜充血を有する児よりも男児に多く認められました。臨床的特徴を特定することにより、MIS-Cの早期発見や適切な治療につながると考えられました。
著者名:Abrams JY, Oster ME, Godfred-Cato SE, et al.
論文名:Factors linked to severe outcomes in multisystem inflammatory syndrome in children (MIS-C) in the USA: a retrospective surveillance study.
雑誌名:Lancet Child Adolesc Health. 2021.DOI:10.1016/S2352-4642(21)00050-X. Epub ahead of print.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S235246422100050X?via%3Dihub

4.MIS-Cにアナキンラ(IL-1受容体拮抗薬)を使用したCOVID-19パンデミック中のイタリアからの症例報告です。症例1:発熱、下痢、皮疹、手の浮腫、結膜炎、口唇発赤の3歳女児。mPSL2㎎/㎏/日とIVIG2g/㎏投与も解熱せず、ショック状態になる。IVIGを3回投与も改善なく、アナキンラ使用し2日後に回復しました。症例2:高熱、嘔吐、頭痛、発疹、頸部リンパ節腫脹の10歳女児。入院後に頻脈と低血圧になりました。mPSL2㎎/㎏/日とIVIG2g/㎏で治療しましたが改善せず。アナキンラを投与したところ、4時間以内に解熱しその他の症状も徐々に軽快しました。両者とも有害事象を認めませんでした。
著者名:Della Paolera S, Valencic E, Piscianz E, et al.
論文名:Case Report:Use of Anakinra in Multisystem Inflammatory Syndrome During COVID-19 Pandemic
雑誌名:Front Pediatr. 2021.DOI:10.3389/fped.2020.624248.
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fped.2020.624248/full

5.小児のMIS-CにおいてHLAクラスⅠが関連するTCR BEa可変遺伝子(TRBV)11-2 T細胞の拡張に関する論文です。MIS-C患者のTCRレパートリーにおいて、TRBV11-2の拡張は、MIS-Cの重症度と血清サイトカイン量に相関しています。TRBV11-2でコードされるVβ鎖中のポリ酸性残基がSARS-CoV-2スパイク糖たんぱく質のスーパー抗原様モチーフと強く相互作用します。このことはSARS-CoV-2のスパイクがTRBV11-2の拡張および活性化を直接媒介し、MIS-Cの臨床症状に関与している可能性を示唆しています。
著者名:Porritt RA, Paschold L, Noval Rivas M, et al.
論文名:HLA class I-associated expansion of TRBV11-2 T cells in Multisystem Inflammatory Syndrome in Children.
雑誌名:J Clin Invest. 2021.DOI:10.1172/JCI146614.
URL:https://www.jci.org/articles/view/146614

6.COVID-19およびMIS-Cの小児における急性腎障害(AKI)について、レトロスペクティブにコホート調査を行ったアメリカからの報告です。COVID-19の97人中8人(8.2%)、MIS-Cの55人中10人(18.2%)がAKIでした。AKIは血清アルブミン値の低下と白血球数の高値に関連していました。また、入院期間はAKIを有するほうが8.4日間長かった。MIS-CではAKIのある方が、有意に心収縮機能不全の割合が高くなっていました。
著者名:Basalely A, Gurusinghe S, Schneider J, et al.
論文名:Acute kidney injury in pediatric patients hospitalized with acute COVID-19 and multisystem inflammatory syndrome in children associated with COVID-19
雑誌名:Kidney Int. 2021.DOI:10.1016/j.kint.2021.0504.
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0085253821002684?via%3Dihub

7.米国のサーベイランスに登録されたMIS-C患者616名(36%)を含む21歳未満のCOVID-19の1695名の入院患者のうち365名(22%)が、神経障害を示しました。神経障害を有する割合は、小児多系統炎症性症候群の児とそうでない児と同じでした。322名(88%)は一過性の症状で生存退院し、43名(12%)は生命に影響を及ぶ重度の神経障害を有し、11名(26%)が死亡しました。長期的な神経発達への影響は不明です。
著者名:LaRovere KL, Riggs BJ, Poussaint TY, et al.
論文名::Neurologic Involvement in Children and Adolescents Hospitalized in the United States for COVID-19 or Multisystem Inflammatory Syndrome.
雑誌名:JAMA Neurol.2021.DOI:10.1001/jamaneurol.2021.0504.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2777392

8.入院中の小児COVID-19患者とMIS-C患者の末梢血免疫応答を分析しました。重症の成人と同様にMIS-C患者は、T細胞に偏ったリンパ球減少症とT細胞活性化を示し、入院時にSARS-CoV-2スパイク特異的抗体が陽性でした。MIS-C患者の明確な特徴は、血管作動薬の使用に関連するCX3CR1陽性CD8陽性T細胞の強力な活性化でした。急性呼吸窮迫症候群の小児COVID-19患者は持続的に免疫が活性化していたのに対して、MIS-C患者は免疫活性化の低下に伴って臨床経過が改善しました。
著者名:Vella LA, Giles JR, Baxter AE, et al.
論文名:Deep immune profiling of MIS-C demonstrates marked but transient immune activation compared to adult and pediatric COVID-19.
雑誌名:Sci Immunol. 2021.DOI:10.1126/sciimmunol.abf7570.
URL:https://immunology.sciencemag.org/content/6/57/eabf7570.long

9.MIS-Cに頭蓋内圧亢進を合併した4例が報告されています。いずれも視力障害、頭痛、項部硬直、意識障害など脳症の症状や所見を認め、髄液初圧の上昇が確認されています。全例で心機能低下を認めており、昇圧剤使用が必要となる状況でした。中枢神経系の還流を意識した血圧管理に留意する必要があると、考察されています。
著者名:Becker AE, Chiotos K, McGuire JL, et al.
論文名:Intracranial Hypertension in Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C).
雑誌名:J Pediatr.2021.DOI:10.1016/j.jpeds.2021.02.062
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022347621002018?via%3Dihub

10.小児と思春期小児における重症急性COVID-19症例(severe acute COVID-19:PCR陽性かつ一臓器以上に重度の障害をきたした例)とCDC基準に基づくMIS-C例を比較した報告です。2020年3月15日~10月31日までに米国31州の66施設において入院加療を行った21歳未満例1,116例が対象になっています。 1,116 人の年齢中央値は9.7 歳、45%が女性でした。539例はMIS-Cと診断され、577例は重症急性COVID-19と診断されています。重症急性COVID-19患者に比べMIS-C患者の年齢層は6~12歳であることが多く(40.8% vs 19.4%)、非ヒスパニック系の黒人である(32.3% vs 21.5%)割合が高いと報告されています。MIS-C例は呼吸循環障害(56.0% vs 8.8%)、呼吸障害を伴わない循環器障害 (10.6% vs 2.9%)、呼吸循環障害を伴わない皮膚粘膜病変 (7.1% vs 2.3%)が比較的多いことが特徴でした.また、MIS-C患者の炎症所見はより高く、好中球とリンパ球の比(6.4 vs 2.7)、CRP中央値(152 mg/L vs 33 mg/L)でしたが、血小板数については15万/μL未満の割合が高い(41% vs 17%)と報告されています。MIS-C患者の73.8%、重症急性COVID-19例の43.8%がICU入室対象となり、死亡例はそれぞれ1.9%、1.4%でした。MIS-C患者で左室収縮機能障害 (34.2%)、冠動脈拡張病変(13.4%)を認めたもののうち、30日以内に正常化したのはそれぞれ、91.0%と79.1%でした。MIS-C 患者と重症急性COVID-19 患者の臨床的な特徴や臓器障害について異なる特徴が認められ、そのパターンをとらえることが鑑別の一助になると考えられました。
著者名:Feldstein LR, Tenforde MW, Friedman KG, et al.
論文名:Characteristics and Outcomes of US Children and Adolescents With Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C) Compared With Severe Acute COVID-19.
雑誌名:JAMA.2021.DOI:10.1001/jama.2021.2091.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2777026

(School closure)
1.大学の春学期(2019年1月27日~5月21日、2020年1月30日~5月21日)における急性呼吸器感染症の前方視的コホート研究から、2020年3月13日からの学校閉鎖とphysical distancingの効果を検証しました。参加登録した学生とスタッフには、毎朝オンラインにて、鼻汁、咽頭痛、咳嗽、発熱の有無を4段階で回答してもらいました。有症状者は2019年に比べ2020年に減少し、特に2020年3月13日以降の減少は顕著でした。うち、咳嗽や咽頭痛を伴う発熱症状の減少が著しく見られました。集団でのphysical distancingは、急性呼吸器感染症の抑制に有効であることが見いだされました。
筆者名:Adenaiye O, de Maesuita PJB, Wu Q, et al.
論文名:The effect of COVID-19 stay-at-home order and campus closure on the prevalence of acute respiratory infection symptoms in college campus cohorts.
雑誌名:Influenza Other Respir Viruses.2021.DOI:10.1111/irv.12837. Epub 2021 Mar 4.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/irv.12837

2.COVID-19のパンデミックが、米国の子どもの日常身体活動(PA)に及ぼす影響を評価しました。2020年4月から6月までの期間、3~18歳の1,310人の子どもを対象として保護者による回答を求めたところ、パンデミック中に子どものPAスコアが56.6点から44.6点まで有意に低下していました(最大スコア119点、p<0.001)。特に中等度以上の活発なPAのスコアが低下し(46.7点から34.7点、最大スコア98点、p<0.001)、軽いPAでは有意差はありませんでした。また、未就学児ではパンデミックの影響は低く、高校生で高く見られました(スコアの下げ幅4.7点 vs 17.2点、p<0.001)。この結果を受けて、子どものPAを確保することが子どもの健康に不可欠であると推奨されるようになりました。
筆者名:Tulchin-Francis K, Stevens Jr. W, Gu X, et al.
論文名:The impact of the coronavirus disease 2019 on physical activity in US children.
雑誌名:J Sport Health Sci 2021.DOI:10.1016/j.jshs.2021.02.005.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095254621000259?via%3Dihub

3.COVID-19パンデミック中の子育ては非常に困難であり、親はさまざまな要求に同時に対応する必要があります。逆境的小児期体験(ACE)の増加は広く予測されていますが、データはまだ不足しています。この研究は、ドイツでの(1)パンデミック関連のストレス、親のストレス、一般的なストレス、親の主観的及び精神的健康、逆境的小児期体験の頻度のデータを作成すること; (2)ACEの増加のリスク要因を特定すること;そして(3)親の経験に関する質的データを提供することです。保護者の50%以上が、社会的距離と学校や保育施設の閉鎖によってストレスを感じていると報告しました。パンデミックの間、親のストレスは著しく増加しました。親の中には、非常に高レベルの抑うつ症状(12.3%)と不安(9.7%)を報告した人もいました。研究対象となった家庭の最大3分の1で子どもの逆境的小児期体験が報告されており、そのうち29.1%ではパンデミックの間に子どもが家庭内暴力を目撃することの増加および42.2%では言葉による情動的虐待の増加が報告されました。これらの家庭は親のストレス度が高い、失業、そして親と子の年齢が若いことが特徴でした。親のストレスが、パンデミックによる負の後遺症に対処する介入の重要なターゲットとして浮かび上がってきました。
筆者名:Calvano C, Engelke L, Bella JD, et al
論文名:Families in the COVID-19 pandemic: parental stress, parent mental health and the occurrence of adverse childhood experiences-results of a representative survey in Germany.
雑誌名:Eur Child Adolesc Psychiatry.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00787-021-01739-0

4.この研究はヨーロッパ10か国において、COVID-19パンデミック宣言後の約2か月間における子どもたちの身体活動と総スクリーン時間の推定値を初めて報告するものです。WHOのグローバルな身体活動の推奨基準を満たした子どもは5人に1人のみでした。パンデミックの状況下では、親は事前に計画された一貫した日課を設定し、少なくとも2時間の野外活動を毎日のスケジュールに加えるべきです。学校は体育の授業を優先的に作るべきです。意思決定者は遠隔教育中に学校からオンラインの体育の配信を義務付ける必要があります。屋外の運動施設の閉鎖はロックダウン中の最後の手段としてのみ考慮されるべきです。
筆者名:Kovacs VA, Starc G, Brandes M, et al.
論文名:Physical activity, screen time and the COVID-19 school closures in Europe - an observational study in 10 countries.
雑誌名:Eur J Sport Sci.2021.DOI:10.1080/17461391.2021.1897166. Epub ahead of print.
URL:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17461391.2021.1897166

