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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:20.7.16)

第124巻 第7号/令和2年7月1日
Vol.124, No.7, July 2020

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原  著
1.

新生児期発症疾患を有する死亡症例における病理解剖診断の有用性

内藤 敦,他  1069
2.

単施設における10年間のIgA血管炎症例

椎橋 文子,他  1077
3.

小児の難治性便秘症に対する全身麻酔下摘便の有効性

有山 雄太,他  1085
症例報告
1.

胎児期から経過を追えた母体由来の抗SS-A抗体陽性の乳児特発性僧帽弁腱索断裂

森田 理沙,他  1091
2.

トレーディングカードゲームにより発作が誘発された反射てんかん

山本 寿子,他  1097
3.

歩ける医療的ケア児4症例の幼児期における在宅療養支援の現状報告

李 容桂,他  1101
4.

結核とリンパ球性間質性肺炎の鑑別に肺生検が有用であったHIV感染児の2例

島田 真実,他  1107
5.

Actinotignum schaaliiによる尿路感染症の2歳男児

小川 英輝,他  1114
6.

病勢評価に腹部超音波検査が有用であった蛋白漏出性胃腸症

田村 ベリース結実,他  1120
論  策

インクルーシブ教育実現に向けた医療的ケアを要する先天性心疾患児の就園状況

清水 大輔,他  1127

地方会抄録(和歌山・埼玉・北日本・福岡・熊本・青森・愛媛・北陸・佐賀)

  1134
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告
  リレーコラム キャリアの積み方―私の場合32

様々な出会いによって人は育てられ

  1192

公益社団法人日本小児科学会 通常総会議事要録

  1194

公益社団法人日本小児科学会 理事会議事要録

  1196

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2020年62巻6号目次

  1199


【原著】
■題名
新生児期発症疾患を有する死亡症例における病理解剖診断の有用性
■著者
山梨県立中央病院総合周産期母子医療センター新生児内科1),山梨大学小児科2)
内藤 敦1)2)  根本 篤1)  小林 真美1)  長谷部 洋平1)  前林 祐樹1)

■キーワード
新生児期発症疾患, 病理解剖, 死因究明
■要旨
 近年,新生児領域を含め剖検率は低下している.今回,山梨県立中央病院総合周産期母子医療センターの死亡症例を後方視的に検討し,新生児期発症疾患を有する死亡症例における病理解剖診断の有用性について検討した.2001年9月の開設時から2018年9月までに当施設に入院した計2,861人の新生児のうち死亡退院した全82人を対象とし,剖検有用性をGoldmanの分類に基づき評価すると共に,観察期間をNICU病床増床前後で前期(2001〜2009年)と後期(2010〜2018年)に分けて施設背景・患者背景の変化による剖検率および有所見率への影響について比較した.死亡症例82人中,病理解剖は47人(57.3%)に施行しており,前期62.5%(48人中30人),後期50.0%(34人中17人)と近年に至っても高い病理解剖率を維持していた.病理解剖により29人(61.7%)に新たな所見が確認され,このうち13人(27.7%)で死因に直接関与する主要疾患の診断が確定された.臨床診断と一致した症例においても診断の裏付けと病態の理解において病理所見は非常に有意義であった.病理解剖診断は真の死因を明らかにするための重要な手段であり,様々な診断技術が進歩した現在においても,その診断価値は極めて大きいことが再確認された.


