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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:20.3.16)
第124巻 第3号/令和2年3月1日
Vol.124, No.3, March 2020
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第122回日本小児科学会学術集会 |
日本小児科学会賞受賞記念講演 |
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清野 佳紀 495 |
教育講演 |
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高橋 尚人 502 |
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八代 健太 509 |
3. |
新生児期に備わる内在性幹細胞が関連した脳障害後の神経再生メカニズム
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神農 英雄 520 |
原 著 |
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赤羽 裕一,他 526 |
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朱田 博聖,他 533 |
症例報告 |
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川合 玲子,他 539 |
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柴沼 栄希,他 545 |
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田野 由紀子,他 550 |
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横川 真理,他 555 |
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澤田 真子,他 562 |
論 策 |
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小保内 俊雅,他 568 |
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山倉 慎二 575 |
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地方会抄録(高知・東京・山形・岩手・東海・群馬・中部・山陰・石川)
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581 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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618 |
日本小児科学会医療安全委員会主催 |
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第11回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)コースの報告
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622 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会主催 |
公開シンポジウム 子どもの権利条約批准25周年記念 |
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623 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合30 |
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624 |
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626 |
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628 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2020年62巻1号目次
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633 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2020年62巻2号目次
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634 |
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637 |
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【原著】
■題名
乳幼児マイコプラズマ肺炎の臨床的特徴と非定型肺炎診断スコアリングの有用性
■著者
名寄市立総合病院小児科 赤羽 裕一 伊藤 啓太 山村 日向子 堀井 百祐 中村 英記 平野 至規 室野 晃一
■キーワード
乳幼児マイコプラズマ肺炎, 臨床的特徴, 非定型肺炎診断スコアリング, LAMP法
■要旨
LAMP法により診断した小児マイコプラズマ肺炎113例を対象として,小児の非定型肺炎診断スコアリング項目を中心に,5歳以下52例と6歳以上61例を比較し乳幼児マイコプラズマ肺炎の臨床的特徴および非定型肺炎診断スコアリングの有用性を後方視的に検討した.
5歳以下で乾性咳嗽を認めた症例は14例(27%)と6歳以上と比較して有意に少なく,また胸部聴診所見でwheezesを聴取した症例は9例(17%)と有意に多い結果であった.胸部X線写真では区域性肺炎像を31例(60%)と6歳以上と同等に高率に認めた.診断時の白血球数は8.5±3.0×103/μLと6歳以上と比較して有意に高く,CRPは1.9±2.1 mg/dLと有意に低い結果であったがどちらの項目も著明な上昇を認めなかった.さらにスコアリング項目のうち年齢を除外した8項目での点数は4.6±1.2であり,6歳以上の点数5.2±1.1と比較して有意に低く,その平均値はスコアリングの診断基準未満であった.
5歳以下の乳幼児マイコプラズマ肺炎は咳嗽や聴診所見などの臨床像のみから診断することは難しく,現在の非定型肺炎診断スコアリングをそのまま適用することはできない.しかし白血球数やCRPの上昇が軽度である点や,胸部X線写真で区域性肺炎像を認めやすいといった点では6歳以上の年長児と同様の典型的所見を認める可能性が高く診断への一助になり得ると考えられた.
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【原著】
■題名
コインによる上部食道異物に対するマギール鉗子を用いた直視下摘出法の症例集積研究
■著者
東京都立小児総合医療センター救命救急科1),国立国際医療研究センター国際医療協力局人材開発部2) 朱田 博聖1) 萩原 佑亮1) 井上 信明2)
■キーワード
救急外来, 上部食道異物, コイン, マギール鉗子
■要旨
【背景】コインは,小児の食道異物において最も多い原因である.多くは自然排泄されるが,食道や胃に留まる異物はフォーリーカテーテルや内視鏡を用いて摘出される.一方,上部食道に留まるコインは,救急外来で直接喉頭鏡とマギール鉗子を用いて直視下に摘出する方法が海外より報告されているが,我が国からの報告では救急外来で摘出手技を完遂した報告はいまだない.今回当院の救急外来で同方法を実施した8例をまとめた.【方法】2015年10月から2018年4月まで東京都立小児総合医療センター救急外来で,直接喉頭鏡とマギール鉗子を用いてコインを摘出された症例を抽出した.性別,年齢,来院時に有した症状,コインの種類,術者,処置の所要時間,異物除去成功の有無,フォーリーカテーテル使用の有無,合併症の有無,転帰の情報を収集し記載した.【結果】8例が対象となり,全ての症例のコインが救急外来で摘出され,手技に要した時間の中央値は31分(四分位範囲,27分〜39分)であった.なお,全例が気管挿管による気道保護を行った後に異物が摘出されていた.全例が24時間以内に退院しており,合併症は軽微な口腔内出血が1例に認められた.【結論】本方法に関する海外報告と同様に異物摘出の成功率は高く,上部食道に留まるコインに対して救急外来で直接喉頭鏡とマギール鉗子を用いた直視下摘出法は,我が国においても治療選択肢の1つとなると考えられた.