5.学校閉鎖が導入されたノルウェーにおいて、2大都市(オスロとトロムソ)の住人    75,000人を対象としてIndividual-based model(IBM)を使用し、幼稚園と学校を再開した場合の再生産数(R)の変化を評価した研究です。幼稚園と学校の再開により、Rがオスロでは0.10(95%CI 0.04-0.16)、トロムソでは0.14(95%CI 0.01-0.25)変化したのみで、学校の再開による再生産数への影響は限定的でした。
筆者名:Rypdal M, Rypdal V, Jakobsen PK, et al.
論文名:Modelling suggests limited change in the reproduction number from reopening Norwegian kindergartens and schools during the COVID-19 pandemic.
雑誌名:PLoS One.2021.DOI:10.1371/journal.pone.0238268.
URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0238268

6.オランダにおいてCOVID-19流行下で学校閉鎖が行われた前・中・後で、小児の生活スタイル(身体活動(PA)と画面を見る時間)がどのような影響を受けたのかに関する研究が行われました。102名を対象として後方視的に行われたロックダウン前後の比較調査では、62%がロックダウン後にPAが減少し、平日に画面を見ている時間が34±105分/日増加したと回答しました。専用の機材を使用して64名を対象として継続的に行われた同様の調査では、COVID-19流行後に座位保持の時間が45±67分/日増加し、画面を見ている時間は、平日59±112分/日,休日62±130分/日増加しました。肥満などの慢性疾患の予防には、子どものアクティブなライフスタイルが欠かせないため、これは憂慮すべきことです。
筆者名:Ten Velde G, Lubrecht J, Arayess L, et al.
論文名:Physical activity behaviour and screen time in Dutch children during the COVID-19 pandemic: Pre-, during- and post-school closures.
雑誌名:Pediatr Obes.2021.DOI:10.1111/ijpo.12779. Epub ahead of print.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ijpo.12779

7.自発的な行動変化、学校閉鎖、および大規模集会の禁止と、COVID-19発症率および死亡率の関連性を評価した研究です。分割時系列分析には2020年3月8日から5月18日までの60日間に米国の州から公開された観測データを使用し、行動指標は匿名化された携帯電話またはインターネットのデータから収集され、2020年1月3日から2月6日と比較されました。調査期間中、レストランでの食事の割合は98.3%減少、勤務時間は40.0%減少、在宅時間は15.4%増加しました。発症率は、強制的な学校閉鎖の実施を1日早めることにより3.5%減少し(IRR:0.965; 95%CI:0.946-0.984)、自発的な行動変化を1日早めることにより9.3%減少しました(IRR:0.907; 95%CI:0.890-0.925)。一方、死亡率は、強制的な学校閉鎖の実施を1日早めることにより3.8%減少し(IRR:0.962; 95%CI:0.926-0.998)、自発的な行動変化を1日早めることにより9.8%減少(IRR:0.902;95%CI:0.869-0.936)しました。シミュレーションによると、2週間の学校閉鎖の遅れ単独では、23,000人(95%CI、2000-62,000)の死亡に関連しているのに対し、学校閉鎖を導入した状態での自発的な行動変化の2週間の遅れは140,000人(95%CI:65,000-294,000)の更なる死亡に関連します。その他の対策と比較して学校閉鎖によるCOVID-19発症率や死亡率を下げる効果は限定的であり、学校を閉鎖することによる子供たちへの弊害を踏まえると、政策立案者は自発的な行動変化を通じて身を守るという国民の意欲をよりよく活用することを検討すべきであることが示唆されます。
筆者名:Zimmerman FJ, Anderson NW.
論文名:Association of the Timing of School Closings and Behavioral Changes With the Evolution of the Coronavirus Disease 2019 Pandemic in the US.
雑誌名:JAMA Pediatr.2021.DOI:10.1001/jamapediatrics.2020.6371. Epub ahead of print.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2776608

 


 

【2021年3月22日 掲載】

(Mechanism)
1.ブラジルからの猫と飼い主から検出されたSARS-CoV-2に関する遺伝子解析結果報告です。この猫は、5人家族(成人3名、小児2名)に飼われており、家の中から外に出ることはありませんでした。家族の中で、成人2名が、SARS-CoV-2のPCRが陽性(症状は咽頭の違和感のみ)となった後、猫に咳症状が出現し、直腸スワブのPCRが陽性となりました。飼い主と猫から検出されたウイルスに関して遺伝子解析を行ったところ、99.4%一致していました。様々な動物からSARS-CoV-2のPCRが陽性だったとする報告はありますが、感染した動物の症状は軽症であり、犬や猫から人に感染した事例の報告はありません。
著者名:Carlos RSA, Mariano APM, Maciel BM, et al.
論文名:First genome sequencing of SARS-CoV-2 recovered from an infected cat and its owner in Latin America.
雑誌名:Transbound Emerg Dis. 2021.DOI:10.1111/tbed.13984.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/DOI/epdf/10.1111/tbed.13984

2.小児に対してCOVID-19ワクチンを接種すべきかに関するレビュー論文です。小児はMIS-Cを除き、感染しても無症状~軽症であり、成人に比べて感染を拡げるリスクも低いため、ワクチン接種の優先順位は低くなります。しかしながら、基礎疾患を有する小児では少数例ではありますが、PICU入室例や死亡例が認められています。そして、英国・米国からの報告によると、重症化する小児の基礎疾患としては、神経疾患や気管切開を受けている者などが多く、また、成人例ではありますが、ダウン症候群や脳性麻痺も重症化リスクが高いと報告されています。その他、悪性疾患などにより免疫不全状態や慢性肺疾患、慢性心疾患を有する小児もリスクが高いと考えられます。今後、全ての小児にワクチン接種を行うべきかどうかについては、使用するワクチンの安全性、有効性、予防可能期間、集団免疫効果を含めた感染伝播における小児の果たす役割などを考慮することが必要です。
著者名:Wong BLH, Ramsay ME, Ladhani SN, et al.
論文名:Should children be vaccinated against COVID-19 now?
雑誌名:Arch Dis Child. 2021.DOI:10.1136/archdischild-2020-321225.
URL:https://adc.bmj.com/content/early/2021/01/04/archdischild-2020-321225

3.SARS-CoV-2ワクチン拒否の要因を調べるために実施されたトルコでの保護者アンケートの結果です。小児病院患者の保護者428名を対象に実施されました。ワクチン接種に消極的な保護者は輸入ワクチンで66.1%、国産ワクチンで37.4%でした。国産ワクチンの希望は回答者自身とその子どもで有意に高く、教育水準が上がるとその傾向は低下しました。女性の方が輸入ワクチン接種に消極的で、COVID-19感染の不安が強いと製造国のこだわりは減りました。接種拒否の理由としては、副反応に対する不安、有効性に関する知識の不足、外国製ワクチンへの不信感でした。ほとんどの回答者がワクチン接種に躊躇していましたが、国産ワクチンの使用で接種率が向上する可能性を示唆しています。
著者名:Yigit M, Ozkaya-Parlakay A, Senel E.
論文名:Evaluation of COVID-19 vaccine refusal in parents.
雑誌名:Pediatr Infect Dis J. 2021.DOI:10.1097/INF.0000000000003042.
URL:https://journals.lww.com/pidj/Abstract/9000/Evaluation_of_COVID_19_Vaccine_Refusal_in_Parents.95924.aspx.

4.COVID-19感染症の重症度を小児と高齢者で比較した中国からの報告です。対象は小児(16歳未満)173例、成人(16歳以上)126例の計299例で、期間は2020年1月17日から3月25日まででした。このうち小児26例と高齢者(50歳以上)24例の肺生検検体を用いてアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現とその分布を調べました。小児と比較して、高齢者の肺炎は重症でした(p= 0.001)。 ACE2および肺前駆細胞マーカーの発現レベルは、一般的に高齢者で減少していました。特に高齢者においては、ACE2陽性細胞は肺胞領域に主に分布していたものの、気管支領域にはほとんど分布していませんでした(p<0.01)。加齢により気管支領域のACE2陽性細胞は減少しても肺胞領域には存在していることから、下気道での感染が促進し、重症肺炎に発展している可能性があります。加齢とともにACE2発現が増加し、高齢者の重症化に関与しているという報告もありますが、今回の結果は、ACE2の発現レベルだけで小児と高齢者の重症度の差は説明できないことを示しています。
著者名:Zhang Z,Guo L,Huang L, et al.
論文名:Distinct disease severity between children and older adults with COVID-19: Impacts of ACE2 expression, distribution, and lung progenitor cells.
雑誌名:Clin Infect Dis. 2021.DOI:10.1093/cid/ciaa1911.
URL:https://academic.oup.com/cid/advance-article/DOI/10.1093/cid/ciaa1911/6059779

5.米国におけるCOVID-19ワクチン忌避に関する意識調査です。調査は2020年6月にオンラインで行われました。計1878人の参加者の属性(性別、人種等)は、米国の人口分布をほぼ反映していました。ワクチンが利用可能になった場合の接種の可能性について質問したところ、非常に可能性あり(52%)、可能性あり(27%)、可能性が低い(15%)、まったく可能性がない(7%)、という答えが得られ、ワクチン忌避は全体の22%でした。重回帰分析でワクチン忌避は、女性、非雇用、低学歴、低収入、子持ち、共和党員、COVID-19感染への懸念が低い、という群において対照群より有意に高くなっていました。人種的マイノリティーなどのCOVID-19重症リスクの高い群でワクチン忌避が多いこともわかりました。すでにワクチンが導入された現在では、意識調査の結果は変化している可能性がありますが、ワクチン忌避を持つ群に働きかけるような政策を進める必要があります。
著者名:Khubchandani J, Sharma S, Price JH, et al.
論文名:COVID-19 vaccination hesitancy in the United States: a rapid national assessment.
雑誌名:J Community Health. 2021.DOI:10.1007/s10900-020-00958-x.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s10900-020-00958-x

6.新生児期の高酸素血症がSARS-CoV-2受容体の年齢依存性発現を増強することをマウスで示した研究です。出生時に高酸素にさらされた早産児は肺胞上皮2型(AT2)細胞の数の減少により呼吸器ウイルス感染の重症度が高まるため、COVID-19感染症のリスクが高くなる可能性があります。AT2細胞はSARS-CoV-2受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)およびII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)を発現するため、AT2細胞が高酸素によって枯渇するとこの2つの受容体発現は低下するはずです。しかしこの研究で、新生児期の高酸素血症が2か月齢までにクララ細胞とAT2細胞でACE2の発現を増強し、肺でのTMPRSS2の発現を増強することが分かりました。これらの受容体の年齢依存性発現の変化を理解することにより、COVID-19や他の肺疾患を軽症化する方法を見出すことができる可能性があります。
著者名:Yee M, Cohen ED, Haak J, et al.
論文名:Neonatal hyperoxia enhances age-dependent expression of SARS-CoV-2 receptors in mice.
雑誌名:Sci Rep. 2020.DOI:10.1038/s41598-020-79595-2.
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-020-79595-2

(Diagnosis)
1.電気化学発光法(electrochemiluminescence immunoassay)を応用した、高感度SARS-CoV-2 NP抗原定量法(S-PLEX)とPCR法を比較検討しました。S-PLEXの検出感度は0.16pg/ml以上で、鼻咽頭採取検体中のNP抗原濃度は160fg/ml以下から2.7μg/mlと幅広く、PCR法のCT値と強い相関を示しました。成人および小児からのPCR陽性検体におけるS-PLEXの感度は91%、79%と高く、Ct値35以下の検体では、感度は100%、96%でした。PCR陰性検体での特異度は、100%、98%でした。本法は、既存の抗原迅速検出法より高い感度・特異度を持ち、PCRの代替検査法となり得る可能性が示唆されました。

著者名:Pollock NR, Savage TJ, Wardell H, et al.
論文名:Correlation of SARS-CoV-2 nucleocapsid antigen and RNA concentrations in nasopharyngeal samples from children and adults using an ultrasensitive and quantitative antigen assay.
雑誌名:J Clin Microbiol. 2021.DOI:10.1128/JCM.03077-20.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33441395/