【原著】
■題名
単施設における10年間のIgA血管炎症例
■著者
さいたま市民医療センター小児科
椎橋 文子  桃井 貴裕  古山 晶子  小島 あきら  古谷 憲孝  西本 創

■キーワード
ヘノッホ・シェーンライン紫斑病, アレルギー性紫斑病, 紫斑病性腎炎, 腎炎発症危険因子
■要旨
 <緒言>
 IgA血管炎は小児の全身性血管炎として高頻度に見られる疾患である.安静のみで軽快する症例から,腎炎発症や再発により長期治療を要する症例まで臨床症状は多彩である.その臨床像を明らかにするために,当院において10年間で経験した124例を調査した.
 <方法>
 当院に2009年4月から2019年3月までにIgA血管炎で初回入院した児124例に関して臨床経過を調査し,腎炎発症群と非発症群の相違を比較検討した.
 <結果>
 年齢は中央値5歳で男女比はほぼ同等であった.再発による入院は4例にみられた.腎炎発症群では腎炎非発症群に比べ6歳以上の症例が多く,再発率および再発による再入院率も高かった.また,腎炎発症群は非発症群よりプレドニゾロン(PSL)による治療開始後に腹痛が出現または再燃する確率が高く,入院日数やPSL投与日数が有意に長かった.
 <結語>
 IgA血管炎による腎炎発症の危険因子として6歳以上,再発,PSL抵抗性の腹痛が考えられた.


【原著】
■題名
小児の難治性便秘症に対する全身麻酔下摘便の有効性
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 消化器科2)
有山 雄太1)  立花 奈緒2)  中村 千穂2)  村越 孝次2)

■キーワード
便秘, disimpaction, 全身麻酔下摘便, 難治性便秘, 小児
■要旨
 【目的】小児の便秘に対する便塊除去(以下disimpaction)の方法としての全身麻酔下摘便の有効性を検討する.【方法】2010年3月1日から2016年8月31日の6年6か月間に,当科で便秘症に対して全身麻酔下摘便を行った症例を対象とし,他疾患に対する外科手術前処置として全身麻酔下摘便を行った症例は除外し,当センター電子診療録を用いて後方視的に検討した.全身麻酔下摘便を実施し30日後までに追加で洗腸,ガストロ注腸,摘便のいずれも実施しなかった症例を全身麻酔下摘便の成功例と定義し,主要評価項目は成功例の割合(成功率)とした.摘便は麻酔科医師が全身麻酔で筋弛緩状態とし,摘便施行者が双手法で行った.【結果】対象期間内に当科で全身麻酔下摘便を行ったのは32例で,内2例を除外して30例を対象症例とした.全身麻酔下摘便の便秘の原因別の成功率は,慢性機能性便秘93%(14/15例),外科的疾患40%(2/5例),身体科的内科疾患33%(1/3例),精神科的内科疾患71%(5/7例)であった.全身麻酔下摘便後の合併症を理由に入院期間が延長した症例はなかった.【結論】小児の便秘症に対する全身麻酔下摘便の成功率は慢性機能性便秘93%であり,施行できる施設が限られるが,浣腸/内服薬での治療抵抗性の便塞栓に対するdisimpactionの方法の一つとして考慮される.


【症例報告】
■題名
胎児期から経過を追えた母体由来の抗SS-A抗体陽性の乳児特発性僧帽弁腱索断裂
■著者
土谷総合病院小児科1),同 心臓血管外科2),三次中央病院小児科3)
森田 理沙1)  浦山 耕太郎1)  杉野 充伸1)  田原 昌博1)  山田 和紀2)  岡島 枝里子3)  小野 厚3)

■キーワード
乳児特発性僧帽弁腱索断裂, 僧帽弁逆流, 抗SS-A抗体, 胎児超音波検査, fetal echogenic intracardiac focus
■要旨
 乳児特発性僧帽弁腱索断裂は,生来健康な生後4〜6か月の乳児に突然の急性心不全が発症し,呼吸循環不全をきたす疾患であり,救命には早期に外科的治療が必要となる.ウイルス感染,川崎病,母体から移行する自己抗体,僧帽弁の粘液様変性などが原因と考えられているが,詳細は明らかではない.今回我々は,胎児期から乳頭筋に非常に目立つ高輝度病変が観察され,生後2か月で僧帽弁腱索断裂を発症した症例を経験した.発症前に先行感染がなく,低月齢での発症であったため,原因として抗SS-A抗体の経胎盤移行を疑い診断した.本児は緊急手術として僧帽弁形成術を行い,後遺症無く経過している.母には自己免疫疾患の既往歴はなかったが,児の診断を契機に無症候性のSjögren症候群と診断した.前子に抗SS-A抗体による心合併症があった場合,次子の心合併症の確率が高くなるため,今後は専門施設での妊娠管理が必要である.乳児特発性僧帽弁腱索断裂は死亡率・神経学的後遺症の発生率ともに低くなく,迅速な診断・治療が必要であるが,先行感染や基礎疾患がなく低月齢で発症した場合は,原因として抗SS-A抗体の経胎盤移行を疑う必要がある.


