demo_shojiki
そのけいれん、本当に止まっていますか?
JPLSコース当日は、一次診療の場で「防ぎうる心停止」に対応するため、ABCDEに着目した対応を体験した。小児の救急診療においては、熱性けいれんに代表されるDの異常への対応は大きな部分を占める。また、重症度も帰宅可能なものから一刻も早い小児集中治療室への転送が必要なものまで幅が広く、理解を深める価値のある分野である。
▼ けいれん重積時のABCDE
けいれんの持続を直接的に評価できるバイタルサインはD(Disability:神経)で、コースで使用したAVPUスケールの他に、年齢に応じたJCSやGCSがある。瞳孔径の大きさの変化や、左右差、対光反射も用いて評価する。
Dの異常がある際は、特にA(Airway:気道)の確保に注意を払わなければならない。これは舌根沈下や咽頭反射の消失など気道の保護が難しくなる事象が発生するためである。 けいれん中は有効な自己換気が難しく、B(Breathing:呼吸)にも異常が発生するため、補助換気を行うとともにSpO2値の変動や換気に伴う胸郭の動きに注意を要する。
C(Circulation:循環)については心拍数、脈の触知、血圧、皮膚の色調・温度、毛細血管再充満時間(CRT)で評価を行うが、一般的にけいれん中は心拍数、血圧は上昇傾向にある。心拍数や血圧が低下している際は、心停止が直前まで切迫している可能性がある。またけいれん発作と見間違いを起こす発作の代表例として心室細動があるため、頓挫していないけいれんを見つけた際は循環の評価を忘れてはならない。
▼ けいれん重積をなぜ防がなければならないのか?1,2)
小児のけいれん重積発作において、持続時間は「5分以内に頓挫する」か「30分以上持続する」かの二峰性を示すとされている。けいれんが10~15分以上持続した場合、自然頓挫が期待できず、持続時間が長くなると薬剤抵抗性となるため、治療の介入は早い方が良い。
けいれん重積に対応する薬物療法については、日本小児神経学会が編集している、小児てんかん重積状態・けいれん重積状態 治療ガイドライン2023(https://www.childneuro.jp/modules/about/index.php?content_id=36で閲覧可能)が詳述しているので各施設の医療資源によって準備を整えることが望ましい。
けいれん重積による脳損傷については動物実験の結果30~45分以上持続した場合に長期的な後遺障害を残す可能性があるという論拠が一つの目安として広く知られている。また、けいれん重積の予後を規定する因子は原因疾患や年齢、けいれんの持続時間など複数の因子が関連しているとする研究もある。
けいれんの持続時間は医療者がコントロールできるものであり、診療の質として重要な指標となりうる。また、前述のようにけいれん重積は意識以外のバイタルサインにも影響するため可及的速やかに頓挫させることが望ましい。
▼ 非けいれん性てんかん重積状態(NCSE: Nonconvulsive status epilepticus)とは?2,3)
NCSEはけいれんを伴わないものの脳波上はけいれん発作を起こしている状態のことである。2000年代初頭から、原因不明の意識障害や意識変容の患者に対して持続脳波モニタリングをすることで検出されるようになり、急速に認識されてきた概念である。
けいれん重積の診療においては、持続する意識障害の原因が ・NCSE ・抗けいれん薬の鎮静作用 ・けいれん頓挫後のpost ictal state いずれによるものかの鑑別が難しい。
しかし、NCSEは脳卒中や頭部外傷、中枢神経感染症、敗血症、代謝性疾患、蘇生後脳症など重篤な患者で見られることが多く、見逃してはならない。NCSEは一見明らかな症状がないように見えても意識の変容、顔面や四肢のミオクローヌス、眼振などを呈していることがある。また、前項でも紹介したABCDEの変化も指標の一つとなり、けいれんが頓挫したのに、頻脈や高血圧が続いたままの状態であれば注意が必要である。
最終的な判断には脳波、特に持続脳波モニタリングが必要であり、意識の回復が不十分な患児には積極的に活用してもらいたい。
▼ 何をしなければならないのか?
一次診療の場でしなければならないことは、第一にABCに注意した上での抗けいれん薬の投与で第二に安全に配慮しながらの高次医療機関への搬送である。集中治療にあたる高次医療機関が必要としている情報を過不足なく、最短で伝えるために事前に情報共有のテンプレートを作成しておくのも有用かもしれない。
初期対応での薬剤投与に関しては前述したように小児けいれん重積治療ガイドライン1)を参照していただきたい。
高次医療機関での治療については、原因疾患にもよるが、同じく日本小児神経学会が編集している小児急性脳炎診療ガイドライン20234)や日本小児集中治療研究会が編集している小児救命救急・ICUピックアップ③神経集中治療3)が詳述しているので参考にしていただきたい。
▼ 参考文献


閉じる