2.COVID-19患者より発症後様々な時点で(7から69日)、鼻咽頭スワブ、肛門スワブ、唾液、血液、尿を採取し、ウイルス量をdroplet digital PCR(ddPCR)法で測定しました。NP蛋白およびS蛋白受容体結合ドメインに対する血清抗体価の測定も実施しました。鼻咽頭スワブが最も検出率が高く(54.05%)ついで肛門スワブ(24.32%)、唾液、血液、尿の順でした。しかしながら、回復期には鼻咽頭スワブ陰性、肛門スワブ陽性の症例があり、注意が必要です。血清抗体価と発症後日数あるいはウイルス量との間に有意な相関は認められませんでした。
著者名:Li L, Tan C, Zeng J, et al
論文名:Analysis of viral load in different specimen types and serum antibody levels of COVID-19 patients.
雑誌名:J Transl Med. 2021. DOI:10.1186/s12967-020-02693-2.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33413461/

3.同時に採取した鼻咽頭ぬぐい液と唾液を用いて、RT-PCR法によるSARS-CoV-2の検出率を初療施設において前方視的に検討した論文です。577人の外来患者(年齢中央値39歳)より鼻咽頭ぬぐい液と唾液(監督下の採取、口腔咽頭洗浄液、あるいは自己採取)を採取しました。RT-PCR法により120人(20.8%)がSARS-CoV-2陽性でした。咽頭ぬぐい液との一致率(kappa係数)は、監督下の採取では95%(K=0.85)、口腔咽頭洗浄液では93.4%(K=0.76)、自己採取では93.3%(K=0.76)でした。唾液検体での感度は、監督下の採取の86%から自己採取の66.7%まで幅がありました。低いCt値の検体では感度が高く、監督下に採取された場合の感度は、有症状者では100%(95%CIが85.9-100)、無症状者では88.9%(95%CIが50.7-99.4)でした。唾液はSARS-CoV-2を検出する検体として容認可能であり、特に監督下に採取された唾液は鼻咽頭ぬぐい液に匹敵します。
著者名:Fernandez-Gonzalez M, Agullo V, de la Rica A, et al.
論文名:Performance of saliva specimens for the molecular detection of SARS-CoV-2 in the community setting: does sample collection method matter?
雑誌名:J Clin Microbiol. 2021. DOI:10.1128/JCM.03033-20.
URL:https://jcm.asm.org/content/early/2021/01/08/JCM.03033-20

4.鼻咽腔スワブを用いた核酸検出検査はCOVID-19診断の標準法ですが、検体採取には正しい技術を要するため、より簡便な唾液を用いた核酸検出法の有用性は高いです。しかしながらその信頼性が明らかでないため、筆者らがシステマティックレビューとメタ解析を行いました。2020年8月時点での論文を検索し、385論文中16論文が評価基準を満たし解析対象とされました(患者数は5,922名)。15論文は救急外来の患者を対象としており、9論文は外来軽症あるいは無症状の患者を対象としていました。解析の結果、唾液を用いた核酸検出法の感度は83.2%(95%credible interval, 74.7-91.4%)特異度は99.2%(95%credible interval, 98.2-99.8%)で、救急外来のような状況下で使用するには有用と考えられます。ただし、各論文で用いられている核酸検出検査法、対象患者の状態等に差があることは本研究のlimitationと考えられます。
著者名:Butler-Laporte G, Lawandi A, Shiller L, et al.
論文名:Comparison of saliva and nasopharyngeal swab nucleic acid amplification testing for detection of SARS-CoV-2: a systematic review and meta-analysis.
雑誌名:JAMA Intern Med. 2021.DOI:10.1001/jamainternmed.2020.8876.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/research/coronavirus/publication/33449069

5.リアルタイムRT-PCR法は、COVID-19患者の診断に欠かせない診断方法となっていますが、検査数増加に伴うRNA抽出試薬の不足が問題となっており、また低コピー数の臨床検体解析の点で難があります。その点を解決するために、筆者らはdigital droplet PCR(ddPCR)法によるSARS-CoV-2検出法を確立し基礎検討を行いました。リアルタイムRT-PCR法に比べ、ddPCRは低コピーのサンプルでより正確な定量が可能で、かつ一般的に用いられるtransport medium中のウイルスRNAをRNA抽出することなく直接検体として用いても測定が可能なことを明らかにしました。
著者名:Vasudevan HN, Xu P, Servellita V, et al.
論文名:Digital droplet PCR accurately quantifies SARS-CoV-2 viral load from crude lysate without nucleic acid purification.
雑誌名:Sci Rep. 2021.DOI:10.1038/s41598-020-80715-1.
URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/research/coronavirus/publication/33436939

6.入院患者129名中ウイルス分離陽性であった23名(17.8%)を検討し、感染性ウイルスを排出する期間と決定要因について考察しました。排出期間の中央値は、症状発症後8日(IQR 5-11)で、15.2日後には5%を下回りました(95%信頼区間;13.4-17.2)。多変量解析の結果、7log10RNA copies/mLを上回るウイルス量は分離陽性と、20倍以上の中和抗体保有は分離陰性と関連がありました。ウイルスRNA定量アッセイや抗体価測定は感染予防策の解除を検討する際に有用と考えられます。
著者名:van Kampen JJA, van de Vijver DAMC, Fraaij PLA,et al
論文名:Duration and key determinants of infectious virus shedding in hospitalized patients with coronavirus disease-2019 (COVID-19).
雑誌名:Nat Commun. 2021.DOI:10.1038/s41467-020-20568-4.
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33431879/

7.英国Oxford大学病院の医療従事者に対して血清抗体価を測定し、その後の感染頻度をPCR法で31週間フォローアップした報告です。12,541名が参加し、抗スパイクタンパク質IgG抗体陰性者11,364名、陽性者1,265名でした(うち88名はフォロー中に抗体陽転)。陰性者は223名がPCR陽性となり(10,000リスク日あたり1.09の頻度)、100例は無症状、123例は有症状でした。陽性者は2名がPCR陽性となり(10,000リスク日あたり0.13の頻度)、無症状でした。抗ヌクレオカプシドタンパク質IgG抗体を指標としても同様の結果でした。抗体の存在は、その後6か月間の再感染リスクを減らすと考えられます。
著者名:Lumley SF, O'Donnell D, Stoesser NE, et al.
論文名:Antibody status and incidence of SARS-CoV-2 infection in health care workers.
雑誌名:N Engl J Med. 2020.DOI:10.1056/NEJMoa2034545.
URL:https://www.nejm.org/DOI/full/10.1056/NEJMoa2034545

(Transmission)
1.鼻咽頭スワブRT-PCRでSARS-CoV-2陽性64名の妊婦、63名の陰性妊婦を対象とした垂直感染に関するボストンでの研究です。調べた107名の母体血・臍帯血と88の胎盤にSARS-CoV-2は、検出されませんでした。SARS-CoV-2抗体の母体から新生児への移行は、非効率的でした。胎盤におけるアンギオテンシン変換酵素2およびⅡ型膜貫通型セリンプロテアーゼの共発現は、認められませんでした。ウイルス血症の欠如および胎盤アンギオテンシン変換酵素2とⅡ型膜貫通型セリンプロテアーゼの共発現の欠如は、垂直感染に対する保護機構として役立っている可能性があります。
著者名: Edlow AG, Li JZ, Collier AY, et al.
論文名: Assessment of maternal and neonatal SARS-CoV-2 viral load, transplacental antibody transfer, and placental pathology in pregnancies during the COVID-19 pandemic.
雑誌名: JAMA Netw Open. 2020.DOI:10.1001/jamanetworkopen.2020.30455.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2774428

2.多国籍の19名の胎盤病理専門家によるSARS-CoV-2陽性の胎盤の病理学的検討です。6名の新生児の胎盤において、免疫組織化学、RNA in situハイブリダイゼーション、またはその両方を使用して合胞体性栄養膜でSARS-CoV-2陽性でした。また、胎盤すべてに慢性組織球性絨毛間炎と合胞体性栄養膜の壊死がありました。5名の死産児の胎盤も同様に合胞体栄養膜のSARS-CoV-2感染、慢性組織球性絨毛間炎、合胞体栄養膜壊死の所見がありました。これらが経胎盤胎児感染の病理学的機序と考えられます。
著者名:Schwartz DA, Baldewijns M, Benachi A, et al.
論文名: Chronic histiocytic intervillositis with trophoblast necrosis are risk factors associated with placental infection from coronavirus disease 2019 (COVID-19) and intrauterine maternal-fetal severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) transmission in liveborn and stillborn infants.
雑誌名: Arch Pathol Lab Med. 2020.DOI:10.5858/arpa.2020-0771-SA.
URL:https://meridian.allenpress.com/aplm/article-lookup/DOI/10.5858/arpa.2020-0771-SA

3.社会的距離、マスク着用、手洗いといった公衆衛生的介入により、小児の気道感染による救急外来受診が減少するかを検討した台湾からの論文です。2020年1月から4月のデータを過去3年間の同時期と比較したところ、2月から4月にかけて気道感染による救急外来受診数が50%以上減少していました。公衆衛生的介入により、COVID-19パンデミックだけでなく、飛沫による他の感染症の伝播が抑制されることが示唆されました。
著者名:Lin CF, Huang YH, Cheng CY, et al.
論文名:Public health interventions for the COVID-19 pandemic reduce respiratory tract infection-related visits at pediatric emergency departments in Taiwan.
雑誌名:Front Public Health. 2020.DOI:10.3389/fpubh.2020.604089.
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2020.604089/full

4.小児COVID-19患者からのSARS-CoV-2の伝播を前方視的に解析したノルウェーからの論文です。2020年8月から11月にかけて、小学校で確認された小児患者の濃厚接触者全員について、隔離期間中に検査が体系的に2回行われました。学校で実施された予防措置により、小児間での伝播は0.9%(2/234)、小児から大人への伝播は1.7%(1/58)と最小限に抑えられていました。このことは、14歳未満の小児はSARS-CoV-2を伝播させる主役ではないことを支持する所見と考えられました。
著者名:Brandal LT, Ofitserova TS, Meijerink H, et al.
論文名:Minimal transmission of SARS-CoV-2 from paediatric COVID-19 cases in primary schools, Norway, August to November 2020.
雑誌名:Euro Surveill. 2021.DOI:10.2807/1560-7917.ES.2020.26.1.2002011.
URL:https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2020.26.1.2002011

5.学校におけるSARS-CoV-2の伝播についてシステマティックレビューとメタ分析を行った報告です。すべての研究についてはNewcastle-Ottawa scaleでリスク評価が行われました。5つのコホート研究と6つの横断研究から学生は学校職員と比較して、陽性者が他者に感染する率とSARS-CoV-2陽性率ともに低いことがわかりました。しかしこの知見は、対象人数が少ないことなどから、今後適切にデザインされたコホート研究が必要です。
著者名:Xu W, Li X, Dozier M, et al.
論文名:What is the evidence for transmission of COVID-19 by children in schools? A living systematic review.
雑誌名:J Glob Health.2020.DOI:10.7189/jogh.10.021104.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7774027/

6.高校のクラス内でのSARS-CoV-2の広がりに関する論文です。26人クラスで1人の有症状陽性者が発生し疫学調査が行われました。小さな「空間クラスター」を示唆する位置に机のある9人(34.6%)がPCR陽性となりました。スペース不足のため各机の間隔は1m未満しかありませんでした。3人は無症状で、入院者はいませんでした。学校内での感染は10歳未満ではまれですが、年長者では当てはまらず、適切な予防対策が必要です。
著者名:Buonsenso D, Graglia B.
論文名:High rates of SARS-CoV-2 transmission in a high-school class.
雑誌名:J Paediatr Child Health.2021DOI:10.1111/jpc.15340
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/DOI/10.1111/jpc.15340

(Treatment)
1.ミシガン小児病院における2020年4~6月のMIS-C 33例を後方視的に検討しました。PICU管理を要した1群(22例)とより軽症であった2群(11例)に分類でき、1群(中央値7.0歳)は2群(中央値2.0歳)より年長でした。1群では腹痛を68%、血圧低下またはショックを77%に認めました。39.4%に川崎病様症状がありました。5例に冠動脈拡張が生じましたが、瘤は形成せずに全員軽快しました。免疫グロブリンは1群全員、2群の7例に投与され、1群の13例(59%)が炎症の遷延や心筋障害のために2ndラインの治療を要しました。治療不応予測因子となる検査データは見つかりませんでした。2ndラインの治療として12例にはinfliximab(10 mg/kg)が使われ、2名には免疫グロブリン再投与が行われました。ECMOで治療管理した17歳例は免疫グロブリン再投与、infliximab投与でも軽快せずにメチルプレドニゾロンパルス療法も要しました。最終的には全員が軽快しました。MIS-Cは川崎病に類似した臨床像をとりますが、一部の症例において可逆性の心筋障害とまれながら冠動脈拡張を来します。Infliximabは2ndライン治療として期待されます。
筆者名:Abdel-Haq N, Asmar BI, Deza Leon MP, et al.
論文名:SARS-CoV-2-associated multisystem inflammatory syndrome in children: clinical manifestations and the role of infliximab treatment.
雑誌名:Eur J Pediatr.2021.DOI:10.1007/s00431-021-03935-1.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00431-021-03935-1

