公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY

挨拶

日本小児科学会小児救急蘇生シンポジウム(第11回日本蘇生科学シンポジウム)の開催にあたり
 

 このたび、日本小児科学会小児救急蘇生シンポジウムの会長を拝命し、2018年4月19日(木曜日)に、福岡国際会議場で開催させていただくこととなりました。また、このシンポジウムは、日本蘇生協議会(Japan Resuscitation Council:JRC)と共催となります。
 日本小児科学会はJRCの主要な構成学会として、蘇生ガイドライン作成等で貢献して参りました。今回、日本小児科学会として初めて、第11回日本蘇生科学シンポジウム(Japan Resuscitation Science Symposium:J-ReSS)を開催致します。J-ReSSは、わが国における蘇生科学の推進のため、アメリカ心臓協会(AHA)が開催するAHA-ReSSに準じて、2008年に第1回J-ReSSがこの福岡の地で開催されました。その後、日本蘇生学会を始め、日本循環器学会・日本麻酔科学会・日本救急医学会・日本集中治療医学会、日本臨床救急医学会、そして日本周産期・新生児医学会が主催されました。この様な冠たる学会が開催したシンポジウムを、またこの福岡の地で開催することができ、非常に嬉しく思います。
 今回のテーマは、「蘇生科学:学術分野を越えて、わが国の“未来”を護るために 〜ガイドライン2020へ向けて〜」です。子どもの蘇生事象は、成人に比べ稀であるが故、様々な課題が残されています。子どもは、わが国の未来です。かけがいのない子どもたちの命を護ることは、われわれ小児科医を始めとする社会の使命でもあります。“子どもたちを護る”というスローガンが、日本小児科学会からの蘇生科学を通じた発信のもと、JRCの共通課題として認識されることが最大の目標です。
 特別講演では、日本小児科学会の前会長である五十嵐隆先生をお招きし、本学会が小児科医を対象とした救急蘇生プログラムである「小児診療初期対応コース」が開発された経緯を、わが国の小児科医が直面する課題と共にご講演を頂きます。また、シンポジウムでは、心停止からいかに中枢神経機能を護るかを、蘇生科学のトピックスから議論します。また、社会的に注目されている学校での心臓突然死からいかに子どもたちを護るか、さらには、日本小児科学会が推し進めるチャイルド・デス・レビュー制度を発展させ、防ぎうる死亡からいかに子どもたちを護るかを、それぞれの分野のエキスパートたちをお招きして議論します。
 九州の窓口でもあり、世界の窓口でもあるこの福岡に、是非お越しいただき、最新の蘇生科学について学んで頂きたいと思います。また、学術的な楽しみ以外にも、玄界灘の海の幸を始めとする美味しい食べ物がみなさまをお待ちしております。是非、多くの職種の方々にお集まりいただき、蘇生という点から、子どもの未来について一緒に考えていただきたいと思います。

日本小児科学会小児救急蘇生シンポジウム 会長 廣瀬 伸一

第11回J-ReSS開催にあたり

 第11回J-ReSS(Japan Resuscitation Science Symposium、日本蘇生科学シンポジウム)は、日本小児科学会小児救急蘇生シンポジウムとして廣瀬伸一会長(第121回日本小児科学会学術集会会頭、福岡大学医学部小児科 主任教授)により福岡にて開催されます。子どもは、わが国の未来で、“子どもたちを護る”というスローガンのもとに「蘇生科学:学術分野を越えて, わが国の”未来”を護るために」というテーマで開催されます。プログラムでは、特別講演と、3つのシンポジウムが企画され、小児から成人までの心停止の予防から心拍再開後の取り組みまで網羅されています。企画いただきました実行委員会の皆様方に深謝致します。
 国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation, ILCOR)がコンセンサス作成の方針をこれまでの5年毎の改訂から、重要なトピックについて連続した作成と公開へと変更しました。今後の新しいガイドラインへの展開や課題についてアジアとの連携を含め検討すべき大事な年であり、すでにBLSの領域で成人と小児に関する国際コンセンサス(CoSTR)が発表されました。今回の内容はガイドラインでの改訂までは至りませんが、今後様々な領域からのCoSTRが発表されていきますので目が離せません。本会はその意味で大変重要な学術集会となります。JRCのILCORへの参画は、アジア蘇生協議会(RCA)が2005年設立され、ILCOR加盟したことにより可能となりました。RCAでは各領域の作業部会が設立され、アジアでの共通のガイドライン作りが開始されました。すでに「RCA Adult BLS algorithm for lay rescuers」が発表されています。JRCのホームページからご覧頂けます。アジアでの連携も今後の重要なテーマとなります。
 J-ReSSは2008年に第1回が福岡で開催され、第2回はI-ReSS(International-ReSS)として世界の蘇生の大家が一堂に会する機会に開催されました。2013年はアジア救急医学会が東京で開催された時、A-ReSS (Asian-ReSS)として開催され、国際的な評価も高まっています。今回は福岡で3度目のJ-ReSSとなります。JRC設立当初から小児科領域の先生方は国内のみならず、ILCORでの国際的な取り組みをリードされていましたので、日本小児科学会でのJ-ReSS開催はJRCにとっても待望のものでありました。J-ReSSが今後のJRCの国内外におけるさらなる進展の機会となり、わが国の蘇生科学の推進力となるよう期待致します。

