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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:16.4.19)
第120巻 第4号/平成28年4月1日
Vol.120, No.4, April 2016
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日本小児循環器学会推薦総説 |
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栗嶋 クララ,他 693 |
第118回日本小児科学会学術集会 |
教育講演 |
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山田 恭聖 707 |
教育講演 |
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水口 雅 721 |
原 著 |
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犬塚 幹,他 728 |
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中嶋 英子,他 736 |
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成相 昭吉,他 744 |
症例報告 |
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竹原 広基,他 752 |
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五十嵐 亮太,他 756 |
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秋山 奈緒,他 761 |
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福井 舞,他 765 |
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櫻井 由香里,他 771 |
短 報 |
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本田 真梨,他 777 |
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地方会抄録(中部・山陰・山梨・熊本・鹿児島・静岡・福井・青森)
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781 |
日本小児科学会医療安全委員会報告 |
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Sedation Essence in Children Under Restricted Environment(SECURE)第1回,第2回テストコースの報告
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812 |
日本小児科学会男女共同参画推進委員会報告 |
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ワークライフバランスの取り組みに関する全国大学医学部における調査報告書
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818 |
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 |
Injury Alert(傷害速報) |
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822 |
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825 |
日本小児科学会英文誌 Pediatrics International 2016年58巻3号3月号目次
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【原著】
■題名
概日リズム睡眠障害の小児に対する高照度光療法
■著者
佐世保中央病院小児科 犬塚 幹 山田 克彦
■キーワード
高照度光療法, 概日リズム睡眠障害, 起立性調節障害, メラトニン, コルチゾル
■要旨
当科通院中の小児の中で,顕著な朝起き不良が認められ概日リズム睡眠障害(Circadian rhythm sleep disorder;以下CRSD)の診断基準に合致した9例に対して高照度光療法(Bright light therapy;以下,BLT)を試み,その効果を検討した.入院の上,7日間連続で早朝に2時間のBLTを行い,就寝時間と起床時間,身体症状,新起立試験におけるバイタルサインの経時変化,唾液中メラトニン・コルチゾル濃度の日内変動をBLT前後で比較した.BLT後は全例21時〜23時に入眠し,朝は6時半〜8時半に起床できるようになり,睡眠相の前進効果が認められ,身体症状においても多くの例で改善が認められた.新起立試験では起立7分後以外の心拍数および起立1分後までの収縮期血圧がBLT後に有意に上昇しており,交感神経活動が活性化された可能性が考えられた.また,BLT後は唾液中コルチゾル濃度が頂値を示す時間帯が早くなっており,朝起き改善との関連も考えられた.しかし,入院による生活環境の是正や日常生活のストレスからの解放が身体症状や検査所見の改善に寄与した可能性もあり,BLT単独の効果は証明できなかった.朝起き不良に対する非薬物療法として入院によるBLTは有用であったが,再発例が多かったことから,1週間の治療期間では短すぎた可能性も考えられた.
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【原著】
■題名
Quenching Probe PCR法によるマクロライド耐性肺炎マイコプラズマの診断
■著者
長野県立須坂病院小児科1),長野市民病院小児科2),JA長野厚生連北信総合病院小児科3),あらかわ子ども医院4),小林小児科5),松浦小児科医院6) 中嶋 英子1) 石井 栄三郎1) 松岡 大輔1) 青沼 架佐賜2) 久保 徹夫3) 新川 一雄4) 小林 敏美5) 松浦 敏雄6)
■キーワード
マイコプラズマ, マクロライド耐性肺炎マイコプラズマ, PCR法, 迅速診断, Qプローブ法
■要旨
背景:近年マクロライド耐性肺炎マイコプラズマ感染症が流行し,外来診療での迅速診断と抗菌薬の適正使用が求められている.