2.SARS-CoV-2感染小児のほとんどは軽度から中等度の症状しか示しませんが、一部に治療を必要とする重症例があります。このレビューは小児科におけるCOVID-19の抗ウイルスおよび抗炎症治療の根拠を評価しています。データの多くは成人の研究から得られたもので、小児についてはさらなる臨床研究が必要です。SARS-COV-2に感染した小児の治療オプションと将来の治療に影響するかもしれない今後の研究を提供しています。レムデシベル、回復期血漿、デキサメサゾンの単独あるいは併用療法が、重症で生命の危機にある小児COVID-19 患者に対する治療オプションとして合理的であると、現時点では評価されています。
著者名: Murphy ME, Clay G, Danziger-Isakov L, et al.
論文名:Acute severe respiratory syndrome coronavirus-2 treatment overview for pediatrics.
雑誌名: Curr Opin Pediatr. 2021.DOI:10.1097/MOP.0000000000000983.
URL:https://journals.lww.com/co-pediatrics/Fulltext/2021/02000/Acute_severe_respiratory_syndrome_coronavirus_2.18.aspx

3.小児COVID-19の患者における回復期血漿療法に関する文献と進行中の臨床試験の系統的レビューです。Medline PubMed、Scopus、およびWeb Of Scienceが検索されました。8つの研究は回復期血漿療法で治療された小児の症例報告で、年齢が9週から18歳の14人の小児が含まれ、うち5人に慢性疾患がありました。5人が回復期血漿療法に加えて、レムデシビルなどの薬物投与を受けました。5つの研究で回復期血漿療法に関連する有害事象はなかったと報告され、3つの研究では有害事象について言及していませんでした。7つの研究が回復期血漿療法は、有用な治療選択肢である、あるいはその可能性があると結論付けていました。検索された進行中の13の臨床試験のうち3つが、小児に特化して計画されたものでした。小児における回復期血漿療法の安全性と有効性に関する臨床的情報は不十分で、適切に設計された充分な臨床試験によるさらなる研究が必要です
筆者名: Zaffanello M, Piacentini G, Nosetti L, Franchini M.
論文名: The use of convalescent plasma for pediatric patients with SARS-CoV-2: A systematic literature review.
雑誌名: Transfus Apher Sci.2020.DOI:10.1016/j.transci.2020.103043.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1473050220303761?via%3Dihub

4.「12歳以上かつ40kg以上の入院や新規/追加酸素需要がない軽度から中等度のCOVID-19の小児患者で、重度のCOVID-19および/または入院に進行するリスクが高い症例」を対象として、米国FDAが2020年11月に緊急使用許可を出した2つの新しいウイルス中和モノクローナル抗体療法、バムラニビマブおよびREGN-COV2(カシリビマブとイムデビマブ)に対する提言が、北米の29の機関から召集された小児感染症、小児感染症薬学、小児集中治療医学、および小児血液学の専門家パネルによってまとめられました。2800mgのバムラニビマブを単回投与(静注)した18歳以上の軽症または中等症のCOVID-19患者群(n=107)ではプラセボ群と比べて、SARS-CoV-2陽性確認後11日目におけるウイルス量が有意に低下しました。同様に低用量(n=92)または高用量(n=90)のREGN-COV2を投与された群はプラセボ群(n=93)と比べて、治療後7日目におけるウイルス量の有意な低下を認めました。両薬剤とも重篤な有害事象もほとんどありませんでした。一方で、専門家パネルは、2020年12月20日時点で青少年における安全性と有効性に関するエビデンスが欠如している事、および一般的に青少年はCOVID-19による入院または重症化のリスクが比較的低い事を理由に、重症化のリスクが高い症例を含む青少年におけるCOVID-19の治療のために、モノクローナル抗体療法を日常的に使用する事には反対しています。(ただし、このガイダンスはさらなるエビデンスが得られた際に再評価されます。)
筆者名: Wolf J, Abzug MJ, Wattier RL, et al.
論文名:Initial guidance on use of monoclonal antibody therapy for treatment of COVID-19 in children and adolescents.
雑誌名:J Pediatric Infect Dis Soc.2021.DOI:10.1093/jpids/piaa175.
URL:https://academic.oup.com/jpids/advance-article/DOI/10.1093/jpids/piaa175/6060076

小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS)
1.MIS-C 992人(17研究)のメタ解析です。症状として、発熱(95%)、胃腸炎症状(78%)、心血管障害(75.5%)、呼吸器系障害(55.3%)が多く認められました。また、ショック(49%)、心筋炎(32%)、冠血管異常(18%)、うっ血性心不全(9%)を認め、63%がPICUでの加療を必要としました。IVIG(63%)、コルチコステロイド(58%)、トシリズマブなどの免疫調節薬(19%)による治療が行われ、死亡は22人(2.2%)でした。
著者名:Sood M, Sharma S, Sood I, et al.
論文名:Emerging evidence on multisystem inflammatory syndrome in children associated with SARS-CoV-2 infection: a systematic review with meta-analysis
雑誌名:SN Comprehensive Clinical Medicine.2020.DOI:10.1007/s42399-020-00690-6.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s42399-020-00690-6

2.MIS-Cの臨床的特徴と川崎病の違いは不明であり、この研究は、MIS-Cの疫学と臨床経過について、PubMedとEMBASEで検索し関連する論文を調査したシステマティック・レビュー、メタ解析です。917人のMIS-C患者を含む合計27研究を比較検討しました。MIS-Cは川崎病よりも胃腸症状、心筋機能障害、冠状動脈異常など多臓器不全を引き起こし、川崎病とは異なる特徴を持っていることが示唆されました。
著者名:Yasuhara J, Watanabe K, Takagi H, et al.
論文名:COVID‐19 and multisystem inflammatory syndrome in children: A systematic review and meta‐analysis
雑誌名:Pediatr Pulmonol.2020.DOI:10.1002/ppul.25245.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/DOI/10.1002/ppul.25245

3.パリでは川崎病を含む小児多臓器炎症性症候群は、COVID-19パンデミックの期間に多発しました。パリにある大学病院に入院した川崎病の診断基準を満たす症例の発生率や症状について、SARS-CoV-2陽性の患者(KD-SARS-CoV-2)の特徴を、COVID-19パンデミック前の期間のクラシック川崎病の特徴と比較しました。KD-SARS-CoV-2の患者は、サハラ以南のアフリカ系の患者(OR 4.4 [1.6-12.6])が多く、年長児が多く報告されました(中央値8.2歳 vs 4.0歳、p<0.001)。また、初期の胃腸炎症状、神経学的症状、ショック症候群や心筋炎がより高頻度に見られました。CRPおよびフェリチンレベルも有意に高値でした。
著者名:Toubiana J, Cohen JF, Brice J, et al.
論文名:Distinctive features of Kawasaki disease following SARS-CoV-2 infection: a controlled study in Paris, France
雑誌名:J Clin Immunol.2020.DOI:10.1007/s10875-020-00941-0.
URL:https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10875-020-00941-0

4.インド西部の公立小児病院からのMIS-Cの臨床的特徴と治療法について報告した論文です。21人のMIS-C症例について検討されました(年齢中央値:7歳(IQR) 1.9–12.1、女性11人、1人は基礎疾患に再生不良性貧血)。8人はSARS-CoV-2 RT-PCR陽性、16人は抗体陽性でした。発熱は全例に見られ、胃腸症状が次に多く見られました。ほぼ全例にショック症状が認められ、90%に血管作用薬、13人は人工呼吸管理、1人は腹膜透析が必要でした。左心室機能障害が9人、冠動脈拡張が5人に認められ、CRP [98 mg/dL (IQR 89–119)],血清フェリチン[710 mg/dL (IQR 422–1,609)]、血清IL-6 [215 ng/L (IQR 43–527)]の上昇が見られました。メチルプレドニゾロンのパルス療法18人、IVIG11人、トシリズマブが4人に投与され、18人が退院、3人が死亡しました。
著者名:Shobhavat L, Solomon R, Rao S, et al.
論文名:Multisystem inflammatory syndrome in children: clinical features and management-intensive care experience from a pediatric public hospital in Western India
雑誌名:Indian J Crit Care Med.2020.DOI:10.5005/jp-journals-10071-23658.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7751039/

5.英国の小児病院(単施設)におけるMIS-C 63人の心電図異常に関する検討です。経過中に3回以上の検査を行い、42人(67%)に心電図異常を認めました。低QRS、一過性T波反転が多く、ST変化はあまり認めませんでした。不整脈は13人(21%)に認めましたが、心房頻拍でECMOを必要とした1人以外は良性でした。高度のAVブロックは認めませんでした。
著者名:Regan W, O’Byrne L, Stewart K, et al.
論文名:Electrocardiographic changes in children with multisystem inflammation associated with COVID-19
雑誌名:J Pediatr.2020.DOI:10.1016/j.jpeds.2020.12.033.
URL:https://www.jpeds.com/article/S0022-3476(20)31542-0/abstract

(School closure)
1.日本でCOVID-19に対して2月26日から3月19日まで実施された自主的なイベントの自粛と学校閉鎖について評価した論文です。この自粛期間前、期間中、終了後の3つの期間の基本再生産数を古典的な感染症数理モデル(SIRモデル)を用いて算出してイベントの自粛と学校閉鎖を評価しています。結果として、3つの期間の実効再生産数はそれぞれ2.534、1.077、4.455となり、イベントの自粛と学校閉鎖はCOVID-19の感染拡大防止に有効であることを示していますが、一方で再開後に実効再生産数が自粛前より高くなることから自粛解除のタイミングには注意を要します。
著者名:Sugishita Y, Kurita J, Tamie Sugawara, et al.
論文名:Effects of voluntary event cancellation and school closure as countermeasures against COVID-19 outbreak in Japan.
雑誌名:PLoS ONE.2020.DOI:10.1371/journal.pone.0239455.
URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0239455

2.学校閉鎖や都市封鎖のような社会的距離に関連した介入の有効性について、ベイズ階層モデルを用いて検討しました。社会的距離の介入のなかで学校閉鎖と都市封鎖のみが推定再生産数(Rt)に影響し、相対的な削減率はそれぞれ23.7%、54.4%でした。都市封鎖前後で全州のRtの平均値は1.86から0.88に低下し、都市封鎖はRtを下げるのに重要な役割を果たしました。都市封鎖を解除するためには、同等に有効な介入の追加が必要であろうと結論しています。
著者名:Olney AM, Smith J, Sen S, et al.
論文名:Estimating the effect of social distancing interventions on COVID-19 in the United States.
雑誌名:Am J Epidemiol.2021.DOI:10.1093/aje/kwaa293.
URL: https://academic.oup.com/aje/advance-article/DOI/10.1093/aje/kwaa293/6066665

3.米国の30州におけるCOVID-19感染率を週の学校閉鎖前後で比較した研究。症例数の変化のモデルには、回帰分析を用い、データは、州を超えてメタ解析でまとめた。その結果、学校閉鎖前の感染率は0.131 (95% C.I.: 0.120, 0.141)/日で、閉鎖後から在宅指示までの感染率は0.104 (95% C.I.: 0.097, 0.111)/日であり、 感染率に大きなインパクトを与えたことが分かった。したがって、学校閉鎖は感染率を下げるための実行可能な介入として考慮される可能性がある。

著者名:Staguhn ED, Castillo RC, Weston-Farber E
論文名:The impact of statewide school closures on COVID-19 infection rates
雑誌名:Am J Infect Control.2021.DOI:10.1016/j.ajic.2021.01.002.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0196655321000018?via%3Dihub


 

