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日本小児科学会雑誌 最新号目次

(登録:22.10.18)

第126巻 第10号/令和4年10月1日
Vol.126, No.10, October 2022

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第125回日本小児科学会学術集会
  会頭講演

私が経験した東日本大震災・東電原発事故

細矢 光亮  1357
  教育講演

小児科医の知っておくべき保険診療の知識update

大山 昇一  1371
原  著
1.

小児生活習慣病予防健診精査症例における脂肪肝スクリーニングスコア

木下 裕哉,他  1381
2.

コロナウイルス感染症2019流行下の学校,園が求めたものと学校医,園医の在り方

穐吉 秀隆,他  1390
3.

小児の非チフス性サルモネラによる尿路感染症の臨床的特徴

久我 修二,他  1398
4.

小児病院の救急外来を受診した歯ブラシ外傷の49例

安齋 豪人,他  1404
症例報告

アウトリーチ医療により学校生活が安定した神経発達症児

梶 瑞佳,他  1410
論  策
1.

三次医療機関での虐待対応における児童相談所・警察連携と各機関の役割

田上 幸治,他  1416
2.

小児期・思春期世代におけるCOVID-19ワクチン接種に対する保護者の意識

中西 恭一,他  1424

地方会抄録(滋賀・北海道・長野・鳥取・富山・東海・栃木)

  1430

日本小児科学会理事会議事要録

  1452

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2022年64巻8月掲載分目次

  1454

令和4年度公益財団法人小児医学研究振興財団研究助成事業のお知らせ

  1456

雑報

  1457

医薬品・医療機器等安全性情報 No. 394

  1458


【原著】
■題名
小児生活習慣病予防健診精査症例における脂肪肝スクリーニングスコア
■著者
熊本再春医療センター
木下 裕哉  福間 真実  堀 愛莉花  藏田 洋文  岡田 拓巳  上野 弘恵  島津 智之  池田 ちづる  今村 穂積

■キーワード
肥満, 脂肪肝, 生活習慣病, 健康診断, ALT
■要旨
 当院には熊本県菊池郡市の小児生活習慣病予防健診(以下,健診)の二次精査者が例年30例前後紹介される.ALTが正常の脂肪肝症例も多く,腹部エコーをすべき症例を初診時データから選出するスコアを検討した.2017・2018年度の健診精査で当科を受診し,腹部エコーを施行した小学生34例を対象とし,後方視的に検討した.対象の肥満度中央値39.4%,脂肪肝あり23例,脂肪肝なし11例であった.脂肪肝スクリーニングスコアは(1)ALT≧20 IU/L,(2)腹囲≧81 cm,(3)γGTP≧19 U/L,(4)インスリン抵抗指数(以下,HOMA-R)≧2.6,(5)HDL-Cho≦56 mg/dLのうち(1)のみ2点,他を1点とし,カットオフ2点とした.ALT<40 IU/Lの小学生(n=27)において感度100%,特異度90.0%であり,対象全体(n=33,腹囲測定漏れを1例除外)においても感度100%,特異度90.0%であった.(4),(5)を省いた簡易脂肪肝スクリーニングスコア(以下,簡易スコア)は上記(1)を2点,(2),(3)を1点とし,カットオフ2点とした.ALT<40 IU/Lの小学生において感度94.1%,特異度90.0%,対象全体でも感度95.7%,特異度90.0%だった.脂肪肝スクリーニングスコアおよび簡易スコア2点以上では二次精査時の腹部エコーを推奨する.


【原著】
■題名
コロナウイルス感染症2019流行下の学校,園が求めたものと学校医,園医の在り方
■著者
飯塚市立病院小児科1),飯塚病院小児科2),栗原小児科内科クリニック3),ひじい小児科クリニック4),たなかのぶお小児科5),こどもクリニックもりた6)
穐吉 秀隆1)  田中 祥一朗2)  大矢 崇志2)  栗原 潔3)  肘井 孝之4)  田中 信夫5)  森田 潤6)

■キーワード
コロナウイルス感染症2019, 小・中学校, 幼・保・こども園, 学校医, 園医
■要旨
 小・中学校,幼稚園,保育所,こども園を対象としたコロナウイルス感染症2019に対する児や職員の身体的心理的問題の発症の有無,それに対する学校医および園医への相談の有無,感染予防策についての学校医および園医への相談の有無に関する実態調査を行い,その課題を抽出した.福岡県の筑豊地区15市区町村の公立および私立の幼稚園,認可保育所,認定こども園,公立小・中学校に対し,郵送で自記式アンケートを依頼し,同意の得られた施設に電話で追加項目の確認を行った.休校期間中および学校再開後の児童生徒に問題があるとした学校はそれぞれ42%,54%と同時期の園の24%,32%より有意に多かった.学校及び園の児や職員の問題に関し,学校医,園医への相談は少なかった.感染予防策についての学校医,園医への事前相談は学校で30%,園で20%で,今後も情報共有の予定がないと回答したのは学校が28%,園が50%であった.児の身体的心理的問題,相談・情報共有の具体的内容からは医療との連携が重要であると考えられ,今後学校と学校医,園と園医の連携を深めるための体制づくりが必要である.


