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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:16.5.20)

第120巻 第5号/平成28年5月1日
Vol.120, No.5, May 2016

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総  説

重症心身障害児における血清蛋白と体格との関連

東山 幸恵,他  839
原  著
1.

小児の集団生活施設におけるアレルギー対応ホットライン

赤司 賢一,他  846
2.

下部尿路症状の腹部X線写真による潜在性二分脊椎スクリーニング検査の必要性

池田 裕一,他  852
3.

3から9歳児における機能性便秘の頻度と生活時間・食習慣との関連

藤谷 朝実,他  860
4.

MRI検査の鎮静におけるクロラール系薬剤・ミダゾラム静注併用法

高橋 卓人,他  869
症例報告
1.

劇症肝不全を呈し生体肝移植で救命しえた新生児ヘモクロマトーシス

大坪 善数,他  876
2.

ムンプスワクチンにより遅発性意識障害と小脳失調を呈した髄膜脳炎

佐々木 万里恵,他  882
3.

両側腟閉鎖を呈した片側腎異形成を伴う重複腟留膿腫

川崎 直未,他  887
4.

13価結合型肺炎球菌ワクチン3回接種後に発症した肺炎球菌性髄膜炎の5か月例

森山 あいさ,他  892
5.

乳児血管腫を契機に診断されたPELVIS症候群

作村 直人,他  896
短  報

重症喘息に対するオマリズマブの使用経験

中村 浩章,他  900

地方会抄録(和歌山・北日本・福島・甲信・山口・佐賀・福岡・愛媛)

  904
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
  Injury Alert(傷害速報)

No. 61 玩具のパーツによる窒息

  945

No. 62 人感センサー付セラミックファンヒーターによる熱傷

  947
男女共同参画推進委員会報告
  リレーコラム キャリアの積み方─私の場合7

育児中でも働く女医さんが増えますように

  950

日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2016年58巻4号4月号目次

  952

日本小児保健協会のご案内

  954
公益財団法人小児医学研究振興財団からのご案内

平成28年度研究助成事業等のお知らせ

  955

平成27年度研究助成事業・優秀論文アワード 海外留学フェローシップ 選考結果

  956

医薬品・医療機器等安全性情報 No.332

  959


【総説】
■題名
重症心身障害児における血清蛋白と体格との関連
■著者
奈良女子大学生活環境学部1),京都桂病院小児科2),東大寺福祉療育病院小児科3)
東山 幸恵1)  久保田 優1)  永井 亜矢子1)  若園 吉裕2)  川口 千晴3)  富和 清隆3)

■キーワード
重症心身障害児, 体格, 血清蛋白, 栄養評価
■要旨
 重症心身障害児(重症児)は摂食機能障害を合併することが多く,栄養障害リスクを有すると判断されることが少なくない.本研究では,重症児における体格(身長,体重,Body mass index(BMI),肥満度,上腕周囲長,上腕三頭筋皮下脂肪厚,上腕筋囲)と血清蛋白(総蛋白,アルブミン,トランスサイレチン,レチノール結合蛋白)の実態と指標間の関連及び栄養指標としての妥当性を明らかにすることを目的とした.療養型施設に入院する3〜20歳の児28名(男児16名,女児12名)の血清蛋白測定と身体計測を行い対照群の健常児と比較した.身長,体重,BMI,肥満度,アルブミンにおいて重症児が有意に低値を示したが,身体計測値と血清蛋白はいずれの指標間にも相関は認められなかった.各指標の経時的な変化を検討するため1年後に同対象者に同様の測定を行ったところ,体重zスコアが有意に低下した.身体計測値と血清蛋白測定値の増減の大きさ(変化率もしくはzスコアの変化量)に関して,二指標間に関連は認められず,体重zスコアが有意に低下した群においても血清蛋白レベルは保たれていた.以上の結果から血清蛋白値を重症児の日常的な栄養評価指標として用いる際には十分な注意が必要であることが示唆された.