【2021年2月4日 掲載】
(Mechanism)
1.COVID-19の重症化に関わるとされる多くの炎症性サイトカインの中で、TNF-αとIFN-γの協同的作用が引き金となって炎症性細胞死を誘導していることを、in vitroで示した論文です。培養細胞系では、TNF-αとIFN-γ添加はJAK/STAT1/IRF1系を活性化し、NO産生を誘導することでcaspase-8/FADDに媒介される細胞死を引き起こしました。マウスでは、両サイトカイン投与により致死的なサイトカインショックが起こりましたが、抗サイトカイン抗体投与により救命することが可能でした。サイトカインにより誘導される炎症性細胞死過程を阻害することで組織障害を軽減することは、COVID-19や他の感染症、自己炎症性疾患患者にとって有益である可能性があります。
著者名:Karki R, Sharma BR, Tuladhar S, et al.
論文名:Synergism of TNF-α and IFN-γ triggers inflammatory cell Death, tissue damage, and mortality in SARS-CoV-2iInfection and cytokine shock syndromes.
雑誌名:Cell.2020.DOI:10.1016/j.cell.2020.11.025
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7674074/
 
2.COVID-19重症化の年齢依存性に関わる機序を考察したレビューです。成人の重症化リスクを高める因子として、(1)内皮細胞障害と凝固能変化、(2)ACE2受容体の分布、親和性、(3)既存のコロナウイルスに対する免疫の存在、(4)免疫的老化、(5)高い基礎疾患保有率、(6)低ビタミンD、があげられます。小児の重症化リスクを下げる因子として、(1)自然および獲得免疫の違い、(2)頻回の他の感染症罹患、(3)既存のコロナウイルスに対する免疫の存在、(4)microbiotaの違い、(5)高いメラトニンレベル、(6)BCG、MMR、OPVなどの生ワクチン接種、(7) SARS-CoV-2への曝露強度が低いこと、などがあげられます。しかしながら、免疫能および内皮細胞および凝固能の変化を除いてはこれらの仮説は、60~70歳以降の急激なCOVID-19重症化リスク増大の説明にはなっておらず、今後の研究が必要です。
著者名:Zimmermann P, Curtis N.
論文名:Why is COVID-19 less severe in children? A review of the proposed mechanisms underlying the age-related difference in severity of SARS-CoV-2 infections.
雑誌名:Arch Dis Child.2020.DOI:10.1136/archdischild-2020-320338.
URL:https://adc.bmj.com/content/archdischild/early/2020/11/30/archdischild-2020-320338.full.pdf
 
3.COVID-19重症化の機序について、免疫学的な観点からも様々な知見が集積されてきています。COVID-19患者ではリンパ球数特にT細胞が減少する一方好中球数が増加することが示されており、サイトカインストームと制御性T細胞の抑制に伴う宿主免疫の過剰応答が疾患の重症化にかかわっていると考えられています。SARS-CoV-2感染者では、年齢依存性のリンパ球数減少が見られており、獲得免疫の減弱化、全身性の炎症反応の増強が高齢者の重症化に関与している可能性が考えられます。小児例のほとんどが軽症な理由を考えるうえで、小児の免疫学的特徴は重要です。T細胞レセプターの多様性やナイーブT細胞の占める割合は加齢とともに低下し、また小児のナイーブT細胞は制御性T細胞へ分化しやすい特徴があります。ウイルス感染に伴い、成人では自然免疫記憶(Trained immunity)とメモリーT細胞を介した強力な免疫誘導により重症化しやすく、一方、小児ではそれらがいずれも未熟なため、効率的にウイルス特異免疫が誘導され、かつ過剰な宿主免疫応答が適切に制御されることによって重症化から逃れている可能性があります。
著者名:de Candia P, Prattichizzo F, Garavelli S, et al.
論文名:T Cells: Warriors of SARS-CoV-2 infection.
雑誌名:Trends Immunol.2020.DOI:https://doi.org/10.1016/j.it.2020.11.002.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/research/coronavirus/publication/33277181
 
4.Down症候群の患児は、種々の呼吸器ウイルス感染症を含む様々な感染症を繰り返すことがよく知られています。その詳細なメカニズムは明らかではありませんが、炎症性サイトカインの過剰産生や抑制性サイトカインの産生低下、細胞性免疫能の低下など様々な機序が推測されています。一方で、COVID-19重症化の機序として、感染後の宿主免疫の過剰応答が示唆されており、これまでのDown症候群の免疫に関する研究成績からすると、Down症候群患児がCOVID-19に罹患した際に重症化する懸念があります。
著者名:Altable M, de la Serna,JM.
論文名:Down's syndrome and COVID-19: risk or protection factor against infection? A molecular and genetic approach.
雑誌名:Neurol Sci.2020.DOI:https://doi.org/10.1007/s10072-020-04880-x
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s10072-020-04880-x
 
5.COVID-19における宿主とウイルスの相互作用に関するレビューです。COVID-19では、抗ウイルス免疫反応とそれによる臓器炎症とのバランスが臨床経過を決定します。成人においては、コントロールできない炎症反応(サイトカインストーム)が疾患の進行と死亡を決定するとされるのに対し、小児ではほとんどが重症化しません。宿主の遺伝的な調節因子、年齢に関連する感受性、適切な免疫反応を起こす能力が、初期におけるウイルス量の制御と炎症反応の調節に重要な役割を果たすのでしょう。疾患の年齢、免疫状態、疾患の進展に応じた治療法を開発するには病態を解明することが必須です。
著者名:La Torre F, Leonardi L, Giardino G, et al.
論文名:Immunological basis of virus-host interaction in COVID-19.
雑誌名:Pediatr Allergy Immunol.2020.DOI:10.1111/pai.13363
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/pai.13363
 
6.Nrf2に関連する食品や栄養素がインスリン抵抗性を是正し、COVID-19の重症度に影響を与えるとする仮説の提唱です。COVID-19による死亡率には国によって、また国内においても地域によって差があります。死亡率の非常に低い東アジア、中央ヨーロッパ、バルカン諸国、アフリカでは多くの発酵食品を摂取しており、発酵食品の摂取は抗酸化転写因子であるNrf2(Nuclear factor-like2)を活性化します。Nrf2と相互作用する多くの栄養素には、インスリン抵抗性、内皮細胞障害、肺障害、サイトカインストームを低減させる作用があります。発酵食品は、同様の機序でCOVID-19 の重症度を軽減させるのではないでしょうか。
著者名:Bousquet J, Cristol JP, Czarlewski W, et al.
論文名:Nrf2-interacting nutrients and COVID-19: time for research to develop adaptation strategies.
雑誌名:Clin Transl Allergy.2020.DOI:10.1186/s13601-020-00362-7
URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7711617/pdf/13601_2020_Article_362.pdf
 
7.要約データベースのメンデルランダム化解析法(SMR)により、COVID-19による呼吸器症状重篤化や入院などのリスクと多面的に関連する遺伝子を同定した研究です。血液で、IFNAR2にタグ付けされたILMN_1765146とILMN_1791057という2つのプローブが入院と関連していました。血液や肺で、その他に有意なプローブはありませんでしたが、炎症や免疫に関与するものや、PON2やHPS5など血液凝固に関連する遺伝子も指摘できました。本知見は、サイトカインストームと血栓症のメカニズム理解や効果的な治療の考察に有用と考えられます。
著者名:Liu D, Yang J, Feng B, et al.
論文名:Mendelian randomization analysis identified genes pleiotropically associated with the risk and prognosis of COVID-19.
雑誌名:J Infect.2020.DOI:10.1016/j.jinf.2020.11.031.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S016344532030726X?via%3Dihub
 
8.英国のICU208施設のCOVID-19患者2,244名を対象に、重篤化に関与する遺伝素因を検討した研究です。抗ウイルス制限酵素活性化因子(OAS1、OAS2、OAS3)をコードする遺伝子クラスターのchr12q24.13、チロシンキナーゼ2(TYK2)をコードする遺伝子近傍のchr19p13.2、ジペプチジルペプチダーゼ9(DPP9)をコードする遺伝子内のchr19p13.3、インターフェロン受容体遺伝子IFNAR2内のchr21q22.1に注目しました。メンデルランダム化解析法により、IFNAR2の低発現およびTYK2の高発現は生命を脅かす病態との因果関係、肺組織におけるトランスクリプトーム全般の関連性により、単球/マクロファージ走化性受容体CCR2の高発現はCovid-19重症化と関連している可能性が示されました。本研究結果はCovid-19に対する既存薬剤による標的治療に応用できる可能性がありますが、大規模なランダム化臨床試験による確認が不可欠です。
著者名:Pairo-Castineira E, Clohisey S, Klaric L, et al.
論文名:Genetic mechanisms of critical illness in Covid-19.
雑誌名:Nature.2020.DOI:10.1038/s41586-020-03065-y.
URL:https://www.nature.com/articles/s41586-020-03065-y
 
(Diagnosis)
1.SARS-CoV-2関連の小児神経疾患についての論文です。2020年4月30日~9月8日の間に認められたSARS-CoV-2感染による脳症や異常な神経画像についての報告を求めたところ、報告基準を満たした38症例が8か国から報告されました。画像異常は16例がADEM様、13例が神経炎、8例が脊髄炎、7例で血管炎/血栓症の所見認めました。MIS-Cの11人中7人で脳梁膨大部に画像異常を、4例に顔や首の筋炎を認めました。予後は、大部分が正常か軽度の神経学的後遺症のみでしたが、結核などの重感染のあった4人は全例死亡しました。
著者名:Lindan CE, Mankad K, Ram D, et al.
論文名:Neuroimaging manifestation in children with SARS-CoV-2 infection:a multinational,multicentre collaborative study
雑誌名:The Lancet Child &Adolescent Health. 2020 Dec 16.DOI:10.1016/S2352-4642(20)30362-X
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S235246422030362X?via%3Dihub
 
2.IFN-Ⅰの測定に関する報告です。重症COVID-19ではIFN-Ⅰが少ないため免疫調節ができずサイトカインストームになると考えられています。そのためIFN-Ⅰの定量により重症度が予測できます。従来使用していたSIMOA®Nanostring®でのIFN測定は有用ですが、手間と時間がかかります。FilmArray®を用いた測定は重症度に関わらずNanostring®と強く相関し、かつ2分の前処置と45分の測定時間で測定でき、臨床的に有用です。
著者名:Mommert M, Perret M, Hockin M, et al.
論文名:Type‐I Interferon assessment in 45 minutes using the FilmArray® PCR platform in SARS‐CoV‐2 and other viral infections
雑誌名:Eur J Immunol.2020.DOI:10.1002/eji.202048978
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/eji.202048978
 
3.小児の嗅覚機能障害を検討した論文です。SARS-CoV-2感染と非感染の2群で、嗅覚に関する問診と7つの匂い物質による匂い識別テストを行いました。問診では感染者の15%が無嗅覚/味覚障害を回答しましたが全員11歳以上でした。7つの匂いのうち識別できた数の中央値は、感染群で3、非感染群で4でした。感染1か月後、感染群で匂いを誤認識するケースが認められました。小児は鼻粘膜に発現するACE2が成人より未発達なので嗅覚機能障害が少ないと考えられています。
著者名:Concheiro-Guisan A, Fiel-Ozores A, Novoa-Carballal R, et al.
論文名:Subtle olfactory dysfunction after SARS-CoV-2 virus infection in children.
雑誌名:Int J Pediatr Otorhinolaryngol. 2021.DOI:10.1016/j.ijporl.2020.110539
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165587620306820?via%3Dihub
 
4.COVID-19を予測するマーカーに関する論文です。無症候のCOVID-19小児と非感染小児の2群間で複数のマーカーを比較しました。リンパ球数と平均血小板容積(MPV)で有意差認めました。MPVのカットオフ値は>8.74flで、感度81.82%・特異度95%でした。一方、リンパ球数のカットオフ値は2120mm3で、感度49.09%・特異度86.67%でした。これらが小児の感染予測マーカーとなるかは、大規模な症例数での検証が必要です。
著者名:Gumus H, Demir A, Yükkaldıran A.
論文名:Is mean platelet volume a predictive marker for the diagnosis of COVID-19 in children?
雑誌名:Int J Clin Pract.2020.DOI:10.1111/ijcp.13892
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ijcp.13892
 
