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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:23.3.20)
第127巻 第3号/令和5年3月1日
Vol.127, No.3, March 2023
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第125回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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横谷 進 401 |
日本新生児成育医学会推薦総説 |
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玉置 祥子,他 411 |
日本小児栄養消化器肝臓学会推薦総説 |
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超早期発症型炎症性腸疾患とmonogenic IBD
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石毛 崇,他 421 |
原 著 |
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関戸 雄貴,他 429 |
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松内 祥子,他 435 |
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杉山 みづき,他 441 |
症例報告 |
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谷口 智城,他 447 |
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立木 伸明,他 453 |
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板野 雅史,他 459 |
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辻 聡,他 464 |
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469 |
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470 |
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482 |
専門医にゅ〜す No. 20 |
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484 |
専門医にゅ〜す No. 21 |
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485 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 122 ウォーターサーバー後面の排水栓から排出した温水による熱傷
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486 |
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488 |
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No. 124 臍圧迫キットにより生じた皮膚びらん
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491 |
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No. 125 キッチンで受傷した熱湯による体幹・四肢熱傷 事例1
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493 |
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虐待による乳幼児頭部外傷(Abusive Head Trauma in Infants and Children)に対する日本小児科学会の見解
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498 |
日本小児科学会医療安全委員会主催 |
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第14回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)オンラインコースの報告
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508 |
日本小児科学会主催 |
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509 |
日本小児科学会小児救急委員会重篤小児患者搬送小委員会報告 |
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重篤小児患者の施設間搬送に関する多施設共同レジストリ―搬送熟練者と非熟練者における搬送の質の比較調査―
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510 |
日本小児科学会新生児委員会報告 |
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新型コロナウイルス感染妊婦から出生した新生児の診療・管理方法および社会的影響に関する調査
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519 |
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告 |
はじめの一本8 |
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530 |
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532 |
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534 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2022年64巻12月掲載分目次
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543 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2023年65巻1月掲載分目次
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544 |
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546 |
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547 |
【原著】
■題名
ディスレクシア解読指導アプリケーションによる音読困難の改善効果
■著者
国立成育医療研究センターこころの診療部 関戸 雄貴 小枝 達也
■キーワード
発達性ディスレクシア, 読字障害, 読字訓練, 解読指導アプリ
■要旨
【目的】ディスレクシアは,読字困難を特徴とする学習障害の一つで我々は専門外来を開設し,T式ひらがな音読支援による二段階方式の指導を採用し,第一段階の解読指導には音読指導アプリケーションを活用している.今回はそのアプリによる改善効果を検証する.
【方法】対象は2016年3月から2019年10月までに当センターのディスレクシア外来を受診した162名である.診断は特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドラインに依拠した.指導はT式ひらがな音読指導の理論と実践に基づいて行った.後方視的に初診時とアプリによる指導後の2回の音読検査が6か月以内に実施されているディスレクシアの小児を選定し対応のあるt検定にて指導の効果を検証した.指導中にADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)の薬物療法を開始した児は除いた.また,低学年群と高学年群の2群分け検証を行った.
【結果】対象は51名で平均の指導期間は2か月であった.音読時間では4つの音読検査すべてに改善が見られた.誤読数では単音と無意味語において改善が見られた.
【考察】音読指導アプリを用いた解読指導により,平仮名の音読スキルが全般的に改善した.特に単音の音読は音読時間も誤読数も正常範囲へと顕著に改善した.アプリを用いた指導は,ディスレクシアのある小児の音読の改善に有効である.
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【原著】
■題名
非侵襲的ヘモグロビン測定による2歳未満児の貧血スクリーニング
■著者
済生会山形済生病院小児科1),山形大学医学部小児科学講座2) 松内 祥子1) 佐々木 綾子2) 三條 右京1) 青木 倉揚1) 齋藤 恵美1) 赤羽 和博1) 北岡 佳苗2) 阿部 拓哉2) 五十嵐 丈人2) 安孫子 優2) 須藤 陽介2) 三井 哲夫2)
■キーワード
乳幼児, 鉄欠乏症, 鉄欠乏性貧血, パルスオキシメトリー
■要旨
乳幼児期の鉄欠乏症と鉄欠乏性貧血は精神運動発達に影響を及ぼすが,理学所見のみで貧血を疑うことは困難である.近年,パルスオキシメトリーの分光吸光度分析に基づく非侵襲的ヘモグロビン(Spectrophotometric hemoglobin,SpHb)が成人の周術期管理に応用されつつあるが,乳幼児での検討は十分ではない.本研究では2021年4月から2022年3月までに血液検査を行った生後1〜22か月の小児52例を対象とし,2歳未満児におけるSpHbの有用性を検討した.SpHbは血液検査と同時にRad-67™スポットチェック用パルスCOオキシメータで測定した.SpHbと静脈血総ヘモグロビン(Venous hemoglobin,vHb)は正の相関があり(r=0.698,p<0.001),平均はそれぞれ12.2±1.6,11.9±1.6 g/dLだった.Bland-Altman分析では両者の差の平均は−0.353±0.953 g/dLだった.貧血(vHb<10.5 mg/dL)を検出するSpHbのReceiver operating characteristic曲線下面積は0.936(95%信頼区間0.87〜1)であり,SpHbのカットオフ値を11.6 mg/dLとすると,感度83.3%,特異度87.5%となった.SpHbは乳幼児貧血の一次スクリーニングに応用できる可能性がある.
