各種活動

 

(登録:2005.06.30)

 

平成17年6月26日

厚生労働省 健康局
結核感染症課長 牛尾 光宏 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝


日本脳炎予防接種第3期の廃止についての要望書


 近年、わが国における日本脳炎患者は、年間報告数は10例以内で、主として50歳以上の中高年齢者が占める割合が高く小児における発症はきわめて少なくなりました。この要因は、これまで広く行なわれてきた小児への日本脳炎予防接種や環境改善によりウイルスを保有した蚊の吸血を受ける機会が激減したなどが考えられています。しかし、日本脳炎は発症した場合重症化することが多い疾患であることに変わりはありません。
今回、国より日本脳炎予防接種第3期の廃止についての提案が行われましたが、その根拠として、現在の日本脳炎の発生状況および予防接種の普及状況の中で、第3期予防接種の接種率は40~50%と低いこと、多数の第3期予防接種の未接種者が存在しているにもかかわらず10歳代の発症者は過去22年間で1名のみときわめて少ないことがあげられています。また、全国の年齢別抗体保有調査(感染症流行予測調査)では、第3期予防接種による追加免疫効果は明らかではなく、第3期予防接種の効果を積極的に肯定する根拠に乏しいと述べられています。
厚生労働省によって開催された日本脳炎ワクチンに関する専門家ヒヤリング(平成16年)、ワクチン問題検討委員会(平成17年)において、日本脳炎ワクチンの我が国における必要性については基本的にコンセンサスが得られたものと聞いておりますが、当学会もこれに賛同するものであります。一方、3期廃止に関しては後者の委員会において議論が行われたものの、時間的にも内容的にも十分に議論が尽くされたとは言えず、コンセンサスが得られている段階ではないことが中間報告議事録に記されております。
当学会は、日本脳炎ワクチンの必要性を認識しつつも、接種回数が少なくかつその効果が担保されるのであれば、偶発的なものを含め予防接種に伴うことがあり得るとされる事故を少しでも回避する意味で、3期廃止に必ずしも反対意見を述べるものでありませんが、現段階でこれについて決定を下すことは早計であると考え、以下の点について科学的議論を深めた上で最終判断をされることを要望します。
1. 3期接種の有無による抗体の維持、ブースター効果の有無の影響などについて、ワクチン接種群、被接種群における比較データーの明示
2. 3期接種廃止は現行のマウス脳由来ワクチンによる方式に基づいた提案であるが、導入が期待されているベロ細胞由来ワクチンにおいて、共通する問題であるか否かの明示。すなわち現行の3期廃止案はマウス脳由来ワクチンのみの問題であるのか、ベロ細胞由来ワクチンにおいても同じ問題であるか否かの明示
3. 基礎免疫接種者つまり第1期日本脳炎ワクチン接種者、第2期日本脳炎ワクチン接種者の接種率を高く維持するための方策の明示

以上、日本小児科学会は、我が国における重要な課題である日本脳炎対策として提言されたワクチン接種スケジュールの変更案に対して、上記4点を検討された上で判断されることを要望します。

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