【原著】
■題名
小児の集団生活施設におけるアレルギー対応ホットライン
■著者
東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科1),東京慈恵会医科大学小児科学講座2)
赤司 賢一1)  勝沼 俊雄1)  鈴木 亮平1)  井上 隆志1)  柳澤 妙1)  本木 隆規1)  山内 裕子1)  田村 英一郎1)  渡辺 雅子1)  井田 博幸2)

■キーワード
アナフィラキシー, 食物アレルギー, 地域医療連携, 集団生活, 学校
■要旨
 食物アレルギー(FA)児が安全に集団生活を送るため,管理表やガイドライン等の施策が進められてきたが,2012年,東京都調布市の小学校でアナフィラキシー(An)による死亡事例が発生した.本件を受け,既存の取組みだけでは十分な対応が困難との認識に基づき,我々は調布市・狛江市と協調し新たなAn対応策(講習会と継続的学習,個別対応カード,アレルギー対応ホットライン(HL))を構築し運用してきた.HLは集団生活施設で発生するアレルギー症状に対応する医療連携システムとして国内初の試みといえる.今回,運用開始1年間の状況をまとめた.HL利用件数は35件,平均2.9例/月(8.1±4.6歳),Anは12例であった.FA関連症例26例中,既知食物による症状誘発症例は7例(26.9%)であった.一方,新規食物による症状誘発症例が18例(69.2%)に認められたが,これらの新規発症に対してもHLによって適切な対応が出来ていた.Anに関し,症状出現から発見まで平均で11分を要していたが,中学生では39分と遅延傾向を認めた.既知食物による症状誘発症例で,経口免疫療法(OIT)によるAnを2例認めた.OITに伴うリスクは,本来医療機関・家族が負うべきであり,実施方法に関しては検討が必要である.今後,小児集団生活施設と地域小児科センターとの連携を構築する上で,我々の試みが参考になることを期待している.


【原著】
■題名
下部尿路症状の腹部X線写真による潜在性二分脊椎スクリーニング検査の必要性
■著者
昭和大学藤が丘病院小児科1),同 放射線科2)
池田 裕一1)  渡邊 常樹1)  布山 正貴1)  磯山 恵一1)  林 高樹2)

■キーワード
下部尿路症状, 潜在性二分脊椎, 昼間尿失禁, 夜尿症, 小児
■要旨
 夜尿症や昼間尿失禁などの下部尿路症状(LUTS)を有する小児では,健常小児に比較して潜在性二分脊椎(SBO)が高率に合併し,SBO合併例は治療抵抗性であることについては依然議論がある.そのため,LUTSを有する小児に対するSBOスクリーニング検査の評価は定まっていない.今回,LUTSのSBO合併率とSBOが治療効果に与える影響を調べ,SBOスクリーニング検査の必要性を検討した.対象は過去9年間に週に3回以上の夜尿,週に1回以上の昼間尿失禁を主訴に来院した患児のうち,年齢が5歳以上15歳未満を対象とした.腹部単純X線写真(腹部XP)にて腰仙椎の椎弓癒合不全がみられた症例をSBO陽性例と定義し,合併率ならびに治療効果について検討した.対象は夜尿症253名,昼間尿失禁175名の計428名で,SBO陽性例は夜尿症で85名(33.6%),昼間尿失禁で36名(20.6%),LUTS全体で121名(28.3%)であり,過去に報告された一般小児の合併率とほぼ同等であった.夜尿症と昼間尿失禁の治療3か月後の有効例の割合,治療2年以内に治癒した症例の割合は,SBO陽性例とSBO陰性例の間に有意差を認めなかった.SBO合併率と短期,長期的な治療効果の検討から,夜尿症および昼間尿失禁などのLUTSに対して腹部XPによるSBOスクリーニング検査を行う必要性は乏しいと考えた.


