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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:25.1.23)
第129巻 第1号/令和7年1月1日
Vol.129, No.1, January 2025
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原 著 |
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村瀬 正彦,他 1 |
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清水 博之,他 8 |
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樋口 収,他 16 |
症例報告 |
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古谷 康介,他 26 |
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林谷 俊和,他 31 |
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伊良部 仁,他 38 |
短 報 |
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豊倉 いつみ,他 44 |
論 策 |
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久保田 恵巳,他 48 |
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地方会抄録(奈良・香川・山口・北海道・東海・中部)
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55 |
日本小児科学会小児救急・集中治療委員会 |
急性期の小児外来診療における診断エラー調査小委員会報告 |
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急性期の小児外来診療における診断エラーに関する実態調査
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84 |
日本小児科学会ダイバーシティ・キャリア形成委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合47 |
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95 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2024年66巻11月掲載分目次
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【原著】
■題名
新生児医療に関わる小児科医のシフト制勤務が医師の働き方改革の就業措置に及ぼす影響
■著者
昭和大学横浜市北部病院こどもセンター 村瀬 正彦 野口 悠太郎 氏家 岳斗 浅井 秀幸 井川 三緒 池田 裕一
■キーワード
医師の働き方改革, neonatal intensive care unit, シフト制勤務, 勤務間インターバル, 時間外勤務時間
■要旨
【背景】
2024年の「医師の働き方改革」の就業上の措置として,勤務間インターバル(work interval:WI)の確保と連続勤務時間(continuous working hours:CH),時間外労働時間(overtime workinghours:OH)の制限が開始した.新生児集中治療室に専従している小児科医(以下,新生児科医)のシフト制勤務の,就業上の措置への影響は明らかではない.
【目的】
新生児科医のシフト制勤務において就業上の措置の遵守を阻害する要因について明らかにすること.
【方法】
2021年4月から2022年の3月までの新生児科医を対象に調査した.小児科の専門研修を受けている医師を専攻医,専門研修を修了した医師をスタッフと表記した.WIとCH,OHに与える要因として,従事した医師の人数,入院数,NICUおよびGCUの病床稼働率,専攻医とスタッフの割合を選択した.
【結果】
CH超過とWI不履行の一人あたりの回数の中央値は,それぞれ月間0回および1回だった.WIの不履行の94%が夜勤者によるものだった.OHは,39.3時間だった.
WIの不履行月は,履行月と比較して有意に高いNICUの病床稼働率だった(p<0.01).スタッフと比較して専攻医,そして医師数が7人の時と比較して6人の時にOH不履行月が有意に多かった.また,OH不履行月は,履行月と比較しGCUの病床稼働率が高かった.
【考察】
WIは,NICUの病床稼働率が影響した.OHは,専攻医および勤務医師数,GCUの病床稼働率が影響した.
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【原著】
■題名
先天梅毒の診断における児RPR/母RPR(自動化法)比と児血清IgMの有用性
■著者
藤沢市民病院臨床検査科1),横浜市立大学附属市民総合医療センター感染制御部2),藤沢市民病院臨床検査室3),聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科4),東京科学大学生涯免疫医療実装講座5) 清水 博之1) 比嘉 令子2) 長原 慶典2) 枝松 清隆3) 川田 智子3) 森 雅亮4)5)
■キーワード
先天梅毒, 妊娠期梅毒, 非トレポネーマ脂質抗体, 梅毒トレポネーマ抗体, 自動化法
■要旨
近年,成人の梅毒患者の増加に伴い,妊娠期梅毒さらには先天梅毒も増加している.妊娠期梅毒患者が無治療で経過した場合,子宮内胎児死亡や流産に至ることも稀ではない.先天梅毒は適切に治療されれば,予防可能な周産期感染症であり,早期発見,早期治療が極めて重要である.妊娠期梅毒患者から出生した児に対し,適切な治療を施すために,母児の非トレポネーマ脂質抗体(RPR;rapid plasma reagin)を比較することが諸外国のガイドラインでも示され,先天梅毒の可能性が極めて高いと判断する基準として,倍数希釈法で児RPRが母RPRの4倍以上と示されている.しかし近年は変化をより鋭敏に把握できる自動化法が推奨されている.自験例の妊娠期梅毒患者18例を対象にして,分娩時の児RPR/母RPRを比較したところ,梅毒感染児2例は1.0倍および1.4倍であった.一方で非感染児16例は全例が母RPRより低値であった.また本邦における先天梅毒児の既報のまとめでは児RPR/母RPRは両群間で有意差を認めたものの,先天梅毒確定例においても中央値は1を超えなかった.同比が1を超えれば先天梅毒の可能性が高いが,1を超えなくても否定はできないと考えられた.さらに児血清IgMについても梅毒感染児と非感染児の両群間で有意差を認め,先天梅毒診断に有用と考えられた.