対象と方法:2011年12月から2013年3月に下気道感染症が疑われた18歳未満230名を対象とした.年齢,症状出現から検体採取までの日数,抗菌薬投与歴と種類,入院の有無を聴取し,体温,胸部単純写真,末梢血白血球数,CRP値,イムノカード(IC)法,微粒子凝集(PA)法によるマイコプラズマ抗体価を測定した.肺炎マイコプラズマ感染の有無は,咽頭ぬぐい液を検体として,Quenching probe PCR(QP-PCR)法を用いて診断し,マクロライド耐性遺伝子変異の有無を同時に調べた.156名にはLoop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法も実施した.
結果:QP-PCR法は43.5%で陽性,56.5%陰性だった.QP-PCR法陽性群91%にマクロライド耐性遺伝子変異を認めた.臨床症状と検査結果は,マクロライド系抗菌薬感受性群と耐性群で有意差を認めなかった.QP-PCR法は,PA法より陽性一致率が低下したが,LAMP法との相関は同等だった.
結論:本法は,機器や設備面等の問題はあるが,簡便な操作で,結果を短時間で得ることができ,マクロライド耐性遺伝子変異の有無を同時に検出できる有用な方法である.
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【原著】
■題名
PCV13移行前後における乳幼児上咽頭から検出された肺炎球菌の血清型疫学
■著者
横浜南共済病院小児科 成相 昭吉 矢内 貴憲 金高 太一
■キーワード
肺炎球菌, 血清型, 上咽頭定着, 7価肺炎球菌結合型ワクチン, 13価肺炎球菌結合型ワクチン
■要旨
当科では7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)が導入された2010年以降,下気道感染症乳幼児の上咽頭から検出された肺炎球菌の血清型を調べてきた.今回,13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)に移行される前の2013年1月から10月まで(2013年度)とPCV13移行後の2013年11月から2014年10月まで(2014年度)の成績を,すでに報告した2010年度の成績と比較し,PCV7接種普及の効果とPCV13移行による短期間の効果について検証した.
PCV7血清型の検出率は2010年度は61%であったが,2013年度には6.4%,2014年度には1.0%となり,PCV7血清型はほぼ排除されたことが判明した.
PCV13に加えられた6つの血清型では3・6A・19Aのみが検出され,検出率は2013年度,2014年度,それぞれ23%と19%で,2010年度の20%と変化はなかった.しかし,2014年度を上半期と下半期にわけて検出率を見ると,上半期は25%であったが下半期は半減し12%であった.
一方,非PCV13血清型は,2013年度が71%,2014年度が80%を占め,2010年度の19%から大きく増加した.2010年以降の各年度における肺炎球菌検出率は22%前後,確認された血清型の種類も20前後で変化はなく,肺炎球菌は血清型を置換させながら乳幼児の上咽頭に定着し続けると予測された.
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【症例報告】
■題名
慢性心不全を合併したDown症候群患児に発症した急性巨核芽球性白血病
■著者
東京大学医学部附属病院小児科1),同 無菌治療部2) 竹原 広基1) 関口 昌央1) 加藤 元博1)2) 塩澤 亮輔1) 林 泰祐1) 清水 信隆1) 渡邉 健太郎1) 樋渡 光輝1) 滝田 順子1) 岡 明1)
■キーワード
急性巨核芽球性白血病, ダウン症候群, 心不全, 心奇形, 緩和的化学療法
■要旨
ダウン症候群患児に合併する骨髄性白血病(ML-DS)では,一般的に化学療法,特にシタラビンに対する反応性が良好で予後は良い.その一方で,ML-DS児は治療関連毒性が強く,減弱した治療が行われているが,心奇形等により高度心不全を合併している児の治療強度は確立していない.我々は,心奇形による高度の慢性心不全を合併したML-DSの1例を経験した.患児は,低用量のシタラビンとエトポシドからなる緩和的化学療法を受け,診断から約10か月間の生存を得た.今後,より適切な治療法を確立するため,同様の症例の集積が望まれる.
