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日本小児科学会雑誌 目次

(登録:14.10.22)

第118巻 第10号/平成26年10月1日
Vol.118, No.10, October 2014

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日本小児循環器学会推薦総説

小児循環器の現状と将来

丹羽 公一郎  1435
日本小児内分泌学会推薦総説

先天性甲状腺機能低下症の分子遺伝学

鳴海 覚志,他  1450
第117回日本小児科学会学術集会
  会頭講演

小児がん細胞における細胞死誘導機構

駒田 美弘  1457
  教育講演

乳幼児健診とその周辺

平岩 幹男  1468
原  著
1.

遷延性熱性発作を呈した小児における非けいれん性発作

丸山 あずさ,他  1475
2.

小児けいれん患者における急性期磁化率強調画像

岩崎 博樹,他  1481
3.

小児脳腫瘍の初発症状

中野 嘉子,他  1489
4.

乳児臍ヘルニアの頻度と圧迫固定療法の効果

平岡 政弘  1494
症例報告
1.

事前ケアプランに従って看取った超重症児(者)の1例

船戸 正久,他  1502
2.

強力な抗炎症療法中の生後2か月の川崎病児に合併した消化管アレルギーの1例

下村 真毅,他  1508
3.

腎移植術前検査で確定診断され予防的に性腺摘除を行ったFrasier症候群の1例

浅野 達雄,他  1515
4.

頭蓋骨幹端骨異形成症でのカルシトリオール経口パルス療法中の骨代謝マーカーの推移

竹内 勇介,他  1520
5.

7価結合型肺炎球菌ワクチン3回接種後に発症した肺炎球菌性髄膜炎・膿瘍の1例

田中 裕,他  1526
6.

腹部外傷後の十二指腸壁内血腫から閉塞性イレウスと急性膵炎に至った1例

野澤 正寛,他  1532
論  策

小児の入院患者は中核病院・地域小児科センターに集約しているのか―DPCデータから

江原 朗  1538

地方会抄録(岩手・静岡・島根・奈良)

  1545

日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2014年56巻4号8月号目次

  1561


【原著】
■題名
遷延性熱性発作を呈した小児における非けいれん性発作
■著者
兵庫県立こども病院脳神経内科
丸山 あずさ  西山 将広  藤田 杏子  永瀬 裕朗

■キーワード
連続脳波モニタリング, 非けいれん性発作, 興奮毒性, 急性脳症, 重症熱性けいれん
■要旨
 【目的】遷延性熱性発作(Prolonged febrile seizure:PFS)を呈した小児において,神経症状出現早期の非けいれん性発作(nonconvulsive seizure:NCS)の頻度,出現時期,神経学的予後との関連を明らかにする.【対象と方法】2007年2月から2010年5月の40か月間に当院PICUに入院し,連続脳波モニタリングを行った小児のうち,PFSを呈した患者30症例を対象とし,NCS出現群と非出現群での臨床的特徴,退院時神経学的予後を比較検討した.【結果】NCSは30例中11例,37%で出現した.神経学的後遺症はNCS出現群11例中4例(36.4%),非出現群19例中1例(5.3%)で認め,NCS出現群で退院時に神経学的後遺症を残す割合が高かった.(p=0.028)【結論】PFSを呈した小児において,NCSは短期的神経学的予後不良と関連していた.


【原著】
■題名
小児けいれん患者における急性期磁化率強調画像
■著者
東京都立広尾病院小児科1),日本大学医学部小児科学系小児科学分野2)
岩崎 博樹1)  藤田 之彦2)  原 光彦1)

