各種活動

 

(登録:2005.06.30)

 

平成17年6月26日

厚生労働省 医薬食品局
審査管理課長 川原 章 殿

社団法人日本小児科学会
会長 衞藤 義勝

インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの早期承認に関する要望書


 Hib感染症は小児にとって国内外において比較的発生数の多い小児感染症の一つであり、中でもHib髄膜炎および敗血症は重篤な疾患として小児の健康上大きな問題であります。しかし本感染症は海外においてワクチンが開発実用化されており、ワクチンによる予防可能な疾患となってきております。諸外国においてはHibワクチンを導入する国が増加しており、導入した国ではHib感染症は稀な疾患となってきております。
 一方、わが国ではHibに関する疫学データーが整い、ワクチンに関する治験も終了しているにもかかわらず、未だHibワクチンが使用できない状況にあり、毎年5歳未満人口10万人あたり少なくとも8.6~8.9人、すなわち年間500人以上の子どもたちが自然感染としてのHib髄膜炎に罹患しています。抗菌剤による治療にもかかわらず、これらの患児のうち約5%(毎年25人以上)が死亡し、約25%(毎年125人以上)に永続的な神経学的後遺症が残っております。Hib髄膜炎は一度罹患すると予後不良の経過をとる割合が高く、抗菌剤が有効であっても発症後の治療には限界があり、罹患前の予防の重要性が強調されるところです。近年ではさらに、抗菌剤に対するHibの耐性化が急速に進展してきており、Hib感染症が更に難治化する傾向にあります。また、Hibは飛沫感染により伝播することから、早期保育など乳幼児における集団生活機会の増加により、小児がHib感染症に遭遇する機会が増加してきており、感染者の増加が危惧されております。
 このようなHib髄膜炎の現況を鑑みますと、小児の健康を守る立場として、当学会はHibワクチンによる感染予防が我が国においても可能となる時が一刻も早く来ることを強く望んでおります。
 Hibワクチンは1980年代後半から海外において広く使われ始め、既に約20年間の使用実績があります。WHOは本ワクチンの有効性と安全性を高く評価し、1998年に世界中の全ての国に対してHibワクチンを定期接種に組み込むことを推奨しております。その結果、1998年以降、世界各国おいて定期接種化が進み、現在ではアジアやアフリカの国々を含む100カ国以上で広く使用されております。またHibワクチンを導入した国々では、明らかにHib感染症が激減しております。
海外での長年にわたる、そして多くの国々での使用実績、および国内での治験成績から、Hibワクチンの有効性と安全性は現在国内外で使用されているワクチンと比較して遜色のないことが明らかであり、当学会はHibワクチンを安全で優れたワクチンであると評価しております。また、本ワクチンはその製造過程でウシ由来成分が使用されていることからこれに伴うプリオン伝搬の問題が極めて稀ながら理論上のリスクとして他ワクチンと同様にあること、厚労省ワクチン問題検討会に於いて参考人である研究者よりHibワクチンに含まれるエンドトキシン量がDPTワクチン等よりも多かったとするデーターを発表したことなどについては当学会は承知しておりますが、現在の国内小児がおかれているHib感染症のリスクと、プリオン伝搬あるいはエンドトキシンが含まれることによって生ずるかもしれない理論上の稀なリスク、そしてワクチンによって受けるベネフィットを勘案すれば、Hibワクチンの使用によって、小児の受ける利益は遙かに高いものであると考えております。
 しかしながら、我が国においてワクチン関連企業による使用認可に関する申請が、国に対してなされてから既に2年以上が経過しているにもかかわらず、その理由が明確ではないまま審査が遅々として進んでいない状況にあると聞き及んでおります。依然Hib感染症が日本に住む小児に与えている健康障害の存在、WHOによるHibワクチン定期接種化の推奨、海外における同ワクチンの使用実績および国内治験成績などから、わが国においても小児に対してHibワクチンが速やかに使用出来るようになる事は、小児の健康を守ろうとする当学会の強い願いであります。一方このままの状態が続き本ワクチンの使用機会を逃すことが今後もさらに続くようでは、新たな社会問題となることも危惧されます。
わが国においてHib感染による健康被害がこれ以上存続しないよう、日本小児科学会はHibワクチンの導入に向けて迅速な審査が執り行われることをここに要望します。

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