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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:19.11.19)
第123巻 第11号/令和元年11月1日
Vol.123, No.11, November 2019
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日本新生児成育医学会推薦総説 |
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臨床での血清ビリルビン測定の問題点:直接ビリルビンを中心に
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伊藤 進,他 1617 |
原 著 |
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七條 了宣,他 1625 |
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野村 裕一,他 1634 |
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鈴木 智,他 1640 |
症例報告 |
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三浦 文武,他 1648 |
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吉田 太郎,他 1654 |
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出澤 洋人,他 1660 |
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田原 昌博,他 1666 |
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平野 恵子,他 1673 |
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桑原 祐也,他 1681 |
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安岡 竜平,他 1686 |
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梅原 真帆,他 1693 |
論 策 |
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是松 聖悟,他 1699 |
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1704 |
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1725 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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No. 83 2ルームテント内での一酸化炭素による中毒
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1726 |
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No. 84 ドライアイスを充填密封したことにより破裂したペットボトルによる手裂創
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1729 |
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No. 85 キャスター付きキャリーバッグからの転落による頭部外傷
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1733 |
日本小児科学会医療安全委員会主催 |
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第10回Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)コースの報告
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1735 |
日本小児科学会子どもの死亡登録・検証委員会報告 |
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わが国における小児死亡の疫学とチャイルド・デス・レビュー制度での検証における課題
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沼口 敦,他 1736 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
リレーコラム キャリアの積み方─私の場合28 |
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1751 |
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日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2019年61巻10号目次
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1752 |
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1755 |
【原著】
■題名
出生時体格別極低出生体重児の就学前までの身体発育の検討
■著者
国立病院機構佐賀病院総合周産期母子医療センター小児科 七條 了宣 冨野 広通 江頭 政和 松永 友佳 江頭 智子 水上 朋子 石田 有莉 江口 啓意 飯田 千晶 高柳 俊光
■キーワード
極低出生体重児, AFD(appropriate for dates), LFD(light for dates), SFD(small for dates), 身体発育
■要旨
極低出生体重児の6歳までの身体発育の軌跡を出生体格別に比較検討した.対象は当院を生存退院し,外来診療録で下記のすべての時相における身体計測値を確認できた246名.対象を出生時の身体計測値よりAFD群(appropriate for dates,n=159,27.6±2.5週),LFD群(light for dates,n=23,28.7±2.7週),SFD群(small for dates,n=64,30.0±2.9週)に分け,更に男女別に分類した.出生時,予定日,暦年齢1歳,2歳,3歳,6歳までの身長,体重,BMIの各zスコアを算出し,比較検討した.その結果,就学前に至るまでのすべての時相において,SFD群は他の2群と比較して有意に体格zスコアが低く,この傾向は男児に顕著であった.AFD群は予定日体重,1歳時の体重およびBMIでzスコアの有意差を認めたが,2歳以降はすべての時相で男女差は認めず,3群の中で最も良好な身体発育を辿った.一方,LFD群は1歳以降,SFD群より身長体重zスコアが有意に大きく,成長の軌跡はAFD群に近似した.今回の検討から就学前にかけての身体発育はSFD群で不良であり,特にSFD男児でこの傾向が顕著であることが示された.
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【原著】
■題名
不全型川崎病の増加には積極的診断が関与する
■著者
鹿児島市立病院小児科1),自治医科大学公衆衛生学教室2) 野村 裕一1) 屋代 真弓2) 益田 君教1) 中村 好一2)
■キーワード
不全型川崎病, 積極的診断・治療, 冠動脈異常, 早期治療
■要旨
川崎病不全型が増加傾向である理由について調査した.【対象と方法】対象は第20回〜24回川崎病全国調査(2007年〜2016年)の不全型例26,432例で,主要症状数(症状数)や急性期の冠動脈異常(aCAA),免疫グロブリン治療(IVIG)施行状況について調査した.【結果】不全型例は20回の17%から24回の21%へと増加し,症状数は3〜4症状がほとんど(94%)であった.IVIG施行は20回の61%から毎回増加し24回は80%だった.1〜4病日の早期に治療が施行された例は26%から30%に増加した.IVIG施行はaCAAとは関係はなく93%はaCAAを認めなかった.aCAAは症状数が少ないほど高頻度だった.【考案】症状数が少ない川崎病はaCAAが診断の契機となる場合が多いことから,症状数が少ないほどaCAAが多いことは当然と考えられる.不全型の多くはaCAAがなく経過を含めて総合的に診断されていることが理解された.2007年に不全型例に冠動脈異常(CAA)が多いことが報告されたが,その後CAAをきたさないように適切に不全型を診断する必要性が強調された.その認識のもとに,不全型の診断・治療が積極的に行われるようになり,不全型例の増加をきたしたものと考えられた.【結語】CAAリスクを考慮した積極的な診断・治療を容認する認識の浸透が不全型川崎病増加の理由と考えられた.
