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日本小児科学会雑誌 目次 |
(登録:15.6.16)
第119巻 第6号/平成27年6月1日
Vol.119, No.6, June 2015
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原 著 |
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滝 元宏,他 951 |
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松岡 恵,他 959 |
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平田 佑子,他 963 |
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富田 陽一,他 970 |
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犬塚 幹,他 977 |
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古本 雅宏,他 985 |
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池田 裕一,他 991 |
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住田 裕子,他 998 |
症例報告 |
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長柄 俊佑,他 1006 |
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松野 良介,他 1012 |
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楢林 成之,他 1018 |
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桑原 優,他 1024 |
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地方会抄録(東京・滋賀・静岡・栃木・福島・山形・岩手・福岡・愛媛・北陸・富山・沖縄・山口・鹿児島・佐賀)
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1029 |
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1083 |
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1085 |
【原著】
■題名
Early Aggressive Nutrition導入前後の極低出生体重児の成長
■著者
財団法人東京都保健医療公社荏原病院小児科1),昭和大学医学部小児科学講座2) 滝 元宏1)2) 鈴木 学2) 中野 有也2) 宮沢 篤生2) 櫻井 基一郎2) 三浦 文宏2) 水野 克己2) 板橋 家頭夫2)
■キーワード
early aggressive nutrition, 極低出生体重児, 子宮外発育不全(EUGR)
■要旨
Early Aggressive Nutrition(EAN)の導入が修正40週時点の成長に与える影響について後方視的に検討した.対象は2003〜2013年の11年間に当院NICUに入院し,アミノ酸(AA)を含む静脈栄養が行われ,生存退院できた極低出生体重児319名である.当院では2007年7月以降,栄養管理法を変更し,早期授乳を併用しながら,生後24時間以内に2.0 g/kg/日以上のAA投与を開始し最大AA投与量を3.0 g/kg/日以上を目標としたEarly aggressive nutrition(EAN)を導入した.「EAN導入後(194名)」と,それ以前の「EAN導入前(125名)」に分け比較検討した.
二群間比較ではEAN導入後が,修正40週時点の身体計測値およびSDスコア(体重・身長・頭囲)いずれも有意に大きく,子宮外発育不全(EUGR)発生率(体重・身長・頭囲)いずれも有意に低かった.修正40週時点の身体発育値のSDスコアに関連する因子について重回帰分析を施行したところ,「EAN導入」,「出生時SDスコア」,「経腸栄養100 ml/kg/day到達日齢」が関連していた.以上の結果から,極低出生体重児を対象としたEANの導入は,EUGR予防に寄与すると考えられた.
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【原著】
■題名
MRIによるTurner症候群の大動脈径の評価と拡大のリスク因子
■著者
東京都立小児総合医療センター循環器科1),同 内分泌科2) 松岡 恵1) 三浦 大1) 玉目 琢也1) 神保 詩乃1) 大木 寛生1) 井垣 純子2)
■キーワード
Turner症候群, 大動脈拡大, 大動脈解離, MRI
■要旨
近年Turner症候群(TS)に合併する大動脈拡大・解離に伴う突然死が注目されているが,わが国での報告は少ない.当院で心エコーでの評価が困難となる10歳以上のTS 36例(10〜19歳 13例,20〜48歳 23例,中央値 23歳)を対象に,MRIを用いて上行大動脈径を測定し,大動脈拡大の有無と年齢・リスク因子(大動脈二尖弁・大動脈縮窄・高血圧)及び,心疾患の合併の有無・リスク因子の関連について調査した.心疾患は11例に認め,大動脈二尖弁2例,大動脈弁閉鎖不全2例,大動脈縮窄症3例,部分肺静脈還流異常4例,左上大静脈遺残3例,心房中隔欠損3例,僧帽弁狭窄1例であった(重複を含む).このうちMRIによってのみ診断できたものが5例あった.リスク因子を認めた8例のうち,上行大動脈径/体表面積(修正大動脈径)が20 mm/m2以上の大動脈拡大は4例にみられた.20歳以上の3例は,高血圧および他のリスク因子(大動脈二尖弁1例,大動脈縮窄症2例)がみられ,10歳の1例は大動脈二尖弁を合併していた.本研究より,TSの心疾患と大動脈拡大に対するMRIの有用性が示唆された.リスク因子の合併や加齢が大動脈拡大をきたす可能性があるため,年長児〜成人のTSでは心エコー,CT,MRI等の手段を用いた経時的観察が重要である.特に被曝がなく,成人でも画像の描出に優れたMRIを用いた評価が有用であると考えられた.