5.イスラエルのデータベースから得られたSARS-CoV-2感染前および感染中の症状の縦断的動態です。206,377(小児21,567)人の中で2,471(小児862)人の陽性症例の一般的な症状は、発熱、咳、倦怠感でした。検査3週間前の味覚と嗅覚の喪失は、COVID-19の特異的な症状でした。結膜炎、発疹、喉の痛み、呼吸困難、言語障害は、成人に比して小児でよくみられました。回復するまでの期間は23.5±9.9日で、小児は成人と比較して有意に短かくなっています。
著者名: Mizrahi B, Shilo S, Rossman H, et al.
論文名: Longitudinal symptom dynamics of COVID-19 infection.
雑誌名: Nat Commun.2020.DOI:10.1038/s41467-020-20053-y.
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-020-20053-y
 
6. 乾燥血液スポット(DBS)検査は、侵襲性が最小限であり、検体が静脈穿刺せずに検査室に郵送されるなど、大きな利点があります。DBS検体中のSARS-CoV-2受容体結合ドメインIgG抗体を検出するために、酵素免疫測定法を使用して、新生児スクリーニング検査を利用しました。血清抗体陰性および陽性の被験者とPCR陽性の被験者に検査を行い、DBS検体からの抗体の抽出効率は>99%でした。DBS標本は、周囲の室温および湿度で少なくとも28日間安定でした。SARS-CoV-2受容体結合ドメインIgG抗体は、DBS検体で確実に検出できます。
著者名:Moat SJ, Zelek WM, Carne E, et al.
論文名: Development of a high-throughput SARS-CoV-2 antibody testing pathway using dried blood spot specimens.
雑誌名: Ann Clin Biochem. 2020.DOI:10.1177/0004563220981106.
URL: https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0004563220981106?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub++0pubmed&
 
7. サンパウロ市に入院した34名のCOVID-19が確認された小児患者に対して肺エコーが、熟練した小児救急医にて実施されました。18人は肺エコーに異常がありましたが、その中の8人は胸部X線では正常と判定されました。重度、中等度、軽度の小児の肺エコースコアの中央値(範囲)は、17.5(2〜30)、4(0〜14)、0(0〜15)でした(p= 0.001)。12人に行われた胸部CTの所見は、肺エコー得られた情報と一致していました。診療現場における肺エコーは、COVID-19の小児の肺障害を評価する上で重要な役割を果たすかもしれません。
著者名:Giorno EPC, De Paulis M, Sameshima YT, et al.
論文名: Point-of-care lung ultrasound imaging in pediatric COVID-19.
雑誌名: Ultrasound J.2020.DOI:10.1186/s13089-020-00198-z.
URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7702205/
 
8.唾液がSARS-CoV-2 PCRの検体として妥当かどうかを検討した論文です。成人と小児を合わせた300人から唾液および鼻咽頭ぬぐい液をペアで採取し解析しています。32.2%(97/300)がPCR陽性で、唾液と鼻咽頭ぬぐい液の全体の一致率はそれぞれ91.0%(273/300)、94.7%(284/300)でした。陽性一致率は、それぞれ81.4%(79/97)、89.7%(87/97)でした。低コストで自己採取が可能な唾液は、成人および小児においてPCR検体として鼻咽頭ぬぐい液の代替となり得ることが示されました。
著者名:Yee R, Truong T, Pannaraj PS, et al.
論文名:Saliva is a promising alternative specimen for the detection of SARS-CoV-2 in children and adults.
雑誌名:J Clin Microbiol.2020.DOI:10.1128/JCM.02686-20.
URL:https://jcm.asm.org/content/early/2020/11/24/JCM.02686-20.long
 
9.COVID-19診断のための胸部画像検査に関するコクランレビューです。全体で34件(胸部CTは31件、胸部X線は3件、肺超音波は1件)の研究が検討されています。結果を統合すると、COVID-19疑い患者において胸部CTの感度は89.9%(95%信頼区間85.7-92.9)、特異度は61.1%(95%信頼区間42.3-77.1)でした。胸部X線では感度56.9〜89.0%、特異度11.1〜88.9%でしたが、件数が少なくメタ解析を行えませんでした。COVID-19診断において胸部CTは感度が高いものの、特異度は中等度であり、他の呼吸器疾患からCOVID-19を鑑別する能力は限定的である可能性が示されました。
著者名:Islam N, Salameh JP, Leeflang MM, et al.
論文名:Thoracic imaging tests for the diagnosis of COVID-19.
雑誌名:Cochrane Database Syst Rev.2020.DOI:10.1002/14651858.CD013639.pub3.
URL:https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD013639.pub3/full
 
10.7つの血清学的アッセイの妥当性を多施設で検討したイスラエルからの報告です。698名のSARS-CoV-2 PCR陽性患者からの血清と2391の陰性サンプルを解析した結果、アッセイの感度は81.5〜89.4%、特異度は97.7〜100%でした。偽陽性率が小児で増加することはなく、重症度と抗体価には正の相関が認められ、PCR陽性後の最初の8週間で抗体価の低下は認められませんでした。PCR陽性患者の約5%が抗体陰性の無反応者であり、再感染のリスクがあると考えられました。
著者名:Oved K, Olmer L, Shemer-Avni Y, et al.
論文名:Multi-center nationwide comparison of seven serology assays reveals a SARS-CoV-2 non-responding seronegative subpopulation.
雑誌名:EClinicalMedicine.2020.DOI:10.1016/j.eclinm.2020.100651. Epub 2020 Nov 19.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589537020303953?via%3Dihub
 
11.小児においてどのような症状があるとSARS-CoV-2 PCR検査が陽性になりやすいかを検討した報告です。2020年4月~9月にカナダにおいて、何らかの症状を認め検査が行われた患者、および接触者調査が行われた患者(いずれも18歳未満)を対象としています。気道検体を用いたSARS-CoV-2PCR検査が陽性となる要因を尤度比で表しています。検査対象者2,463例のうち1987例(平均年齢9.3歳)が陽性となり、476例(平均年齢8.5歳)が陰性でした。SARS-CoV-2PCR陽性患者の内、714 例(35.9%)は無症状でした。咳嗽 (24.5%)と鼻汁 (19.3%)は陽性者の多くに認められた所見でしたが、陰性者にも多く認められ、陽性尤度比は咳嗽の場合は0.96(95%信頼区間[CI] 0.81–1.14)、鼻汁の場合は0.87(95%CI 0.72–1.06)と有意ではありませんでした。SARS-CoV-2PCR検査陽性を示唆する症状の陽性尤度比は、味覚異常・嗅覚異常で7.33(95% CI 3.03–17.76)、嘔気・嘔吐で5.51 (95% CI 1.74–17.43)、頭痛で2.49 (95% CI 1.74–3.57)、発熱で1.68 (95% CI 1.34–2.11)でした。味覚・嗅覚異常、嘔気・嘔吐、頭痛をすべて認めた場合の陽性尤度比は65.92 (95% CI 49.48–91.92)でした。
このように、SARS-CoV-2 PCRが陽性であった小児の3分の2に症状を認め、PCR検査陽性を予見する所見として、味覚・嗅覚異常、嘔気・嘔吐、頭痛、発熱が挙げられました。その一方で、これらの症状の頻度はPCR検査陽性者においても、味覚・嗅覚異常(7.7%)、嘔気・嘔吐(3.5%)、頭痛(15.7%)、発熱(25.5%)と低く、陰性所見が除外には役立たないことに注意が必要です。なお、5歳未満の小児のみを対象とした分析は行われていませんでした。
著者名:King JA, Whitten TA, Bakal JA, et al.
論文名:Symptoms associated with a positive result for a swab for SARS-CoV-2 infection among children in Alberta
雑誌名:CMAJ.2021. DOI:10.1503/cmaj.202065.
URL:https://www.cmaj.ca/content/early/2020/11/23/cmaj.202065.long
 
12.COVID‐19 の予後予測としてのサイトカイン・ケモカインの有用性を検討した報告です。COVID-19陽性小児(30例)および成人(30例)の急性期血清、および健常小児(15例)と成人(15例)からの血清を用いて、サイトカイン・ケモカインを25種類測定しています。感染者血清のInterferon gamma‐induced protein 10 (IP‐10)とmacrophage inflammatory protein (MIP)−3βは小児・成人に関わらず健常者より高値でした。軽症・中等症と重症者の比較から、IP-10は小児・成人において、IL-6は成人において重症度を反映させる指標であることが示唆されました。
著者名:Ozsurekci Y, Aykac K, Er AG, et al.
論文名:Predictive value of cytokine/chemokine responses for the disease severity and management in children and adult cases with COVID-19
雑誌名:J Med Virol.2020.DOI:10.1002/jmv.26683
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.26683
 
13.小児におけるSARS-CoV-2抗体価の変動に関する初めての報告です。 英国における2–15 歳児を対象とした多施設コホート研究で、2020年4月から8月にかけ抗SARS-CoV-2抗体価を2種類の検査法で測定しています。陽性率は初回検査時6.9%(68/992)、2回目は7.66%(65/849)と大きな増加を認めませんでした。抗体陽性者の年齢中央値は10歳で地域差を認めました。62日の間隔(中央値)をあけて測定が行われ、初回陽性で2回目の測定が行われた45例については抗体の上昇が認められました。Roche社検査法による測定では84.7 cutoff index (COI)から115.8 COIへと優位に上昇 (p=0.0007)し, DiaSorin社の検討でも 67.5 AU/mLから81.4 AU/mL へ上昇しています(p=0.0452)。このように抗体の変動については成人と同様の傾向が認められ、2か月間は抗体が持続され、上昇する事が確認されました。
著者名:Roarty C, Tonry C, McFetridge L, et al.
論文名:Kinetics and seroprevalence of SARS-CoV-2 antibodies in children
雑誌名:Lancet Infect Dis.2020. DOI:10.1016/S1473-3099(20)30884-7.
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1473309920308847?via%3Dihub
 
(Transmission)
1.COVID-19と診断された妊婦について2020年6月26日までに報告された研究をPubMed、Scopus、Web of Science、MedRxivから抽出し、系統的レビューを行いました。161の論文から抽出した3,985人の妊婦のうち2,059例で転帰が示されており、流産42例、死産21例、出生2,015例でした。23%が早産となり、約6%の妊婦は集中治療室へ入院し28例が死亡しました。新生児の死亡は10例でした。羊水、胎盤、臍帯血のSARS-CoV-2の検討では163例中10例が陽性で、61人の新生児がSARS-CoV-2陽性となりました。92例中4例の母乳でSARS-CoV-2が陽性でした。本検討で妊婦から新生児へ垂直感染する可能性が示唆されましたが、分娩中の検体(羊水、胎盤、臍帯血)のSARS-CoV-2を検討した症例の報告数は充分ではありませんでした。報告された研究間でかなり不均質であったため、メタ分析ができなかったことも限界の一つです。
著者名:Rodrigues C, Baía I, Domingues R, et al.
論文名:Pregnancy and Breastfeeding During COVID-19 Pandemic: A Systematic Review of Published Pregnancy Cases.
雑誌名:Front Public Health. 2020.DOI:10.3389/fpubh.2020.558144. eCollection 2020.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7719788/pdf/fpubh-08-558144.pdf
 
2.小児がSARS-CoV-2の伝播にどのような役割を果たしているかについて、以前の迅速レビューに、今回33の論文を新たに加えアップデートしています。小児の感受性や伝播を十分なエビデンスとともに示した論文は15編ありましたが、学校における伝播のデータは殆どありませんでした。COVID-19の学校でのoutbreakの論文は3つ(フランス、オーストラリア、イスラエル)ありました。うち、イスラエルでは、学校が再開してから50日以内に発症者が2倍以上になり、その中心は10-19歳でした。ただし学校再開と同時に、他の社会活動も再開されていたために、学校再開のみが理由ではないと思われました。一方、学校での感染はないとの報告も4つありました。確認できた29か国におけるCOVID-19患者に占める小児の割合は0.3-13.8%でした。本検討にはいくつかの限界があるものの、小児と学校はCOVID-19の伝播において限定的な役割しかないことが示唆されました。
著者名:Li X, Xu W, Dozier M, et al.
論文名:The role of children in the transmission of SARS-CoV2: updated rapid review.
雑誌名:J Glob Health. 2020.DOI:10.7189/jogh.10.021101.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7719356/pdf/jogh-10-021101.pdf
 