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【原著】
■題名
短期入所施設における新たな家族支援の現状と課題
■著者
国立成育医療研究センター神経内科 鈴木 智 久保田 雅也
■キーワード
小児在宅医療, 医療型短期入所施設, 医療的ケア児, レスパイト, 短期入所
■要旨
医療レベルの向上とともに重症心身障害児・者あるいは医療的ケアを行いながら在宅生活を送る者が増える一方,高度化した医療的ケアやその長期化する生活は介護者の生活を制限した上で成り立つ側面を持つ.今回,開設後2年の小児医療型短期入所施設「もみじの家」における実績報告とともに「もみじの家」で行っている余暇活動の充実化や利用者家族の新たな場として施設を提供する取り組みの評価を質問紙調査を用いて行った.その結果から介護者らは自身の休息のみならず利用者本人が満足して入所期間を過ごすことを望み,またケアを任せ本人や家族と向き合う機会や場として短期入所施設を提供することが家族の居場所を広げ,介護者の精神的負担の軽減に寄与しうることが推察された.利用者や利用者家族の望みを叶える施設の持続可能な運営は現行の障害福祉サービス費のみでは難しく,拡大する需要に対応し利用者およびその家族へ心地よい環境を提供するためには新たな制度や補助金等の検討,そして社会への周知が不可欠であると考える.
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【症例報告】
■題名
右室流出路形成術を行ったFallot四徴症合併の尾部退行症候群
■著者
弘前大学大学院医学研究科小児科学講座1),国立病院機構青森病院小児科2),弘前大学大学院保健学研究科3) 三浦 文武1) 花田 勇1) 嶋田 淳1) 北川 陽介1) 山本 達也1) 大谷 勝記1) 藤田 浩史2) 高橋 徹3) 米坂 勧3) 伊藤 悦朗1)
■キーワード
尾部退行症候群, Fallot四徴症, 右室流出路形成, 肺低形成, 多発奇形
■要旨
尾部退行症候群(Caudal Regression Syndrome:CRS)は様々な奇形をきたす症候群で糖尿病合併妊婦から出生する頻度が高いとされている.これまでに重症CRSの生存例の報告はなく,心奇形も合併するとされているが,心臓手術の報告例も見当たらない.症例はコントロール不良の糖尿病を合併した母より出生した.胎児期からCRSと心奇形を疑い,出生後に肺低形成,Fallot四徴症(Tetralogy of Fallot:TOF)を合併したCRSと診断した.2歳1か月にTOFに対して右室流出路形成術(Right Ventricular Outflow Tract Reconstruction:RVOTR)を行い,良好な経過が得られた.CRSの心臓手術は,症状の改善や在宅移行率の向上に寄与する可能性があり,治療の選択肢となりうる.
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【症例報告】
■題名
インフルエンザ感染後に辺縁系症状を繰り返した自己免疫性脳炎・脳症
■著者
岩手医科大学医学部小児科学講座1),国立病院機構静岡てんかん神経医療センター2) 吉田 太郎1) 亀井 淳1) 高橋 幸利2) 赤坂 真奈美1) 荒谷 菜海1) 浅見 麻耶1) 谷藤 幸子1) 草野 修司1) 小山 耕太郎1)
■キーワード
自己免疫性脳炎・脳症, インフルエンザ, 辺縁系症状, 抗NMDA型グルタミン酸受容体抗体
■要旨
インフルエンザ感染後の回復期に辺縁系症状で発症し,一旦症状が改善しても時に再燃する自己免疫性脳炎・脳症の報告が散見される.今回経験した自己免疫性脳炎・脳症の1例を報告する.症例は13歳の男子.近医でインフルエンザB感染症と診断されラニナミビルを吸入した.5日後に解熱せず,意味不明に叫ぶなどの辺縁系症状が出現し入院した.翌日に解熱したが辺縁系症状は持続した.髄液所見,脳波と頭部MRIに異常はなかった.自己免疫性脳炎・脳症の可能性があると判断し,7病日からステロイドパルス療法を施行し,症状の改善が得られ14病日に退院した.後日報告された髄液中抗NMDA型グルタミン酸受容体抗体(anti-glutamate receptor antibody,GluR抗体)(ELISA)が高値であり,抗NMDA型GluR抗体(ELISA)陽性の自己免疫性脳炎・脳症と診断した.32,54病日に再発し,いずれもステロイドパルス療法で改善した.2回目の再発後,再発予防のためプレドニゾロン内服を開始した.その後2週間毎に漸減したが,プレドニゾロン内服開始から4か月が経過し,症状再燃がない.インフルエンザ感染後に辺縁系症状(熱せん妄を除く)を呈した国内の症例報告をまとめたところ,短期間に単相性の経過で改善する症例がある一方で自験例を含めた3例はステロイド薬使用後も再燃がみられた.インフルエンザ感染後の回復期に辺縁系症状が遷延する場合は自己免疫性脳炎・脳症の可能性があり,ステロイドパルス療法などの免疫調整療法を考慮する必要がある.
