各種活動

 

(登録:2008.8.1)

 

平成20年7月24日

厚生労働省健康局結核感染症課
課長 梅田 珠美 殿

社団法人日本小児科学会
会長 横田 俊平

 最近日本小児科学会が得た情報によれば、ベロ細胞由来日本脳炎ワクチンの導入と実施が来年度早期に見込まれていること、b型インフルエンザ菌(H. influenzae:Hib)ワクチンの導入が近々に実現すること、厚生労働省予防接種検討会(加藤達夫座長)が近々開催されるということです。
 日本小児科学会はこれまでにも、予防接種に関する要望書を厚生労働省に提出し、重要事項に関して検討頂いております。その中には既に要望を受け入れて頂いている事項もあり、感謝いたします。一方、未だ実現に至っていない事項もあり、近々予防接種検討会が開かれるということを機会に、以下の事項について改めて要望いたします。また、これに関連して新たな提案を述べ、予防接種検討会において議論して頂くことを強く要望します。

  1. 日本脳炎
     日本脳炎ワクチンについては、国による定期接種勧奨中止の後、日本小児科学会としての見解、要望などをこれまでに提出してきております(直近は平成18年7月5日)。ベロ細胞由来の日本脳炎ワクチンによる日本脳炎ワクチンの定期接種が再開されることは、わが国における日本脳炎対策の必要性から強く期待していたものであり、改めて歓迎するものであります。しかし国による定期接種勧奨中止の決定は、事実上定期接種の中止であり、生産量の低下も相まって一部での強い希望者に対する接種が少数行われていたにすぎません。多くの定期接種対象者は、定期接種を受ける機会を失したままになっております。
     仮に来年4月に定期接種が再開されたとしても、予防接種法の規定上、その時点で定期接種年齢を超えた者は、1期、2期接種いずれも定期接種の対象とはならず、定期としての接種機会を失したままになります。したがって国による接種勧奨中止のために感受性者として残ることになり、国民に対する予防機会の提供という感染症に関する公衆衛生対策の観点から著しく外れることになります。
     これに対しては経過措置等で、本来は定期接種として行われていた者に対して定期接種としての接種機会を設置し、感染の可能性を減じておくことを強く要望します。
     
  2. 百日咳ワクチン
     百日咳につきましては、これまでの乳幼児疾患から次第に高年齢での発症となり、近年では大学生での集団発生など、社会的に問題にもなってきております。成人での慢性呼吸器疾患あるいは重症化することのみならず、新生児早期乳児などのハイリスク感受性者に対して感染源となり、院内感染、家族内感染など危惧されているところです。これについては、日本小児科学会は平成20年3月23日「大学生などにおける百日咳流行についての注意喚起」としてホームページに掲載すると共に全国医学部および看護系大学、専門学校等に手紙を送付し注意喚起を行い、関連学会などにも呼びかけているところです。
     米国では同様の現象を既に経験してきており、その対策として、11-12歳におけるジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン(Tdap)の接種を勧奨しています。DTPは、接種率の低い国では従来の乳幼児の感染症として、接種率の高い国では思春期および成人年齢での疾患としての新たな問題が、国際的に生じてきております。
     わが国においては乳幼児の接種率は良好で、疾患の発生もかなりコントロールされていると言えますが、思春期以降の新たな問題に対する解決策としてこれまでのDTII期接種に百日咳を加えること、さらに成人予防接種の考え方の導入などについて委員会で検討されることを強く要望します。
     
  3. Hibワクチン、水痘ワクチン
     Hibワクチンの早期承認について平成17年6月26日、水痘ワクチンの定期接種化について平成17年7月24日に、それぞれ要望書を提出しております。Hibについては、薬事法上の認可がおり、現在製品として臨床現場への登場が待たれているところですが、国際的には公衆衛生上重要なワクチンとして位置づけられており、多くの国で定期接種並みの導入が行われております。
     水痘ワクチンには、世界に先駆けてわが国において開発されたワクチンで、世界77ヶ国で採用され、米国、イタリア、フランス等では定期接種並みの扱いになっております。一方わが国では、これまでの予防接種検討会で定期接種としての導入を検討されてきておりますが、依然任意接種の扱いになっており、接種率は35%程度であり、わが国の水痘の疫学状況には全く変化が見られておりません。また最近の厚生科学研究(主任研究者・岡部信彦)においても、免疫異常を伴わない入院例、重症例が少なからずあることが報告されています。
     
  4. 定期接種の類型について
     現在の定期接種は1類疾病、2類疾病と分けられており、2類疾病は高齢者のインフルエンザのみなっております。この類型化を議論した時の予防接種検討会(神谷齊座長)においては、高齢者のインフルエンザと共に、水痘、ムンプス、Hibなどについては、1類より勧奨の程度を緩めた2類疾病として定期接種にすることが討議されておりますが、インフルエンザを除いては将来の問題として、残されそのままとなっております。
     日本脳炎につきましても、これまでの予防接種検討会(加藤達夫座長)、あるいは日本脳炎に関する専門家会議(岡部信彦座長)などで、結論は得られておりませんが2類相当疾患が妥当ではないかとの議論も行われております。
     世界では感染症の予防について新たなワクチンの開発導入が進んできております。わが国においてHibワクチンの導入、水痘ワクチン等の接種の考え方に関する見直しが必要と考えられる中、これら類型化および予防接種費用の負担などの問題点についても、この機会に議論を尽くされることを強く要望します。

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