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(登録:2005.09.26)

 

予防接種(日本脳炎ワクチン、麻疹ワクチン、風疹ワクチン)の変更およびそれに関連する麻疹、風疹ワクチン勧奨と接種控えの問題について


 予防接種法施行令の一部を改正する政令、予防接種法施行規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令が、平成17年7月29日に厚生労働省から公布されました。

 主な改正点は
1)平成17年7月29日より、日本脳炎ワクチンの定期接種第3期の中止
2)平成18年4月1日より麻疹ワクチン、風疹ワクチンの接種方法、接種スケジュールの変更(2回接種法の導入、MR混合ワクチンの採用)
です。

 麻疹、風疹の接種は、1期、2期の2回接種となり、いずれも麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)のみが使用されることになります。
 1期の接種期間は「生後12月から生後24月に至るまでの間にある者(すなわち1歳児)」
 2期の接種期間は「5歳以上7歳未満の者であって、小学校就学の始期に達する日の1年前の日から当該始期に達する日の前日までの間にある者(すなわち小学校入学前年度の1年間(4/1~3/31))」となります。

 2期のMRワクチン接種を受けられるのは、現時点では1期でMRワクチンを受けた者(すなわち新制度下での1期目の接種を受けた者)であることが原則の考え方となりますが(*)、今後、その安全性・有効性が確認されれば、麻疹単味ワクチン、風疹単味ワクチン既接種者への2期のMRワクチン接種の導入が予定されています(**)。
 なおそれまでに「麻疹ワクチン、風疹ワクチンのどちらも未接種」かつ「麻疹、風疹のどちらも未罹患」の者は2期の対象年齢に1回目の接種として受けることができます。

 「麻疹ワクチンまたは風疹ワクチンのどちらかを接種した者」は、定期接種として、他方のワクチンを受けることができない、との経過措置があります(***)。
 また「麻疹または風疹にかかった者」は、定期接種として、他方のワクチンを受けることができないことも明記されています。これについては、今回の改正によるものではなく、予防接種法施行令第1条の2に既に記載されている「当該疾病にかかっている者又はかかったことのある者(インフルエンザにあっては、インフルエンザにかかったことのある者を除く。)その他厚生労働省令で定める者を除く。」ことによるものである、と説明されています。
 これらの対象者には、任意接種の枠組みで、自治体の公費負担で受けられるようにとの自治体への要請(通知)が厚生労働省結核感染症課より出されています。この任意接種によって万一の健康被害が生じた場合、医薬品医療機器総合機構法に基づいて被害救済がなされることになり、担当接種医については故意または重大な過失がない限りその責任を問われるものではありません。

 これまでに麻疹については1歳のお誕生日をすぎたらなるべく早く麻疹ワクチン接種を(生後12~15ヶ月を標準に)、そして麻疹ワクチンが終わったらそのあとには風疹ワクチンを、というキャンペーンを各方面で熱心に実施して頂いているところです。その効果は最近の麻疹罹患者の著しい減少として現れています(国立感染症研究感染症情報センターホームページ)。麻疹・風疹対策の基本は、幼児早期でのワクチン接種率を高めることであり、これによりこの年齢層の罹患者数を抑えることが先ず第一であることには変わりありません。
 従って平成18年4月1日からの制度改正までは、これまで通り、その間の対象者には、速やかに接種をすすめることが必要です。ことにこれまでに未接種となっている対象者や、平成18年4月1日以降で2歳以上になってしまう子どもたちには、麻疹・風疹の早期予防として、平成18年3月31日までに麻疹、風疹の単味ワクチンをそれぞれ接種しておくべきと考えられます。
 今単味ワクチンの接種を受けてしまうと2期のMRが受けられなくなる、またまもなくMRが実施になるので今2回を接種する必要はなく4月まで接種を控えてはどうか、という考えもあるようですが、現時点で麻疹風疹ワクチンの接種を控えることは、両疾患に対する感受性者が増加することであり、疾患予防の観点からは勧められません。ただし、3月になり4週間間隔の生ワクチンをそれぞれ2回接種する時間がなくなった時には、流行状況などをみながら4月のMR出現を待つのはやむを得ないことと考えられます。

 この時に問題になるのが、(*)2期のMRワクチン接種を受けられるのは、1期でMRワクチンを受けた者(すなわち新制度下での1期目の接種を受けた者)が原則であること、そして(***)麻疹ワクチンまたは風疹ワクチンのどちらかを接種した者は、定期接種として他方のワクチンを受けることができない、との経過措置ですが、これについては厚生労働省による研究班を立ち上げ、なるべく早く単味麻疹、および単味風疹ワクチン接種者へのMRワクチン接種が問題ないことを確認しようとする計画が動いています(**)。これらの研究の結果、この方式による効果と安全性が明らかになれば、経過措置は速やかに外されることが厚生労働省結核感染症課より言明されているので、平成18年3月末までにそれぞれのワクチン接種を受けた人が2期接種の対象年齢になった時にMRワクチン接種ができなくなる可能性は極めて低く、将来の2期接種を考慮して現時点での単独ワクチン接種を控えることは得策ではないと思われます。
 なおこの研究について日本小児科学会予防接種感染対策委員会は全面的に協力する姿勢を表明しています。

 今回の予防接種の変更によって、麻疹・風疹ワクチンの2回接種方式およびMRワクチンの導入が図られたことは高く評価されますが、その詳細については日本小児科学会の意見が反映されていない部分もあり、また実施にあたっての問題点が各方面から指摘されているところです。
 日本小児科学会予防接種感染対策委員会では、麻疹および先天性風疹症候群の制圧(elimination)に向けて、より良い方法への改善について今後も提言を続けて行きますので、会員のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

参考資料:
麻疹および風疹定期予防接種新制度の概要(平成18年4月1日施行)(PDF)
平成18年4月1日からの予防接種スケジュール表(PDF)
(資料作成:国立感染症研究所感染症情報センター)

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