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【症例報告】
■題名
非侵襲的陽圧換気療法を導入した脊髄性筋萎縮症1型の2例
■著者
茨城県立こども病院小児科1),筑波大学医学医療系小児科2),茨城県立医療大学小児科3) 出澤 洋人1) 本山 景一1) 田中 竜太1)2) 鈴木 竜太郎1) 福島 富士子1) 岩崎 信明1)3) 小林 千恵1)2) 泉 維昌1)
■キーワード
脊髄性筋萎縮症, 非侵襲的陽圧換気療法, 緩和医療
■要旨
【背景】脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy;SMA)1型は自然経過では呼吸筋麻痺が進行し2歳までに死亡する,重篤な下位運動ニューロン病である.画期的な治療薬であるヌシネルセンの登場でその予後は大きく改善されようとしているが,長期生存に人工呼吸管理が必要な症例は残存すると考えられる.非侵襲的陽圧換気療法(non-invasive positive pressure ventilation;NPPV)は,SMA1型において気管切開を回避する延命治療として有用であるが,実践に際しては様々な課題に直面する.【方法】ヌシネルセン登場前に当院で経験されたSMA1型の2例を振り返り,NPPVの有用性と課題について整理した.【症例】2例とも暫定的な救命の手立てとしてNPPVを導入された.症例1は,生後4か月で在宅移行しNPPVを継続されたが,気道閉塞による蘇生や救急搬送を繰り返し,1歳3か月時の入院で看取られた.症例2は,5か月時に肺炎で入院してから在宅移行できずに集中治療病棟でNPPVを継続されたまま,2歳4か月で看取られた.【考察】SMA1型におけるNPPVは,暫定的な救命の手立てとして導入されやすい.しかし,終末期には気道閉塞の反復を招き,患児の苦痛や家族の苦悩を深めることや,在宅移行を遠ざける懸念があり,早期から緩和医療の視点を持つことが不可欠である.
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【症例報告】
■題名
先天性肺気道奇形を合併したScimitar症候群
■著者
あかね会土谷総合病院小児科 田原 昌博 森田 理沙 浦山 耕太郎 杉野 充伸
■キーワード
Scimitar症候群, 先天性肺気道奇形, 異常血管, 肺静脈閉塞, 胸膜癒着
■要旨
先天性肺気道奇形(CPAM)は呼吸障害や感染,稀に悪性腫瘍も合併する.一方,Scimitar症候群は肺高血圧や肺分画症などを合併することが知られているが,CPAM合併の報告は無い.症例は0歳女児.在胎35週,体重2,492 gで出生し,出生後に呼吸障害を認め,CTで腹腔動脈から右肺へ還流する異常血管を伴うCPAMを合併したScimitar症候群,心房中隔欠損症と診断した.その後呼吸障害が自然軽快したため待機手術方針とした.生後1か月時のCTで軽度の右胸膜肥厚を認め,肺炎罹患後の1歳9か月時には右肺生検でCPAM Stocker 3型と組織診断したが,強固な胸膜癒着も認め,右肺全摘出困難と判断された.3歳時のCT,心カテーテル検査で右肺動脈の順行性血流を認めず,Scimitar静脈閉塞を認めた.腹腔動脈からの異常血管の血流は右肺を経て右肺動脈を逆行し,左肺動脈へ還流していた.12歳時の心カテーテル検査では異常血管の血流は少なく,左肺高血圧を認めず,経過観察方針としている.CPAMを伴うScimitar症候群では無症状でも組織学的に炎症や癒着を呈しやすい可能性があり,胸膜癒着の回避,健常肺の発育,悪性腫瘍合併のリスク軽減などを考慮し,早期手術を検討すべきと考えた.本症例はCPAMを伴うScimitar症候群の初めての報告であり,今後の症例の蓄積が望ましい.
