gakkaizashi


日本小児科学会雑誌 目次

(登録:17.5.22)

第121巻 第5号/平成29年5月1日
Vol.121, No.5, May 2017

バックナンバーはこちら


タイトルをクリックすると要旨をご覧になれます。

日本小児精神神経学会推薦総説

協調からみた神経発達障害

中井 昭夫  817
原  著
1.

マイコプラズマ肺炎に川崎病を合併した2例

竹中 紗代,他  826
2.

重症心身障害児(者)施設での看取りに関するアンケート

船戸 正久,他  832
3.

重症心身障害児(者)の腎機能評価

後藤 美和,他  838
4.

甲状腺ホルモン非投与21トリソミー児における生後早期の甲状腺ホルモンの変化

與田 緑,他  847
5.

インフルエンザ脳症発症例と未発症例における臨床徴候の比較

玉井 郁夫,他  855
6.

出生体重1,500 g以上2,000 g未満児の1歳時における発達の検討

平原 恵子,他  863
症例報告
1.

Streptococcus gallolyticus敗血症の新生児死亡例

東 加奈子,他  869
2.

重度の低血糖を呈した先天性赤血球異形成性貧血I型

早川 格,他  874
3.

肺部分切除術を行った気管支動脈蔓状血管腫

越野 恵理,他  879
論  策
1.

時間帯・重症度・地方・消防本部の管轄人口規模別に見た小児の救急搬送時間

江原 朗  885
2.

思春期医療の現状と展望―日本小児科学会会員および保護者へのアンケート―

永光 信一郎,他  891

地方会抄録(兵庫・北日本・沖縄・高知・山陰・愛媛)

  900
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
  Injury Alert(傷害速報)

No. 68 玩具による指ターニケット症候群

  940

No. 69 ロフトあるいは階段からの落下による重症頭部外傷

  945

No. 70 ベッドガード使用時の窒息

  948
日本小児医療保健協議会栄養委員会報告

イオン飲料などの多飲によるビタミンB1欠乏症

  953
男女共同参画推進委員会報告
  リレーコラム キャリアの積み方─私の場合13

何か1つからでも!

  969

日本小児科学会理事会議事要録

  971

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2017年59巻4号4月号目次

  975

日本小児保健協会のご案内

  978
公益財団法人小児医学研究振興財団からのご案内

平成29年度研究助成事業等のお知らせ

平成28年度研究助成事業・優秀論文アワード 海外留学フェローシップ 選考結果

  979

雑報

  983

医薬品・医療機器等安全性情報 No.341

  984


【原著】
■題名
マイコプラズマ肺炎に川崎病を合併した2例
■著者
東邦大学医療センター大橋病院小児科
竹中 紗代  二瓶 浩一  根本 智恵子  三嶌 典子  鈴木 美沙子  中村 浩章  那須野 聖人  藤原 順子  関根 孝司

■キーワード
川崎病, マイコプラズマ, 乳酸脱水素酵素, マクロライド, ステロイド
■要旨
 当科でマイコプラズマ肺炎の経過中に川崎病を合併した2症例を経験した.マイコプラズマ肺炎として加療していたが解熱せず,第10病日以降に川崎病症状が前面に出る経過をとり,診断に至るまでに苦慮した症例であった.
 これまで本邦では,マイコプラズマ感染症に関連した川崎病は約30症例の報告がある.これらの報告の川崎病症状の発現時期に着目したところ,発熱当初から川崎病症状が出揃う症例(前期群)と,自験例と同様に発熱遷延後に川崎病症状が徐々に出始める症例(後期群)がみられた.前期群ではCRPが病初期から有意に高値であり,一方後期群では,入院時のLDHが前期群に比較して有意に高値であった.また,冠動脈後遺症については両群間で有意差はみられなかったが,全体の約28%の症例で認めており高頻度であった.
 近年の本邦におけるマイコプラズマ肺炎マクロライド耐性率は30〜50%とされ,発熱遷延例や重症例にはステロイド投与が推奨されている.一方,川崎病急性期治療の観点からはステロイド投与は冠動脈病変形成を促進する可能性も否定できず,マイコプラズマ肺炎発熱遷延例や重症例においては,より慎重な川崎病発症との鑑別も重要と考察した.


