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日本小児科学会雑誌 目次 | 
 
 
 
(登録:14.5.20) 
第118巻 第5号/平成26年5月1日 
Vol.118, No.5, May 2014
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| 総  説 | 
 
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| 竹本 潔,他  755 | 
 
| 第116回日本小児科学会学術集会 | 
 
|   総合シンポジウム | 
 
 
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小児科領域における医学用語およびコミュニケーション手段を考える 
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|   762 | 
 
| 原  著 | 
 
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| 藤田 伸二,他  773 | 
 
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| 土田 晋也  779 | 
 
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| 数間 紀夫  784 | 
 
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| 藤井 喜充,他  791 | 
 
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| 東山 幸恵,他  797 | 
 
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| 中村 由恵,他  803 | 
 
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| 後藤 正博,他  808 | 
 
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| 西山 将広,他  812 | 
 
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| 竹内 正宣,他  819 | 
 
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| 前野 誓子,他  826 | 
 
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| 菊地 正広,他  830 | 
 
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地方会抄録(岡山・鹿児島・奈良・中国四国・静岡・宮城・福島) 
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|   835 | 
 
 
代議員・理事・監事名簿 理事・監事当選者立候補事由 
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| 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 | 
 
|   Injury Alert(傷害速報) | 
 
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日本小児科学会英文雑誌 Pediatrics International 2014年56巻2号4月号目次 
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|   892 | 
 
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| 平成26年度公益財団法人小児医学研究振興財団 | 
 
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 【総説】 
■題名 
療育施設におけるショートステイの現状と課題 
■著者 
大阪発達総合療育センター小児科 竹本 潔  船戸 正久  馬場 清  飯島 禎貴  柏木 淳子 
■キーワード 
ショートステイ, 重症心身障害, 療育施設, レスパイト, 小児在宅医療 
■要旨 
 【目的】大阪発達総合療育センターで実施している重症心身障害児のショートステイの現状と課題を調査する. 
 【方法】2008年度から2012年度の5年間のショートステイ利用状況および問題点についてデータベースより後方視的に解析した. 
 【結果】現在登録者数約600名,1日平均11.3人が利用していた.全体の49%が3日以内の短期利用であり,51%が18歳以下で医療要求度が高い小児が多い傾向を認める一方,30歳以上も全体の17%を占めていた.人工呼吸器装着児は全体の12%であった.問題点としては,ベッド不足,急なキャンセルへの対応,体調不良時の対応,同じ医療的ケアであっても病院・主治医・家族によるやり方の違い,生活面でのケアの難しさがあげられた. 
 【結論】今後レスパイトケアを含めたショートステイの充実が,重症心身障害児者の在宅支援の大切なキーになると思われた.
 
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 【原著】 
■題名 
小児用肺炎球菌ワクチン導入後の健康保育園児における鼻咽頭の肺炎球菌 
■著者 
横浜市磯子区医師会保育園医部会1),聖マリアンナ医科大学微生物学2) 藤田 伸二1)  住田 裕子1)  齋藤 綾子1)  箕原 豊1)2)  矢崎 茂義1)  北村 美悳1)  河合 茂彦1)  鎌田 一美1)  北原 弘1) 
■キーワード 
侵襲性肺炎球菌感染症, 小児用7価肺炎球菌ワクチン, 血清型, 保育園児 
■要旨 
 横浜市磯子区内の12の保育園を対象に,小児用7価肺炎球菌ワクチン(以下PCV7)導入後の,健康保育園児における肺炎球菌の保菌状況を調査する目的で鼻咽頭から検体採取を行い細菌を分離し血清型を検査した.保護者から文書による同意の得られた574名(平均年齢3.80±1.48歳)から検体を採取し,213例(37.1%)から肺炎球菌が分離された.PCV7含有血清型株(以下ワクチン株)は28例(13.1%)のみで185例(86.8%)が非ワクチン株であった.最も多い血清型は15A18例であった.ワクチン株の内訳は19F12例,6B10例,23F6例であった.また各施設ごとに血清型が大きく異なっていた.肺炎球菌保菌率は0歳でも50%を超えており1歳がピークでその後減少していた.しかしワクチン接種率の高い0歳ではワクチン株はみとめず,またPCV7接種群では非接種群に比べ,ワクチン株の定着が有意に少なく,いずれもPCV7の効果と思われた.
 