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【原著】
■題名
本邦における小児閉塞性睡眠時無呼吸診療の現状
■著者
厚生連高岡病院小児科1),国立病院機構福岡病院小児科2),山口小児クリニック3),福岡市立こども病院アレルギー・呼吸器科4),大阪母子医療センター呼吸器・アレルギー科5),東京女子医科大学附属足立医療センター周産期新生児診療部・新生児科6),富山大学医学部小児科7),一宮西病院小児科8) 樋口 収1) 若槻 雅敏2) 本村 知華子2) 今井 丈英3) 手塚 純一郎4) 錦戸 知喜5) 山田 洋輔6) 足立 雄一7) 杉山 剛8)
■キーワード
閉塞性睡眠時無呼吸, 全国調査, ポリソムノグラフィ, アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術
■要旨
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,小児の日常診療で遭遇する頻度の高い病態である.しかし,本邦では小児OSAに対する診療指針が作成されていない.今回我々は,本邦における小児OSA診療の現状と課題を明らかにするため,2021年9〜11月に小児科専門医研修施設の代表者472名および日本小児呼吸器学会会員850名を対象にインターネットを利用し,アンケートを実施した.1,322人中340人から回答を得た(回答率25.7%).回答から個人や施設の重複がないよう選出し,総合病院178施設を解析対象とした.
OSAが疑われる患者を小児科で診療している施設は91施設(51.1%)であり,107施設(60.1%)が小児の睡眠呼吸検査を実施していた.終夜酸素飽和度測定,簡易検査は双方とも66施設(37.1%),ポリソムノグラフィは42施設(23.6%)が実施していた.アデノイド増殖・口蓋扁桃肥大(ATH)が原因と考えられるOSAに対する手術適応の判定は,睡眠呼吸検査の結果以外にATHの程度,反復性扁桃炎や中耳炎の合併,睡眠時の動画を指標とし,総合的に判断している施設が多かった.手術の下限年齢の中央値は3歳であったが,0歳から6歳まで施設により異なっていた.
小児科医の間でもOSAの診療方針は異なり,施設間の小児医療環境に格差があることが明らかとなった.今後,診療指針の整備が必要と考えられた.
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【症例報告】
■題名
Jatene術後に川崎病を発症し冠動脈評価が困難であった完全大血管転位症
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 循環器科2) 古谷 康介1) 鈴木 知子1) 幡谷 浩史1) 前田 潤2) 三浦 大2)
■キーワード
川崎病, 完全大血管転位症, 先天性心疾患, 冠動脈, Zスコア
■要旨
Jatene術の成績向上により完全大血管転位症の長期生存率は90%を超え,遠隔期に川崎病を発症する報告が散見される.川崎病における冠動脈病変は主に経胸壁心臓超音波検査(TTE)で検査されるが,原疾患によっては評価が困難な場合がある.症例は,完全大血管転位症I型,Jatene術後の2歳男児で,発熱4日目に主要症状のすべてを認め川崎病と診断した.小林スコア8点,WBC 16,890/μL,好中球87.4%,CRP 29.1 mg/dLで,同日より免疫グロブリン2 g/kg静注とアスピリン30 mg/kg/dayの内服に加えてプレドニゾロン2 mg/kg/dayの投与を開始した.入院時,TTEによる冠動脈径は,右冠動脈近位部は2.1 mm(Zスコア+1.4),左前下行枝は1.7 mm(+0.4)であったが,前方の冠動脈洞に移植した冠動脈起始部の描出は困難であった.治療反応性は良好で,観察可能範囲内では冠動脈病変を認めず,第15病日に退院した.第35病日,第70病日のTTEでも,前方冠動脈起始部の描出は困難であったが,明らかな冠動脈病変はみられなかった.Jatene術後において,TTEでは冠動脈の十分な評価が困難な例があり,冠動脈径の推移のデータが不十分で,川崎病罹患時にZスコアによる評価が妥当か明らかでない.さらに,遠隔期の冠動脈狭窄・閉塞を回避するため,冠動脈瘤を発生させない入念な急性期管理が望まれる.