【症例報告】
■題名
トレーディングカードゲームにより発作が誘発された反射てんかん
■著者
川崎市立多摩病院小児科1),聖マリアンナ医科大学医学部小児科2)
山本 寿子1)2)  宮本 雄策1)2)  竹田 加奈子1)2)  清水 直樹2)

■キーワード
てんかん, 反射てんかん, 行為誘発発作
■要旨
 反射てんかんは,特定の感覚刺激や認知刺激の結果生じるてんかん発作を指す.また,これは更に単純な視覚刺激により起きる単純型と,高次精神活動によって誘発される複雑型に分類される.後者の中には意思決定を行う思考過程を介して誘発される発作があり,行為誘発発作(praxis-induced seizures;PIS)と呼称される.トレーディングカードゲーム(trading card game;TCG)により発作が誘発される反射てんかんを経験したので報告する.症例は16歳男性,14歳頃からTCG中の手のぴくつきを自覚しており,15歳時に全般性強直間代けいれんが出現した.発作間欠期脳波検査では,睡眠時左前頭部に棘徐波複合の混入と光刺激時に前頭部の鋭波複合の出現を認めた.経過観察中に更に2回のけいれんを認めたが,全て特定のTCG中であり,それ以外のTCG中には発作の出現はみられなかった.VPA開始により全身発作は消失したが,手のぴくつきは続いており,発作時脳波を試みた.発作は得られなかったものの,TCG中にのみ全般性棘徐波複合の頻回な出現を認めた.経過や脳波所見から手のぴくつきは,焦点起始意識保持の運動発作であると考えた.PISでは特発性全般てんかんとの関連が示唆されており,診断には詳細な問診が有効である.


【症例報告】
■題名
歩ける医療的ケア児4症例の幼児期における在宅療養支援の現状報告
■著者
愛仁会リハビリテーション病院小児科・リハビリテーション科1),高槻病院小児科2)
李 容桂1)  寺田 明佳1)  和田 佳子1)  四本 由郁2)

■キーワード
歩ける医療的ケア児, 気管切開管理, 計画的短期入院, 在宅療養支援
■要旨
 近年,医療依存度の高い重症児が増加しているが,所謂「歩ける医療的ケア児」に関する調査報告は少ない.そこで,当院での気管切開管理を要する歩ける医療的ケア児4症例の幼児期における計画的短期入院による在宅療養支援の現状について報告する.
 基礎疾患の内訳は,先天性中枢性低換気症候群2例,CHARGE症候群・後天性喉頭閉鎖症1例,早産児声門下狭窄症1例であり,全例に重度〜軽度発達遅滞の合併を認めた.各患児は1〜5歳時に,養育者の病気治療・母の重い介護負担や養育不安等の理由で当院障がい児病床へ紹介入院となった.自閉スペクトラム症に伴う自傷行為や他害行為を契機に保育士を新規導入した.早朝の起床から準夜帯の入眠まで看護師を早出・遅出による勤務調整にて配置し患児の危険行動の抑制を図るとともに,日中は日常生活動作の向上や発達促進を目的としたリハビリテーションとともに看護師による生活介護や保育士による遊び等で常時見守りと発達支援に努めた.長期入院を要した3例では,自宅外泊体験や退院前カンファレンスを経て在宅移行となった.更に全例で計画的短期入院による在宅療養支援を継続しながら,地域との情報共有・支援整備を図り,通園通学を含む安定した在宅生活に繋げた.
 歩ける医療的ケア児への幼児期における計画的短期入院による在宅療養支援は,家族の介護負担軽減だけでなく地域での安定した在宅生活に寄与するものと考えられた.