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【症例報告】
■題名
酵素補充療法中に腸間膜リンパ節の石灰化と難聴を呈した1型Gaucher病
■著者
磐田市立総合病院小児科1),浜松医科大学小児科2) 平野 恵子1) 遠藤 彰1) 白井 眞美1) 福田 冬季子2) 松林 朋子2)
■キーワード
Gaucher病, 腸間膜リンパ節石灰化, 内耳性難聴, マンノース受容体, ベラグルセラーゼアルファ
■要旨
乳児期に血小板減少,貧血,肝脾腫で発症し,酵素補充療法施行中に腸間膜リンパ節石灰化と両側感音性内耳性難聴を併発したGaucher病の小児例を経験した.腸間膜リンパ節,十二指腸粘膜,内耳粘膜の生検を行い,各組織へのGaucher細胞浸潤を確認した.酵素製剤はマンノース受容体を介して細胞内に取り込まれるため,消化管組織のマンノース受容体(CD206)免疫染色を施行したところ,腸間膜リンパ節のマクロファージはマンノース受容体を発現していたが,十二指腸粘膜組織のマクロファージでは発現を確認できなかった.組織への酵素製剤取り込み増加を期待して,製剤をイミグルセラーゼから高マンノース型のベラグルセラーゼアルファに変更した.腸管粘膜浮腫による激しい下痢と難聴が続いたため不登校になっていたが,その後徐々にリンパ節石灰化の進行が停止し,腹痛・下痢などの腹部症状が軽快したため,高校入学を機に復学した.難聴は酵素製剤変更後も急速に進行し,人工内耳留置術を行った.
腹腔内リンパ節の石灰化や内耳性難聴は,酵素補充療法では防ぐことができないGaucher病の稀な合併症で患者の生活の質を著しく低下させる.本例は消化管組織のマンノース受容体染色を施行した初めての症例であり,腸間膜リンパ節の石灰化に対しては高マンノース型酵素製剤が有効である可能性が示唆された.
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【症例報告】
■題名
非結核性抗酸菌症を合併した嚢胞性線維症
■著者
岐阜市民病院小児科 桑原 祐也 小木曽 美紀 横山 能文 篠田 邦大
■キーワード
囊胞性線維症, 非結核性抗酸菌症, M. avium, ドルナーゼアルファ
■要旨
嚢胞性線維症は欧米では比較的頻度の高い疾患であるが,本邦では極めてまれである.今回我々は非結核性抗酸菌症を合併した嚢胞性線維症の1例を経験したため報告する.症例は15歳,女子.2週間ほど前から持続する発熱,咳嗽があり当院へ入院.抗菌薬加療を開始したが呼吸状態の増悪を認め,人工呼吸器管理となった.喀痰検査にてM. aviumを検出したため非結核性抗酸菌症と診断して多剤併用療法を行った.非結核性抗酸菌症を合併したことから嚢胞性線維症を疑い,汗クロライド試験,遺伝子検査にて嚢胞性線維症と診断した.ドルナーゼアルファ吸入療法,理学療法を行い,呼吸状態は改善し酸素投与不要となった.嚢胞性線維症は非常にまれな疾患ではあるが,一般的な感染コントロールを行っても呼吸状態の改善が難しい呼吸器疾患や,小児において非結核性抗酸菌症を合併するような場合には,鑑別疾患の1つに嚢胞性線維症を挙げる必要がある.