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【症例報告】
■題名
肺動脈絞扼術後に短期間で低酸素血症を呈した18トリソミー
■著者
兵庫県立こども病院循環器内科1),鳥取県立中央病院小児科2) 林谷 俊和1) 田中 敏克1) 稲瀬 広樹1) 飯田 智恵1) 広田 幸穂1) 三木 康暢1) 久保 慎吾1) 松岡 道生1) 亀井 直哉1) 小川 禎治1) 田村 明子2) 城戸 佐知子1)
■キーワード
18トリソミー, 肺動脈絞扼術, 低酸素血症, 弁膜症
■要旨
18トリソミーへの心臓外科手術は以前に比べて広く行われるようになりつつある.心室中隔欠損に対して肺動脈絞扼術を行った後,短期間で低酸素血症が進行し心内修復術を行った18トリソミーの児を経験した.症例は生後9か月,男児で出生後に18トリソミー,心室中隔欠損,動脈管開存と診断された.生後2か月で肺動脈絞扼術を行ったが,術後3か月で低酸素血症が進行した.心臓超音波検査および肺動脈造影で収縮期に肥厚した肺動脈弁尖が絞扼部に嵌入する所見を認め,絞扼部狭窄による肺血流低下が原因と考えた.生後9か月で肺動脈絞扼解除術,心室中隔欠損閉鎖術を行った.低酸素血症は消失し,術後4か月で自宅退院した.18トリソミーに特徴的な長い肺動脈弁弁尖が絞扼部と重なることでせん断応力(shear stress)が増大した結果,短期間で弁尖の内膜肥厚が進行し,肥厚した弁尖が絞扼部に嵌入することで低肺血流となったと考えられた.18トリソミーにおける姑息手術は生命予後の改善,自宅退院へ向けて有用であるが,その解剖学的特徴を踏まえた上での術前評価が重要であり,肺動脈絞扼術においては弁尖の長さや性状を評価することが望ましいと考えた.
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【症例報告】
■題名
難治性口腔内潰瘍を呈した抗NXP2抗体陽性若年性皮膚筋炎
■著者
東京科学大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野(小児科)1),同 生涯免疫難病学講座2),順天堂大学医学部小児科・思春期科3),松戸市立総合医療センター小児医療センター小児科4) 伊良部 仁1) 真保 麻実1) 山崎 晋2)3) 根本 千裕4) 平本 龍吾4) 森 雅亮2) 清水 正樹1)
■キーワード
若年性皮膚筋炎, 抗NXP2抗体, 口腔内潰瘍
■要旨
抗NXP2(nuclear matrix protein-2)抗体陽性若年性皮膚筋炎(JDM:juvenile dermatomyositis)は,高度の筋力低下や消化管病変を呈し,強力な抗炎症治療を要することが多い.今回我々は,嚥下障害を含めた著明な筋力低下と消化管出血,下腿浮腫のほかに,難治性口腔内潰瘍を呈した女子例を経験したので報告する.症例は14歳女子.両上肢・腰部痛,筋力低下,皮疹を呈し,抗NXP2抗体陽性JDMと診断された.プレドニゾロンおよびメトトレキサート(MTX:methotrexate)の併用療法で寛解に至ったが,PSL減量に伴い再燃し,嚥下障害を伴う著明な筋力低下,下腿の著明な浮腫,口唇,口腔内に多発するびらん・潰瘍が出現したため,当科へ紹介となった.メチルプレドニゾロンパルス療法,免疫グロブリン静注療法,タクロリムス,ヒドロキシクロロキンによる併用治療により,経過中消化管出血を伴ったものの,約1か月の経過で寛解した.以後は経過良好で,現在無投薬で寛解を維持している.JDMにおいて口腔内潰瘍の合併は稀であるが,その発症に留意する必要がある.抗NXP2抗体陽性JDMは,JDMの重症病態と関連し,早期診断と適切な治療介入が必須となる.JDMの約3割に認められることから,抗NXP2抗体の測定系の確立と保険収載を含めた検査体制の構築が望まれる.