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【原著】
■題名
小児期発症のてんかんにおけるレベチラセタムの使用経験
■著者
埼玉県立小児医療センター神経科1),東京慈恵会医科大学小児科2),埼玉県立小児医療センター保健発達部3) 平田 佑子1)2) 浜野 晋一郎1)3) 松浦 隆樹2) 南谷 幹之1) 田中 学3) 菊池 健二郎1)2) 井田 博幸2)
■キーワード
小児てんかん, レベチラセタム, 有効性, 副作用, 併用薬
■要旨
小児期発症のてんかんにおけるレベチラセタム(LEV)の有用性と副作用を,併用薬との関係を含め検討した. 対象は1剤以上の抗てんかん薬で発作を抑制できずLEVを使用した85例で,後方視的に評価した.50%以上の発作減少が得られた有効例(レスポンダー率;RR)は全85例中38例(44.7%)だった.てんかん分類では,焦点性てんかんのRRが49.2%,全般てんかんのRRが23.5%であった.発作型分類では,焦点性発作のRRが50.0%,全般発作のRRが23.5%と有意差を認めた(p=0.049).発作増悪は全体で11例(12.9%)であり,焦点性発作と全般発作で差はなかった.副作用は26例(30.6%)で認め,発作増悪例の他,興奮7例,眠気7例,発疹1例であり,9例で継続投与が可能,残り17例は投与を中止し軽快した.併用薬により,有効率と副作用出現率に差がみられた.CBZ, LTGとの併用でRRが56.2%,46.7%と高かった.副作用出現率はPB, PHTとの併用で各々83.3%,55.6%と高く,ZNS, LTGとの併用では16.6%,20.0%と低かった.以上の結果から,LEVは特に焦点性てんかんに有効であり,併用薬を考慮し使用することで,より高い忍容性を得られると考えられた.
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【原著】
■題名
小児の東日本大震災に関連したストレス症状
■著者
公立相馬総合病院小児科1),福島県立医科大学小児科学講座2) 富田 陽一1)2) 武山 彩1) 伊藤 正樹1) 細矢 光亮2)
■キーワード
東日本大震災, 震災関連ストレス症状, 津波, 心的外傷後ストレス障害
■要旨
我々は2011年3月11日に東日本大震災を経験した.公立相馬総合病院は福島県沿岸部の相馬市に位置し,震災後に震災に関連したストレス反応によると考えられる症状(以下,震災関連ストレス症状)を呈して受診する児が多く認められた.震災関連ストレス症状を呈した児の臨床像を明らかにするために,全外来受診者を対象として後方視的に検討した.症状としては,甘える,落ち着きがないなどの精神症状よりも,頭痛・腹痛・嘔吐などの身体症状を訴えて受診する児が多かった.震災関連ストレス症状を呈した28名中13名は小児科外来でのカウンセリング等により症状が改善したが,残りの15名は精神科での治療が必要であった.最終的に心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された児は6名であり,津波の被害状況等を検討すると,4名は津波被害を受けて家族や親しい友人を亡くしていた.震災後は,日常診療の中に震災関連ストレス症状が隠れていることがあり,十分な問診と診察から,鑑別することが重要である.また被災状況がPTSDに関連することが知られており,重度な被害を受けた児では注意が必要である.