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【症例報告】
■題名
カルバマゼピンによる重症薬疹を発症したHLA-A*31:01保有症例
■著者
産業医科大学小児科 五十嵐 亮太 保科 隆之 石井 雅宏 下野 昌幸 楠原 浩一
■キーワード
カルバマゼピン, 重症薬疹, HLA-A*31:01, パッチテスト, 薬剤誘発性リンパ球刺激試験
■要旨
抗てんかん薬であるカルバマゼピン(CBZ)による重症薬疹の発症にはHLA遺伝子型が関与していることが報告されている.我々は,CBZによる重症薬疹を発症した15歳男性例を経験した.側頭葉てんかんと診断され,CBZ内服が開始された3週間後から発熱が出現し,4週間後には皮疹も出現した.血液検査上,トランスアミナーゼ上昇も認めた.皮疹出現時には,眼瞼結膜充血,軟口蓋の点状出血,頸部・鼠径部リンパ節腫脹も認めた.CBZ内服を中止し,プレドニゾロンの全身投与を開始したところ,症状は速やかに改善した.皮膚組織標本では,表皮基底層に炎症細胞浸潤と液状変性を認め,CBZに対するパッチテストおよび薬剤誘発性リンパ球刺激試験が陽性となり,同薬剤による重症薬疹と診断した.皮膚粘膜眼症候群や中毒性表皮壊死症で見られる重篤な粘膜障害はなく,臨床経過より重症多形紅斑型薬疹が疑われた.また,薬剤性過敏症症候群も鑑別として挙げられたがヒトヘルペスウイルス6型再活性化を示唆するような抗体価の上昇はなかった.HLA遺伝子解析では,日本人において重症薬疹発症との関連性が報告されているHLA-A*31:01を保有していた.日本人では抗てんかん薬投与開始前にHLA遺伝子型の検索を行うことは推奨されていない.重症薬疹の病型ごとのHLA-A*31:01保有者の頻度に関しては報告が少なく,全国規模の症例数の蓄積が必要である.
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【症例報告】
■題名
DDAVP投与で尿量の低下を認めた腎性尿崩症例
■著者
独立行政法人国立病院機構埼玉病院小児科1),慶應義塾大学病院小児科2) 秋山 奈緒1) 冠城 祥子2) 近江 健太郎1) 高里 良宏2) 河野 美緒1) 富田 瑞枝1) 真路 展彰1) 上牧 勇1)
■キーワード
先天性腎性尿崩症, 部分型腎性尿崩症, 水制限試験, 酢酸デスモプレシン
■要旨
11歳男児.新生児期に高Na血症を認め,尿浸透圧の低値・血漿アルギニンバソプレッシン(AVP)高値より腎性尿崩症と診断された.遺伝子検査ではAVPR2遺伝子にL90Pのミスセンス変異を認めた.以後,サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド),K保持性利尿薬(スピノロラクトン)の投与と定時排尿を行っていた.
11歳の時点で,尿量は1日あたり5〜6 lで,夜間は2時間間隔での排尿を必要とし,本人と家族のQOL低下が問題であった.11歳時に治療方針を再検討する目的で水制限試験の再評価を行ったところ,尿浸透圧の上昇と尿量の減少を認めAVPに対し部分的に感受性を示す結果となった.本症例において高用量のDDAVP投与により,尿量の低下を認め,夜間の連続睡眠時間の延長をはかることが可能となった.
今回の結果より,症状が不変・悪化を認める症例でも,水制限試験による再評価を行うことは有意義であると考えられた.