【症例報告】
■題名
結核とリンパ球性間質性肺炎の鑑別に肺生検が有用であったHIV感染児の2例
■著者
国立国際医療研究センター小児科
島田 真実  田中 瑞恵  大田 倫美  渥美 ゆかり  本田 真梨  吉本 優里  大熊 喜彰  兼重 昌夫  瓜生 英子  山中 純子  水上 愛弓  五石 圭司  佐藤 典子  七野 浩之

■キーワード
ヒト免疫不全ウイルス, リンパ球性間質性肺炎, 結核, 肺生検
■要旨
 ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV)感染症に対する多剤併用抗ウイルス療法(combination Anti-Retroviral Therapy:ART)導入に際して,日和見感染症の有無により治療方針が異なるため,治療前の合併症の診断が重要である.しかし実際には,臨床経過や画像所見のみでは困難な場合がある.症例1は4歳男児.発熱,喘鳴が遷延し,精査の結果HIV感染症と診断し紹介入院した.症状,画像所見からHIVによる呼吸器合併症の併存を考えたが,培養検査結果等からは診断に至らなかった.肺結核(Pulmonary tuberculosis:TB)とリンパ球性間質性肺炎(Lymphocytic Interstitial Pneumonia:LIP)の鑑別が困難であり,開胸肺生検を行いLIPと診断した.症例2は4歳女児.父親が後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)と診断され,スクリーニング検査で本児もHIV感染症と判明し,精査の結果,粟粒結核が疑われ紹介入院した.各抗酸菌塗抹検査等は陰性であり,TBとLIPの鑑別に苦慮し,胸腔鏡下肺生検を行いLIPと最終診断した.2例とも診断後はARTを開始し治療経過良好だった.TBとLIPは類似点が多く,またLIPの診断には肺生検が有用だった.


【症例報告】
■題名
Actinotignum schaaliiによる尿路感染症の2歳男児
■著者
あいち小児保健医療総合センター総合診療科1),同 臨床検査室2),国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科3)
小川 英輝1)3)  樋口 徹1)  塩原 拓実1)  高橋 尚子2)  伊藤 健太1)

■キーワード
尿路感染症, 膀胱憩室, グラム陽性桿菌, Actinotignum schaalii, Actinobaculum schaalii
■要旨
 グラム陽性桿菌(GPR;Gram Positive Rods)による尿路感染症は稀で,多くはコンタミネーションと判断される.Actinotignum schaaliiは質量分析の普及によって新たに報告されるようになった通性嫌気性GPRで,成人における膀胱炎や腎盂腎炎の報告が多い.未診断の膀胱憩室のある幼児におけるA. schaaliiによる尿路感染症の症例を経験した.生来健康な2歳男児で,発熱と下腹部痛で発症した.第2病日に腹部超音波検査で膀胱憩室が指摘された.膿尿を認め,尿路感染症の診断で入院となった.尿検体のグラム染色でGPRが検鏡され,嫌気性菌による感染症も考慮されたため,スルバクタム/アンピシリンで抗菌薬治療が開始された.第3病日に解熱し,全身状態も改善した.GPRの質量分析を依頼し,A. schaaliiと確定した.第5病日に内服のクラブラン酸/アモキシシリンへ変更し,計10日間の抗菌薬治療を行い,再燃なく治癒した.小児におけるA. schaaliiによる報告は,国外で8例の症例が報告されており,国内では会議録の1例のみである.8例中7例は膀胱炎や腎盂腎炎の診断で,全例で神経因性膀胱や腎尿路奇形などの背景疾患が認められた.腎泌尿器系の基礎疾患がある小児の尿路感染症でGPRが培養された場合,A. schaaliiの可能性を考慮し質量分析を用いた積極的な菌名の同定が必要である.