【原著】
■題名
3から9歳児における機能性便秘の頻度と生活時間・食習慣との関連
■著者
済生会横浜市東部病院栄養部1),兵庫医科大学ささやま医療センター小児科2),済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科3),大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌科4),同 栄養管理室5),パルこどもクリニック6),共立女子大学7)
藤谷 朝実1)7)  奥田 真珠美2)  十河 剛3)  位田 忍4)  西本 祐紀子5)  友政 剛6)  川久保 清7)

■キーワード
機能性便秘, Rome III, 生活時間, 食習慣, 小児
■要旨
 排便習慣は個人差が大きく,また便秘の症状は子供自身が認識を持つことが難しいために,機能性便秘の頻度や生活習慣や食習慣との関連性について明らかにされた日本の報告は少ない.本研究は,兵庫県篠山市の保育園,幼稚園,小学校に通う1,277名の養育者を対象に,機能性便秘の頻度並びに便秘と生活時間や食習慣の関連性を検証するために質問紙による調査を行った.712名(55.8%)の養育者より回答を得られ,そのうち排便習慣がほぼ自立している3〜9歳の643名を対象とした.対象のうち,Rome IIIの基準で90名が機能性便秘と分類され,便秘治療歴がある4人を入れると全体の14.6%の94名が機能性便秘で,排便障害がないと分類されたのは549名であった.機能性便秘群と排便障害なし群の2群間で排便状況,生活リズム,食習慣を比較した結果,「起床時間が遅い・決まっていない」「排便時間が決まっていない」「朝食で主菜を摂取している」「朝食の主食がご飯ではない」「夕食に副菜を摂取していない」の5項目で便秘の出現頻度が高かった(P<0.005).また,便秘群は,性,年齢を考慮しても,夕食の副菜の摂取量が少なかった(P<0.001).【結語】3〜9歳までの慢性機能性便秘の頻度は14.5%と高く,受診率は0.6%と低かった.生活時間並びに米飯や野菜を中心とした副菜の摂取タイミングが便秘頻度に影響を与えることが示唆された.


【原著】
■題名
MRI検査の鎮静におけるクロラール系薬剤・ミダゾラム静注併用法
■著者
東京都立小児総合医療センター総合診療科1),同 臨床研究支援センター2),同 診療放射線科3)
高橋 卓人1)  森川 和彦2)  秋葉 和壽1)  赤塚 早紀1)  五十里 裕美1)  岸部 峻1)  北見 欣一1)  黒田 淳平1)  竹本 直輝1)  三輪 直子1)  河野 達夫3)  長谷川 行洋1)

■キーワード
検査時の鎮静, 鎮静薬, トリクロホス, 抱水クロラール, 小児
■要旨
 【緒言】MRI検査時の鎮静(以下,MRI鎮静)において本邦で頻用されるクロラール系薬剤は,有効性と安全性の点で問題が指摘されている.規定量のクロラール系薬剤の内服もしくは挿肛に,ミダゾラム静脈注射(以下,静注)を併用する方法(以下,CM法)で有効性と安全性の改善が期待できると考える.【目的】CM法によるMRI鎮静の有効性と安全性を検討した.【方法】2013年8月1日から2014年5月31日までに,MRI鎮静を予定する患者に対して前向き観察研究を実施した.6か月から6歳の患者を対象として,鎮静に伴う合併症リスクの高い患者を除外した.クロラール系薬剤(トリクロホス内服:80 mg/kg,または抱水クロラール挿肛:30〜50 mg/kg)を投与して,鎮静不十分な場合にミダゾラム静注(1回投与量0.1〜0.2 mg/kg,最大積算投与量0.6 mg/kg)を追加した.主要評価項目は,検査を完了し,かつ読影に支障のない画像が得られた成功例の割合とした.【結果】適格症例28例(平均月齢26か月,男児13例,女児15例)のうち成功率は82%(23例)であった.検査開始時刻は39%(9/23)で遵守され,検査開始遅延時間の中央値は9.5分(範囲1〜30分)で,重篤な有害事象は認めなかった.【結論】CM法によるMRI鎮静は,安全性に配慮した方法だが十分な有効性は達成できない.


