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学会の活動

早期の定期予防接種化に関する要望書

2025年10月2日

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厚生労働大臣
福岡 資麿 殿

日本小児医療保健協議会

公益社団法人日本小児科学会 会長 滝田 順子
公益社団法人日本小児科医会 会長 伊藤 隆一
公益社団法人日本小児保健協会 会長 山縣 然太朗
一般社団法人日本小児期外科系関連学会協議会 会長 松藤 凡

 わが国では予防接種の副反応疑いによる健康被害を背景に、世界保健機関(World Health Organization: WHO)が接種を推奨しているワクチンが、定期接種化されていない、あるいは導入されていない状況(いわゆる、ワクチン・ギャップ)が続いていました。2010年以降は、Hib、肺炎球菌、水痘、B型肝炎、ロタウイルスワクチンの定期接種化が進むなど、ワクチン・ギャップは解消に向かっています。しかし、わが国では以下の4種類のワクチンは任意接種のため、接種する場合の費用負担も大きく、接種は進んでいません。日本小児医療保健協議会はこれらのワクチンについて早期の定期接種化を要望します。

・RSウイルスワクチン・抗体製剤
・おたふくかぜワクチン
・3種混合ワクチン(就学期、2期)の追加接種
・HPVワクチンの男性接種

1)RSウイルスワクチン・抗体製剤

 RSウイルスは生後2歳までにほぼ全ての児が感染し、基礎疾患を持つ児において重症化リスクが高いため、わが国では2002年から抗RSウイルスヒトモノクロナール抗体製剤が保険適用を受け、その有効性が明らかとなっています。その一方で、わが国における2歳未満の医療機関受診データ(2017〜2018年)の解析において、入院患者の9割が重症化リスクのない児であり、推定患者数は年間12万人程度と、健常児におけるRSウイルスの疾病負荷の高さが明らかとなりました1)。  

 わが国では2024年に発売された、長時間作用型抗RSウイルスヒトモノクロナール抗体製剤やRSウイルス母子免疫ワクチンが欧州・南北米諸国を中心に国の予防接種スケジュールに導入され、その有効性・安全性に関するデータが蓄積されつつあります2)

この様な状況下、日本小児科学会は令和7年4月3日に、すべての新生児や乳児のRSウイルス感染症の予防戦略として「抗RSウイルスヒトモノクロナール抗体製剤及びRSウイルス母子免疫ワクチンを広く提供するための体制整備に関する要望書」を提出しました3)

2)おたふくかぜワクチン

 おたふくかぜワクチンは副反応である無菌性髄膜炎が注目を集め、定期接種化されていません。そのため接種率が流行を防ぐレベルには至らず、現在も周期的な流行を繰り返しています。一方、ムンプスは合併症として、無菌性髄膜炎(1〜10%)や精巣炎(20〜40%、ただし思春期以降の集団)などが知られていますが、脳炎(0.02〜0.3%)や難聴(0.01〜0.5%)の場合は後遺症を残すことが問題となっています4。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の全国調査(2015〜2016年)では、359名のムンプス難聴患者の発症があり、うち15名は両側高度難聴、290名が一側重度難聴の後遺症の残存が明らかとなりました5。現在、日本以外の高所得国では、おたふくかぜワクチンは定期接種に導入され、2023年時点において124か国で導入されています6。これらムンプスの疾患特性から、次の大規模な全国流行が発生する前に、早期の定期接種化を要望します。

3)3種混合ワクチン(以下、DPT)(就学前、2期)の追加接種

 百日咳は感染力の強い疾患であり、特に生後6か月未満の乳児で重症化すること、現在の定期接種スケジュールでは、就学期以降の抗百日咳抗体の低下により、発症予防と感染拡大のコントロールが困難であることが知られています7。また、2020年の新型コロナウイルス感染症流行による感染対策の強化により、報告数の減少を認めていましたが、2024年から報告数の増加を認めるだけでなく、マクロライド耐性菌株の増加、乳児の死亡例も報告されています8。以前から日本小児科学会では、就学前(5〜6歳)でのDPTの任意接種、2期(11〜12歳)DT定期接種の代わりにDPTを任意接種する考え方を示してきました9。特に5種混合ワクチン接種前の生後2か月未満の乳児における感染機会の減少のためにも、DPT(就学前、2期)の追加接種に対する早期の定期接種化を要望します。

4)HPVワクチンの男性接種

 HPVは子宮頸がん以外に、肛門がん、中咽頭がん、陰茎がんなどの原因になることが知られており、HPVは63〜91%に検出されます10。わが国の死亡数(2023年)は、子宮頸がん2,949名、肛門がん569名、中咽頭がん1,290名、陰茎がん165名であり、男性への定期接種拡大により、これらのがん患者の減少が期待されます11。現在、日本以外のG7諸国ではHPVワクチンの男女に対する定期接種が導入され、世界的にも81か国で導入されています12。性別に関係のないワクチン接種機会の提供や、HPVワクチンの性感染症としての尖圭コンジローマ予防効果の観点からも、男性への早期の定期接種化を要望します。

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