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【症例報告】
■題名
川崎病にけいれん・意識障害を合併した4例
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 循環器科2),さいたま市立病院小児科3),練馬光が丘病院小児科4),川口市立医療センター小児科5),横浜市立市民病院小児科6),東京都立小児総合医療センター臨床研究支援センター7) 川合 玲子1) 宮田 功一2) 幡谷 浩史1) 玉目 琢也3) 荒木 聡4) 西岡 正人5) 山下 行雄6) 三浦 大2)7)
■キーワード
川崎病, 中枢神経合併症, けいれん, 意識障害, ステロイドパルス療法
■要旨
川崎病の中枢神経合併症は,一過性で予後良好であることが多いとされている一方で,過去には死亡例や後遺症例の報告も散見され,注意を要する.我々は川崎病経過中にけいれん・意識障害を呈した4症例を経験した.発症年齢は生後5か月から3歳8か月だった.4症例のうち3例が川崎病診断当日かそれ以前に中枢神経症状を呈した.けいれんを3例,軽度から重度の意識障害を2例で認めた.小林スコアは2〜11点で,診断時の血液検査には特徴を認めなかった.全例が診断日に静注用ガンマグロブリン(IVIG)治療を開始したが初期治療不応で,多臓器合併症を呈し,2例で人工呼吸管理を要する呼吸不全を認めた.1例が多臓器不全のため死亡し,1例が左前下行枝に9.2 mmの巨大冠動脈瘤を残し,1例が前頭葉萎縮を残した.早期に静注用メチルプレドニゾロンパルス(IVMP)初期併用療法を急性脳症に準じて3日間行い,解熱が得られるまでIVIGとIVMPの追加投与を行った1例が,後遺症なく治癒した.自験例の経過から,けいれん・意識障害を呈する川崎病は多臓器合併症により重症化し後遺症を残す可能性,IVMP初期併用療法が早期に炎症を鎮静した可能性が考えられた.川崎病にけいれん・意識障害を合併した場合には死亡例や後遺症例が存在することを考慮し,高度医療機関での強力な初期治療を検討すべきである.
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【症例報告】
■題名
脳神経症状を主症状とした急性弛緩性脊髄炎の2例
■著者
広島市立舟入市民病院小児科1),広島大学病院小児科2) 柴沼 栄希1) 藤井 裕士1) 浅野 孝基1) 舩木 慎太郎1) 松本 千奈実1) 出雲 大幹1) 田村 ベリース結実1) 佐藤 友紀1) 吉野 修司1) 古江 健樹1) 下薗 広行1) 松原 啓太1) 岡野 里香1) 石川 暢恒2)
■キーワード
急性弛緩性脊髄炎, 急性弛緩性麻痺, エンテロウイルスD68, 脳神経症状, 顔面神経麻痺
■要旨
近年,エンテロウイルスD-68(EV-D68)の流行に際して,MRIで脊髄病変を伴う急性弛緩性麻痺の症例が多数報告され,急性弛緩性脊髄炎(AFM;acute flaccid myelitis)と定義され注目されている.今回我々はEV-D68の流行期に顕著な脳神経症状を呈したAFMの2症例を経験した.症例1は6歳1か月男児,症例2は4か月男児で,ともに先行する発熱と嘔吐を認め,その後脳神経症状を伴う急性弛緩性麻痺を発症した.MRI T2強調像で頸髄中心に内部の高信号を,髄液検査で単核球優位の細胞数増多を認め,AFMと診断した.2症例とも咽頭ぬぐい液よりEV-D68が検出された.