【症例報告】
■題名
病勢評価に腹部超音波検査が有用であった蛋白漏出性胃腸症
■著者
広島市立舟入市民病院小児科
田村 ベリース結実  佐藤 友紀  松本 千奈美  舩木 慎太郎  柴沼 栄希  出雲 大幹  吉野 修司  藤井 祐二  下薗 広行  松原 啓太  岡野 里香

■キーワード
蛋白漏出性胃腸症, 腸管サイトメガロウイルス感染症, 腹部超音波検査, 腸管壁血流
■要旨
 蛋白漏出性胃腸症は様々な原因により蛋白が消化管に漏出し低蛋白血症(低アルブミン血症)をきたし,軽度の浮腫から腹水貯留にいたるまで多彩な病態を呈する疾患群である.治療は原因疾患や重症度によって異なるため,原因と病勢を正確に評価することが重要である.今回,腸管サイトメガロウイルス感染症に伴う蛋白漏出性胃腸症に対して,腹部超音波検査で腸管壁肥厚および腸管壁血流を経時的に評価した.症例は2歳男児.全身浮腫,低蛋白血症(低アルブミン血症)の原因精査目的に入院した.99mTcヒト血清アルブミンシンチグラフィーで胃からの蛋白漏出を確認し,胃粘膜組織からCMV-DNAが検出され腸管CMV感染症に伴う蛋白漏出性胃腸症と診断した.腹部超音波検査で胃壁および小腸壁の肥厚や血流増加を認めた.臨床症状および血清アルブミン値の改善にともなって腹部超音波所見も改善した.小腸壁に増加した血流信号がもっとも早期に改善し,胃壁の肥厚や血流増加は臨床症状や血清アルブミン値の改善後も残存した.同時期に施行した上部消化管内視鏡検査では胃粘膜の発赤と浮腫が軽度残存し,超音波所見と一致した.腹部超音波検査は腸管CMV感染症による蛋白漏出性胃腸症の病勢判断に有用であった.


【論策】
■題名
インクルーシブ教育実現に向けた医療的ケアを要する先天性心疾患児の就園状況
■著者
産業医科大学小児科1),地域医療機能推進機構九州病院小児科2)
清水 大輔1)  荒木 俊介1)  宗内 淳2)  渡邉 まみ江2)  高橋 保彦2)  楠原 浩一1)

■キーワード
先天性心疾患, インクルーシブ教育, 自動体外式除細動器, 心肺蘇生法, 医療的ケア児
■要旨
 背景:先天性心疾患(CHD)児の救命率向上に伴い,在宅酸素療法や抗血栓療法などの継続した医療が必要な状態で社会参加が必要となる小児が増えている.しかし,保育施設への就園を敬遠されることも少なくない.本研究はインクルーシブ教育の実現のために,CHD児の就園状況,保育施設側の受け入れ体制について明らかにすることを目的とした.
 方法:北九州市内の障害児総合療育施設を除いた保育施設(362施設)を対象にCHD児及び医療的ケア児の就園状況・心肺蘇生法(CPR)講習開催率・自動体外式除細動器(AED)設置率・看護師在園率などに関して調査した.
 結果:238施設(66%)から回答を得た.26施設において31名(全園児0.18%)のCHD児が就園していた.過去5年間で医療的ケア児を受け入れた施設は8施設(3.4%)であった.CHD児の就園可否に関する質問に対しては71施設が回答し,45施設(63%)は保育士・看護師不足や知識不足等の理由で就園が困難と回答した.CPR受講率85%,AED設置率70%(認可外・地域保健自供保育施設:50%)と高かったが,看護師の在園率は9%であった.
 結語:CHD児の就園を促進させ,インクルーシブ教育を実現するためには,看護師・保育士の人的資本の強化が重要であり,CHDについての知識普及のために医療機関からの継続した啓発活動の必要性が示唆された.

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