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 【原著】 
■題名 
一般小児科外来における急性中耳炎の有病率と症状・徴候 
■著者 
小児中耳炎調査グループ,つちだ小児科 土田 晋也 
■キーワード 
急性中耳炎, 一般小児科外来, 気道感染症, 有病率, 症状・徴候 
■要旨 
 目的:わが国の一般小児科外来を受診した気道感染症患児を対象とし,急性中耳炎を有する割合(有病率)とその診断のために有用な症状・徴候を前方視的に調査する. 
 対象と方法:2009年1月から12月までの1年間,10施設の小児科開業医を受診した気道感染症患児2,287例(3.7±3.3歳)を調査対象とした. 
 結果:中耳貯留液を認めたのは352例(15.4%),急性中耳炎は122例(5.3%)だった.年齢は1歳(8.7%),季節は4月(9.0%)と12月(9.2%)で急性中耳炎有病率が高かった.耳痛(急性中耳炎診断基準のひとつ)を認めたのは53例(43%),年齢を2歳未満に限れば13例(19%)だった.啼泣・不機嫌など耳痛徴候はrelative risk[RR]6.5,95% confidence intervals[CI]4.1〜10.3だった.鼻汁はRR 3.0,CI 1.9〜4.6だった.発熱(最高体温38.0℃以上)は診断に有用とは考えられず,2歳以上ではRR 0.5,CI 0.3〜0.9と発熱はむしろ急性中耳炎の可能性を低減させた. 
 結論:一般小児科外来を受診するたくさんの気道感染症患者の中に少なからぬ急性中耳炎が潜在していた.わが国の小児科医も,一般小児科外来を受診した気道感染症患児診察時には症状にかかわらず鼓膜観察を心掛ける必要がある.
 
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 【原著】 
■題名 
小児起立性調節障害診断基準の検討 
■著者 
西部総合病院小児科 数間 紀夫 
■キーワード 
起立性調節障害, ガイドライン, 診断基準, 新起立試験 
■要旨 
 日本小児心身医学会によって,2006年に小児起立性調節障害診断・治療ガイドラインが作成されたが,これは従来の起立性調節障害(orthostatic dysregulation:OD)の診断基準(以下,旧診断基準)を満たした症例に新起立試験を行いサブタイプの診断をするものである.田中らは小児起立性調節障害のスクリーニングリストを検討し,旧診断基準から起立試験の項目を削除し,大小11項目のうち3項目以上の陽性で診断が可能となることを報告した(以下,田中案).一方,旧診断基準作成者のひとりである大国が新基準案を提言した.これは旧診断基準の大基準「立ちくらみ」と「起立時の気分の悪さ,転倒」を重視し,起立試験のみ残し小症状を削除したもので,より簡素化した基準である(以下,大国案).今回,旧診断基準でODと診断した164例に対し,大国案をODのスクリーニングと仮定して両案を用いて再検討した.新起立試験陽性例のうち田中案では除外される例はなかったが,大国案では除外される症例が17例(12%)あった.大国案をスクリーニングとして採用するには,項目選択についての検討が必要であるが,田中案の旧起立試験を含まず大小症状の自覚症状のみ3項目以上で診断する方法はODのスクリーニングとして適切である.
 