【症例報告】
■題名
劇症肝不全を呈し生体肝移植で救命しえた新生児ヘモクロマトーシス
■著者
佐世保市立総合病院小児科1),熊本大学医学部付属病院小児科2),同 小児外科・移植外科3),同 新生児学4)
大坪 善数1)  坂本 理恵子2)  神戸 太郎1)  角 至一郎1)  河崎 達弥2)  猪股 裕紀洋3)  三渕 浩4)

■キーワード
肝移植, 劇症肝不全, 新生児ヘモクロマトーシス, 母児間同種免疫肝疾患, 免疫グロブリン療法
■要旨
 新生児ヘモクロマトーシスは,胎児期より体内への鉄沈着により多臓器不全を引き起こす予後不良な疾患である.特に肝不全が内科的治療に抵抗性である場合は肝移植の適応となる.鉄代謝異常に起因する遺伝性ヘモクロマトーシスとは全く異なる病態であり,母児間同種免疫が関与する母児間同種免疫肝疾患(GALD)の一部として提唱されている.日齢14に黄疸,嘔吐を主訴に入院となり,肝不全症状に加え意識レベル低下を認め,腹部MRIで新生児ヘモクロマトーシスと診断した症例を経験した.免疫グロブリン療法や交換輸血,持続血液透析などの内科的治療に抵抗性で,日齢28に祖父からの生体肝移植を施行し救命しえた.摘出肝の病理組織では肝細胞の萎縮や脱落が著明で,中心静脈周囲の線維化やグリソン鞘での細胆管の増生を認めた.鉄染色では広範囲に鉄沈着を認めた.新生児の肝不全例を経験した場合は,GALDを念頭に置き鑑別を進める必要がある.GALDと診断できれば,免疫グロブリン療法や交換輸血などの内科的治療が有効で,それらに治療抵抗性であれば肝移植が選択肢となる.また次子妊娠時に発症予防を目的とした胎児治療を提示することが可能となる.


【症例報告】
■題名
ムンプスワクチンにより遅発性意識障害と小脳失調を呈した髄膜脳炎
■著者
慶應義塾大学医学部小児科学教室1),北里生命科学研究所ウイルス感染制御2)
佐々木 万里恵1)  坂口 友理1)  武内 俊樹1)  篠原 尚美1)  新庄 正宜1)  中山 哲夫2)  高橋 孝雄1)

■キーワード
ムンプスワクチン, 髄膜脳炎, 小脳失調, 副反応
■要旨
 ムンプスワクチンの副反応は接種後2〜3週以内に生じることが多いが遠隔期に認められることもある.症例は1歳3か月男児.ムンプスワクチン初回接種の32日後に発熱,けいれん群発を認めた.発作間欠期は意識清明であり,神経学的異常所見はなかった.髄液検査で単核球優位の細胞増多を認めた.耳下腺腫脹やアミラーゼ上昇はみられなかった.解熱後に意識障害と体幹失調が出現し2日間持続,後遺症なく軽快した.髄液の分子遺伝学的解析によりワクチン株(星野株)が分離・同定されたため,ムンプスワクチン副反応による髄膜脳炎と診断した.ムンプスワクチンは通常より遅れて副反応を呈する場合もあり,ワクチン副反応の真の頻度を把握するためにも,分離ウイルスの分子遺伝学的検討は重要であると考えた.


【症例報告】
■題名
両側腟閉鎖を呈した片側腎異形成を伴う重複腟留膿腫
■著者
日本海総合病院小児科
川崎 直未  川崎 基  篠崎 敏行  田邉 さおり  木村 敏之

■キーワード
片側腎無形成, 子宮奇形, 腟奇形, 腟留膿腫
■要旨
 症例は14歳女子.生後2か月時右腎欠損を指摘された.10歳の初経以降規則的な月経を認め,月経痛は軽度であった.約1か月前からの微熱と倦怠感,歩行時と排尿時の下腹部痛を自覚し当科紹介された.当初入院時の尿混濁から尿路感染症を疑われ抗菌薬投与を開始したが,治療反応性に乏しく画像検査で重複子宮と腟留膿腫が明らかになり,全身麻酔下に経腟的開窓術を施行した.多量の膿汁の排泄を認め,重複子宮,重複腟,両側腟閉鎖による腟留膿腫をもつOHVIRA(obstruvctive hemivagina and ipsilateral renal anomaly)症候群と診断された.OHVIRA症候群はMüller管の発育障害による片側腎の欠損と非対称性子宮奇形を呈する疾患群の1つである.頻度の少なさと複雑な病態のため,早期の診断は困難である.慢性の骨盤内炎症のため妊孕性の低下や侵襲の大きい術式を選択される場合もある.本疾患は通常,重複子宮,重複腟,片側腟閉鎖,同側腎無形成の形態をとり,両側腟閉鎖の報告は極めてまれである.本症例では左側の腟壁に小孔が存在していたため,月経困難症なく初経から診断に至るまで長期間を有したと考えられた.当症例のように比較的早期に腎の発生異常が明らかになった場合,生殖器系の精査も併せて積極的に施行することで留膿腫形成早期に低侵襲な治療の提供が可能となることが示唆された.