【原著】
■題名
小児の非チフス性サルモネラによる尿路感染症の臨床的特徴
■著者
藤本育成会大分こども病院
久我 修二  津田 恵太郎  藤本 保

■キーワード
非チフス性サルモネラ, 小児, 尿路感染症, 基礎疾患, 膀胱尿管逆流症
■要旨
 小児の非チフス性サルモネラ(non-typhoidal Salmonella)による尿路感染症(NTS-UTI)の報告は少なく,患者背景や臨床像に関する情報は限られている.我々は健常な小児のNTS-UTIを2例経験した.1例は3か月男児の腎盂腎炎で,抗菌薬を開始して速やかに軽快したが,治療後に右膀胱尿管逆流症(Grade 3)が見つかり,後日手術を行った.もう1例は基礎疾患のない16歳女児で,出血性膀胱炎に対して治療反応は良好であったが,抗菌薬の中止後に再燃が2回あり,治療に難渋した.いずれも治療開始後に下痢症状を認めたが,便培養と血液培養は陰性で感染経路は特定できなかった.
 小児のNTS-UTIに関して文献検索で臨床情報を取得できた20症例とあわせた22症例を検討したところ,年齢中央値は7歳,男女比9:13,基礎疾患は10例(45%),うち6例に膀胱尿管逆流症などの泌尿器疾患を認めた.先行する胃腸炎を伴ったのは12例(50%)で血液培養の陽性例や死亡例はいなかった.少なくとも4例(18%)に治療後の再発や再燃を認めた.小児のNTS-UTIは非常に稀ではあるが,潜在する泌尿器科疾患の検索や治療抵抗性の経過を念頭に置く必要がある.


【原著】
■題名
小児病院の救急外来を受診した歯ブラシ外傷の49例
■著者
国立成育医療研究センター総合診療科1),同 耳鼻咽喉科2),同 救急診療科3)
安齋 豪人1)  守本 倫子2)  辻 聡3)  窪田 満1)

■キーワード
歯ブラシ, 口腔咽頭損傷, 膿瘍, 傷害予防
■要旨
 【背景】
 歯ブラシによる口腔内外傷(歯ブラシ外傷)は欧米に比べ日本で頻度が高く,救急外来等で頻繁に遭遇する疾患である.しかし,単発の報告が多く詳細な検討は乏しい.
 【方法】
 2018年4月〜2020年10月に歯ブラシ外傷を主訴として当院を受診した症例を対象とし,電子診療録を用いて後方視的に検討した.
 【結果】
 対象は49例で,男児は26例(53.1%)と男女比はなく,月齢の中央値は25か月(7〜114か月)であった.受傷当日から翌日までの受診が44例(89.8%)と多かった.25例(51.0%)にCT検査が行われ,5例(10.2%)に膿瘍形成を認めた.膿瘍を認めた症例では認めなかった症例と比べ,来院までの日数,抗菌薬の治療期間が有意に長く,入院,手術とPICU入室が有意に多かった.また,保護者が受傷の瞬間を目撃していたのは11症例(22.4%)のみであった.
 【結論】
 歯ブラシ外傷は重症化の危険性が高い一方で,受傷早期に重篤化を予見することは困難である.すべての症例へのCT検査は被曝の観点から推奨されないため,家族への注意深い経過観察および,発熱を認めた際の速やかな受診を促す必要がある.その上で症状変化時には画像での深達度や重症度の評価を行い,治療方針を決定することが肝要と考えられた.また目撃のない受傷例が依然として多く,より一層の啓発が必要である.


【症例報告】
■題名
アウトリーチ医療により学校生活が安定した神経発達症児
■著者
六甲アイランド甲南病院小児科1),甲南女子大学2)
梶 瑞佳1)  太田 國隆1)  稲垣 由子1)2)

■キーワード
アウトリーチ医療, 多職種連携, 小児科医の役割
■要旨
 暴言暴力・集中困難・集団不適応などを主訴に外来受診した神経発達症児に関して,小児科医が,患児の生活環境に出向いて日常生活状況を把握したのち,患児の支援に最も困難を抱えていた小学校に出向いて多職種(小児科医・小学校教諭・保護者など)によるケースカンファレンスを3回行った.小児科医が病院外に出向いてアウトリーチ医療を行い,患児の問題行動について小児科医としての見立てと治療方針を説明したことで状況が好転し,患児は落ち着いて小学校生活・学校行事へ参加できるようになった.教育現場での多職種連携が奏功したものと考えられた.従来は,患児の生活環境を理解したうえで病院を中心に行ってきたコンサルテーションを中心とした連携医療であった.今回,小児医療におけるアウトリーチ医療の重要性と小児科医の新たな役割について示す.