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 【原著】 
■題名 
小児慢性機能性便秘症の診断と重症度判定におけるBristol便スケールの有用性 
■著者 
関西医科大学小児科学講座1),中野こども病院2) 藤井 喜充1)  山内 壮作1)  加藤 正吾1)  鷲尾 隆太2)  北尾 哲也1)  大町 太一1)  木野 仁郎2)  木野 稔2)  金子 一成1) 
■キーワード 
慢性機能性便秘症, Bristol Stool Form Scale, 診断, 重症度, 小児 
■要旨 
 治療を要する小児の便秘症は約30%にも見られ,大多数を占める慢性機能性便秘症(functional constipation:FC)の適切な管理が小児科医には求められるが,診断と重症度評価は容易ではない.そこで過敏性大腸症候群の便の指標であるBristol Stool Form Scale(BSFS)を小児のFCに用いることを考え,FCの小児例と便秘を主訴に来院したFC以外の小児例において,診断精度と重症度判定におけるBSFSの有用性を検討した.BSFSは便を兎糞状硬便から水様性下痢便まで7段階にクラス分けしている.FC症例(271例)におけるBSFSの中央値はtype 1.0で,非FC症例(54例)は4.0であり,前者が有意に硬便であった(p<0.01).FCの診断における受信者動作特性曲線Receiver Operating Characteristic曲線は,曲線下面積が0.825で,カットオフポイントをBSFS type 2とすると,FC診断におけるBSFSの感度は0.727,特異度は0.796,陽性的中率は0.947,陰性的中率は0.368で,オッズ比が10.5となった.またFCの重症度の指標である排便頻度,治療期間および使用薬剤数は,FC271例においていずれもBSFSと有意な相関が認められた(p<0.01).以上よりBSFSは小児FCの診断と重症度判定において有用な指標であると思われた.
 
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 【原著】 
■題名 
小児の栄養評価における急性期蛋白臨床基準範囲設定 
■著者 
奈良女子大学生活環境学部1),京都社会事業財団京都桂病院小児科2) 東山 幸恵1)  久保田 優1)  甲斐 萌梨1)  永井 亜矢子1)  片岡 昭浩2)  水嶋 康浩2)  若園 吉裕2) 
■キーワード 
臨床基準範囲, トランスサイレチン, レチノール結合蛋白, 小児栄養評価 
■要旨 
 半減期の短い急性期蛋白(Rapid turnover protein:RTP)であるトランスサイレチン(Transthyretin:TTR)やレチノール結合蛋白(Retinol binding protein:RBP)は栄養状態を鋭敏に反映する指標として臨床において重要である.しかし小児のRTP基準値に関する検討は未だ十分ではない.健常児からの採血が困難である現状を踏まえ,本研究では一定の基準により選別した患児データを用いたRTP臨床基準範囲の設定を試みた.154例中,(1)栄養障害リスク有(2)C-Reactive Protein(CRP)≥3.0 mg/dL(3)Alanine aminotransferase(ALT)≥50 IU/L,のいずれかである40例を除いた114例(0〜15歳)を対象に解析を行ったところ,両指標ともに年齢と正の相関を認めた(TTR:R=0.48 p<0.01,RBP:R=0.45 p<0.01).さらに年齢区分毎の中央値,2.5および97.5パーセンタイル値を求めたところ,中央値は両指標とも13〜15歳群は0〜6歳各群に比べ有意に高値を示した(p<0.05).本研究によりTTR,RBPともに10歳前後を機に上昇傾向を示し,15歳頃に成人基準値に達することが明らかとなった.小児の栄養評価において年齢相応の基準を利用できるという観点から有用な結果と考える.
 
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 【原著】 
■題名 
MRSでの乳酸ピークを契機に診断されたミトコンドリア呼吸鎖異常症の1例 
■著者 
公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院小児科 中村 由恵  熊倉 啓  本田 吉孝  三上 真充  中田 昌利  羽田 敦子  渡辺 健  秦 大資 
■キーワード 
ミトコンドリア呼吸鎖異常症, Leigh症候群, Magnetic resonance spectroscopy 
■要旨 
 ミトコンドリア呼吸鎖異常症(Mitochondrial respiratory chain disorders:MRCD)とは,細胞内小器官の一つであるミトコンドリアの障害によるエネルギー代謝系の先天代謝異常症である.通常は臨床症状に加え,血液・髄液検査にて乳酸蓄積を認めた場合に本疾患が疑われる.しかし私たちは,血中・髄液中の乳酸値は正常であり,Magnetic Resonance Spectroscopy(MRS)が診断の契機となったMRCDの1例を経験したので報告する.症例は5歳男児.頭痛・嘔吐を主訴に受診した.血液検査では軽度の炎症反応亢進を認め,髄液検査では多核球優位の細胞数上昇とIL-6値上昇を認めた.血中・髄液中の乳酸値は正常であり,他に明らかな異常は指摘できなかった.また高音域の感音性難聴を認めた.頭部MRIでは錐体路を中心に両側対称性の病変を認めた.頭痛消失後も画像病変は不変であった.このためMRSを行ったところ,病変部に乳酸の蓄積を認め,MRCDと考えた.皮膚線維芽細胞の呼吸鎖酵素活性測定を行い,Complex Iの活性低下を認め,確定診断に至った. 
 血中,髄液中の乳酸値のみではMRCDを否定できない症例が存在すること,MRSが診断に有用であることが示された.
 