【原著】
■題名
重症心身障害児(者)施設での看取りに関するアンケート
■著者
大阪発達総合療育センター1),びわこ学園医療福祉センター草津2),国立病院機構南京都病院3)
船戸 正久1)  竹本 潔1)  飯島 禎貴1)  和田 浩1)  口分田 政夫2)  宮野前 健3)

■キーワード
医療型障害児入所施設, 侵襲的治療介入, 協働意思決定, 終末期コミュニケーション, 事前ケアプラン
■要旨
 目的:現在医療型障害児入所施設において利用者の高齢化・重症化が進み,施設においてどこまで侵襲的な治療介入を行うかが大きな倫理的ジレンマになっている.こうした中毎年行っている近畿地区の重症心身障害児(者)施設医師交流会参加施設(公民立・国立)を中心に終末期における看取りの実態についてアンケート調査を行った.
 対象:31施設を対象に施設の基礎データに加え,看取りの経験,その年齢,看取りの対象となった病名または病状,意思表示できない方の看取りの代理決定者,特別配慮しているケア内容などについて質問を行った.
 結果:31施設中18施設(58%)から回答があった.18施設中15施設(83%)で看取りの経験があり,その経験総数は69名(6歳未満11例,60歳以上21例)であった.
 看取りの代理意思決定は,家族と医療・介護チームの協働意思決定が最も多く(60%),次いで家族の希望が多かった.死期が迫った場合,特別配慮するケア内容は,侵襲的治療介入の制限(87%),とくに蘇生,昇圧剤などの制限が挙げられた.その他緩和ケアの導入,個室の用意,家族のケア参加などが挙げられた.また死後正面玄関から見送る施設が6件(40%)あった.倫理委員会は,15施設(83%)で設置,緩和ケアチームは8施設(44%)で編成されていた.
 結語:今後重症心身障害児(者)施設においても死をタブー化せず,最善の利益を中心にご本人の尊厳が尊重される多職種協働チームによる協働意思決定,緩和ケアや事前ケアプランを含めた研究の推進が大切になると思われる.


【原著】
■題名
重症心身障害児(者)の腎機能評価
■著者
国立病院機構甲府病院小児科1),山梨大学医学部小児科2)
後藤 美和1)  沢登 恵美2)  石井 佐綾香1)  黒田 格1)  勝又 庸行1)  中村 幸介1)  加賀 佳美1)  神谷 裕子1)  内田 則彦1)  久富 幹則1)

■キーワード
重症心身障害児(者), 腎機能, シスタチンC, 推定糸球体濾過率, 腎長径
■要旨
 重症心身障害児(者)(重障児者)は,運動機能障害による筋肉量の低下から,血清クレアチニン(Cr)値が不相応に低値をとることがあり,血清Crによる糸球体濾過率の評価が適切でない場合がある.2012年Chronic Kidney Diseaseガイドラインで,「るいそう・筋肉量が低下した患者はシスタチンC(Cys-C)にて推定糸球体濾過率を算出することが適切」と明記されたが,重障児者の診療において十分に周知されていない.今回,重障児者を対象に血清Cys-Cを用いた糸球体濾過率の評価と腎機能を反映する腎サイズの評価を腹部超音波検査を用いて行った.血清Cys-Cは粗大運動による差を認めなかったが,血清Crの中央値は,寝たきり群0.35 mg/dl,寝返り群0.36 mg/dl,座位群0.47 mg/dl,立位群0.55 mg/dlと,寝たきり群が座位,立位群に比べ有意に低値であった.血清Crからの推定糸球体濾過率は血清Cys-Cからの推定糸球体濾過率に比して高く,立位群以外でばらつきが大きかった.腎長径は全年齢において,身長と最も高い相関を認めた.重障児者の腎機能評価には血清Cys-C測定が有用であり,腹部超音波検査による腎長径は身長を元に評価すべきである.