今回経験した2症例はともに脳神経症状が顕著であり,特に症例2は右顔面神経麻痺が他の神経症状に先行して出現していた.EV-D68の流行期において脳神経症状を認めた場合は,鑑別としてEV-D68の関与が疑われるAFMも考慮すべきである.
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【症例報告】
■題名
尿蛋白を契機に発見された後腹膜奇形腫
■著者
大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院小児科1),同 小児外科2) 田野 由紀子1) 納富 誠司郎1) 片山 修一2) 脇 研自1) 今井 剛1)
■キーワード
奇形腫, 後腹膜, 尿蛋白, 尿検査, 小児
■要旨
後腹膜奇形腫は腫瘤触知や腹痛等の自覚症状を契機に診断されることが多い.今回私たちは,尿蛋白を契機に後腹膜奇形腫の診断に至った小児例を経験したので報告する.症例は3歳11か月の女児,A群溶血性レンサ球菌咽頭炎後の尿蛋白を主訴に紹介となった.3歳8か月時に受診した3歳児検診で尿蛋白を指摘されていたが,放置されていた.左側腹部に腫瘤を触知し,腹部超音波検査で左腎臓に接した腫瘍が発見された.腫瘍は左腎臓と左腎静脈を圧排していたが,合併症なく完全摘出され,奇形腫と診断した.腫瘍摘出後に尿蛋白は消失した.当院で後腹膜または卵巣原発の奇形腫と診断され,診断時に尿検査が行われていた15歳未満小児例を後方視的に検討したところ,6例中5例に尿蛋白が認められた.以上より,後腹膜および卵巣原発の奇形腫と尿蛋白の関連性が示唆された.後腹膜奇形腫は比較的予後良好な疾患であるが,破裂や感染,手術に伴う有害事象にも注意が必要であり,早期発見が望まれる.尿蛋白は小児科医が日常診療において遭遇することの多い検査異常である.尿蛋白陽性の小児を診察する際には,後腹膜や卵巣に発生した奇形腫も念頭に置いた腹部診察を行い,必要に応じて超音波検査を施行することが求められる.
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【症例報告】
■題名
胎児期から経過を追えたPIK3CA変異を有する巨脳症―毛細血管奇形症候群
■著者
佐世保市総合医療センター小児科 横川 真理 原口 康平 大坪 善数 角 至一郎
■キーワード
大頭症, 巨脳症, 巨脳症―毛細血管奇形症候群, mTOR, PIK3CA変異
■要旨
巨脳症は大頭症のうち脳実質の過形成をきたすものであり,進行性の巨脳症と毛細血管奇形をきたす遺伝性疾患として巨脳症―毛細血管奇形症候群(megalencephaly-capillary malformation;MCAP)がある.細胞増殖において重要な役割を担うシグナル伝達経路であるmTOR経路の機能亢進が主病態であり,細胞増殖が亢進することで巨脳症や水頭症が進行する.mTOR経路に関与するPIK3CA,PIK3R2,AKT3遺伝子の変異が報告されている.今回我々は,胎児期からの著明な頭囲拡大と特徴的な血管奇形があり,遺伝子検査でPIK3CA変異(p.His1047Tyr)が同定され,MCAPと診断した症例を経験した.大血管の異常として右側大動脈弓,下大静脈欠損―奇静脈結合を認め,甲状腺機能低下症と喉頭軟化症を合併した.新生児期の頭部MRIでは水頭症はなかったが,生後5か月頃から水頭症が進行し,生後6か月で脳室―腹腔短絡術を施行した.進行性の疾患であるが,現在のところ既存のmTOR阻害薬の有効性は示されておらず,合併症に対する対症療法のみである.脳の過形成の進行に伴う小脳扁桃ヘルニアや,先天性心疾患および不整脈による致死的な合併症を併発することがあるため,遺伝子検査によりMCAPを早期診断することで,合併症を予測し早期介入を行うことが重要である.