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 【原著】 
■題名 
チーム医療により早期の性決定が可能であったRobinow症候群の1例 
■著者 
東京都立小児総合医療センター内分泌・代謝科1),同 新生児科2),同 臨床遺伝科3),同 遺伝子研究科4) 後藤 正博1)  大通 尚1)  井垣 純子1)  緒方 大輔2)  高橋 秀弘2)  吉橋 博史3)  長谷川 行洋1)4) 
■キーワード 
Robinow症候群, 性決定, チーム医療, 小陰茎, 埋没陰茎 
■要旨 
 性分化疾患は新生児における医学的緊急事態であり,迅速かつ正確な性決定が求められる.私たちは,高度の小陰茎,埋没陰茎から性分化疾患が疑われ,日齢1に当院へ紹介となった新生児を経験した.他に特異顔貌,四肢短縮などが見られたことから臨床遺伝科,放射線科を含んだ院内関係各科が連携し,日齢4までにSRY陽性のRobinow症候群と診断し,日齢5には家族へ男児としての性決定を勧めることができた.本症例の対応においては日本小児内分泌学会より公表されている「性分化疾患初期対応の手引き」に準拠したかたちでチーム医療をおこない,迅速に性決定をすることが可能であった.
 
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 【原著】 
■題名 
ピボキシル基含有抗菌薬3日間投与によるカルニチン欠乏が関与した急性脳症の1例 
■著者 
兵庫県立こども病院脳神経内科1),同 救急集中治療科2),福井大学医学部健康科学3) 西山 将広1)  田中 司1)  藤田 杏子1)  丸山 あずさ1)  永瀬 裕朗1)  竹田 洋樹2)  上谷 良行2)  重松 陽介3) 
■キーワード 
急性脳症, 低血糖, カルニチン欠乏, 抗菌薬, ピボキシル基 
■要旨 
 ピボキシル基含有抗菌薬を3日間投与された翌日に低血糖とけいれんを認め,重篤な神経学的後遺症を残した急性脳症の1例を経験した.1歳7か月女児が,発熱,けいれん,意識障害を主訴に受診した.初診時に認められた低血糖は糖液投与にて改善したが,けいれんは断続的に出現し意識障害が持続するため当院に搬送された.急性脳症の診断でバルビツレート昏睡療法併用下に脳平温療法が施行され,カルニチンも補充されたが,頭部MRIで拡散能低下を認め,左片麻痺と重度精神遅滞の後遺症が残存した. 
 発症約3か月前に15日間と発症直前に3日間のピボキシル基含有抗菌薬内服歴,一過性の遊離カルニチン低下とC5アシルカルニチン上昇を認めたことより,ピボキシル基含有抗菌薬による二次性カルニチン欠乏症と考えられた.これまでに抗菌薬長期投与による低血糖の関与が示唆された急性脳症が報告されているが,本症例のように抗菌薬投与が短期間でも低血糖や急性脳症を発症する可能性があり注意が必要である.
 