【原著】
■題名
甲状腺ホルモン非投与21トリソミー児における生後早期の甲状腺ホルモンの変化
■著者
日本大学医学部小児科学系小児科学分野
與田 緑  浦上 達彦  長野 伸彦  鈴木 潤一  吉川 香代  臼倉 幸宏  細野 茂春  高橋 昌里

■キーワード
21トリソミー, 甲状腺機能, 一過性TSH高値, AGA, SGA
■要旨
 【目的】甲状腺ホルモン非投与21トリソミー児において生後早期の甲状腺機能の変化について研究した.
 【対象と方法】対象はレボチロキシン非投与21トリソミー児38名(男:女=25:13)で,AGA29名,SGA9名であった.これらにおいて,生後1週〜36か月のTSH値とFT4値の変化ついて検討した.尚,TSH 5 μU/ml以上をTSH高値と定義した.
 【結果】FT4値は全例で研究期間中1.0 ng/dl以上を示した.生後1週においてTSHは中央値9.7(5.2〜14.8)μU/ml,FT4は中央値1.9(1.6〜2.1)ng/dlであり,TSH 5 μU/ml以上は34名(89%),10 μU/ml以上は19名(50%)であった.その後TSH高値の頻度は低下し,生後3,6,12か月のTSH高値の頻度は67%,78%,58%であったが,生後36か月まで追跡できた9名中5名はTSH高値が持続した.AGA群とSGA群の生後1週のTSH値の比較では,AGA群はSGA群に比べて有意に高値を認めた.しかし3か月以降では両群間に有意差はなかった.一方,性別,正期産児と早期産児,合併症の有無では生後1週のTSH値,FT4値に有意差はみられなかった.
 【結論】21トリソミー児において生後1週の時点でTSH高値を89%と高率に認めた.TSH高値は一過性が多数だが,持続してTSH高値を示す症例の存在も確認された.


【原著】
■題名
インフルエンザ脳症発症例と未発症例における臨床徴候の比較
■著者
横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学1),国際医療福祉大学熱海病院2),神奈川県立こども医療センター神経内科3),横浜市立大学付属市民総合医療センター小児総合医療センター4),京都大学医学研究科社会健康医学系専攻健康管理学講座医療倫理学5),自治医科大学小児科学講座6)
玉井 郁夫1)3)  横田 俊平1)2)  後藤 知英3)  渡辺 好宏4)  和田 敬仁5)  小坂 仁3)6)

■キーワード
インフルエンザ脳症, 臨床徴候, せん妄
■要旨
 ウイルス感染,特にインフルエンザ感染症においては,せん妄等の軽微な意識障害はしばしば認められるが,ウイルス性急性脳症と熱性けいれん,熱せん妄を早期に見分けることは困難である.そこで中枢神経症状を呈し,結果的に急性脳症であった,あるいは進展した患者とせん妄等の軽微な中枢神経症状を呈しながら結果的に急性脳症には至らなかった患者の臨床徴候の相違点を抽出し,医療現場での対応あるいは家族の受診行動の参考になることを目指した.急性脳症によって後遺症を患ったあるいは死亡した患者群111名と軽微な中枢神経症状を呈した患者群2,245名を対象とし,両群に対して年齢,各身体的症状,せん妄症状について比較検討した.結果は年齢,最高体温,けいれん発現率と持続時間,脱力,末梢冷感の項目で有意差を認めた.また急性脳症発症例の方が精神症状を介さず意識障害・けいれんに至る割合が有意に高い結果となり,一方で精神症状を発現した場合は非脳炎症例に比べてせん妄の程度が有意に強くなることが明らかとなった.4歳以下の低年齢,最高体温40度以上,けいれんの持続時間が15分以上,脱力や,末梢の著しい冷感等は,インフルエンザ脳症のリスクファクターとなる可能性があることが示唆された.


【原著】
■題名
出生体重1,500 g以上2,000 g未満児の1歳時における発達の検討
■著者
独立行政法人国立病院機構佐賀病院小児科
平原 恵子  須山 ゆかり  陣内 久美子  宮村 文弥  江頭 政和  井上 博晴  舩越 亜希子  水上 朋子  江頭 智子  高柳 俊光

■キーワード
低出生体重児, 乳児健診, 精神運動発達
■要旨
 出生体重1,500 g以上2,000 g未満の低出生体重児の1歳時の精神運動発達状態を明らかにすることを目的として,診療録を用いた後方視的検討を行った.対象は明らかな合併症なく当院NICUを退院し,1歳時に当院発達外来を受診した164人で,遠城寺式乳幼児分析的発達検査法を用いて精神運動発達を評価した.その結果,総発達指数は標準域(DQ98±14)にあったが,下位検査の発達指数に個体内差があり,発語と手の運動が低い傾向が認められた.また総発達指数低値(総DQ85未満)に寄与する周産期因子を検討したところ,性別(男児である事)のみが危険因子として選択された.出生体重1,500 g以上2,000 g未満児のフォローアップの望ましいあり方についての議論は少ないが,今回の検討からは在胎週数や出生時の体格zスコアから1歳時の総DQ85未満を予測する事は困難であった.