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【症例報告】
■題名
反復性尿路感染症を呈した脊髄硬膜外くも膜囊胞の幼児
■著者
東京北医療センター小児科1),同 総合診療科2),東京都立小児総合医療センター脳神経外科3) 澤田 真子1) 宮井 健太郎1) 立川 聖哉1)2) 齋藤 洋子1) 平石 知佳1) 元吉 八重子1) 井原 哲3) 清原 鋼二1)
■キーワード
脊髄くも膜囊胞, 膀胱直腸障害, Bladder and Bowel Dysfunction, 膀胱尿管逆流, 反復性尿路感染症
■要旨
膀胱直腸障害(Bladder and Bowel Dysfunction:BBD)は便秘や排尿障害などを呈す病態で,尿路感染症のリスク因子であることが知られているが,脊髄疾患の一症状としても起こり得る.今回,BBDを端緒とする急性巣状細菌性腎炎から脊髄硬膜外くも膜囊胞の診断に至り,外科的介入により慢性的な便秘の改善と反復性尿路感染症を防ぎ得た症例を報告する.症例は乳児期から便秘の経過のある2歳女児.発熱を主訴に来院した.身体所見上,外表上の異常や明らかな運動・感覚障害を認めなかった.各種検査により急性腎盂腎炎と診断され入院となった.入院後造影CTを施行したところ,右腎の腫大および平衡相での造影不良域の多発に加え,脊柱管L1椎体レベルで硬膜囊左背側に低吸収域を認めた.腰椎MRIでは同部位に硬膜外囊胞性病変を認め,急性巣状細菌性腎炎および脊髄硬膜外くも膜囊胞と診断した.排尿時膀胱尿道造影で右膀胱尿管逆流grade Iに加え残尿を認めた.予防的抗菌薬内服下においても2か月後に再度急性腎盂腎炎に罹患し,硬膜外くも膜囊胞に起因したBBDおよび反復性尿路感染症と考え,腎盂腎炎加療後早期にくも膜囊胞切除術を施行した.術後は尿路感染症の再罹患なく経過し,便秘の改善を認めた.尿路感染を呈する小児では便秘や排尿障害などのBBDの検索に加え,その原因となりうる脊髄病変も考慮する必要がある.
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【論策】
■題名
死後検査に対する医療者の意識
■著者
東京都保健医療公社多摩北部医療センター小児科1),国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第二部2),東京女子医科大学母子総合医療センター3) 小保内 俊雅1)3) 伊藤 雅之2) 仁志田 博司3)
■キーワード
乳幼児の予期せぬ突然死(SUDI), 乳幼児突然死症候群(SIDS), 死因究明, 子どもの死亡登録検証制度(CDR)
■要旨
実効性のある子どもの死亡登録検証制度を実施するには,精度の高い死亡診断が必須であり,詳細な死後検査が不可欠である.しかし,我が国には異状死体の解剖率が極めて低い現状がある.解剖率に及ぼす医師の要因を明らかにするためにアンケート調査を実施した.
結果,解剖の意義や重要性,解剖後の遺体の状態などを充分に説明できる医師が少ない,また,死後検査の目的によって実施主体や方法が異なること等を理解している医師が少ないことが判った.充分な臨床経験を積めるほど症例が多くはないうえに,突然死取り扱いに関する教育が実施されていないことが背景にあることが示唆された.
解剖率を改善し死因究明を推進するには,異状死体取扱い指針を策定し広く医療者の理解を促進すること,また,医学教育や研修医教育など様々な機会をとらえて異状死体取扱い研修を実施する必要があることが示された.
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【論策】
■題名
地域別の在宅重症心身障害児者対応多職種連携研修
■著者
つばさ静岡 山倉 慎二
■キーワード
重症心身障害児(者), 在宅医療, 多職種連携
■要旨
昨今,医療を必要とする在宅の重症心身障害児者は増加傾向にあり,その在宅医療を推進するための事業が自治体を中心として行われている.しかし,医療・福祉の環境は地域によって歴然とした格差があり,その地域の実情を踏まえた現実的な支援を目指す必要があり,そのためには医師を含めた多職種によるネットワーク作りが重要である.静岡県では在宅重症心身障害児者を支援するための多職種研修を,地域性が考慮された福祉圏域(2017年度は6圏域,2018年度は8圏域)に分かれて実施した.2017年度は県全体で医師70名を含む283名の参加者が,2018年度は医師78名を含む404名の参加者があった.医師,看護師,相談支援専門員,介護・福祉従事者のほか,教育関係者,行政関係者まで多岐に亘る職種の参加者があり,研修後のアンケートでも,「たいへん参考になった」「参考になった」を合わせて,2017年度が99.5%,2018年度が100%と高い評価を得た.今回の研修は地域の多職種による顔の見える関係づくりと,地域に根差したネットワークの構築に役立ったと考える.
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