3. SARS-CoV-2の家庭内の二次感染について系統的レビュー・メタ解析し、他の新興コロナウイルスと比較しました。2020年10月19日までに報告された論文をPubMedから検索し、54の論文(77,758例)を抽出しました。SARS-CoV-2の推定家庭内感染は16.6%(95%信頼区間14.0-19.3%)であり、SARS-CoV(7.5% [4.8-10.7%])およびMERS-CoV(4.7% [0.9-10.7%])より高頻度で見られました。家庭内の二次感染は、有症状例(18.0% [14.2-22.1%])からの感染が無症状例(0.7% [0-4.9%])からより多く、成人(28.3% [14.2-22.1%])への感染が小児(16.8% [12.3-21.7%])への感染より多く、配偶者(37.8% [25.8-50.5%])への感染が他の家族(17.8% [11.7-24.8%])への感染より多く、同居家族が1人の家庭(41.5% [31.7-51.7%])における感染が3人以上の家庭(22.8% [13.6-33.5%])における感染より多いことが示されました。
著者名:Madewell ZJ, Yang Y, Longini Jr IM, et al.
論文名:Household Transmission of SARS-CoV-2: A Systematic Review and Meta-analysis.
雑誌名:JAMA Netw Open.2020.DOI:10.1001/jamanetworkopen.2020.31756.
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2774102
 
4.イングランドの夏の中間休暇(2020年6月〜7月)における教育現場のスタッフと生徒のSARS-CoV-2感染とアウトブレイクの発生率を前向き横断的分析で推計した論文です。
SARS-CoV-2感染の単独症例は113例、集団発生は9例、55件のアウトブレイクがあり、市中での発生率が人口10万人あたり5例増えるごとにアウトブレイクのリスクは72%(95%信頼区間 28–130)増加しました(p <0.0001)。1日10万人あたりの発生率はスタッフで27例(23–32)、幼児教育の児童で18例(14–24)、初等教育の生徒で6.8例(4.3–8.2) 、中等教育の生徒で6.8例(7–14)であり、スタッフの方が生徒より高くなっていました。また、アウトブレイクとリンクを認めた症例はスタッフの方が生徒よりも多くなっていました(210例中スタッフ154例(73%)、生徒56例(27%))。感染伝播は、スタッフからスタッフへが26件、スタッフから生徒が8件、生徒からスタッフが16件、生徒から生徒が5件でした。アウトブレイクに関連した二次感染者数の中央値は、生徒が発端者の場合1(IQR 1–2)、スタッフが発端者の場合1(1〜5)でした。教育現場でのアウトブレイクと地域のCOVID-19の発生率との強い関連性は、教育現場を保護するためには市中での感染を制御することが重要であることを強く示しています。介入策はスタッフ内およびスタッフ間での感染伝播を減らすことに焦点を当てるべきです。
著者名:Ismail SA, Saliba V, et al.
論文名:SARS-CoV-2 infection and transmission in educational settings: a prospective, cross-sectional analysis of infection clusters and outbreaks in England.
雑誌名:Lancet Infect Dis 2020. DOI:https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30882-3
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1473309920308823?via%3Dihub
 
5.SARS-CoV-2の感染伝播における小児の役割については、依然として議論の余地があります。 この問題に対処するために、家庭内でのSARS-CoV-2感染クラスターに関する公開された文献のメタ解析を実施しました(12か国から213のクラスター)。わずか8例(3.8%)のクラスターでのみ小児が発端者であると特定されました。無症候性発端者は症候性発端者よりも接触者の二次感染が少ないことに関連していました(推定リスク比[RR] 0.17; 95%信頼区間 0.09-0.29)。 小児の家庭内接触者における二次発病率は成人の家庭内接触者よりも低値でした(RR 0.62 [0.42-0.91])。 これらのデータは、COVID-19のワクチンの優先順位をつける戦略を含むパンデミックの継続的な対応を行うにあたって重要な意味を持っています。
著者名:Zhu Y, Bloxham CJ, et al.
論文名:A meta-analysis on the role of children in SARS-CoV-2 in household transmission clusters.
雑誌名:Clin Infect Dis Clinical Infectious Diseases, December 2020.DOI:https://doi.org/10.1093/cid/ciaa1825
URL:https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa1825/6024998
 
6. 2020年10月31日までの時点で発表されたCOVID-19と診断された妊婦に関連する70編の論文から、1,457例の陽性妊婦と1,042例の出生児に関する系統的レビューです。1,339例(91.9%)が妊娠第3三半期で、分娩形式は597例(57.3%)は選択的帝王切開、36例(3.4%)は緊急帝王切開、364例(34.9%)は自然分娩でした。187人(17.9%)の新生児はNICU管理を要し、新生児死亡と胎児子宮内死亡の合計は16例(1.5%)でした。 流産は7例(0.7%)、早産は64例(6.1%)、子宮内胎児機能不全は28例(2.7%)、胎動減少は19例(1.8%)、重症新生児仮死は5例(0.5%)、低出生体重(<2500 g)は4例(0.3%)でした。SARS-CoV-2陽性新生児は合計39例(3.7%)であり、胎盤13検体、母乳6検体からSARS-CoV-2が検出されました。母親からの新生児への感染は多くありませんが、すべての新生児をフォローアップすることが重要です。
著者名:Amaral WN, Moraes CL, Rodrigues APS, et al.
論文名:Maternal Coronavirus Infections and Neonates Born to Mothers with SARS-CoV-2: A Systematic Review.
雑誌名: Healthcare.2020.DOI:10.3390/healthcare8040511
URL:https://www.mdpi.com/2227-9032/8/4/511
 
7. 貧困層の割合が多いミシガン州デトロイトにおける小児の家庭内感染のパターンの調査です。2020年3月12日から6月15日にミシガンこども病院においてPCRまたは抗体検査でCOVID-19と診断された71例の小児患者について、カルテ情報から発症前の有症状接触者の有無を後方視的に検討しました。年齢中央値は6歳で、45例(85%)がアフリカ系アメリカ人でした。小児では家庭内曝露が多くを占めるという過去の報告と異なり、30例(42%)のみが家庭内曝露歴を有しており、その多く(23例)は親が感染源でした。なお、電話での追跡調査がなされた61例において、6週間以内の子どもから大人への感染は1例も確認されませんでした。
発症後の厳密な隔離措置やソーシャル・ディスタンスを取ることが難しい集団(貧困層が住む都市部)では、小児も家庭外で感染する可能性が高くなり、感染予防策には地域における要因や疫学を考慮に入れる必要があります。
著者名:Chaya Pitman-Hunt, Jacqueline Leja, Zahra M Jiwani, et al.
論文名:SARS-CoV-2 Transmission in an Urban Community: The Role of Children and Household Contacts.
雑誌名:J Pediatric Infect Dis Soc.DOI:10.1093/jpids/piaa158.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7717291/
 
(Treatment)
1. 欧州呼吸器学会(ERS)の小児科会議のメンバーを対象に、小児COVID-19の重症化に関する調査が行われました。174医療機関から945人の小児COVID-19症例の情報が報告されました。このうち、約10%の小児が基礎疾患として呼吸器疾患を有していました。喘息と嚢胞性線維症(CF)の小児では、SARS-CoV-2に感染しても持ちこたえましたが、希ではありますが気管支肺異形成症(BPD)やその他の呼吸器疾患を有する小児はSARS-CoV-2感染により人工呼吸器を装着する必要性があったことから、これらの基礎疾患はSARS-CoV-2感染による重症化リスクが高いことが示唆されました。BPDに加えて、喘息・CF以外の呼吸器疾患を有する小児は隔離(常に家にいて、家庭内でも2mの距離を保つ)が有効であることが示唆されました。
著者名:Moeller A, Thanikkel L, Duijts L, et al.
論文名:COVID-19 in children with underlying chronic respiratory diseases: survey results from 174 centres
雑誌名:ERJ Open Res.2020.DOI:10.1183/23120541.00409-2020
URL:https://openres.ersjournals.com/content/6/4/00409-2020
 
(小児多系統炎症性症候群(Multisystem Inflammatory syndrome in children:MIS-C)と小児炎症性多系統症候群(Pediatric inflammatory multisystem syndrome:PIMS))
1. 米国フィラデルフィア小児病院におけるMIS-Cの症例のSARS-CoV-2に対する抗体価を検索した研究です。無症状か軽症の小児(10例)、重症例(9例)、MIS-C (10例)の3群に分け、ウイルスの幾つかの蛋白に対する抗体価を検索しました。その結果、MIS-Cの症例は、重症例に比べ、SARS-CoV-2のSpike蛋白に対するIgG抗体が高いことが分かりました。このことから、MIS-Cの症例は、感染の発症からの時間が長いことが示唆されました。
筆者名: Anderson EM, Diorio C, Goodwin EC, et al.
論文名:SARS-CoV-2 antibody responses in children with MIS-C and mild and severe COVID-19
雑誌名:J Pediatr Infect Dis Soc. 2020
URL:https://academic.oup.com/jpids/advance-article/doi/10.1093/jpids/piaa161/ 6017296
 
2. 50例の小児SARS-CoV-2感染症入院例(軽症COVID-19 21例、重症COVID-19 11例、MIS-C 18例)について、補体の活性化および血栓性微小血管障害(TMA)のバイオマーカーとして血清中の可溶性C5b9(sC5b9)を測定しました。sC5b9の中央値は健常児57ng/mlと比べて軽症392ng/ml、重症646ng/ml、MIS-C 630ng/mlと全てで上昇しており、sC5b9と血清クレアチニンに正の相関を認めました。確認できた19例中17例(89%)はTMAの診断基準を満たし、TMAとの関連についてさらなる検討が必要です。
著者名:Diorio C, McNerney K, Lambert M, et al.
論文名:Evidence of thrombotic microangiopathy in children with SARS-CoV-2 across the spectrum of clinical presentations.
雑誌名:Blood Adv.2020.DOI:10.1182/bloodadvances. 2020003471.
URL: https://ashpublications.org/bloodadvances/article/4/23/6051/474421/Evidence-of-thrombotic-microangiopathy-in-children
 
3. イタリア、エミリア・ロマーニャでのCOVID-19流行時(2020年2月から4月)に地域の医療機関を受診した患者の心血管症状をまとめ、流行前と比較した観察研究の結果です。期間中に川崎病8名、心筋炎1名、MIS-C4名が診断されましたが、SARS-CoV-2感染が認められたのはMIS-Cの患者のみでした。治療にはよく反応し、合併症もなく治癒しています。川崎病の臨床経過はCOVID-19流行前の川崎病と変わりませんでした。
著者名:Marianna Fabi, Emanuele Filice, Laura Andreozzi, et al.
論文名:Spectrum of cardiovascular diseases in children during high peak COVID-19 period infection in Northern Italy: is there a link?
雑誌名:J Pediatric Infect Dis
URL: https://doi.org/10.1093/jpids/piaa162
 
4. スペインの47のPICUにおける45名のMIS-C小児例と29名の非MIS-C小児例(重症肺炎)の臨床像を前方視的に比較した研究です。MIS-Cの症例は、非MIS-C症例に比べ幾つかの特徴が明らかになりました。その特徴とは、年齢が高いこと、既往歴が少ないこと、発熱、下痢、嘔吐、疲労、ショック、心機能異常などの症状の頻度が高いこと、一方で、呼吸窮迫の頻度が低いことが明らかになりました。また、検査では、リンパ球数とLDHが低いこと、好中球数, 好中球/リンパ球比, CRP、プロカルシトニンが高いことが分かりました。また、人工呼吸管理は少なく、血管作動薬、ステロイド、免疫グロブリンの使用が多いことも分かりました。3名の死亡例がありましたが、MIS-Cには死亡例は認めませんでした。
筆者名:García‑Salido A, de Carlos Vicente JC, Hofheinz SB et al.
論文名:Severe manifestations of SARS‑CoV‑2 in children and adolescents: from COVID‑19 pneumonia to multisystem inflammatory syndrome: a multicentre study in pediatric intensive care units in Spain
雑誌名:Crit Care. 2020; 24:666
URL: https://doi.org/10.1186/s13054-020-03332-4
 
5.COVID-19とMIS-Cの小児入院例のうち皮膚粘膜病変を伴う症例の臨床的特徴を検討した成績です。COVID-19の33%(4/12)、MIS-Cの47%(9/19)に発疹または粘膜炎を認めました。皮膚粘膜病変を伴う症例はPICUへの入院、人工換気例が少なく、MIS-CにおいてはCRP、フェリチン、D-ダイマー、トロポニンが低値でした。また、川崎病の診断基準を満たした症例はありませんでした。皮膚粘膜病変を伴う症例では両疾患の重症度が低い可能性が示唆されます。
著者名:Rekhtman S, Tannenhaum R, Strunk A, et al.
論文名:Mucocutaneous disease and related clinical characteristics in hospitalized children and adolescents with COVID-19 and MIS-C.
雑誌名:J Am Acad Dermatol. 2020.
DOI:10.1016/j.jaad.2020.10.060. Online ahead of print.
URL: https://www.jaad.org/action/showPdf?pii=S0190-9622%2820%2932872-3
 