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【原著】
■題名
起立性調節障害132例における不登校傾向を示す要因
■著者
佐世保中央病院小児科 犬塚 幹 山田 克彦
■キーワード
起立性調節障害, 不登校, めまい・立ちくらみ, 発達障害
■要旨
起立性調節障害(以下OD)と診断された132例について,不登校およびその傾向を示した73例(A群)と示さなかった59例(B群)の2群に分け,OD症状を示した年齢,性別,新起立試験時の心拍数と収縮期血圧の推移,心身症や発達障害の併存の有無について比較検討した.OD症状のうち朝起き不良,腹痛,倦怠感はA群で有意に多く認められ,不登校傾向との関連が示唆された.起立試験を行った120例中30例(25%)は立ちくらみや気分不良のため10分間の起立試験に耐えられなかったことから,一部のOD例は強い循環不全症状のため学校生活に支障を来たしているものと思われた.体位性頻脈症候群と診断された割合は両群で差はなかったが,起立試験における起立10分後の心拍数はA群で高い傾向がみられた.めまい・立ちくらみは体位性頻脈症候群38例中35例(92%),遷延性起立性低血圧5例中5例(100%)といずれの病型でも高率に認められた.併存疾患は片頭痛16例,過敏性腸症候群6例などであったが,群間で差はなかった.発達障害が132例中18例(14%)に認められ,中でも広汎性発達障害は18例中14例と大部分を占めていたが,両群間で差はみられなかった.不登校傾向の有無にかかわらず,ODを示す小児の中には発達障害例が少なからず潜在している可能性があり,注意が必要と思われた.
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【原著】
■題名
PFAPA症候群100例の臨床像
■著者
信州大学医学部小児医学講座1),諏訪赤十字病院小児科2),飯山赤十字病院小児科3),昭和大学横浜市北部病院こどもセンター4),信州大学医学研究科感染防御学5) 古本 雅宏1) 岡田 まゆみ1) 柴 直子1) 丸山 悠太1) 重村 倫成1) 小林 法元1) 小池 健一1) 伯耆原 祥2) 神田 仁3) 本多 貴実子4) 梅田 陽4) 上松 一永5)
■キーワード
PFAPA, 周期性発熱, アフタ性口内炎, 咽頭炎, 頸部リンパ節炎
■要旨
周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・頸部リンパ節炎症候群(Syndrome of periodic fever,aphthous stomatitis,pharyngitis,and cervical adenitis:PFAPA)の小児期発症100例(男児56例,女児44例)の臨床像を解析し診断に有用な事項を検討した.性差はなく,発症年齢は平均2.9歳,周期性発熱や扁桃摘出の家族歴を56%に認めた.最高体温の平均は39.7℃,発熱周期は1.1か月に1回,発熱期間は平均4.7日だった.発作時比較的元気なものからきわめて不良の例までみられた.随伴症状は白苔を伴う扁桃炎が特徴的で,頸部リンパ節腫脹,口内炎,咽頭痛,頭痛,嘔吐などもみられた.発作時の白血球数は正常から増多していたが,核の左方移動はみられなかった.発作時のCRPと血清アミロイドAは全例上昇していた.血清IgD値が36.8%の症例で高く,上昇例の平均値は26.4 mg/dlだった.元気の良い場合は無治療で経過観察した.シメチジンの予防内服は53.2%で有効で,プレドニゾロンの頓服は全例で奏功し,扁桃摘出は有効であった.軽症例では数年で自然消退したが,8年以上長期に持続する例もみられた.家族歴,発熱の持続期間や周期,随伴症状,炎症検査所見,IgD値,副腎皮質ステロイド薬の反応性は,PFAPAの診断に有用と考えられた.
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【原著】
■題名
機能的排尿異常を有する小児の下部尿路症状スコア
■著者
昭和大学藤が丘病院小児科 池田 裕一 渡邊 常樹 布山 正貴 磯山 恵一
■キーワード
下部尿路症状スコア, 機能的排尿異常, カットオフ値, 感度と特異度, ROC解析
■要旨
機能的排尿異常(DV)は下部尿路症状(LUTS)のみならず,膀胱尿管逆流や再発性尿路感染症の原因となる重篤な排尿機能の異常である.DVは繰り返し施行された尿流測定でstaccato patternを認め,かつ有意な残尿がある状態と定義されている.近年,これらの検査を用いずLUTSスコアなどでDVを診断する試みが報告されているが,診断のためのカットオフ値は不明である.今回,DV診断のためのLUTSスコアの臨床的検討を行った.過去2年間に昼間尿失禁にて来院した患者のうち,週に4回以上の尿失禁があり,排泄・生活指導後12週間以上の観察が可能であった症例を対象とした.連続した2回の尿流測定を行いstaccato patternを認め,残尿量が20 mL以上であった症例をDV群とし,それ以外の症例を非DV群と定義した.LUTSスコアを用いてDV群と非DV群を比較し,DV群に対するROC曲線によるカットオフ値を検討した.対象は97例で,DV群は20例(20.6%),非DV群は77例(79.4%).DV群を対象としたROC解析によるLUTSスコアのカットオフ値を10とすると,感度は85%,特異度66.2%で,AUC0.816であった.DV診断におけるLUTSスコアのカットオフ値が明らかになったことで,LUTSスコアはDV診断のスクリーニングにおける有用なツールになることが期待される.