本論文は日児誌第128巻3号P519に著者訂正を掲載
http://www.jpeds.or.jp/modules/publications/index.php?content_id=71
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【原著】
■題名
障害児における日本版Wee FIM II®の有用性
■著者
昭和大学医学部リハビリテーション医学講座1),国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科2),同 整形外科3) 杉山 みづき1)2) 橋本 圭司1)3) 川手 信行1)
■キーワード
日本語版Wee FIM II®, 日常生活自立度, 新版K式発達検査, 有用性, リハビリテーション
■要旨
本研究の目的は,障害児におけるFunctional Independence Measure for Children(Wee FIM)II®の有用性を検討することである.国立成育医療研究センター発達評価外来を受診し,新版K式発達検査2001(新版K式)およびWee FIM II®の評価を行った6か月から5歳までの395症例について,新版K式における3つの領域の発達指数(Developmental Quotient:DQ)および全領域DQとWee FIM II®全項目得点および各項目得点について評価した.DQ70以上群(新版K式全領域DQ≧70)が262症例,DQ70未満群(新版K式全領域DQ<70)が133例であった.DQ70未満群では,1〜4歳において新版K式の姿勢・運動DQとWee FIM II®の全項目得点に相関を認め,3〜5歳において認知・適応DQと全項目得点,4〜5歳において言語・社会DQと全項目得点の相関を認めた.DQ70以上群では,DQ70未満群と比較すると,相関を認める項目は年齢,項目によって限定的で,新版K式の各領域DQとWee FIM II®との相関は低いあるいは認めない項目が多かった.本研究より,Wee FIM II®によるADL評価は,DQが低い障害児において発達評価としても有用であることが示唆された.
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【症例報告】
■題名
急性リンパ性白血病の治療中に発症した急性虫垂炎
■著者
東京大学医学部附属病院小児科1),同 無菌治療部2),同 小児外科3),同 放射線科4),同 病理部5) 谷口 智城1) 加登 翔太1) 中野 嘉子1)2) 日高 もえ1) 関口 昌央1) 渡邉 健太郎1) 樋渡 光輝1)2) 横川 英之3) 小俣 佳菜子3) 沓掛 真衣3) 渡邉 祐亮4) 鈴木 理樹5) 高澤 慎也3) 吉田 真理子3) 藤代 準3) 加藤 元博1)
■キーワード
急性白血病, 急性虫垂炎, 発熱性好中球減少症
■要旨
骨髄抑制中の感染症は理学所見に乏しく熱源の特定が困難なことが多い.一方で,急性白血病の患者では,骨髄抑制中の感染症はしばしば重篤化し時に致死的になりえるため,感染巣を同定し適切な治療を行うことが必要である.今回我々は,急性白血病治療中に発熱のみで発症し,造影CT検査で診断した急性虫垂炎の症例を経験したため報告する.
症例は,B前駆細胞性急性リンパ性白血病に対し早期強化療法中の2歳男児で,骨髄抑制下に発熱・炎症反応高値が遷延した.身体所見上は特定の感染源を示唆する所見に乏しかったが,造影CT検査で虫垂の腫大を認め急性虫垂炎と診断した.診断後の診察でも腹部所見はごく軽微であった.抗菌薬治療の継続と禁食により,穿孔や膿瘍形成はせず軽快したため,骨髄の回復後に虫垂切除術を施行した.虫垂炎治療による化学療法の遅延期間は1週間程度と考えられた.
本症例においては,発熱以外の理学所見に乏しく,診断には造影CT検査が有用であった.抗菌薬による加療が奏功し,虫垂切除術により今後の化学療法中に急性虫垂炎が再発し重症化するリスクを回避できた.骨髄抑制中の感染症では理学所見に乏しいことがあるが,適切な治療方針の決定のために積極的に画像検査を行うべきである.