【症例報告】
■題名
Streptococcus gallolyticus敗血症の新生児死亡例
■著者
国立病院機構別府医療センター小児科
東 加奈子  古賀 寛史

■キーワード
新生児, 超低出生体重児, 敗血症, Streptococcus gallolyticus
■要旨
 Streptococcus gallolyticus subsp. pasteurianusを起炎菌とする敗血症で急速な死の転帰を辿った超低出生体重児の1例を経験した.症例は在胎28週2日,出生体重884 gで出生した男児.日齢11に発熱と頻脈で発症した.動脈血液培養から分離同定されたStreptococcus gallolyticus subsp. pasteurianusはABPCに対する抗菌薬感受性が良好であったが,その臨床効果は無効であり発症15時間後に死亡した.感染経路は不明であった.国内における新生児期のStreptococcus gallolyticus感染報告15例の検討では,11例が日齢7以降に発症し,全例で感染経路が不明であった.死亡した2例はいずれも低出生体重児であった.14例で髄膜炎を確認し,頭部画像検査で5例に異常所見が認められた.3例で感受性良好な抗菌薬(ABPCまたはCTX)の臨床効果が無効であった.新生児期のStreptococcus gallolyticus感染は,感染経路が不明であることが多く,遅発型の発症であっても死亡率が高いことが臨床特性と考えられた.


【症例報告】
■題名
重度の低血糖を呈した先天性赤血球異形成性貧血I型
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 新生児科2),同 血液・腫瘍科3)
早川 格1)  本間 英和2)  斎藤 雄弥3)  湯坐 有希3)  金子 隆3)  新藤 潤2)  柿沼 亮太2)  近藤 昌敏2)

■キーワード
先天性赤血球異形成性貧血I型, 肝腫大, 早期黄疸, 低血糖
■要旨
 先天性赤血球異形成性貧血は無効造血を主病態とする稀な血液疾患である.重症例では新生児期に溶血性貧血,黄疸,肝腫大,新生児遷延性肺高血圧を呈することが知られている.今回,これらの特徴に加えて,既報にない重度の低血糖と一過性の糖需要の増大を伴った先天性赤血球異形成性貧血I型の新生児例を経験したため報告する.重症の溶血性貧血と早期黄疸を来した新生児で,他の溶血性貧血を来す疾患が否定的な場合に,本疾患を想起して早期に骨髄検査を行うことが診断に資すると考える.


【症例報告】
■題名
肺部分切除術を行った気管支動脈蔓状血管腫
■著者
金沢大学医薬保健研究域医学系小児科
越野 恵理  伊川 泰広  藤田 直久  谷内 裕輔  井上 なつみ  加藤 明子  岡島 道子  谷内江 昭宏

■キーワード
喀血, 気管支動脈蔓状血管腫, 気管支動脈造影, 肺部分切除術, 気管支動脈塞栓術
■要旨
 小児の喀血は稀であり,一般小児科医にとって診断に苦慮する.今回我々は,喀血を主訴に受診し血管造影検査で気管支動脈蔓状血管腫と診断し,治療として肺部分切除を選択した1例を経験したので報告する.症例は12歳男児.誘因なく喀血を引き続き3回繰り返したため入院となった.胸部造影CTでは左上葉に2 mm大の結節状高吸収域を認めた.さらにその末梢側に陰影を認めたため,結節状高吸収域として描出された微小動脈瘤からの出血が疑われた.確定診断目的に行った血管造影検査で,左気管支動脈が不整に屈曲・蛇行・拡張しており気管支動脈蔓状血管腫と診断した.気管支動脈塞栓術での根治は血管が微細で複雑に蛇行,屈曲を認めるため難しく,また塞栓術のみでは高率に再疎通をきたすため左肺上葉上区域切除術を選択した.術後10か月再発はない.
 本症例では胸部造影CTで血管奇形を強く疑い,侵襲的検査ではあるが気管支動脈造影を行い確定診断に至った.喀血の原因として血管奇形が強く疑われた際には積極的に血管造影を行う必要があると考えられた.また,気管支動脈蔓状血管腫の治療法として,気管支動脈塞栓術や肺部分切除術が挙がるが統一した治療方法はない.小児では肺部分切除術に比べて侵襲性が少ない事から気管支動脈塞栓術が第一選択となることが多い.しかし,再発率が高く根治性を考慮すると症例によっては肺部分切除術を選択する必要があると考えられ報告する.