■キーワード
磁化率強調画像, susceptibility-weighted imaging, けいれん, 側方性, 小児
■要旨
 【背景】磁化率強調画像法(susceptibility-weighted imaging:SWI)は組織の磁化率の差異を画像的に強調した新しいMR画像であり,デオキシヘモグロビン濃度の高い脳静脈血を低信号として高精細に描出する.本研究の目的は小児けいれん後急性期SWIの臨床的意義の確認である.【対象と方法】けいれん頓挫後2時間以内にSWIを施行した11例(男5例,女6例;年齢幅0〜7歳,平均年齢3.7歳)を急性期SWI群,上記以外の条件でSWIを施行した15例(男12例,女3例;年齢幅0〜15歳,平均年齢7.8歳)を対照群とした.SWIにおける脳静脈低信号の有無と分布を正常群,片側群,全般群の三群に分け,患者情報が遮蔽された画像を用いて二名の放射線科医が後方視的に分類した.【結果】急性期SWI群は5例が片側群,6例が全般群に分類され,正常群は認めなかった.片側群は全般群と比較して顕著な低換気性呼吸不全を呈する傾向を認めた.片側群の経過観察SWIは全例正常化し,脳静脈低信号領域と間欠期脳波の異常所見出現領域の側方性は一致した.全般群の1例を除き神経学的後遺症は認めなかった.対照群では11例が正常群,4例が全般群に分類された.【結論】けいれん後急性期のSWIはけいれん部分発作の鑑別と発作焦点側方性の同定に有用である可能性がある.


【原著】
■題名
小児脳腫瘍の初発症状
■著者
大阪市立総合医療センター小児医療センター小児血液腫瘍科
中野 嘉子  山崎 夏維  田中 千賀  岡田 恵子  藤崎 弘之  大杉 夕子  原 純一

■キーワード
小児脳腫瘍, 初発症状, 早期発見, 神経症状, 精神症状
■要旨
 脳腫瘍は,小児がん死亡原因の第一位を占め,たとえ治癒しても神経学的後遺症や治療関連の合併症を残し得る.従って,腫瘍が限局しており,神経および内分泌合併症などが軽微かつ可逆的な発症早期に診断し,治療介入することが望まれる.しかし,欧米からの報告では,症状出現から診断まで概ね3か月かかり1年以上を要する例も稀ではないことが示されている.一方でこのような検討は調べ得た限りでは,これまでわが国では報告されていない.本邦での状況の一端を明らかにし,早期診断に資する目的で,当科で経験した小児脳腫瘍80例について初発症状および診断までの期間を後方視的に検討した.症状出現から診断までの期間の中央値は2か月で,1年以上要した例も13%みられた.診断時点での受診理由は,嘔吐を伴う頭痛(15例),意識障害や痙攣(11例)が最も多く,眼症状や麻痺がそれに続いた.多くの場合,複数の症状あるいは緊急性の高い神経症状が現れて初めて脳腫瘍が疑われており,嘔吐または頭痛のみを主訴に受診した段階で診断された例は4例のみであった.内分泌症状が初発症状の場合は,ほとんどの症例が診断まで半年以上を要していた.多くの症例の当初の診断は胃腸炎やケトン性嘔吐症,夜尿,良性斜視などであった.このように脳腫瘍の初発症状は非特異的かつ多様であるが,このような症状に遭遇した時には脳腫瘍も念頭におくことが早期診断につながるものと思われる.


【原著】
■題名
乳児臍ヘルニアの頻度と圧迫固定療法の効果
■著者
愛育小児科
平岡 政弘

■キーワード
臍ヘルニア, 圧迫療法, 臍突出症
■要旨
 一般乳児における臍ヘルニアの頻度および圧迫固定療法の効果を明らかにすべく検討を行った.圧迫固定には,エチレン酢酸ビニルポリマー樹脂製の厚さ2 cmのマットを八角錐台の形に加工したものを用いた.過去2年間に当院にて4か月未満でワクチンを受けた400人の臍部を前方視的に観察した結果,44人(11.0%)に臍ヘルニアを認めた.このうちヘルニア門が6 mm以上のものは35人(8.8%)であった.これらを含めて過去3年間に計62例の臍ヘルニアを診断した.圧迫固定療法を継続できた54例のうち治癒に至った49例はいずれも4か月未満で治療を開始していた.4か月未満で治療を開始した52例の治癒率は,30日以内で36%,60日以内で75%,90日以内で88%であった.ヘルニア門の大きさが5 mm以下の11例のうち5例は自然治癒したが,圧迫固定療法を行った6例では有意に早く治癒に至った.ヘルニア門が6 mm以上の大きさの50例のうち圧迫固定療法を4か月までに受けなかった4例では全例が臍ヘルニアを持続ないし臍突出症を残したが,4か月未満で治療を受けた46例では3例のみと有意に少なく,この3例では皮膚炎などのために治療を頻回に中断していた.治療の中断は躯幹に湿疹を認めた例で有意に多かった.臍ヘルニアは健常乳児でしばしば認められ,圧迫固定療法はこれを早期治癒させることにより臍突出症の発症防止に有効であった.