一般社団法人日本蘇生協議会 代表理事
静岡県立総合病院 野々木 宏

第11回J-ReSSの開催にあたって

 日本蘇生協議会の構成団体の主催でJ-ReSSを開催して参りまして、今回は日本小児科学会にお世話になり、第11回目になりますのが感無量です。本会はあくまで、蘇生の分野の関係学会で日本蘇生協議会の会員になって頂いている学会に、持ち回りで開催して頂いて参りました。
 JRC Guidelinesを5年ごとに改訂して2005、2010、2015年度版と進みました。ILCORの作成するCoSTRをもとに、JRC Guidelinesは国内の諸学会、団体から150人以上の方々の協力で作成しています。各学会のご理解、ご協力により、広い分野からのup-to dateの蘇生の進歩も加えて国内に紹介できたのを誇りに思います。同時に構成学会、団体のたゆまぬご協力があってのことと有難く感謝致しております。ただ今、ガイドライン2020に向けて、JRC代表理事の野々木宏先生のもとで新企画を立ち上げ、既に熱心に作業が進んでおります。
 J-ReSSは日本蘇生協議会の第2の事業として始められました。急性心停止の蘇生率がなかなか改善されないことから、2003年にアメリカのAHAが新しい企画として、ReSS Symposiumを開催しました。これが大好評となって、AHAでは毎年ReSSを開催していますが、循環器の分野を超えた蘇生という観点になって、関連学会からの蘇生に対する関心が高くなり、多岐にわたる分野の参加者が増加してきました。さらに国際的なSymposiumとして高く評価されて海外から演題、参加者も増えてきました。
 日本でも、蘇生の演題を各分野から一堂に会して討論する場が望まれるようになってきたことから、日本蘇生協議会はこの点に着目して、J-ReSSの会を毎年開催することに致しました。J-ReSSはおかげさまで徐々に根付いて参りましたが、今回、日本小児科学会にご担当頂きこの会が開催できるのは、大変意義のあることになります。申すまでもなく小児の救急は死亡率も高く、適切な対応を素早く行うのが重要な点は、すでに言い尽くされていると思います。小児は大人の小型化ではなく、特殊な状況が多いと思います。ガイドラインにも成人とは分けて小児の部門が設けられています。温故知新な面と将来に向けてforwardな新知識を学ぶ場として有益な機会であります。これを契機に小児科医の中で蘇生に関心がさらに高まり、小児の救命率がより向上されてくることを期待致します。
 小児科医だけでなく成人の部門、さらに救急に携わる医師、看護師、救急救命士など、広い分野からの多数のご参加を心から歓迎致します。小児科学会の会で小児科医の先生方と同じ場で学ぶことは、小児の救急蘇生が発生した現場でより多くの方が共通の方法、知識のもとで蘇生を行うようになることから、この小児科主催の会がより学際的に貢献することになると信じております。
 今回のJ-ReSSが意義ある会になることを心から祈念致します。

一般社団法人 日本蘇生協議会
名誉会長 岡田 和夫