【論策】
■題名
時間帯・重症度・地方・消防本部の管轄人口規模別に見た小児の救急搬送時間
■著者
広島国際大学医療経営学部
江原 朗

■キーワード
小児, 救急搬送, 時間帯, 重症度, 収容所要時間
■要旨
 【背景】病院小児科の数が減少しているが,小児の病院アクセスに関する十分な知見はない.一方,総務省消防庁は救急搬送人員データベースを構築し,研究者に公開している.
 【方法】小児救急搬送患者の収容所要時間(通報〜医療機関収容)を病院アクセスの1指標とみなし,平成24年救急搬送人員データベースを用いて転院搬送を除く救急搬送における収容所要時間を時間帯,重症度,地方,消防本部の管轄人口別に解析した.
 【結果】時間帯による収容所要時間の差は小さかった.しかし,重症度により収容所要時間に大きな差を認め,収容所要時間の95パーセンタイル値は重症>中等症>軽症の順であった.
 収容所要時間の95パーセンタイル値を地方間で比較すると,新生児は四国,乳幼児は中部および九州沖縄,少年は四国および九州沖縄において最短であった.一方,新生児および乳幼児では東北,少年では関東において最長であった.
 また,消防本部が管轄する人口規模間で比較すると,収容所要時間の95パーセンタイル値は,どの年齢層でも30万人以上(政令指定都市以外)で最短,5万人未満で最長であった.
 【結論】収容所要時間の長短は,時間帯による影響が小さく,重症度,救急搬送要請をした地域による影響が大きかった.


【論策】
■題名
思春期医療の現状と展望―日本小児科学会会員および保護者へのアンケート―
■著者
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会1),国立成育医療研究センター2)
永光 信一郎1)  秋山 千枝子1)  阿部 啓次郎1)  安 炳文1)  井上 信明1)  加治 正行1)  齋藤 伸治1)  佐藤 武幸1)  田中 英高1)  村田 祐二1)  三牧 正和1)  山中 龍宏1)  平岩 幹男1)  伊藤 悦朗1)  廣瀬 伸一1)  五十嵐 隆2)

■キーワード
思春期, 思春期医学, 健康診査, 母性保健, アンケート
■要旨
 厚生労働省児童福祉問題研究事業における母性保健に関する保健指導の研究調査の中で,現代の思春期医療の現状および展望を考察する機会を得,思春期の健康問題への政策的介入,および健康問題の向上への方策の提言を検討した.日本小児科学会員と小児科を受診した保護者を対象に,思春期医療または思春期の課題についてのアンケートを実施した.会員20,854名に発送し,医師5,218名と保護者3,602名から回答を得た.82.9%の医師が思春期の診療経験があり,その内容と診療経験のある医師の割合は,不登校が80.7%,肥満が58.1%,発達障害が53.8%,月経異常が48.0%,虐待が9.4%,性感染・避妊・中絶などの性関連が4.2〜6.6%であった.親子間で話し合う思春期関連の内容とその経験のある保護者の割合は,二次性徴が70.3%,喫煙・飲酒・薬物などの依存が70.3%,出産29.0%,育児が33.9%,性関連が8.7〜15.5%であった.今後の思春期の課題として,35.0%の医師および53.3%の保護者が,スマートフォン・インターネット依存を挙げていた.20歳までは小児科をかかりつけと考える医師および保護者の割合は,それぞれ44.5%および26.8%であった.Disease oriented careによる医療的支援のみならず,思春期の子どもたちへのWell child health careによる危険行動の防止,疾病予防などが,今後の思春期の健康問題への対策として重要と思われる.

バックナンバーに戻る