【症例報告】
■題名
事前ケアプランに従って看取った超重症児(者)の1例
■著者
大阪発達総合療育センター小児科
船戸 正久  馬場 清  竹本 潔  飯島 禎貴  柏木 淳子  片山 珠美

■キーワード
生命倫理, 超重症児・者, 最善の利益, 協働意思決定, 事前ケアプラン
■要旨
 生命予後不良で意思表示できない方の人権と尊厳を守る医療の必要性が問われている.当センターで療育支援を受けながら徐々にターミナルに移行した超重症児(者)を事前ケアプランに従って家族・医療チームで協働意思決定し看取りを行った.
 利用者は,男性,20歳の超重症者である.新生児期,超早産児にて出生,仮死,脳内出血後低酸素性虚血性脳症となり,意識障害,24時間人工呼吸器管理,経管栄養が必要となった.15歳の時,当センターへ入所後徐々に経管栄養を増量すると,吃逆発作がおこりSpO2低下を繰り返した.栄養摂取不良のため徐々に体重減少が進み,何度か家族カンファレンスを開いた.法的代理人である家族(母親)は高カロリー輸液を含む現状以上の医的侵襲を希望せず,急変時・心停止時の積極的な蘇生も希望しなかった.この話合いに基づいて多職種で緩和ケアチームを編成し,母親と相談しながら事前ケアプランを立て,母親の署名をいただいた上で倫理委員会に提出した.その結果センターの支援プログラムとして正式に承認を受けた.事前ケアプランに従って侵襲的処置の制限,母親の胸での看取り,お別れ会,センター玄関からの見送りなどをチームで行った.
 今後本人の最善の利益を中心に家族と医療チームで協働意思決定し,さらに事前ケアプランに基づいた包括的医療が重要になると思われる.


【症例報告】
■題名
強力な抗炎症療法中の生後2か月の川崎病児に合併した消化管アレルギーの1例
■著者
静岡県立こども病院免疫アレルギー科1),同 小児集中治療科2),同 循環器科3)
下村 真毅1)  目黒 敬章1)  徳永 郁香1)  伊藤 靖典1)  瀬戸 嗣郎1)  木村 光明1)  植田 育也2)  小野 安生3)

■キーワード
川崎病, 新生児・乳児消化管アレルギー, 肺水腫, プレドニゾロン, インフリキシマブ
■要旨
 生後1か月発症の川崎病で,免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)に不応であり,ステロイド(PSL)や生物学的製剤であるインフリキシマブ(IFX)などを追加して治療中に,新生児・乳児消化管アレルギーを合併した男児例を経験した.患児は,複数回にわたりIVIGを行い,さらにPSLも併用したが症状は鎮静化しなかった.その後,冠動脈拡大が進行したため,IFXを追加投与した.IFX投与後,解熱し,炎症所見も改善傾向を示した.しかし,その17日後,PSLを継続投与中にもかかわらず血便が出現し,次第に増悪した.乳児用牛乳調整粉乳を使用していたため消化管アレルギーを疑い,除去試験と負荷試験を実施したところ,いずれも陽性であった.牛乳特異的IgE抗体は陰性であったが,アレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)でβ-カゼインに陽性反応が確認されたため牛乳蛋白による消化管アレルギーと確定診断した.本症例は,IFX投与後,PSL継続中に発症していることから,薬剤による消化管アレルギー治療の困難さを示唆しており,原因アレルゲン除去の重要性を再認識させるものである.