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【症例報告】
■題名
RSウイルスに罹患し人工呼吸管理を要した気道狭窄病変を伴う先天性心疾患の2例
■著者
昭和大学横浜市北部病院こどもセンター 福井 舞 澤田 まどか 曽我 恭司 梅田 陽
■キーワード
RSウイルス, 人工呼吸管理, 気道狭窄病変, 気管支鏡, CT
■要旨
Respiratory Syncytial Virus(以下RSV)は乳幼児に細気管支炎や肺炎を起こす原因として知られており,先天性心疾患や気道病変を合併する児では重症化しうる.今回,RSV感染時の人工呼吸管理に難渋した,気道狭窄病変と先天性心疾患を合併する2乳児例を経験したので報告する.症例1はファロー四徴症,肺動脈弁欠損の女児.日齢20に呼吸障害が出現,RSV抗原陽性,高炭酸ガス血症を認め人工呼吸管理を行った.気管支鏡検査下で,拡大した肺動脈に圧迫された左主気管支が開存する適正な呼気終末陽圧(以下PEEP)を決定することで有効な人工呼吸管理ができた.症例2はファロー四徴症,左肺動脈右肺動脈起始症,右気管気管支の女児.日齢53に呼吸障害が出現,RSV抗原陽性,高炭酸ガス血症を認め人工呼吸管理とした.呼気性喘鳴の消失点,圧―量曲線(以下P-V curve),胸部X線写真を参考にして,気管分岐部狭窄部位以降が開存する適正なPEEP,右気管気管支の支配領域が過膨張にならない最大吸気圧(以下PIP)を設定し管理した.2例ともに十分な呼気時間の確保,狭窄病変の開存に必要なPEEP,適切な吸気量の獲得に必要なPIPを決定するために,胸部CTや気管支鏡検査による気道病変の評価と,P-V curveが有用であった.
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【症例報告】
■題名
下肢痛を契機に発見されたWilson病の肝硬変例
■著者
旭川医科大学小児科1),自治医科大学移植外科2) 櫻井 由香里1) 高橋 弘典1) 長森 恒久1) 古谷野 伸1) 東 寛1) 水田 耕一2)
■キーワード
Wilson病, 下肢筋痛, 肝硬変, 筋炎
■要旨
患者は12歳男子.持続する両下肢の筋痛と高CK血症を認め,近医より紹介された.当科入院時も筋逸脱酵素の上昇を認め,筋MRIではT2強調像において両下腿遠位筋に高信号域を認めた.しかし皮膚筋炎や多発筋炎の臨床像とは合致せず,各種自己抗体も陰性であった.明らかな肝不全徴候はなかったが,軽度肝機能異常を認めたため,腹部CTを撮影したところ代償性肝硬変の状態であることが判明した.血清セルロプラスミン低値,尿中銅排泄の亢進,Kayser-Fleischer角膜輪などから,Wilson病と診断した.肝移植の準備を進めるとともに,除銅治療を開始したところ下肢の筋痛は改善した.診断から約半年後に生体肝移植を受け,術後の経過は順調である.
Wilson病における筋骨格症状は骨関節炎が大部分を占め,筋症状の報告は少ない.その病態は不明であるが,過去数例の報告同様,銅キレート剤の投与下に症状消失をみたことから,先天性銅代謝異常の病態と関連するものと考えられた.主訴が四肢の筋痛であっても,原因不明の肝機能異常を伴う場合には,Wilson病を念頭に置くことが必要である.
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【短報】
■題名
HIV感染母体から出生した児に対する12時間毎Zidovudine予防投与の試み
■著者
国立研究開発法人国立国際医療研究センター小児科1),同 エイズ治療研究開発センター2) 本田 真梨1) 田中 瑞恵1) 細川 真一1) 木内 英2) 赤平 百絵1) 七野 浩之1) 佐藤 典子1) 松下 竹次1)
■キーワード
HIV, 母子感染予防策, ジドブジン, 貧血, 服薬回数
■要旨
日本では従来HIV母子感染予防の一環として,出生児に,Zidovudine(AZT)8 mg/kg/日,4分割,6週間投与が行われてきた.私達は副作用の軽減を目的に,同量を2分割,6週間投与(2分割法)に変更し,前方視的に感染の有無と安全性を検討するパイロット研究を行った.対象は10例で,全例で妊娠初期から母体抗HIV療法が行われ,HIV-RNA量は低値であり,さらに帝王切開と止乳が行われた.2分割法でも母子感染例はなく,有害事象は4例で生後1か月時の貧血のみで,高乳酸血症や白血球低下などはみられなかった.母体HIV抑制が良好な場合,AZT2分割法は安全であり今後多数例での検討が可能と思われた.
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