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【原著】
■題名
ワクチン皮内接種のための超音波による小児皮膚の厚み測定
■著者
住田こどもクリニック1),下永谷こどもクリニック2),松山クリニック3),横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター4) 住田 裕子1) 半澤 典生2) 松山 毅3) 森 雅亮4)
■キーワード
皮内接種, 皮膚厚, インフルエンザワクチン, 三角筋部, 肩甲上部
■要旨
皮内投与は免疫付与効果が高い投与経路として知られている.2009年には,成人及び高齢者への抗原削減もしくは高い抗体産生効果を訴求した皮内接種型インフルエンザワクチンが欧州で承認され,現在米国を含む数か国に提供されている.このワクチンは,皮内投与手技の煩雑さを克服するため,専用の皮内接種用デバイスで投与される.デバイスは針の長さを1.5 mmに規定し,三角筋部の皮膚に垂直に穿刺して皮内に薬液を送達するように設計されている.小児への展開が期待される一方で,成人の皮膚厚に基づいて設計された皮内接種用デバイスの小児への適用可否は不明である.本研究では,インフルエンザワクチン接種においては成人と同一の用法・用量の適用が開始される年齢を中心とした13〜15歳の男女82名を対象としてその皮膚厚を超音波画像診断装置で測定した.三角筋部の皮膚厚の平均値は1.81 mm,最薄値は1.25 mmであった.性差,BMIによる有意な差は認められなかった.肩甲上部の皮膚厚の平均は男児2.60 mm,女児2.28 mmであり,男児で皮膚が厚かった.最薄値は1.51 mmであった.三角筋部で1.5 mmよりも皮膚厚が薄い例は13例(16%)観察された.小児へ確実なワクチンの皮内接種を達成するためには,皮内接種用デバイスの針の短小化を検討するか,もしくは肩甲上部など適切な皮膚厚を有する投与部位を検討する必要があると考えられた.
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【症例報告】
■題名
軽微な外傷に伴う脊髄梗塞と考えられた1例
■著者
豊橋市民病院小児科1),聖隷三方原病院小児神経科2) 長柄 俊佑1) 中村 勇治1) 相場 佳織1) 杉本 真里1) 小山 典久1) 横地 健治2)
■キーワード
脊髄梗塞, 線維性軟骨塞栓, 前脊髄動脈, 炎症性脊髄疾患
■要旨
軽微な頭部外傷から急速に四肢の弛緩性麻痺を呈した2歳女児例を経験した.
脊髄MRIでは,発病直後から著明な脊髄の腫大が認められ,横断性の病変により延髄下部から第2胸髄部位までの長い髄節が侵された.各種検査,脊髄MRI所見により脊髄梗塞と診断した.血管支配域から判断すると,前脊髄動脈・後脊髄動脈の両者の支配域が侵されていた.成因としては,線維性軟骨塞栓あるいは脊髄血管のれん縮が考えられた.
軽微な外傷に伴う脊髄梗塞の小児例の報告は少なく,詳細な臨床経過,各種検査の経過を含めて報告する.