【症例報告】
■題名
腎移植術前検査で確定診断され予防的に性腺摘除を行ったFrasier症候群の1例
■著者
東京女子医科大学腎臓小児科
浅野 達雄  神田 祥一郎  秋岡 祐子  徐 東博  西山 慶  宮井 貴之  菅原 典子  石塚 喜世伸  近本 裕子  服部 元史

■キーワード
WT1, Frasier症候群, ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群, 腎移植, 性腺摘除
■要旨
 腎移植では術前に個々の症例の問題点を把握しておくことが重要である.Frasier症候群(FS)は正常な女性外性器,索状性腺,性染色体XY,ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS)を認め末期腎不全に至るWilms腫瘍抑制遺伝子(WT1)変異により発症する症候群の一型である.高率に性腺芽腫を来すため予防的な性腺摘除が推奨される.今回,腎移植術前にFSと診断され予防的に性腺摘除を行った1例を経験した.症例は16歳女性.3歳発症のSRNSを原疾患として,16歳時に末期腎不全に陥った.生体腎移植の術前に,思春期遅発に対する精査を行った.骨盤MRIで子宮と卵巣が同定できず索状性腺を認めた.内分泌学的に原発性性腺機能低下症を示し,性染色体XY, WT1にIVS9+5 G>Aのヘテロ接合体変異を認めたことからFSと診断した.性腺芽腫の可能性を考慮し腎移植前に性腺摘除術を行った.摘出された病理組織は性腺芽腫の初期段階が疑われる所見であった.今後改めて生体腎移植を予定している.
 本症例では遺伝子検査によって腎移植前に確定診断されたことで腫瘍リスクや原疾患再発の可能性に配慮した腎移植計画を立案できた.SRNSを原疾患として末期腎不全に至った女児例には,FSを鑑別に挙げ腎移植前にWT1遺伝子検査を含めた正確な診断が必要である.


【症例報告】
■題名
頭蓋骨幹端骨異形成症でのカルシトリオール経口パルス療法中の骨代謝マーカーの推移
■著者
信州大学医学部小児医学講座1),市立大町総合病院小児科2),独立行政法人国立病院機構まつもと医療センター小児科3)
竹内 勇介1)2)  稲葉 雄二1)  松浦 宏樹1)  倉田 研児3)  三澤 由佳1)  本林 光雄1)  新美 妙美1)  西村 貴文1)  柴 直子1)  小池 健一1)

■キーワード
頭蓋骨幹端骨異形成症, カルシトリオール経口パルス療法, カルシウム摂取制限, 骨代謝マーカー
■要旨
 頭蓋骨幹端骨異形成症(craniometaphyseal dysplasia,以下CMD)は,骨芽細胞におけるピロリン酸の細胞外輸送が停滞し,頭蓋骨の骨硬化と長管骨骨幹端部の異形成を特徴とする疾患である.頭蓋底の骨硬化は脳神経障害と水頭症をきたす.症例は11歳男子.生後4か月から頭囲拡大,視覚障害,難聴が出現し,特徴的な顔貌と骨X線所見,ank遺伝子の異常を認め,13か月時に本症と診断された.診断直後から,カルシウム摂取制限下でカルシトリオール経口パルス療法を開始した.治療による合併症はなく,視力・聴力低下の進行や,水頭症の発症なく経過している.骨代謝マーカーを経時的に評価したところ,骨形成マーカーである血中骨型ALPと血中オステオカルシン,骨吸収マーカーである尿中I型コラーゲン架橋-N-テロペプチドと尿中デオキシピリジノリンは当初著明に高値であったが,治療に伴い徐々に低下して,長期間推移した.10年間に渡ってCMD患者に対する本治療の有効性を骨代謝マーカーの推移とともに示した報告はなく,貴重な報告と考える.


【症例報告】
■題名
7価結合型肺炎球菌ワクチン3回接種後に発症した肺炎球菌性髄膜炎・膿瘍の1例
■著者
昭和大学藤が丘病院小児科1),横浜旭中央総合病院小児科2)
田中 裕1)  石井 敏夫1)  西岡 貴弘1)  入戸野 美紗2)  保崎 一郎2)  池田 裕一1)  磯山 恵一1)