【論策】
■題名
三次医療機関での虐待対応における児童相談所・警察連携と各機関の役割
■著者
神奈川県立こども医療センター総合診療科1),同 医療福祉相談室2),子ども支援センターつなっぐ代表理事3)
田上 幸治1)3)  宮川 有美子2)

■キーワード
虐待, 多機関連携, 児童相談所, 警察
■要旨
 虐待対応は医療,児童相談所,警察などの多機関連携が基本であり,近年の虐待死事例を受け,さらなる情報共有や連携が叫ばれている.2016年4月から2020年3月までで,三次医療機関である当院で,警察に通報した虐待症例における各機関の役割を評価した.当院の主な役割は,医学診断,虐待診断,重症度判定やカテゴリー分類,疾患の治療,家族への病状説明,その後の被害児,家族のフォローであった.児童相談所の主な役割は,虐待診断,重症度判定やカテゴリー分類,家族への説明,一時保護,その後の再発防止のための指導や対策,被害児や家族のフォローであった.警察の主な役割はきょうだいの保護や保護者への聞き取りなどの捜査であった.子どもを取り巻く多機関がその専門性を発揮しながら,早期から連携することで,迅速に対応することができ,入院期間を短縮する傾向を示した.


【論策】
■題名
小児期・思春期世代におけるCOVID-19ワクチン接種に対する保護者の意識
■著者
兵庫県小児科医会感染症対策委員会1),なかにしこどもクリニック2),兵庫県立西宮病院小児科3),兵庫県立尼崎総合医療センター小児科4),おりやま小児科クリニック5),兵庫県立こども病院感染症科6),梶山小児科アレルギー科7),こばやし小児科8),杉原小児科医院9),辰己こどもクリニック10),堅田医院11),神戸市立医療センター中央市民病院小児科12),とみもと小児科医院13),はまひらこどもクリニック14),桃田小児科医院15),市立伊丹病院小児科16),山城小児科医院17),吉田小児科18),岡藤小児科医院19),はちわかこどもクリニック20),ふじたこどもクリニック21)
中西 恭一1)2)  安部 治郎1)3)  伊藤 雄介1)4)  折山 文子1)5)  笠井 正志1)6)  梶山 瑞隆1)7)  小林 謙1)8)  杉原 加寿子1)9)  辰己 和人1)10)  田中 尚子1)11)  鶴田 悟1)12)  富本 康仁1)13)  濱平 陽史1)14)  桃田 哲也1)15)  三木 和典1)16)  山本 千尋1)17)  吉田 元嗣1)18)  岡藤 隆夫1)19)  八若 博司1)20)  藤田 位1)21)

■キーワード
COVID-19, ワクチン, 小児期・思春期世代, 保護者意識
■要旨
 我が国では,12歳以上の小児に対するCOVID-19ワクチンの追加承認が行われ,12歳未満の子どもに対するワクチン接種についての検討が開始されている(2021年12月現在).一方で,多くの親が子どもに対するワクチン接種に対する不安を持っている.
 兵庫県小児科医会では,ワクチンの対象となる世代の子を持つ保護者のワクチンに対する意識を把握し,保健活動や診療の現場での子どもと保護者のニーズに応える情報提供を行うことを目的に,COVID-19ワクチン接種に関する調査を実施した.
 対象は2021年9月15日から10月31日に兵庫県内でCOVID-19ワクチンを接種した12〜19歳の子どもの保護者で,調査はインターネットを利用して実施した.
 87.4%(2,322/2,656)の保護者が,子どもへのCOVID-19ワクチン接種の副反応を心配していた.また,子どものワクチン接種に対して約半数の保護者が,相談者がいないと回答した.さらに,保護者にとって,ワクチンについての情報源はテレビとインターネットが中心であった.医師を相談者,情報源としている保護者は少数であった.子どもがワクチン接種を希望しているかを問う質問に対しては,「どちらでもない」と約半数の保護者は回答していた.
 子どもと保護者へのワクチンに関する正確な情報の提供が望まれる状況があり,小児科医の積極的な関与について検討すべきであると思われた.

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