6.ニューヨーク市内の2つの医療機関に2020年4月1日から7月14日までにMIS-Cで入院した35名(うち疑い例10名)の小児患者を対象にMIS-C患者の皮膚病変について調査した研究です。35名中29名が粘膜病変を認め、内訳は結膜充血が最多で21名、掌蹠紅斑18名、口唇充血17名、そのほか眼窩周囲紅斑および浮腫、いちご舌、頬部紅斑となっています。粘膜病変は発熱後2.7日(範囲:1-7日)で発症し、5日間(範囲:0-11日)継続していますが、粘膜病変の有無とMIS-Cの重症度に相関はありませんでした。
著者名:Trevor K. Young, Katharina S. Shaw, Jinal K. Shah, et al.
論文名:Mucocutaneous Manifestations of Multisystem Inflammatory Syndrome
in Children During the COVID-19 Pandemic.
雑誌名:JAMA Dermatol. DOI:10.1001/jamadermatol.2020.4779
URL:https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/2773994?alert=article
 
(School closure)
1.COVID-19パンデミック下の学校閉鎖は、身体的な影響に加え、精神的健康や社会経済的部分にも影響を及ぼす、というインドネシアの報告です。調査は2020年4月に11〜17歳(平均年齢14.1歳)の113人を対象として、彼らの感情と行動に関する問題点の調査をSDQ(Strength and Difficulties Questionnaire:子どもの強さと困難さアンケート)を用いてオンラインで行いました。その結果、学校閉鎖の間、青少年は感情的および行動上の問題を抱えるリスクがありました(総合的困難さ14.2%、仲間関係の問題38.1%、向社会的な行動28.3%、行為の問題15%、情緒の問題10.6%)。遠隔教育、遠隔相談など実質上の活動環境を整え、学校との関係を維持することで精神衛生の維持が可能になると思われます。
著者名:Wiguna T, Anindyajati G, Kaligis F, et al.
論文名:Brief Research Report on Adolescent Mental Well-Being and School Closures During the COVID-19 Pandemic in Indonesia.
雑誌名:Front Psychiatry. 2020.DOI:10.3389/fpsyt.2020.598756. PMID:33312144.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7704451/
 
2.COVID-19パンデミック下の学校閉鎖での学習成果についてのスイスからの報告です。28,685人の生徒の数学と語学の学業成績を、閉鎖中・閉鎖前のそれぞれ8週間の期間についてモデル解析を用いて比較しています。中等学校の生徒は、学習向上の点で学校閉鎖の影響をほとんど受けていませんでしたが、初等学校の生徒は学習が遅くなり、同時に学習向上の個人間のばらつきが増加しました。遠隔授業は、少なくとも緊急時には対面学習の代わりになる効果的な手段であると思われますが、すべての生徒が同じ程度の恩恵を受けているわけではないと言えます。
著者名:Tomasik MJ, Helbling LA, Moser U.
論文名:Educational gains of in-person vs. distance learning in primary and secondary schools: A natural experiment during the COVID-19 pandemic school closures in Switzerland.
雑誌名:Int J Psychol. 2020.DOI:10.1002/ijop.12728.  PMID:33236341.
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ijop.12728
 
3. 幼稚園・学校でのCOVID-19小児発端者から他の幼児・生徒等へのSARS-CoV-2感染に関する韓国からの報告です。韓国では幼稚園・学校の始業を3回にわたって遅らせ、オンライン授業は2020年4月9日から、対面授業は5月20日から、学年の状況に応じて始めました。対面授業再開後に小児症例の急激な増加はなく、全国総数に占める小児の割合は約7.0%でした。夏休み前の7月31日時点で、38施設から44人の小児がCOVID-19と診断され、13,000人以上の小児(幼稚園から高校3年)と教職員が検査を受けましたが、同じクラスで二次感染していたのは小学生1人だけでした。感染経路不明の感染者の割合は、低学年(幼稚園・小学校)では17.4%、高学年(中学校・高校)では52.4%でした(p= 0.014)。家族から感染した割合は、低学年では78.3%、高学年では23.8%でした(p<0.001)。韓国では学校閉鎖からオンライン授業、対面授業へと移行する中で、小児の集団発生は発生しませんでした。
著者名:Yoon Y, Kim KR, Park H, et al.
論文名:Stepwise School Opening and an Impact on the Epidemiology of COVID-19 in the Children.
雑誌名:J Korean Med Sci. 2020.DOI:10.3346/jkms.2020.35.e414. PMID: 33258334.
URL:https://jkms.org/DOIx.php?id=10.3346/jkms.2020.35.e414
 
4. 幼稚園および学校再開後のCOVID-19の二次感染に関するイタリアからの観察研究です。2020年9月に再開したイタリア北部の州にある36の学校・幼稚園の41クラス(教師209名、小児1,039名)において、再開後1か月間にSARS-CoV-2のクラスターが9つ発生し、二次感染例を38名認めました。二次発病率は職員を含めた全体では3.2%で、中学・高校生では6.6%に達しましたが幼稚園や職員間での伝播はありませんでした。COVID-19症例の迅速な隔離と接触者への検査は、幼稚園や学校のような環境においてウイルス伝播を減らすために効果的である可能性があります。
著者名:Larosa E, Djuric O, Cassinadri M, et al.
論文名:Secondary transmission of COVID-19 in preschool and school settings in northern Italy after their reopening in September 2020: a population-based study.
雑誌名:Euro Surveill. 2020.DOI:10.2807/1560-7917.ES.2020.25.49.2001911.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7730487/
 
5. COVID-19パンデミックによる学校閉鎖および運動競技中止期間の米国青年アスリートにおける精神的・身体的な健康、および生活の質に関する横断的研究です。13,002人の米国の青年アスリート(平均年齢16.3±1.2歳、女性52.9%)に匿名のオンライン調査が行われました。中等度から重度の不安症状を有した割合は女性で高くなっていました。(女性43.7%、男性28.2%)。うつ病症状の有病率はチームスポーツ参加者が最も高く(74.1%)、個人スポーツ参加者が最も低くなっていました(64.9%)。青年アスリートにおける精神的・身体的な健康、および生活の質は性別、学年、スポーツの種類、および貧困のレベルに応じて程度が異なっており、今後米国の運動接種の健康改善を目的とした政策立案・導入の際にはこれらの点を考慮する必要があります。
著者名: McGuine TA, Biese KM, Petrovska L, et al.
論文名:Mental Health, Physical Activity, and Quality of Life of US Adolescent Athletes During COVID-19-Related School Closures and Sport Cancellations: A Study of 13 000 Athletes.
雑誌名:J Athl Train. 2020.DOI:10.4085/1062-6050-0478.20.
URL:https://meridian.allenpress.com/jat/article-lookup/doi/10.4085/1062-6050-0478.20
 
6.COVID-19流行第一波の学校閉鎖中の運動促進に関する体育教師の行動についての研究です。フランス、イタリア、トルコの1,146人の体育教師(女性59.5%)を対象に、ロックダウンの前と途中で、生徒に対して学校外での運動を促進したかどうか、目標設定を支援したかどうか、運動について自己監視を奨励したか、という3つの行動についてオンライン調査を行いました。フランスの教師は3項目すべての行動が増加し、イタリアの教師は自己監視奨励のみが増加、トルコの教師は3項目すべての行動が減少していました。この違いは各国政府や教育機関の政策に関連している可能性があります。COVID-19流行中の運動促進に対する体育教師の役割は重要です。
著者名:Gobbi E , Maltagliati S , Sarrazin P, et al.
論文名:Promoting Physical Activity during School Closures Imposed by the First Wave of the COVID-19 Pandemic: Physical Education Teachers' Behaviors in France, Italy and Turkey. 
雑誌名:Int J Environ Res Public Health.2020. DOI:10.3390/ijerph17249431. 
URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7767079/
 
7.COVID-19パンデミックに対する非医薬的介入(NPI;全国的な学校閉鎖と緊急事態宣言)が救急外来(ED)受診に与えた影響について検討した、日本の1施設からの後ろ向き研究です。パンデミック前(2015年~2019年)と、期間I(COVID-19第一波;2020年1月16日~3月1日)、期間Ⅱ(学校閉鎖;3月2日~4月15日)、期間Ⅲ(緊急事態宣言;4月16日~5月25日)において、全年齢層のED受診数を比較しました。パンデミック前と比較すると、ED受診数はⅠ、Ⅱ、Ⅲ全期間で有意に減少しました(23.1%、12.4%、24.0%)。トリアージレベル別ではより低い患者の受診数が減少し、年齢別では1~17歳の層で最も受診数が減少していました。救急車によるED受診数は、期間Iで8.3%増加しましたが、期間ⅡおよびⅢでは変化しませんでした。COVID-19パンデミック中のNPI適用によりED受診数が大幅に減少した可能性がありました。
著者名:Sekine I, Uojima H, Koyama H, et al.
論文名:Impact of non‐pharmaceutical interventions for the COVID‐19 pandemic on emergency department patient trends in Japan: a retrospective analysis.
雑誌名:Acute Med Surg. 2020.DOI:10.1002/ams2.603
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ams2.603
 
8. COVID-19パンデミック下での、子ども虐待やネグレクトに関連する救急外来(ED)受診についての米国からの報告です。2019年1月6日から2020年9月6日の期間について、National Syndromic Surveillance Program(NSSP)データを用いて子ども虐待とネグレクトに関連するED受診数、入院数、10万受診数あたりの割合を調査しました。パンデミックの間、すべての年齢層(0〜4、5〜11、および12〜17歳)において子ども虐待とネグレクトに関連するED受診総数は減少しましたが、入院に至った症例数の割合は2019年と比較して増加しており、パンデミック中に傷害の重症度は低下していなかったことが示唆されました。パンデミック下では、ストレス増加、学校閉鎖、収入の喪失、社会的孤立により、子ども虐待やネグレクトのリスクが高まっています。経済的支援や家庭向けの労働政策などの戦略の実施が、公衆衛生上の緊急事態において重要です。
著者名:Swedo E, Idaikkadar N, Leemis R, et al.
論文名:Trends in U.S. Emergency Department Visits Related to Suspected or Confirmed Child Abuse and Neglect Among Children and Adolescents Aged <18 Years Before and During the COVID-19 Pandemic — United States, January 2019–September 2020.
雑誌名:MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020.DOI:10.15585/mmwr.mm6949a1.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7737689/
 
9. 学校閉鎖が小児のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことは知られていますが、エビデンスが明示されている報告は多くありません。本研究は、英国において小児168人(7.6歳~11.6歳)を対象に、ロックダウン(学校閉鎖)前と実施中に、3種類の調査票を用いてメンタルヘルスを評価した研究です。検討の結果、ロックダウン実施中の小児は、ロックダウン前と比較し、有意に抑うつ症状が増加することが明らかになりました。
著者名:Giacomo B, Edwin SD, Anwyl-Irvine AL, et al.
論文名:Longitudinal increases in childhood depression symptoms during the COVID-19 lockdown.
雑誌名:Arch Dis Child.2020.DOI:10.1136/archdischild-2020-320372.
URL:https://adc.bmj.com/content/archdischild/early/2020/11/26/archdischild-2020-320372.full.pdf
 
10. 学校閉鎖が、小児の感情にどのような影響を与えるかについて検討したイランからの報告です。本研究は、学校閉鎖実施早期に、20,697人(平均年齢13.76歳)を対象に調査票を用いたインターネット調査により実施されました。学校や学習に対するポジティブな感情は、低学年・郊外在住・成績が良い生徒で高い傾向が認められました。
著者名:Mirahmadizadeh A, Ranjbar K, Shahriarirad R, et al.
論文名:Evaluation of students' attitude and emotions towards the sudden closure of schools during the COVID-19 pandemic: a cross-sectional study.
雑誌名:BMC Psychol.2020.DOI:10.1186/s40359-020-00500-7.
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7744732/pdf/40359_2020_Article_500.pdf
 

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