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【症例報告】
■題名
高熱と炎症反応を呈し腸間膜脂肪織炎を認めたIgA血管炎
■著者
あいち小児保健総合医療センター感染免疫科1),同 腎臓科2) 安岡 竜平1) 阿部 直紀1) 古波蔵 都秋1) 中瀬古 春奈1) 河邉 慎司1) 田中 一樹2) 日比野 聡2) 藤田 直也2) 岩田 直美1)
■キーワード
IgA血管炎, 高熱, C反応蛋白, 腸間膜脂肪織炎, 腹部超音波検査
■要旨
IgA血管炎は小児期の血管炎で最も頻度が高く,紫斑,関節症状,消化器症状,腎炎を特徴とする.微熱を伴うことや炎症反応の軽度な上昇を認めることがあるが,高熱や炎症反応が高値となる報告は稀であり,どのような症例が高熱をきたすか,炎症反応が高値となるかは不明である.今回,持続する発熱と炎症反応の高値をともなったIgA血管炎と考えられる小児2例を経験した.症例1は8歳の男児で,発熱,紫斑を認め前医へ入院した際にCRP 11 mg/dLと炎症反応の上昇を指摘された.その後腹痛が悪化し,当院へ転院となった.症例2は発熱と腹痛で発症し,CRP 8 mg/dLと炎症反応の上昇を認めた.黒色便をきたして当院へ転院となった.前医での便ヘモグロビン検査は上昇していたが,転院後に施行した上下部消化管内視鏡では異常を指摘できなかった.2例とも腹部超音波検査で,小腸壁の全周性肥厚に加えて腸間膜脂肪織の肥厚と輝度上昇,カラードップラーによる血流の増多を認め,腸間膜脂肪織炎の併発が考えられた.
IgA血管炎に,持続する発熱や腹痛,炎症反応高値を認めた際には腸間膜脂肪織炎の可能性を考慮すべきであり,診断には腹部超音波検査が有用であった.
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【症例報告】
■題名
飴玉による窒息を契機に陰圧性肺胞出血を発症したDown症候群
■著者
JAとりで総合医療センター小児科 梅原 真帆 鈴木 奈都子 武井 陽 寺内 真理子 太田 正康
■キーワード
陰圧性肺胞出血, 陰圧性肺水腫, 呼吸不全, 窒息, Down症候群
■要旨
症例は,Down症候群の12歳男児.大きな飴玉を舐めている最中に,のどに詰まらせて顔色不良となった.父が児の背中を叩いたところ,児が飴玉を飲み込んで顔色不良は改善したが,経皮的酸素飽和度(SpO2)70%台で,著明な咳嗽と,喀血を認めた.呼吸音は全体に減弱し,胸部X線にて,両側全肺野にびまん性の浸潤影を認めた.胸部単純CTでは,浸潤影は肺区域に一致せず,気管支透亮像を伴っており,気管支鏡検査で肺胞出血と診断した.酸素投与を4日間行い,呼吸状態は改善した.窒息が解除された直後に発症し,数日で軽快した経過から,上気道閉塞に起因した陰圧性肺胞出血(negative pressure pulmonary hemorrhage;NPPH)と考えた.
Down症候群の児は,上気道の構造的,機能的な異常のため誤嚥しやすく,肺の毛細血管の脆弱性から扁桃摘出術などの手術後に陰圧性肺水腫(negative pressure pulmonary edema;NPPE)を起こすリスクを有するとされるが,窒息によるNPPE/NPPHの報告はこれまでにない.
上気道閉塞が解除された後に急激に呼吸不全を発症し,胸部X線やCTで肺区域に一致しないびまん性の浸潤影を認める場合,NPPE/NPPHを鑑別する必要がある.
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【論策】
■題名
県補助事業を用いたシステム構築による小児在宅医療のすすめ
■著者
中津市立中津市民病院1),大分大学2),坂ノ市病院3),大分県立病院4),恵の聖母の家5) 是松 聖悟1)2) 長濱 明日香3) 赤石 睦美4) 佐藤 圭右5) 飯田 浩一4)
■キーワード
小児在宅医療, 医療的ケア, 多職種連携, 特別支援学校, 卒前卒後教育
■要旨
わが国の小児医療は急性期医療から慢性疾患を持つ小児と家族の支援へとシフトチェンジしつつあり,その中で在宅医療が推進されるようになった.大分県では,県補助事業として平成27年度より「大分県小児在宅医療推進システム構築事業」が開始された.同事業にて,小児在宅医療に関する多職種からなる連絡会,多職種に対する実技講習会,事例検討会,患者ニーズ調査,医療資源調査,主治医による特別支援学校巡回,訪問診察への同行が実施されてきた.これらの事業を医師の卒前・卒後教育にも活用している.
この活動から徐々に県内における小児在宅医療支援のネットワークが構築されはじめており,この分野を推進するための一つの手段として提案する.
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