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【症例報告】
■題名
赤血球T抗原化による汎血球凝集反応を呈した肺炎球菌髄膜炎例
■著者
昭和大学藤が丘病院小児科 松野 良介 小川 玲 入戸野 美紗 田中 裕 渡邊 常樹 西岡 貴弘 池田 裕一 磯山 恵一
■キーワード
汎血球凝集反応, 溶血, 髄膜炎, 肺炎球菌
■要旨
[緒言]汎血球凝集反応(Polyagglutination:PA)は細菌感染症,血液疾患,悪性腫瘍,遺伝などの要因により赤血球膜の糖鎖構造が変化し,潜在する抗原が表出した結果,臍帯血清および新生児血清を除く全ての正常人血清と赤血球凝集を起こす現象である.今回,肺炎球菌髄膜炎にともなう赤血球T抗原化によるPA(以下T抗原化PA)の症例を経験したので報告する.[症例]9か月,女児.痙攣重積を主訴に来院.髄液検査から肺炎球菌による髄膜炎と診断した.貧血に対する赤血球濃厚液(RCC)輸血の生理食塩水法で実施した交差適合試験の副試験で凝集反応を認めた.この結果よりPAを疑い精査を実施した.各種レクチンとの反応は,Arachis hypogeaとGlycine sojaで(4+)と強い凝集を認め,T抗原化PAと診断した.洗浄赤血球液を用意することができなかったため,副試験が弱陽性のRCCの輸血を開始したところ,4時間後の検査結果で溶血所見を示した.その後の成人/臍帯血血清との反応試験およびT抗原化の結果からPAと確定診断した.[考案]PA患者に対し,残存血漿が少ないRCC輸血により溶血反応を呈した症例は極めて少ない.自験例の経験から副試験に基づいた洗浄赤血球輸血が重要であることを再認識した.また髄膜炎などの小児重症感染症ではPAを起こす可能性があり,輸血に関しては注意が必要である.
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【症例報告】
■題名
段階的負荷試験で診断しえたセフトリアキソンによるアナフィラキシー例
■著者
神戸市立医療センター中央市民病院小児科1),滋賀県立小児保健医療センター小児科2) 楢林 成之1) 岡藤 郁夫1) 舞鶴 賀奈子1)2) 田中 裕也1) 鶴田 悟1)
■キーワード
薬剤アレルギー, 皮膚テスト, 好塩基球活性化試験, 段階的負荷試験, 代替抗菌薬
■要旨
今回我々はセフトリアキソン(CTRX)アナフィラキシーの1例を経験した.薬剤アレルギー診断のgolden standardは当該薬剤を用いた段階的負荷試験であるが,リスクを伴う検査のため皮膚テストで代用されることがある.発症時の原因診断および使用可能な代替抗菌薬(ペニシリン,カルバペネム,第一世代セフェム,第三世代セフェム)の検討で皮膚テストが陰性だったため,近年,より特異性の高い方法として有用性が注目されている好塩基球活性化試験(BAT)を行ったところ皮膚テスト同様陰性だった.結果的に段階的負荷試験を行い,検討した薬剤は全て陰性で,CTRXのみ陽性を示した.CTRXは半減期が長いセフェム系抗菌薬として小児の外来診療の場で頻用され,細菌性髄膜炎の標準治療薬のひとつとして小児の入院診療の場でも重要な薬剤である.CTRXと同系統の代替抗菌薬を示すことができたことは患者家族に多大な安心を与えることができた.抗菌薬は最もアナフィラキシー事例が多い薬剤であることを認識し,適切な使用を心がけ,アナフィラキシー出現時のみならずその後の対応も適切に行えるよう取り組んでいく必要がある.
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【症例報告】
■題名
スクリーニング後に発症したカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-II欠損症
■著者
市立宇和島病院小児科1),島根大学医学部小児科2) 桑原 優1) 岡本 典子1) 城賀本 敏宏1) 元木 崇裕1) 中野 威史1) 林 正俊1) 山田 健治2) 小林 弘典2) 山口 清次2)
■キーワード
CPT2欠損症, アシルカルニチン分析, 新生児マススクリーニング, 診断, 二次対象疾患
■要旨
我々は,タンデムマス・スクリーニング初回検査でC16-OH高値(三頭酵素欠損症疑い)を指摘されたが,再検時に正常と判定されたためフォローが中止され,9か月時にインフルエンザ罹患を契機に突然死した症例を経験した.
本症例は救急搬送時の検査結果から先天代謝異常症が疑われた.死後,急性期のろ紙血のタンデムマス分析でC0の低値が確認された.急性期の血清のタンデムマス分析で長鎖アシルカルニチンの上昇等の所見を認め,カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-II(CPT2)欠損症と診断された.最終的に遺伝子検査により本症と確定診断された.
本疾患はタンデムマス・スクリーニングで発見可能な疾患であるが,診断精度の問題などから二次対象疾患であり,自治体によってはタンデムマス検査を受けているにも関わらず見過ごされる可能性がある.しかし,CPT2欠損症は診断指標が見直されており,本症例の新生児期のガスリーろ紙血で後方視的に検査したところ,新しい指標では日齢5の検体で異常と判定された.本疾患を一次対象疾患とする事が望まれる.
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