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 【原著】 
■題名 
重症蚊刺過敏症から慢性活動性EBV感染症に移行した2例 
■著者 
横浜市立大学附属病院小児科1),国立成育医療研究センター母児感染研究部2),名古屋大学医学部ウイルス学3) 竹内 正宣1)  柳町 昌克1)  矢内 貴憲1)  佐々木 康二1)  加藤 宏美1)  横須賀 とも子1)  梶原 良介1)  藤井 久紀1)  後藤 裕明1)  今留 謙一2)  木村 宏3)  横田 俊平1) 
■キーワード 
重症蚊刺過敏症, EBウイルス感染症, EBウイルス関連T/NKリンパ増殖症, 骨髄非破壊的造血幹細胞移植 
■要旨 
 重症蚊刺過敏症は,蚊刺後に全身の高熱,蚊刺部の水疱・潰瘍・瘢痕化を繰り返す,Epstein-Barr Virus(EBV)の持続感染が関与する疾病である.自然治癒が期待できず,数年〜十数年の経過をとり,慢性活動性EBV感染症や悪性リンパ腫,EBV関連血球貪食性リンパ組織球症を合併して不幸な転帰をたどる.我々は,対照的な経過をたどった2例の重症蚊刺過敏症を経験した.1例目は重症蚊刺過敏症の診断後,造血幹細胞移植を予定していたが,同意が得られず1年後にEBウイルス関連悪性リンパ腫を発症し,多臓器不全のため発症より6年で死亡した.2例目は重症蚊刺過敏症診断後6か月で造血幹細胞移植を施行し,EBVは前処置後に消失した.現在移植後1年半経過し,GVHDなど合併症も認めず,重症蚊刺過敏症の症状も認めていない.重症蚊刺過敏症はCAEBVや悪性リンパ腫に進展し多臓器障害を高率に合併することから,できるだけ早期に診断をつけ,造血幹細胞移植術を実施する時期を逸しないようにすることが重要であると考えられた.
 
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 【原著】 
■題名 
吸気性喘鳴が遷延した声門下血管腫の乳児に対するKTPレーザー治療の1例 
■著者 
広島市立広島市民病院総合周産期母子医療センター新生児科1),広島大学病院小児科2) 前野 誓子1)  林谷 道子1)  西村 裕1)  隅 誠司1)  岩瀧 真一郎1)  西村 志帆1)  早川 誠一2)  世羅 康彦2)  小林 正夫2) 
■キーワード 
声門下血管腫, 乳児期吸気性喘鳴, 内視鏡的KTPレーザー治療 
■要旨 
 症例は遷延する吸気性喘鳴を呈した1か月乳児.急性喉頭炎としてアドレナリン吸入やステロイドホルモンによる治療を行い,喘鳴は一時軽快したが,症状の悪化で再入院となった.造影CTで声門下から気管にかけて気道を狭窄する腫瘤性病変を認め,喉頭ファイバー所見と合わせて声門下血管腫と診断した.ステロイドホルモン投与と気管支鏡下のKTPレーザー焼灼術にて,血管腫の著明な縮小と臨床症状の改善が認められた.気道狭窄を示す血管腫に対してのレーザー治療は有効な治療法と考えられた.
 
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 【原著】 
■題名 
気胸発症12日後に好酸球性胸水貯留をきたした重症心身障害者の1例 
■著者 
日立製作所日立総合病院小児科 菊地 正広  小宅 泰郎  石踊 巧  平木 彰佳  諏訪部 徳芳 
■キーワード 
好酸球性胸水, 気胸, インターロイキン5, IgE 
■要旨 
 脊椎側弯手術後の中心静脈カテーテル挿入時におきた医原性気胸発症12日後に,胸部X線で右側大量胸水の貯留を認めた重症心身障害者の1例を経験した.胸水は滲出性であったが,細菌培養,結核菌PCRは陰性で,各種腫瘍マーカーも陰性であった.胸水白血球分画では好酸球が52%を占め,末梢血好酸球数の増加も伴っていた.気胸による好酸球性胸水と考え,ステロイドを投与することにより胸水は消失,末梢血の好酸球も減少した.胸水中のIL-5,eosinophilic cationic protein(ECP)の上昇を認めたが,末梢血IL-5は測定感度以下であった.胸水,末梢血IgEの上昇はなく,胸水中のIL-4上昇もわずかであったことより,好酸球性胸水発症には局所における選択的なIL-5産生が関与していると推測された.好酸球性胸水は手術侵襲,外傷,気胸,感染症,薬剤に伴ってみられることがある.重症心身障害者ではこれら好酸球性胸水の原因となりうるリスクを伴っていることが多く,一方で胸水貯留に伴う胸痛,呼吸困難などを訴えることのできない症例も多い.治療においてはステロイド投与が必要な例も多く,気胸後に生じた胸水では好酸球性胸水の可能性も念頭に置き診断・治療を進めるべきである.
 
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