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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:22.12.13)
第126巻 第12号/令和4年12月1日
Vol.126, No.12, December 2022
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原 著 |
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大瀧 潮,他 1595 |
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中尾 聡宏,他 1601 |
症例報告 |
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平野 藍子,他 1609 |
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猿渡 ちさと,他 1615 |
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平出 智裕,他 1621 |
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比留間 昭太,他 1626 |
論 策 |
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和田 友香,他 1633 |
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高清水 奈央,他 1639 |
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地方会抄録(栃木・山形・静岡・宮城・香川・群馬・中部・石川)
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1646 |
日本小児科学会雑誌掲載論文における自己剽窃および無断転載について
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1677 |
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1678 |
日本小児科学会将来の小児科医を考える委員会報告 |
はじめの一本7 |
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はじめの一本と次の一本─研究を継続するためのモチベーションをどう維持するか?─
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1679 |
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1681 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2022年64巻10月掲載分目次
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1689 |
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1691 |
【原著】
■題名
川崎病初回免疫グロブリン療法不応例における追加治療の診療報酬制度改正による影響
■著者
自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学教室1),青森県立中央病院成育科2) 大瀧 潮1)2) 中村 好一1) 屋代 真弓1)
■キーワード
川崎病, 免疫グロブリン療法不応例, 診療報酬制度, 包括払い制度
■要旨
【目的】診療報酬制度改正が治療選択に与えた影響について,初回免疫グロブリン超大量療法(以下,IVIG)不応例に対する追加治療選択において検証した.【対象と方法】第22回川崎病全国調査(2011年1月から2012年12月末実施)で,初回IVIG不応例である4,150名を対象,追加治療と診療報酬方式でオッズ比を算出した.加えて,第15回から22回の結果を用い,特定機能病院82施設の包括払い制導入前後の追加IVIG例の経時推移を示した.【結果】追加IVIG例は3,798人(91.5%),うちdiagnosis procedure combination/per-diem payment system(以下,DPC/PDPS)が3,339人,fee-for-service(以下,FFS)は366人でオッズ比0.68であった.一方,ステロイド投与例は1,245人(30.0%)でDPC/PDPSが1,084人,FFSが139人でオッズ比は0.76であった.追加IVIGにおいて,特定機能病院では抑制的影響を一時的に認めた.【考察】制度変更が治療方針選択に一時的に影響し変化しうる.
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【原著】
■題名
川崎病に対するRAISE研究方式治療と1年間の心合併症
■著者
神戸市立西神戸医療センター小児科 中尾 聡宏 岩田 あや 飯尾 享平 金 伽耶 内藤 昭嘉 川崎 悠 磯目 賢一 堀 雅之 山口 善道 平海 良美 松原 康策
■キーワード
川崎病, ステロイド, 冠動脈瘤, 後遺症, 心合併症
■要旨
RAISE研究発表後,川崎病のステロイド初期併用治療例は増加している.しかしRAISE研究では不全型や治療前冠動脈拡大例は除外され,また長期予後は未検討である.本研究は全川崎病にRAISE研究の,大量免疫グロブリン静注療法(intravenous immunoglobulin,IVIG)不応予測スコア(小林スコア)に基づくステロイド併用方式を適応し,IVIG不応率,発症1年後までの冠動脈病変を後方視的に検証した.2016年から2020年の254例(不全型53例[20.9%],IVIG+ステロイド治療群98例[38.6%])の川崎病を対象とした.初回IVIG不応率は13.4%,冠動脈拡大/瘤は1〜2か月後で4例(1.6%),1年後で1例(0.4%)だった.ステロイド併用群98例の冠動脈Zスコアは治療前から急性期にかけて増大せず(治療前/急性期Zスコア中央値:segment #1 0.8/0.8,#5 0.7/0.8,#6 0.6/0.6),治療前比で1〜2か月後(#1 0.5,#5 0.3,#6 0.2,すべてp<0.001)も1年後(#1 0.3,#5 0.2,#6 0.1,すべてp<0.001)も有意に縮小した.治療前拡大13例中4例が急性期に更に拡大したが,1〜2か月後の拡大は小林スコア低スコア1例のみで1年後には全例正常化した.不全型,治療前冠動脈拡大例も含む全川崎病に対するRAISE研究方式の層別化治療は,1年予後も含めて有効である.
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【症例報告】
■題名
甲状腺中毒性ミオパチー症状を主訴に診断されたBasedow病の13歳女子
■著者
ベルランド総合病院小児科 平野 藍子 端 里香 竹原 歩 鳥越 史子 江藤 早苗 土屋 浩史 山内 淳 甲斐 昌彦 沖永 剛志
■キーワード
Basedow病, 甲状腺中毒性ミオパチー, 筋力低下, 徒手筋力検査, 呼吸機能検査
■要旨
成人の甲状腺機能異常では,しばしば神経筋症状がみられる.甲状腺中毒性ミオパチーは小児の報告は極めてまれで甲状腺機能正常化により筋症状は回復する.