■キーワード
細菌性髄膜炎, 7価結合型肺炎球菌ワクチン, 硬膜下膿瘍
■要旨
 7価結合型肺炎球菌ワクチン初回3回接種後に肺炎球菌性髄膜炎に罹患したまれな症例を経験した.症例は8か月男児.持続する発熱と嘔吐を主訴に前医を受診した.項部硬直と大泉門の膨隆を認め,髄液検査から細菌性髄膜炎と診断された.7価結合型肺炎球菌ワクチンを生後2,3,6か月に3回接種規定どおり接種していたにもかかわらず,血液培養・髄液培養から肺炎球菌が分離された.セフトリアキソン,パニぺネム・ベタミプロンの投与を開始したが,硬膜下膿瘍の合併を認めたため,バンコマイシンを併用し軽快した.7価結合型肺炎球菌ワクチンに含まれる血清型の血清抗体価は十分に上昇していたが,分離された肺炎球菌の血清型は7価結合型肺炎球菌ワクチンに含まれない33Fであった.自験例は,現行の7価結合型肺炎球菌ワクチンでは予防ができない稀な状態であると考えられた.7価結合型肺炎球菌ワクチンを規定どおり行っている乳児でも,ワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌性髄膜炎に罹患する危険性があることに注意する必要がある.


【症例報告】
■題名
腹部外傷後の十二指腸壁内血腫から閉塞性イレウスと急性膵炎に至った1例
■著者
国立成育医療研究センター救急診療科
野澤 正寛  佐々木 隆司  辻 聡

■キーワード
十二指腸壁内血腫, イレウス, 急性膵炎, 閉塞性黄疸
■要旨
 外傷性十二指腸壁内血腫は軽微な受傷機転での腹部打撲に起因するものが多く,成人に比して小児の発生頻度が高い.しかし本邦の小児報告例はまだ少なく,広く認知をされているとは言えない.我々は転倒して腹部を打撲した後,時間を経て閉塞性イレウスと急性膵炎になった外傷性十二指腸壁内血腫の男児例を経験した.症例は9歳男児.転倒し右腹部を石で打撲した.受傷直後は腹痛や嘔気はなく徒歩で帰宅したが,腹痛と嘔吐を繰り返すようになり7時間後に当院を受診した.来院時は右季肋部に限局する強い圧痛があり,腹部造影CTで十二指腸下降部の背側壁内に血腫を確認した.絶飲食と胃管による減圧と排液を行い保存的に経過観察した.第5病日に急性膵炎となり,腹部造影CTで血腫の増大を確認した.上部消化管造影検査では十二指腸の完全閉塞を確認した.急性膵炎の治療と中心静脈栄養による栄養管理を必要とした.第12病日より血便とともにイレウス症状は軽快し,第37病日に独歩退院となった.本症は時間を経て症状が増悪し,受傷機転も軽微であることから初診時に診断することは困難である.しかし,本症例のように厳重な管理を必要とする閉塞性イレウスや急性膵炎を呈することがある.従って腹痛と嘔吐を主訴に来院した患者の腹痛が上腹部に限局しており,軽微でも数日以内に同部位の打撲歴があれば本症の可能性があることを認知しておく必要がある.


【論策】
■題名
小児の入院患者は中核病院・地域小児科センターに集約しているのか―DPCデータから
■著者
広島国際大学医療経営学部
江原 朗

■キーワード
中核病院, 地域小児科センター, DPC, 入院, 集約化
■要旨
 病院小児科あたりの医師数が少ないことが病院小児科の疲弊の原因であるとして,平成19年に日本小児科学会理事会は小児入院医療の重点化・集約化に関する提言を行った.こうした流れを受けて,病院小児科あたりの常勤医師数は増加傾向にある.しかし,小児医療の重点化・集約化は供給者側からだけではなく,需要者側からも検討が必要である.
 平成24年度現在,中核病院・地域小児科センター501施設のうち467施設(93%)はDPC集計対象病院であり,全国のDPC集計対象病院1,774施設の26%を占めている.そこで,DPCデータを用いて,熱性けいれんおよび川崎病の入院患者が中核病院・地域小児科に集約する比率を計算した.
 各疾患の退院患者数が年間10人以上のDPC集計対象病院に限定すると,平成24年の全国における熱性けいれん患者の82%,川崎病患者の80%が中核病院・地域小児科センターにおける退院患者であった.しかし,中核病院・地域小児科センターにおける退院患者の比率を地方間で比較するとばらつきがみられた.
 中核病院・地域小児科センターへの集約度を年次的にみると,熱性けいれんは82%〜82%,川崎病は86%〜80%と平成21年度から24年度にかけて大きな変化はない.しかし,集約度の地方間格差は小さくなっていた.

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