各種活動

 

(登録:2006.07.12)

 

麻疹サーベイランス強化(全数把握)に関する要望

平成18年7月5日


厚生労働省健康局結核感染症課
課長 塚原 太郎 殿

社団法人日本小児科学会
会長 別所 文雄


 麻疹対策は現在世界的規模で取り組まれておりますが、我が国においても1歳児に対する麻疹ワクチン接種率の向上を図ることによって、数年前までは年間推計20~30万人の発生があったものが、平成17年には年間報告数が545人(推計5000人前後)にまで減少したことは、大変喜ばしいことです。さらに平成18年4月1日より法改正により麻疹、風疹の定期予防接種として、MRワクチンによる2回接種法の導入を行い、追って政令附則第2条の削除を行ったなどは、我が国における麻疹及び風疹対策の強化として大いに歓迎すべきことであることは、これまでにも表明してきたところです。
 しかしこれで一気に疾患の排除(elimination)にまですすむわけではなく、残された感受性者の間での散発的発生、ワクチン接種者の間での免疫獲得不十分あるいは減衰者(secondary vaccine failureなど)における集団発生、そしてこれらによる感染の循環が当面続くことは、これまでにも海外において経験されているところです。したがってわが国においてはその対応策としてまずサーベイランスを強化し、発生状況を正しく把握し、適切に速やかに感染拡大を予防するための対策をとることが重要であると思われます。
 今回、茨城県南部、千葉県等で麻疹の集団発生が見られていることは、まさにこれらを示すものと考えられ、適切かつ迅速な対応が望まれるところであります。
 現在の我が国の麻疹のサーベイランスは、全国約3000カ所の小児科医(小児科標榜医療機関)が定点として協力しておりますが、最近のように年間数千例規模になってくると、地域的なアウトブレイクやその波及および拡大については定点のみからの報告では、その詳細な状況の把握は不可能です。茨城県南部、千葉県における麻疹の流行的発生も、全体から見れば少数であり、定点からの報告ではその状況は把握できていません。さらに今回の流行からその後の感染の波及の有無を知ろうとしても、定点のみからの報告では把握ができず、一定規模になって初めて検知できることになり、結果として対策の遅れが生ずることが危惧されます。従って今後の我が国では麻疹のサーベイランスについては、その流行や発生状況の詳細を把握し、効果的な対策を講じるために、これまでの定点報告から全数報告に切り替えて強化する必要があります。今回の茨城県南部・千葉県における麻疹のアウトブレイクは、そのことを如実に示しているものと考えられます。
 我が国が属するWHO西太平洋地域(WPRO)では、2012年を麻疹排除(elimination)の目標としていますが、現在の定点報告では少数小規模発生の把握が出来ず、真の排除が達成されているかどうかの確認も出来ず、また発生の確認が遅れれば対応もさらに遅れ、設定されたeliminationの目標からわが国が遠のくことが危惧されるところです。
 日本の麻疹対策のステージがcontrol phase(コントロール期)からoutbreak prevention phase(発生予防期)に変わりつつある今、以上の点から麻疹対策強化に必須の事として、麻疹サーベイランスの強化、すなわち麻疹については全数把握を行うことを可及的速やかに実現していただくよう強く要望するものであります。

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