【症例報告】
■題名
13価結合型肺炎球菌ワクチン3回接種後に発症した肺炎球菌性髄膜炎の5か月例
■著者
松江赤十字病院小児科1),松江市立病院小児科2)
森山 あいさ1)  小西 恵理1)  遠藤 充1)  和田 啓介1)  樋口 強1)  小池 大輔1)  内田 由里1)  瀬島 斉1)  辻 靖博2)

■キーワード
肺炎球菌性髄膜炎, 侵襲性肺炎球菌感染症, 13価肺炎球菌ワクチン, 血清型15B
■要旨
 13価肺炎球菌結合型ワクチン(以下PCV13)を初回3回接種後に,ワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌性髄膜炎に罹患し不幸な転機をたどった症例を経験した.症例は5か月の男児で,嘔吐と発熱を主訴に前医を受診した.翌日にけいれん重積を来たし前医を再診し,処置時に呼吸不全となったため集中治療目的で当科に救急搬送された.大泉門の膨隆を認め,髄液塗抹検査から肺炎球菌性髄膜炎と診断した.メロペネム,セフォタキシム,デキサメサゾンの投与を開始したが,搬送から約4時間後に死亡した.髄液培養からPCV13に含まれない血清型15B肺炎球菌が検出された.
 本邦では2010年に小児用7価肺炎球菌結合型ワクチン(以下PCV7)が発売され,2011年に多くの自治体で公費助成が行われ,接種率が上昇した.これに伴い,乳幼児における侵襲性肺炎球菌感染症(以下IPD)は大幅に減少した.2013年には対象となる血清型を増やしたPCV13に移行されたが,調べ得たかぎりでは移行後に本邦で肺炎球菌性髄膜炎に罹患した報告はなかった.自験例は,PCV13でも予防できなかった事例であった.PCV13を規定通り行った健康乳児でも,肺炎球菌性髄膜炎に罹患する危険性があることを認識し,小児におけるIPD症例の莢膜血清型の調査を継続して行う必要がある.


【症例報告】
■題名
乳児血管腫を契機に診断されたPELVIS症候群
■著者
金沢大学医薬保健研究域医学系小児科
作村 直人  伊川 泰広  清水 正樹  谷内江 昭宏

■キーワード
PELVIS症候群, 乳児血管腫, 鎖肛, 外陰部奇形
■要旨
 PELVIS(Perineal hemangioma,External genital malformations,Lipomyelomeningocele,Vesicorenal abnormalities,Imperforate anus,Skin tag)症候群はオムツ皮膚炎と間違われやすい会陰部血管腫と骨盤周囲の臓器に合併奇形を有する奇形症候群として知られている.今回我々は鎖肛と二分陰を合併したPELVIS症候群の1例を経験し,乳児血管腫を認めた際に合併奇形の検索をすすめる重要性と,血管腫と合併奇形の発症部位が近傍に位置する機序について考察し報告する.


【短報】
■題名
重症喘息に対するオマリズマブの使用経験
■著者
東邦大学医療センター大橋病院小児科1),東京慈恵会医科大学附属第三病院小児科2)
中村 浩章1)2)  渡辺 雅子2)  赤司 賢一2)  勝沼 俊雄2)

■キーワード
重症喘息, オマリズマブ
■要旨
 近年,喘息治療薬の進歩とガイドラインの普及により,喘息の軽症化が指摘されている.しかし,吸入ステロイドなどの既存治療によってもコントロール不良な難治性喘息患者は未解決の問題といえる.全体の5%程度の重症・難治喘息患者に要する医療費は,喘息医療費の50%ともいわれる.このような重症喘息に対し,今回我々は,オマリズマブを投与した3例を経験した.オマリズマブは3例中2例で著効を示し,いずれも忍容性は良好であった.

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