今回,甲状腺中毒性ミオパチー症状を主訴に診断されたBasedow病の13歳女子を経験した.13歳1か月に朝起き不良と立ちくらみを主訴に近医受診し,その際の甲状腺機能は正常だった.起立性調節障害としてミドドリン塩酸塩を処方されたが,次第に握力低下と易疲労感が出現し13歳7か月から転びやすい,歩行困難などの筋力低下症状が進行し当院へ入院した.
日内変動のない四肢筋力低下と両下肢筋萎縮,体重減少,甲状腺腫大を認めた.深部腱反射,脳神経所見は正常で感覚障害はなく,血清クレアチンキナーゼ,抗アセチルコリン受容体抗体,運動神経伝導検査,末梢神経反復刺激検査は異常なし.甲状腺ホルモン上昇,甲状腺刺激ホルモン低下,TRAb陽性,びまん性甲状腺腫大からBasedow病による甲状腺中毒性ミオパチーと診断しチアマゾール15 mg/日を開始した.甲状腺機能正常化に伴い4か月後には筋症状は軽快した.
慢性進行性の筋力低下を訴える患者では甲状腺疾患を疑うことが重要である.また筋症状と甲状腺機能検査より甲状腺中毒性ミオパチーを考えた場合,侵襲的な検査である筋電図や筋生検は特異的な所見が無いため,まずBasedow病の治療を行い筋症状の改善を確認することが大切である.
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【症例報告】
■題名
リクルートメント手技で改善した神経筋疾患小児の重症無気肺
■著者
中東遠総合医療センター小児科1),同 救急科2),浜松医科大学小児科3) 猿渡 ちさと1) 早野 聡1) 松島 暁2) 安岡 竜平3) 淺田 馨2) 勝木 純一郎1) 塩澤 亮輔1) 關 圭吾1) 矢田 宗一郎1) 岩島 覚1)
■キーワード
リクルートメント, 神経筋疾患, 無気肺, 呼吸不全, 気管切開
■要旨
小児は無気肺のハイリスク者であり,特に神経筋疾患に伴う重症心身障害児の無気肺治療には難渋するため,急性呼吸不全の治療ではポジショニング(頭側挙上)や排痰補助装置などの使用が推奨される.しかし,呼吸筋が弱く排痰能力が乏しい神経筋疾患に伴う重症心身障害児の無気肺は,標準治療の効果が乏しい場合がある.リクルートメント手技(RM;Recruitment maneuver)は,成人領域の急性呼吸窮迫症候群において,一時的に非常に高い換気圧を用いて肺胞を広げる手技である.小児無気肺に対するRMについて,全身麻酔における予防報告は散見されるが,急性期治療のエビデンスは少ない.我々は,大脳皮質形成異常症(多小脳回)に伴う重症心身障害の2歳男児において,標準治療で改善困難な無気肺に対して,RMを施行して良好な転帰を得たため報告する.症例は,気管切開下に在宅用呼吸器を使用しており,無気肺による低酸素血症を生じて入院した.呼吸理学療法と排痰補助装置による標準治療は奏功せず,吸入酸素濃度45%においても酸素化不良な状態まで無気肺が悪化した.一定の駆動圧(ΔP=10 cmH2O)を維持して呼気終末圧を漸増(8〜20 cmH2O)する方法でRMを実施したところ,速やかに酸素化は改善し,無気肺の消失を認めた.神経筋疾患小児において,標準治療で治療困難な無気肺の治療法として,RMは有効な治療と思われる.
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【症例報告】
■題名
アルコール手指消毒剤の意図的な摂取によるエタノール中毒
■著者
島根県立中央病院小児科 平出 智裕 小池 大輔 岡村 理香子 羽根田 泰宏 金井 理恵
■キーワード
アルコール手指消毒剤, エタノール中毒, コロナウイルス感染症2019
■要旨
コロナウイルス感染症2019が広がる中,公共の場や家庭内など,あらゆる場所にアルコール手指消毒剤が置かれるようになった.そのため,小児のアルコール手指消毒剤の誤飲や,興味本位で口にすることによるエタノール中毒の報告が増加している.症例は5歳女児.保育園で他の園児が午睡中に,隠れて保育室内に置いてあったスプレータイプのアルコール手指消毒剤を手に付けては舐める行為を繰り返し,原因不明の意識障害で救急搬送となった.意識が回復し,児自らがアルコール手指消毒剤を興味本位で摂取したことを述べたため診断に至った.エタノール中毒の症状は非特異的であり,まれながら低血糖により死亡する場合がある.目撃情報や物的証拠が無ければ診断は困難であり,治療が遅れる可能性がある.小児の意識障害の鑑別診断として,発症状況によってはエタノール中毒を考慮すべきであり,詳細な問診が鍵となる.今後もアルコール手指消毒剤による小児のエタノール中毒が増加することが懸念される.予防策としては,手指消毒剤を子供の手が届かないところに置き,大人の監視下で使用することが大切である.そのため,アルコール手指消毒剤は,少量の摂取でも小児にエタノール中毒を起こす危険なものだと改めて社会に啓発していく必要がある.