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【症例報告】
■題名
1歳半健診を契機に,家族歴と顔貌から早期に脆弱X症候群の診断に至った男児
■著者
帝京大学医学部附属溝口病院小児科1),心身障害児総合医療療育センター小児科2),鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科3),鳥取大学研究推進機構研究基盤センター4),医療法人晴顕会大谷病院5),鳥取大学研究推進機構6) 立木 伸明1) 寺嶋 宙1)2) 黒澤 照喜1) 井田 孔明1) 岡崎 哲也3) 足立 香織4) 難波 栄二5)6)
■キーワード
脆弱X症候群, 全般性発達遅滞, 遺伝性疾患, 遺伝カウンセリング
■要旨
脆弱X症候群(fragile X syndrome:FXS)はX連鎖性遺伝形式を持ち,単一遺伝子変異で生じる遺伝性知的障害の中で最も頻度が高いものの1つである.Xq27.3領域にあるFMR1が責任遺伝子であり,5'末端のCGGリピート数が正常では5〜40であるが患者では200以上に伸長している(全変異).リピート数55〜200の前変異ではFXSとは別の病態である脆弱X症候群関連疾患が生じうる.前変異の回数を有する女性のこどもでは,表現促進現象により全変異の回数へのリピート伸長が生じうる.FXSの日本人における頻度は男性の10,000人に1人と推定されているが今までに本邦で診断された症例数は100人以下であり,未診断例が多く存在すると考えられる.我々は1歳半健診で全般性発達遅滞を指摘され,家族歴と顔貌の特徴からFXSを疑い遺伝学的検査で診断が確定した男児を経験した.本患者の診断を受け,母および母方伯母が遺伝カウンセリングの機会を得て,検査の結果前変異を有すると分かった.近年,本邦でもFXSの遺伝学的検査が保険収載され患者レジストリ構築研究も行われている.遺伝性知的障害の中で最も研究が進んでいる疾患の1つであり,全般性発達遅滞の患者を見た際は脆弱X症候群関連疾患を含めた詳細な家族歴聴取とFXSを意識した身体診察を行い,遺伝カウンセリングを実施した上で遺伝学的検査を積極的に提案することが患者と家族にとって有用となる.
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【症例報告】
■題名
眼底所見が診断の契機となった猫ひっかき病の1歳児
■著者
豊川市民病院小児科1),同 眼科2) 板野 雅史1) 筧 清香2) 中田 大介2) 中井 英剛1)
■キーワード
猫ひっかき病, 視神経網膜炎, 眼底, Bartonella henselae, 小児
■要旨
猫ひっかき病(cat scratch disease:CSD)はネコによる掻傷・咬傷などの接触を契機にBartonella henselaeの感染で発症する人獣共通感染症である.典型的な症状としては,受傷部位の所属リンパ節腫脹や発熱を認めることが多い.しかし,CSDの中には典型的な症状を欠く非定型例も多くみられ,視神経網膜炎,急性脳症,無菌性髄膜炎,肝脾肉芽種など様々な臨床症状を呈することが知られている.今回我々は,眼底所見を契機に診断に至った猫ひっかき病の年少児例を経験したため報告する.症例は熱源不明の発熱で入院した1歳4か月の男児で,原因検索のため依頼した眼科診察で右眼底に視神経網膜炎を認めた.追加の病歴聴取でネコの飼育歴が判明し,視神経網膜炎を併発したCSDが疑われ,アジスロマイシン,リファンピシン,プレドニゾロンにて治療を開始したところ,すみやかに解熱し眼底所見も改善した.退院後,入院中に提出したBartonella henselaeに対する血清抗体価よりCSDの確定診断を得た.CSDにおける視神経網膜炎の合併頻度は1〜2%と稀である.調査し得た限りでは視神経網膜炎を合併したCSDとして本症例は世界最年少の報告である.症状の訴えに乏しい年少児において本症を疑った際は,視神経網膜炎の有無により治療方針も変わり得るため,眼症状がなくとも積極的に眼科診察を行うべきである.
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【症例報告】
■題名
剖検にて回盲部に腸重積を認めた乳児突然死症例
■著者
国立成育医療研究センター救急診療科1),東京都監察医務院2),国立成育医療研究センター総合診療部3) 辻 聡1) 内田 佳子1) 林 紀乃2) 窪田 満3)
■キーワード
乳幼児突然死, 行政解剖, 腸重積, 死因究明, アデノウイルス
■要旨
突然死症例の多くは不詳死として取り扱われ,我々臨床医が死因を知り得る機会はほとんどない.剖検実施施設との連携による情報共有は,小児科医が子どもの死因を協議し,相互の理解を深める機会になり得る.
今回我々は1歳男児の自宅での突然死症例を経験した.初療処置に反応なく,死亡確認に至ったが,病歴及び理学所見,血液検査所見,死亡時画像診断でも死因の特定には至らず,不詳の死として所轄警察署に届け出た.東京都監察医務院で行政解剖が施行されたが,当センターと東京都監察医務院との連携を構築することで剖検結果を知る機会を得た.剖検では一部に壊死を伴う回盲部の腸管の重複の所見が認められ,気管内には食物残渣が指摘された.気管分泌物のウイルス分離検査ではアデノウイルスが検出され,アデノウイルス感染症に伴う腸重積より嘔吐をきたし窒息に至った可能性が指摘された.文献上,乳児の突然死において剖検例の解析では腸管の閉塞は稀とされるが,臨床所見や経過からは腸重積の診断が困難であり,乳児の突然死事例における剖検の重要性が示唆された.
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