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【短報】
■題名
急性弛緩性麻痺に関する全国実態の一次調査
■著者
神奈川県衛生研究所1),九州大学病院小児科2),自治医科大学放射線医学講座3),福岡歯科大学総合医学講座小児科学分野4),愛知医科大学小児科5),福岡市立こども病院小児神経科6) 豊倉 いつみ1) 佐野 貴子1) 櫻木 淳一1) チョン ピンフィー2) 森 墾3) 鳥巣 浩幸4) 奥村 彰久5) 吉良 龍太郎6) 多屋 馨子1)
■キーワード
急性弛緩性麻痺, 感染症発生動向調査, 急性弛緩性脊髄炎, エンテロウイルスD68, ポリオ
■要旨
急性弛緩性麻痺(AFP)は,2018年5月から感染症法上の5類感染症全数把握疾患となり,15歳未満のAFP症例を診断した医師は7日以内に保健所への届出が義務付けられた.2019年から2022年におけるAFP症例の保健所届出実態の把握を目的に,全国の小児神経専門医を対象に調査を実施した.145例のAFPが報告され,このうちの137例は保健所への届出対象症例であったが,保健所に届出をしたと回答があったのは,41例(30%)であった.調査結果から,当該疾患の保健所届出義務について,医師の認知が十分でない可能性が考えられ,AFPの迅速な探知と原因究明のためには当該疾患の発生届の引き続きの周知が望まれる.
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【論策】
■題名
定期接種における全国の広域化実態調査
■著者
日本小児保健協会予防接種・感染症委員会1),くぼたこどもクリニック2),福岡看護大学基礎・基礎看護部門3),岩手医科大学小児科学講座4),金沢市福祉健康局5),がん感染症センター東京都立病院機構都立駒込病院小児科6),国立成育医療研究センター小児内科系専門診療部感染症科7),同 看護部8),神奈川県衛生研究所9),聖学院大学人文学部子ども教育学科10),長野県諏訪保健所11),和洋女子大学看護学部看護学科12),札幌医科大学小児科学講座13) 久保田 恵巳1)2) 岡田 賢司1)3) 赤坂 真奈美1)4) 越田 理恵1)5) 城 青衣1)6) 庄司 健介1)7) 菅原 美絵1)8) 多屋 馨子1)9) 並木 由美江1)10) 三沢 あき子1)11) 渡邉 久美1)12) 津川 毅1)13)
■キーワード
定期予防接種, 広域化, 相互乗り入れ, 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律, 個別接種
■要旨
予防接種はかかりつけ医による個別接種が推奨されているにもかかわらず,かかりつけ医が予防接種対象者の住所地以外の市町村にある場合や,病気治療等で住所地以外の病院等に入院されている場合には,それらの医療機関では定期接種としての予防接種を受けることができない地域がある.我々は都道府県内での広域化がどの程度行われているかについて調査を行った.全国47都道府県の感染症対策,あるいは,保健福祉の管轄宛てに,調査用紙を2023年4月19日に一斉送付した.47都道府県から回答があり,46都道府県から個人情報が特定されない形での公表の同意を得た.37都道府県が完全広域化できている,5自治体が部分的に相互乗り入れができている,2自治体が状況の把握ができていない,2自治体が広域化または相互乗り入れは市町村によって異なると回答した.広域化できている自治体はすべて,A類疾病の定期接種が可能であった.接種対象者についても多くの自治体が厳しい制限を設けずに受け入れており,全国の約8割の都道府県で広域化の整備が進んでいることが明らかになった.定期接種実施要領や厚生労働省告示に居住地以外での接種の整備や広域的な連携が必要であることが明記されたり,各学会から広域化について要望が出されたりなど,定期接種広域化の必要性は広く認識されている.本論文が,いまだ広域化が整備されていない自治体が広域化を進めるにあたっての端緒となることを望む.
注釈:本論文では「自治体」と記載した場合は「都道府県自治体」を指し,「市町村自治体」は区別して記載する.
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