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【症例報告】
■題名
医療ネグレクトが背景の重度おむつかぶれを呈した幼児
■著者
国立病院機構埼玉病院小児科1),同 小児外科2) 比留間 昭太1) 漢那 由紀子1) 藤村 匠2) 梅沢 洸太郎1) 三島 芳紀1) 秋山 奈緒1) 富田 瑞枝1) 池宮城 雅子1) 仲澤 麻紀1) 上牧 勇1)
■キーワード
おむつかぶれ, 溢流性便失禁, 乳児臀部肉芽腫, 医療ネグレクト
■要旨
症例は児童相談所から医療ネグレクト疑いで紹介された3歳5か月男児.臀裂部に潰瘍・肉芽が多発散在し乳児臀部肉芽腫(GGI:Granuloma gluteale infantum)を呈していた.頻回の便失禁に加えて腹部エックス線検査で結腸に便貯留認めたため,溢流性便失禁と長期にわたるおむつかぶれ放置による症状と考え,保護入院,摘便・軟膏塗布で治療し改善した.乳児臀部肉芽腫はまれな症状であるが,今症例は高度便秘に伴う溢流性便失禁に加えて,医療ネグレクトを背景に発症したと考えられた.
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【論策】
■題名
乳児が入院した際の母乳育児に関する母親への実態調査
■著者
国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター1),同 看護部2),同 総合診療部3) 和田 友香1) 迫田 真由美2) 甘利 昭一郎1) 堀川 美和子3) 新田 知恵子2) 前田 実加2) 松原 資恵2) 窪田 満3) 伊藤 裕司1) 左合 治彦1)
■キーワード
母乳育児支援, 小児病棟, 乳児, 母乳, 看護
■要旨
母乳育児率増加に伴い,医療現場における母親から医療スタッフへの母乳育児に関する相談件数は増えてきていると推測される.当院においても一般小児病棟や小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit(PICU)へ乳児が入院した母親から医療スタッフへの相談件数が増えてきているが現在までに詳細な報告がなく実態は不明である.今回我々は授乳中の乳児が入院した際に母乳育児に関して母親が困る内容について調査した.対象は2016年9月から2017年2月に当院の一般小児病棟もしくはPICUに入院した1歳未満の児に授乳をしている母親とした.調査期間における1歳未満の入院数は456人,母乳育児を行っていた母親は338人(74%)であった.そのうち150人の母親に聞き取り調査を行った.128人(85%)の母親が困っていることがあると回答した.多かった順に乳房緊満・乳腺炎48人(32%),母乳分泌量に関すること(足りているか不安,適切な補足量が分からないなど)39人(26%),授乳のタイミングが分からないこと34人(23%)などであった(重複あり).その内容の多くは医療者の母乳育児に関する基本的な知識と母親への丁寧な説明で対応できる内容であった.乳児が入院する病棟のスタッフは母乳育児に関する基本的な知識を身につけて対応できるようにしておくことが必要と考えられた.
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【論策】
■題名
重症心身障害児(者)に係る診療所調査
■著者
岩手医科大学医学部障がい児者医療学講座 高清水 奈央 浅見 麻耶 亀井 淳
■キーワード
重症心身障害児(者), 在宅医療, 医療的ケア, 開業医療機関, アンケート
■要旨
在宅重症心身障害児(者)(重症児(者))及び医療的ケア児が地域で安心して生活していくために,身近な地域で受診できる医療機関が必要である.当事者及びその家族に対する支援の向上を目指すことを目的に,地域において診療可能な医療機関を把握し医療・福祉・行政で共有するため,岩手県医師会所属の全診療科648開業医療機関に対し記名自記式アンケートを実施した.231施設から回答が得られ(回収率35.6%),80施設(全体に対し12.3%)で重症児(者)に対し何らかの診療が可能とした.主な診療科は内科33,小児科24施設で,眼科や皮膚科など専門領域の診療のみ可能とした医療機関は36施設であった.また,14施設では主治医としての対応が可能であるとした.経管栄養,在宅酸素,導尿など比較的容易な医療的ケア診療が可能な医療機関は22施設,高度な医療的ケアとして在宅人工呼吸器管理は12施設,中心静脈栄養は7施設,在宅透析は2施設で対応可能と回答した.63の医療機関で当事者家族や医療福祉関係者への情報提供について許諾を得た.重症児(者)に対し何らかの診療が可能であるが,医療的ケア児者の診療が不可能としたのは20施設であった.重症児(者)診療が不可能とした150施設の医療機関における主な理由は,スタッフの知識・技能不足やマンパワーの問題,保護者対応が課題とされた.結果は公表され,診療協力体制整備の基礎資料とした.
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