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(登録:2004.12.24)

 

平成16年12月19日

厚生労働省健康局
結核感染症課長 牛 尾 光 宏 殿

社団法人日本小児科学会
  会長 衞 藤 義 勝 

結核予防法の改正等に係る乳児へのBCG接種について
要望書


「結核予防法の一部を改正する法律の成立」に基づき平成16年10月6日「結核予防法施行令の一部を改正する政令」(平成16年政令第303号)及び「同法施行規則の一部を改正する省令」(平成16年厚生労働省令第148号)が公布されました。BCG定期接種については「政令で定める定期は、生後六月に達するまでの期間とする。ただし、地理的条件、交通事情、災害の発生その他の特別の事情によりやむを得ないと認められる場合においては、一歳に達するまでの期間とする」とされました。BCG接種は生後直後から可能で、生後6カ月までが結核予防法による接種(定期接種)であり、以降は特別な事情を除き任意接種となる、とのことであります。乳児の比較的速い時期におけるBCG接種率を高め、小児における結核予防対策を強化するという点で、基本的に賛成するものであります。
 これまでもBCG接種は、接種開始時期は生直後から可能とされておりますが、我が国では、「免疫不全児への生ワクチン接種を避けるために新生児期は避け、標準接種時期を生後3カ月から1歳までとする」としてきました。
 BCGの早期接種、接種率の向上により結核対策を強力に推進することには異論がありませんが、免疫不全児は出生1-2万あたりおよそ1人と推定され、また最近のデーターでも重症複合免疫不全症の発症月齢は3ヶ月以内が45.8%、慢性肉芽腫症でも発症月齢は3ヶ月以内が37.8%であり(岩田力・厚生省特定疾患「原発性免疫不全症候群」調査研究班)、接種開始時期を生直後を含みより早く行うと言う解釈が生まれることについては、これまでの基本方針をあえて変更するメリットは考えられず、むしろBCGによる副反応発生事例増加のリスクを高める可能性のあることを危惧するものであります。
 一方定期接種年齢の上限に関しては、政令で定期接種は「生後6ヶ月に達するまでの期間」を原則とし、それにより難い場合は「1歳に達するまでの期間」となっておりますが、厚生労働省結核感染症課による同条ただし書きによれば、その他特別の事情によりやむを得ないと認められる場合は、地理的条件、交通事情、災害の発生等被接種者によらない理由のみとなっており、個人の健康状態等は一切考慮されない内容となっています。生後6カ月までに、軽重にかかわらず何らかの疾患に罹患しそのために経過を観察することは多く、これらの子どもたちが定期接種としてのBCG接種機会を失うことは、結果として乳児期におけるBCG接種率の低下を危惧するものであります。
 
 したがって、BCG接種は、
1) 生直後から可能であるが、標準的には生後3カ月検診などを利用することとし、出来るだけ生後6カ月以内に接種が完了することを原則とする
2) 生後6カ月までの接種は、地理的条件、交通事情、災害の発生その他特別の事情によりやむを得ないと認められる場合には1歳に達するまで行い得るとされているが、「その他」の理由には、生後6カ月以内で医学的に不適当であった乳児にもBCG接種機会を留保するため「医師による医学的判断がなされた場合」を解釈の上で加える。

以上、小児科学会は我が国における重要な課題である結核対策の一環として、生後6カ月以内に出来るだけBCG接種率を高める一方乳児に対するより安全なBCG接種を目指し、また生後6カ月以内の接種について医学的に不適当であった乳児にもBCG接種機会を留保するため、以上の2点を実施にあたっての考え方として加えることを要望します。
 

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